Fate/GO 神人隣生国 イズモ   作:柏 憂奈

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太陽のようにカラッとした

「――――――え?」

 

思わず声が出てしまった。

なんで知ってる?戦闘――、いやそれは――、なんでこちらの緊張をほぐすのにその言葉を――、様々な疑念とこれからの行動の選択肢が頭の中にうかぶ。

こちらのことは見通していることを警告するためなのだろうか。

しかし、女性は変わらず柔らかに微笑んでおり、今ここで戦闘を行うような意思は全く見られない。

 

「あなたは……知っているのですか?」

 

マシュがそう恐る恐るそう尋ねる。

 

「うん、私たちはみんな知っている。見ていたからね。藤丸立香君に、マシュ・キリエライトちゃんでしょ。安心して、戦闘をするつもりもないから。ただ、少し話したいだけ」

 

こちらの名前まで知っているのはどういうことだろう、見ていたというのはどこで?などという疑問が増える。

ただ、変わらず微笑んでいる彼女にこちらへの警戒や戦闘への予兆は全くなく、言葉通りの意味だと判断する。

なら、まずは言葉を交わそう。いつも通り、今まで通り。

最後に切除してしまうにしても、何も知らないままには始まらない。所長も、まずは情報収集からだといっていたじゃないかと反省する。

異聞帯の人がこちらのことをいきなり知っていた場合はあったけれど、その時はすぐに敵対することになってしまったからトラウマにでもなってしまっているのかもしれない。

 

「ああ、よかった。私には戦闘の権能、なんてものはないから。話ができそうで安心した。私はみくまり、国之水分だ。よろしくね」

 

「「よろしくお願いします」」

 

マシュと並び挨拶をする。

緊張が解けて周りの様子を確認する余裕ができる。すると、子供たちが遊びをやめてこちらを不思議そうに見ていた。申し訳ない。

ごめんねと子供たちに手を合わせる。

子供たちは空気が読めるようで、またみんなで遊びに戻っていった。

しかし、一人だけが遊びに戻らずにこちらに近づいてくる。

 

「ねえ、お兄ちゃんたちはなんのかみさまなの?」

 

「え――――――」

 

かみさま?

唐突な質問に言葉が詰まる。

 

「えっと……かみさまではないよ」

 

「この人たちは人間だよ。君たちと同じだ」

 

背後からそんな声が子供に向かって放たれる。

 

「えー、でも見たことない服を着てるし、お姉ちゃんはすごいのもってるよ」

 

「外から来た人だからね」

 

そんなやり取りをして子供は納得できたのかふーんと言いつつ遊びの輪に戻っていった。

改めて女性の方へと向き直る。

この人がみくまり様と呼ばれていた人……案内された場所が神社ということはこの人はきっと巫女なのではないかと思っていた。

しかしさっきの子供の言葉から考えると、もしかしてこの人は……

最初にこっちを見たときから、今もなお感じている不思議な感覚はそのためかと納得できた。

カルデアのみんなにも挨拶をしてもらった方がいいと思い、背中の呪符を確認する。

しかし、背中に呪符の姿は見当たらなかった。

 

「あれ?」

 

「うん、どうかした?」

 

「いえ、何でもないです」

 

「そ」

 

ここで仲間の呪符があってなんて言えるわけがない。

思わずごまかしてしまう。

 

「その……国之水分様、この異聞帯について聞いてもよろしいのでしょうか」

 

そんな態度を見てか、マシュがみくまり様に対して質問をする。

本当に頼りになる後輩で、ありがたい。

この異聞帯はどういったものか、いつの時代からの分岐点なのか。さっき見た町の様子は、現代にかなり近いものだった。

異聞深度も低かったことから、凡人類史からそこまで離れているとは言えないものだということが分かる。

しかし、外から見ただけの情報ではわからないことだらけだ。

ここに住んでいる側の話が大切になる。

 

「かまわないよ。私が言えることなら、もちろん」

 

みくまり様はそんなことならお安い御用と、気安く快諾してくれた。

 

「まず、君たちは異聞帯といっているけれど、それは正確とは言えない。ここは今、2018年ではないしね」

 

「「え――――――」

 

2018年がはない……それはおかしい。

異聞帯はどこか過去で分裂した、あり得たかもしれない人類史だ。

なら過程は違くても、時間軸は現代、つまり2018年を指していた。それはどこの異聞帯でも変わらないものだ。

 

「それじゃあ……」

 

思わず口に出してしまう。

そう――つまりここは――――――

 

「特異点……と言いたいんだろ」

 

みくまり様が先回りをして答えを言う。

その通りだ。特異点なら現代と時間がずれていたとしても成り立つことが出来る。

それに、シオンが言っていたように、ここには異聞帯の成立に必要不可欠なものが、空想樹が見当たらない。

しかし、それならなぜ晴明は異聞帯という表現を使ったのだろうか。

謎が残る。

 

「それもまた違うけどね。ここの成立に聖杯は関係ない。まったくだ」

 

ニコリと笑ってまるで謎を出してくるホームズのようにみくまり様は言う。

そうするとさらに疑問が生まれてしまう。聖杯は関係ない。

それではもう、オレ達にはわからないことしかわからない。

今までの特異点はどこも聖杯が起点となっていた。

目指すべきゴールが分からず困惑する。

呪符もないのでカルデアのみんなに連絡を取ることもできない。

ダヴィンチちゃんやシオン、船長のみんながいればある程度の予測をすることが出来たのかもしれないが、どうしようもない。

 

「では、ここの成立には何が関わっているのですか?」

 

マシュが真剣な様子で質問をする。

 

「それは言えない。それが分かったら君たちはここを切除してしまうでしょ」

 

「それは……」

 

その通りだ。どうして?なんて口が裂けても言えなかった。

オレ達は、カルデアは間違いなく異聞帯に暮らしていた人たちを否定して、今ここまで旅を続けてきたのだから。

間違えようがなく、生存競争という戦争をしている。

 

「私からも聞いていいかな。君たち、とくに藤丸君はここの様子、まだ少ししか見れていないだろうけど、どう感じた?」

 

「先輩……」

 

今度はみくまり様から質問が飛んでくる。

ここの、この場所の感想。

 

「懐かしく思いました――」

 

なんとなく日本の現代を、オレが住んでいた時代に限りなく近い、まるで凡人類史のような街並み。

これを、この光景を取り戻す戦いをしているのだと、そう思ってしまうような錯覚。

 

「オレの住んでいた場所に近くて―――」

 

ここを否定しなければいけないのかと、今までにない躊躇いを覚えさせるナニカ。

 

「それはよかった」

 

みくまり様はオレの言葉を聞いて本当に安心したかのように笑う。

 

「だってさ」

 

「「え」」

 

みくまり様はそう言って拝殿の方へと振り返った。

オレとマシュもそれに倣って拝殿の方に目を向ける。

同時に扉が勢いよく開き、

 

「それはよかった!!」

 

中からオレらと同年代の少年がまるでヒーローが見参したかのように登場した。

あまりにいきなりの出来事に開いた口がふさがらない。

てっきりみくまり様が神様だと思っていたが違ったのだろうか。

マシュもいきなりの出来事に頭が追い付かないようでえ、え、と混乱している。

 

「初めまして。僕は白樺蘭。ここの……うーん、君たち風に言うならクリプターもどきというか、異聞帯の王というか、まあ、そんな感じの重要人物です!よろしくお願いします」

 

訳が分からず呆然としているオレ達の前で、白い和装をした肩口までの長さの黒い髪をポニーテールのようにしてまとめている、中世的な顔立ちの少年は、太陽のようにカラッとした笑顔を浮かべて自己紹介をした。

 

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