「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」再び40階!ニンジャたちの戦闘はいまだ果てしなく続いていた。回避し、あるいは相手に弾き飛ばされるうちに、すでに最初の会議室を離れて別のオフィスルームへ移動!
「イヤーッ!」「コシャク!」SMASH!ニンジャスレイヤーのチョップがボーンブレードに弾かれてデスクを砕き、書類がパッと宙を舞う!放置されていたバリキ・コーヒーカップが机上でクルクル回ったあと床に溢れる!
「イアイド!」「ヌウーッ!」SLASH!ボーンブレードのエンハンスメント・イアイドがニンジャスレイヤーにブリッジ回避され、壁を3角形にくり抜く!壁は「達成目標」「成せば成る」「ロブスター勤勉な」の勤労奨励ショドーごとビル外へ落下していく!
驚くべきことに、ボーンブレードはニンジャスレイヤーよりずっと重いダメージを負っていながら、猛烈な抵抗を続けていた。バイオニンジャ特有のタフネスと、つねに一撃必殺の可能性を持つオーラ骨刀の圧力の成せる技であった。
(((ミフデ、この愚か者めが……)))ニンジャスレイヤーのニューロンの底で、邪悪なニンジャソウルが身をもたげる。(((このようなシ・ニンジャクランの小虫相手に、いつまで手こずっておるか。もはやこやつの不細工な面も見飽きた)))ナラク・ニンジャである。
(黙っててください、ナラク=サン)ニンジャスレイヤーはその言葉をはねつける。そして連続前転を繰り出し、ボーンブレードの連続イアイを振り切った。(弱敵だの小虫だの適当なことを。こいつメチャクチャ粘ってきますよ。目と足をぶち抜いてやったのに)
(((グググ……その苛立ち。憎悪。実に心地よいぞ)))しかしナラクは腹を立てることもなく、上機嫌だ……実のところ、ボーンブレードのジツが非ニンジャの虐殺を前提とするものであることをミフデに伝えたのはこのソウルである。それによって彼女の復讐心を煽ったのだ。
(((ワイヤープラー=サンを愛しているとか、ニンジャを殺したくないとか、意味がわからぬ。惰弱すぎて反吐が出る。上っ面だ!こちらがオヌシの本質だ、ミフデよ!ニンジャを殺せ!)))
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーがフロアの隅へ側転退避したところへ、「トライアングル・イアイド!」ボーンブレードが骨刀を振りかぶって突っ込んでくる!SLASH!ビルの隅の壁が三角錐型にカットされ、切断面で滑ってビルの外へ落下していく。
しかしニンジャスレイヤーの体は切断されていない!彼女は跳躍して空中で寝そべるような姿勢をとり、ボーンブレード側から見た時のこちらの体表面積を最小化して、三角形のイアイ斬撃の中心を潜り抜けたのだ!
「イヤーッ!」そしてそのままスプリング・ドロップキック!「グワーッ!」顔面に直撃を受けて後ずさるボーンブレード。だが浅い!体重が10代前半女性相応のものしかない今のニンジャスレイヤーでは、質量をぶつけるような攻撃は破壊力が不十分!
ボーンブレードはカッと目を見開き、左手をカタナから離す!「イヤーッ!」そしてとにかく速度重視で、平手のまま振り回した!巨大な左腕であるから、それだけでも攻撃力は十分!ニンジャスレイヤーと対照的!
ボーンブレードの左手が空中のニンジャスレイヤーの脇腹にめり込み、「グワーッ!」吹っ飛ばす!CRAAASH!!ホワイトボードにぶつかってもろとも床に倒れ込む!
「死ね!ニンジャスレイヤー=サン!死ね!」ボーンブレードは叫び、バイオサイバネ腕力全開!「イヤーッ!」右手一本で肉切り包丁めいて垂直に骨カタナを振り下ろす!「オオオオオ」オーラが呻いて、その射程を増す!10mの死が迫り来る!
ニンジャスレイヤーはウケミを取りながら両手でホワイトボードを掴み、「イヤーッ!」ボーンブレードへ水平に投げつけた!さながらダイシュリケンのごとく回転しながら飛んでゆくホワイトボード!
ボーンブレードは強引な連続攻撃を繰り出している最中であり、うまく対応できない!「ヌウーッ!?」ホワイトボードが右手に激突し、斬撃の速度を鈍らせる!
射程がどれだけ長かろうが、ボーンブレード自身がカタナを振り抜かぬ限りオーラは飛ばぬ!彼のホロウ・エンハンスメント・イアイドは低消耗かつ高威力な飛び道具ではあっても、完全無欠の殺人レーザーではないのだ!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは投擲動作からスムーズに横へ転がり、オーライアイドを紙一重で回避!タツジン!そしてそのまま連続前転に移行し、「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」その回転の中からスリケンを3連続で投げつける!さながら古事記に記されたイクサのスリケン・ボールか!
ボーンブレードは側転回避を試みたが、右脚の負傷のせいで動作が遅れる!「グワーッ!」左脚にスリケン1枚被弾!とっさにムーンサルトから連続バク転へ移行し、間合いを離しにかかる!
「サツバツ!」ニンジャスレイヤーは電撃のごとく起き上がり、全力のスプリントでそれを猛然と追跡……いやダメだ!「イヤーッ!」その場で強引にブリッジ!手足が床にバーンナウト痕を残す!「イアイド!」その腹のすぐ上を、水平オーラ・イアイドが通過!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはバックフリップしてスリケンを投げる!「イヤーッ!」ボーンブレードはオーラ刀をコンパクトに動かし斬り払う!2人はともに攻めあぐねて、再び睨み合いに移行した。ゴジュッポ・ヒャッポ!
(殺せっていうなら、あのカタナを何とかする方法を教えてくださいよ)ニンジャスレイヤーは抜け目なくジュー・ジツを構えつつ、ナラク・ニンジャに呼びかける。
(((ふむ。儂に体を任せろと言いたいが、また体を渡す渡さないの口論をしてこの泥沼が長引くのもつまらぬ。特別にインストラクションをくれてやろう)))ナラク・ニンジャはその後、何事かニンジャスレイヤーに教授した。
ニンジャスレイヤーはそれを受け入れた。事前のブリーフィング時に記憶したビル内のマップを想起する。そしておもむろに拳を振り上げ、「イイイヤアアアーーッ!!」足元の床をカワラワリ・パンチで破壊した!CRAAASH!!
「何!?」ボーンブレードは敵の唐突な奇行に驚愕!2人の足元が蜘蛛の巣状にひび割れ、ビル本体への固定を失う。ニンジャたちはもろとも39階へ落下した。
真下の部屋は厨房である。上層フロアのカチグミ職員たちに上質な食事を提供するのが使命だ。しかしコックはとうに避難したと見えて、部屋に人の姿はない。鏡のようなステンレスシンクに瓦礫が落下し、めり込む。
「イヤーッ!」落下途中、ニンジャスレイヤーが左手でスリケンを投げた!「チイーッ!」ボーンブレードはそれを斬り払う。これではイアイで空中攻撃するには時間的猶予が足りぬ。
ボーンブレードは厨房の床に後転で着地する。ニンジャスレイヤーはコンマ数秒早く調理台の上に着地し、右手でスリケンを投げた。ボーンブレードは半身になってそれを回避し、カタナを下から上へ振り抜いた。オーラの刃が床を、調理台を斬り裂き、敵へ迫った。
ニンジャスレイヤーはすでに調理台から横へ跳んでおり、このイアイを回避した。切り裂かれた調理台から調理器具や調味料が溢れた。ニンジャスレイヤーは「ご清潔に」のショドーが貼られた壁を蹴ってトライアングル・リープし、調理台の陰へ転がり込んだ。
(また調理台ごと切断するオーライアイを誘い、それを空振りさせて肉薄するつもりなのだろうが)ボーンブレードは跳んだ。そして今まで散々遠距離攻撃を行ったことを伏線として、カタナの直接攻撃で奇襲を図った。リーチは短いが、それゆえに切先が移動する距離が短く、遠隔イアイよりハヤイだ。
調理台を飛び越し、屈み込むニンジャスレイヤーの姿を視認する。こちらを振りあおぐが、回避しない。左腕のブレーサーで防御するようだ……愚かな。(今の俺のカタナはムテキ・アティチュード使いであろうとナマスにできる)
ニンジャスレイヤーが右手で何か投げた。ボーンブレードは左手のスリケンで相殺……(何?)敵が投げたのはスリケンではなかった。何らかの白い粉末だ。ボーンブレードの迎撃スリケンはその中をすり抜け、ニンジャスレイヤーの右手を掠めて虚しく跳んでいった。
ボーンブレードは訝しみながらも、すでに始めた攻撃は止められぬ。敵の投げた粉末が、骨カタナに振りかかる……その瞬間、ジュワッと音を立てて、オーラが蒸発して消え失せた。
ボーンブレードは目を見開いた。骨カタナが敵の左腕ブレーサーに食い込むも、切り裂けずに、止まった。敵が粉末を投げた右手を切り返すのが見えた。回避!ボーンブレードの体はいまだ空中であり叶わぬ!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが屈み込んだ姿勢から斜めに跳びあがりつつ、右手チョップ突きを繰り出す!「グワーッ!?」ボーンブレードの胸に深々と突き刺さり、そのままタックルめいて吹き飛ばした!2人のニンジャは放物線を描き、第2の調理台に激突!CRAASH!!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは右手を引き抜きつつ、バックジャンプで飛び離れる……敵の心臓を破壊した手応えがあった。持ち主の手を離れた骨カタナが宙を舞い、ガツッと音を立てて調理台上のマナ・イタに突き立った。
ニンジャスレイヤーが投げた白い粉末……その正体は、何のことはない、食塩であった。しかし大西洋文化圏のみならず日本においても、塩は古来よりイービルスピリットを退ける力を持つとされる。神聖なるオスモウの試合前にドヒョー・リングを除霊することにも用いられる。
ボーンブレードのホロウ・エンハンスメント・ジツはそのイービルスピリットかそれに近いものをエネルギーとして利用するものであった。ナラク・ニンジャはそれを見抜き、塩で無力化すべしとのインストラクションを与えたのだった。
「アイエエエーッ!」第三者の悲鳴!ひしゃげた第2の調理台の下部収納から、白い調理服姿のコックが転がり出た。なぜか大きな牛肉塊を抱えている。逃げ遅れていたのか?ニンジャスレイヤーがそれを注視する一瞬のウカツ!
「イヤーッ!」第2の調理台からボーンブレードがガバッと身を起こし、低姿勢でタックルをかけた!「ヌウーッ!?」ニンジャスレイヤーは倒れず踏み止まるも、敵はそのまま脇下にしがみつく!
「コック!逃げるなッ!」ボーンブレードが逃げようとしたコックを一喝!「撃て!社敵だ!こいつを撃てーッ!」
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはその後頭部を繰り返し殴りつけ、敵をもぎ離そうとする!「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」全て命中!しかしこの姿勢では今ひとつ威力が出ず、敵はタフなバイオニンジャの上に死に物狂い!
「アイエッ、社敵……」コックが牛肉塊を取り落とし……ナムサン!震える手でニードルガンを取り出す!「ヤメロ!」ニンジャスレイヤーは叫ぶ!「私はニンジャだ!そんなもの通じるか!あっちへ行け!」
「通じる!撃て!こいつを殺せーッ!」ボーンブレードも胸の傷からおびただしいバイオ血液を流しながら叫ぶ!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーがその後頭部を繰り返し殴打!「アバーッ!」ついに頭蓋骨が砕け始めるも、拘束は緩まぬ!
ニンジャスレイヤーは状況判断した。コックがニードルガンを発射するまで数秒であろう。それまでにボーンブレードをカイシャクすることは不可能だ。ならばどうするか。両手はフリーなのだ。
ニンジャスレイヤーは……右手にスリケンを構えた。そしてコックを見た。「アイエエエーッ!」コックはすでにニードルガンを放り捨てていた。そして牛肉塊を拾い上げて逃げ去った。
「バカな……職務怠慢……」ボーンブレードは絶望した。あるいは彼が部下によく顔を知られた上司であれば、コックの愛社精神を繋ぎ止めることができたかも知れぬ。しかし彼は、多くの社員たちにとっては噂程度に語られる存在でしかなかったのだ。
「イイイヤアアアーーッ!」ニンジャスレイヤーが両手を組んでハンマーのごとく振り下ろす!「アバーッ!」ボーンブレードはもはや気力を挫かれておりこれに耐えられない!足元の床にうつ伏せに叩きつけられる!
「フザッケルナー!ニンジャ!クソニンジャ!」ニンジャスレイヤーは激情とともに右足を振り上げ、ボーンブレードの後頭部を繰り返しストンプする!「アバーッ!アバーッ!」
「お前は最低だ!私が会った中で最低のクズだ!ヤクザでもない普通の人を何人も殺して!巻き込んで!」「アバーッ!アバーッ!」「死ぬべきはお前の方だろ!死ね!」「アバッ……ヨ、ヨロシ……」「黙れ!黙って死ね!」「……」
やがてボーンブレードは頭を念入りにすり潰され、物言わぬ首無し死体と化した。熟練戦士の悲惨な最期であった。あるいはこれも多くの命を殺めた彼自身のインガオホーか。ニンジャスレイヤーはしばらく荒い息をした後、よろよろとシンクに近づく。そして嘔吐した。「オゴーッ!」
(あのコックが銃を捨てるのが1秒でも遅かったら、私は人を殺していた。ニンジャでもない普通の人を)その事実だけが頭の中をグルグル回る。他のことが考えられない。殺すことは覚悟していたはずなのに!(普通の人を巻き込んだ?巻き込んだのはこのビルに忍び込んだ私じゃないのか?)
(((何を恐れることがあるのだ?)))ニューロンの中でナラク・ニンジャが囁く。(((ニンジャを殺せればよかろうが。殺せないことをこそ恐れるべきだ。邪魔者は全員殺せばよい!)))
「あああ!ウルサイ!ウルサイ!」ニンジャスレイヤーは半狂乱になって騒いだ。「私はニンジャじゃない!私はこいつらとは違う!私はあいつとは違う!」脳裏に焼きついた家族の仇、邪悪なニンジャの姿が鮮烈にフラッシュバックする!
『ザッケンナコラーッ!!ガキがコラーッ!!』インカムから罵声が飛んできて、彼女を現実に引きずり戻した!ハンザワ!『荒事邪魔しちゃいけねえと思って黙ってたら何だオラーッ!フリークアウトしてる場合か!頭冷やせ!』
「ハーッ……ハーッ……」ニンジャスレイヤーはどうにか理性を取り戻し……メンポとインカムをもぎ取って、シンクに頭を突っ込んだ。そして蛇口を全開にした。ゾッとするほど冷たい水が彼女の髪を、顔を流れて、シンク内の吐瀉物を洗い流していった。
「スミマセン。取り乱しました」ニンジャスレイヤーは近くにあった布巾で顔を拭い、装備を戻した。『なんか水音してたけどマジで頭冷やしてたのか?物理的に?』ハンザワの困惑した声が届く。「冷やせって仰いましたよね」『イヤ、言ったが……まあ冷静になったならいい』
『ニンジャは倒したようだね』チェミの声。「ハイ。現在地情報行ってますか?今、39階の厨房です」『NP。ヨロシサン側に動きはないようだ。あいつらそのニンジャのバイタルが消えたの見て震え上がってるかもね……脱出路を調べておく。あんたは40階に戻りな』「ハイ」
ニンジャスレイヤーは呼吸を整えつつ、コバシリでベンテンの元へ向かった。彼女はボーンブレードのアンブッシュを防いだ後、制御コンソールへフロッピーを挿入してきた。調剤はあと15分程度で終了するはずだ。
『ニンジャスレイヤー=サン。アンタ、さっき動揺してたみたいだったけどね』チェミが不意に口を効く。『正直、アタシはちょっと安心したよ。アタシも自分の感情をロジカルに考えるのがモットーだけど、アンタ、歳のわりに全然悩んだり怖気付いたりしないからさ。言っちゃ悪いけど、ロボットみたいだなと思ってたのさ』
「ロボットですか」ニンジャスレイヤーはその言葉に重みを感じた。きっと、さっきのボーンブレードはそのロボットにあたるだろう。『説教臭いのはガラじゃないけどさ、悩むのは子供の特権だよ。やめた瞬間から人はフケてくのさ。もちろん考え事は安全な場所で……ン?』
チェミの話が不意に途切れる。「……どうしました?」『ヤバイ。奴ら正気か?』再び口を開いた時、彼女の口調には戦慄が滲んでいた。『ニンジャスレイヤー=サン、予定変更だ。すぐ脱出しな』「なぜ?」『そのビル、あと10分で爆発する』
【続く】