その空間は16年ぶりに照明が点灯され、明るく照らされていた。ヨロシサン製薬スギナミ支社ビル、地下15階。ビル建築当時の支社長によって秘密裏に設置されたまま忘れ去られたシェルターだ。
広さは体育館だが、天井は高い。地下14階から長い階段を降りてくると、左右の壁際に保存食や生活雑貨のコンテナ、ユニット式トイレなどが設置されている。隅の壁に重厚なフィルターのついた換気扇と、入口が封鎖された場合に備えた上昇専用の脱出エレベーター。そして正面の壁に、自爆装置操作コンソールが設置されている。
この自爆装置はシェルターを爆破するものではない。地上施設の骨組みの内部に仕込まれたプラスチック・バクチクを炸裂させ、地上施設を木っ端微塵に吹き飛ばすものなのだ。建築当時から重要な機密情報を扱う部署は地上に置かれることが想定されており、非常時にそれをデリートするためのシステムなのである。
しかし今やそのシステムは当のヨロシサンに忘れ去られ、あろうことか、敵対勢力に利用されることとなった。いまだ最上階付近に支社長ほか多数の社員が残っているにも関わらず、あと10分弱で1階以上のフロアがすべて吹き飛ぶのだ。
『社長。ニンジャが来ます』スゲンのパワードヘルム内に、部下からのIRCが表示される。『エレベーターシャフト内を落下してきます……1階に到達。1階の防火シャッターを全封鎖します……達成率50%。敵ハッカーの妨害』
スゲンは地下15階のシェルター内、入口から見て左側の食料コンテナの陰に潜伏していた。コンテナ表面の「準備しておけば事故死しない」「安心安全」の表示がアイロニックだ。
入口を睨む。その正面には、スゲン自身が先ほどコンテナを積み上げておいた。外からシェルター内を見通せなくするためだ。そしてコンテナの山を迂回すれば、必然的に突入速度は落ち、待ち伏せの一斉射撃を直撃させることができる。
『シャッターが破壊されました。ニンジャが地下行きエレベーターシャフトに突入……地下5階……10階……14階』スゲンは極限まで集中した。敵はコンテナの山を左右どちらへ迂回する?
CRAAASH!!コンテナの山を真正面から跳ね飛ばして、色付きの突風が吹き込んできた!迂回せず、直進!(何!?)スゲンは驚愕したが、パワードスーツの照準アシストはその動きを捕捉している!右手拳銃!BLAMBLAMBLAMBLAMN!
1発目は弾け飛ぶコンテナを撃った。2発目はニンジャの背後の虚空を撃った。3発目はニンジャの背中を掠めた。ニンジャはシェルターを突っ切り、自爆装置制御コンソールへ到達する。4発目が空気を切り裂き、その脳天へ迫る。
「イヤーッ!」ニンジャが低く跳躍し、瞬間的に加速した。弾丸はその後頭部を掠めた。そのまま端末の上の壁を蹴り、ピンボールのように跳ね返る。空中のニンジャと、コンテナの陰のスゲンの目が合った。「イヤーッ!」ニンジャはスリケンを投げた。
スゲンの左手拳銃がそれを迎え撃つ。BLAMBLAM!1発目が過たずスリケンを破壊した。バックアップの2発目は空中で身を捻る敵の体を掠め、壁に食い込んだ。ニンジャは着地した。
「ドーモ、はじめまして」そしてその動きのまま、スムーズにアイサツする。隙がない。「ニンジャスレイヤーです」小柄な女だ。どうやら元は白かったらしい装束は、今や自他の血で赤黒く染まっていた。
スゲンはコンテナの陰からにじり出た。『俺はタカミヤ・スゲンだ』銃を構えたまま、不遜に名乗り返す。ニンジャスレイヤーは眉をひそめた。「……ニンジャではないんですね。あなた」
『ニンジャでなければこのヨロシサンの砦に侵入できないとでも思っていたのか』スゲンの声が明らかに苛立ちを帯びた。『思い上がるなよ、バケモノめ。暴力で人を殺し文明を搾取するだけの仏敵の堕落者が。貴様らに可能なことは人間にも可能だ……テックの力によってな』
その理屈はニンジャの善性を頭から全否定するもので、あまりにも短絡的だった。それでも今の精神的に疲弊したニンジャスレイヤーには、まさしく的を射た批判のように感じられてしまった。ワイヤープラーのことを思い、なんとか迷いを振り払う。
「人殺しはあなたも同じですよね」努めて無感情に言う。「ビルを爆破しようとしてるじゃないですか。今、上層にヨロシサンの人が何人いると」『これは企業間戦争だ』スゲンが遮る。
『俺はオナタカミ社の人間であり、我が社とヨロシサン社は武力抗争状態にある。敵に最大の被害を与える方法を採るのは当然のことだ』『オナタカミだって?』インカムからチェミの訝しむ声が聞こえる。『何をバカな。オナタカミ社は5年前に解体されたはずだよ』
「……そうですか。そういう打算で」ニンジャスレイヤーは冷静さを取り戻した。忌避感と諦観に満ちた冷静さだ。「ニンジャでもない以上、私にあなたの行動の当否を論じる権利はないでしょうが……」
ニンジャスレイヤーは突き当たりの壁の自爆装置操作端末のモニタを見た。爆破まであと5分というカウントダウンが表示されている。40階でベンテンが解毒剤を調合し終わるまであと10分弱。
「……今ビルを壊されると私が困ります。自爆装置は止めさせてもらいます」『止めさせると思うか』「邪魔をするなら、心置きなく……殺させてもらいます」ニンジャスレイヤーは躊躇を強いて押し殺し、ジュー・ジツを構えた。「外道野郎が」
『バケモノが人道を語るな』ドウッ!スゲンの足元で粉塵が舞い上がった。瞬間、彼は左斜め上方へ打ち上げられていた。パワードスーツの右足部分が白煙を噴いている。ドウッ!左足部分がロケット噴射した。反動で右斜め上方へ。見えない階段を10段飛ばしで駆け上がるがごとく、上昇!
ヤマブシめいた白黒のパワードスーツが、シェルター天井の金属灯の青白い光を受けて輝く。さながら白鋼の天使か、天狗か。ジャキン!ドウッ!その背中からホバーエンジンが展開し、噴射して、落下速度を大幅に減衰させる。見えない階段の頂上で吊り上げられているがごとく!
『貴様は俺に触れられない』スゲンはニンジャスレイヤーを見下ろし、宣告する。『ヨロシサンのニンジャは倒せても、オナタカミの洗練テックの力は挫けん。ブッダの御許に行け』そして両手の拳銃で銃撃!BLAMBLAMBLAMBLAMN!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは連続側転で降り注ぐ重金属弾を回避!『往生せよ仏敵め。それが唯一救われる道……ナムサン!』スゲンは右手拳銃をパワードスーツ太腿部のリロード機構に叩きつけつつ、左手拳銃で敵を追う!BLAMBLAMBLAMN!
チューン!チュイーン!銃弾がニンジャスレイヤーの顔を掠め、あるいは装束を引き裂いて飛んでいく。全力で回避していてもこれなのだ。クローンヤクザなどとは桁違いの精密射撃である。
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは長期戦は不利と判断し、柱と壁を順にトライアングル・リープ。空中のスゲンとの距離を一気に詰めに行く。『無駄だ』しかしスゲンのパワードスーツとサイバネアイはその動きを捕捉していた。
ドウッ!ドウッ!両足スラスター噴射!スゲンは不可視の壁を跳ね回るスカッシュ・ボールのごとくジグザグに空中機動し、再度ニンジャスレイヤーとの間合いを離す!『これがヒキャク・マニューバ技術だ』そして空中で無防備状態のニンジャスレイヤーへ右手拳銃を向ける!アブナイ!BLAMBLAMBLAMN!
「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは咄嗟に両腕のブレーサーで頭と胸をガードするも、腹に被弾!どうにか着地しようとするところへ、スポン!スゲンがグレネードランチャーを発射!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは空中で身を捩り、スリケンで迎撃!グレネード弾とスリケンが激突し、CABOOM!衝撃波がシェルター空間を洗い、金属灯がバチバチと明滅する。ニンジャスレイヤーは着地直後、両足を踏ん張り、対空スリケンを投擲する。「イヤーッ!」1枚!「イヤーッ!」2枚!
BLAM!BLAMN!スゲンはそれを冷静に撃ち落とした。隙がない。『言ったはずだ。俺に触れることはできんと』ガラン。彼がパージしたグレネードランチャーが床に転がった。スゲン本人は壁の高い位置を巡るキャットウォークに着地する。
『地上施設の爆発まであと7分。俺が貴様の立場なら、そろそろ損切りして撤退するところだ。ヨロシサンの増援が来るおそれもあるからな』スゲンが言う。『ニンジャスレイヤー=サン、残念だがそいつの言う通りだ』チェミの声。
『そいつをすぐに倒せないようなら、粘れば粘るだけヨロシサンに捕まるリスクが増すだけだよ。ワイヤープラー=サン延命のタイムリミットまでは明日もある……新しいベンテンはアタシが探す。撤退しな!深追いしてあんたが大怪我でもしたら、次のチャレンジもできなくなるんだよ!』
「撤退はしません」ニンジャスレイヤーはきっぱりと言った。「一番セキュリティのぬるいこの施設を選んで、事前に装備を送り込む細工もして、それでもここまで苦労したんです。怪我もしました。明日他の施設を攻略なんて、できるわけありません」
『落ち着けニンジャスレイヤー=サン!』ハンザワが口を挟む。『苦労したのはそのオナタカミ野郎が乱入してきたせいだ。他の施設ならきっと、もっと簡単に!』
「そう、この人が乱入してきたせいなんですよ」ニンジャスレイヤーの口調は怒気を孕んでいた。ハンザワはたじろいだ。「一体何なんですかこの人は?私がセンパイを助けないといけないって時に、いきなり横からしゃしゃり出てきて……誰ですかこの人?オナタカミって何のカイシャですか?」
『重工業と電子機器、バイオテックのカイシャだ』スゲンが口を出した。「いや、あなたに聞いたわけじゃないんですけど」ニンジャスレイヤーはピシャリとはねつける。「とにかく、ここでこの人をぶん殴れば全部解決するんです。他の施設に行ったらどんな強いニンジャが出てくるか……でもこの人は、ニンジャでもない。この人より私の方が強い!」
ニンジャスレイヤーはそう言うが早いか、弾かれたように全力スプリントを開始する。『ふざけた詭弁だ』スゲンは再び両脚のスラスターを噴射してテイクオフ。『俺を軽く見積もったこと、後悔させてやろう。無知蒙昧の仏敵め』「ザッケンナコラーッ!」ニンジャスレイヤーはヤクザスラングを叫びつつ突撃!ハンザワから学んだヤクザマインドが原動力!
……そして絶望的な戦いが始まった。ニンジャスレイヤーはスゲンに、あるいは自爆装置操作コンソールに接近しようとする。スゲンはそれをヒキャク・マニューバでひらりひらりとかわし、銃撃でコンソールへの道を阻む。
彼がスラスターを使うのは今日これが初めてであり、燃料にはいまだ余裕がある。弾薬も地下14階で補給を受けた。もっとも消耗しているのはスゲン自身の集中力だろうが、ビル爆破……あるいは目の前のニンジャを殺すまでは十分保つ。
シェルター内はネットワークから隔絶されており、ハッカーが直接操れるようなものはなかった。それでもチェミはなんとかシェルター内へ戦力を送り込めないか試行錯誤したが、同じことを考えているスゲン側のハッカーと妨害し合う形となり、結局何もできなかった。時間だけが無情に過ぎていった。
「ハーッ……ハーッ……!」いつしかニンジャスレイヤーの息が上がり始めた。体力の限界が近づいているのだ。ヨロシサン勢力との戦いはすでに彼女のスタミナを半分以上消耗させていた。そしてこの戦闘で、銃弾が彼女を散々追い回し、何発かはその体を少しずつ削り取っていった。
「ハーッ……ハーッ……」血走った目で空中、ホバリングするスゲンを見上げる。奴までの距離が、あまりにも遠い。弾丸だけがたやすく最短コースを辿って飛来する。語るほどの面白みもなく、隙もない、容赦なきアウトレンジ戦術。
『爆破まであと2分だぞ』スゲンは無慈悲に宣告する。いつしか入口を背にする位置の空中に移動し、コンソール側にいるニンジャスレイヤーに銃を向ける。彼のパワードスーツにはいまだ傷はない。『多少背中から撃たれるのを覚悟でコンソールに突撃してみるか。そうしてもらえるとこちらとしても手っ取り早く殺……』
BLAKKA!……銃声が響いた。スゲンは背中に衝撃を受け、微かによろめいた。スラスターが瞬時に微細に噴射して姿勢を修正する。振り返ると、シェルター入口に、警備員服姿の重サイバネの男が立って散弾銃を構えていた。カバジマだ。顔と服に感電の焦げ跡。
カバジマが散弾銃をポンプし次弾を装填する前に、スゲンの右手拳銃はそちらへ向けて銃弾を3つ吐き出していた。無力化に足る量。すぐさまニンジャスレイヤーに向き直る。奴はすでに跳躍し、壁を蹴って接近してきていた。
(だが、遠い)奴がこちらへ到達するにはあと1回壁を蹴る必要がある。今銃撃すればそれを妨害できる……そして、左手拳銃が間に合う。BLAM。BLAM。1発目が敵の左チョップで弾かれた。2発目が敵の左脚を撃ち抜いた。敵は空中で両脚を屈めた。
BLAM。3発目。弾丸は最短コースを辿って飛んでいく。ニンジャスレイヤーはそちらへ向けて右足を伸ばし……次の瞬間、ニンジャスレイヤーの右拳がスゲンの眼前に迫った!『何!?』
「イイイイイヤアアアアーッ!!」ニンジャスレイヤーの渾身のジャンプパンチが、パワードスーツの顔面にめり込む!装甲がひしゃげる!『グワーーーッ!?』殴り抜ける!スゲンは回転しながら吹き飛ばされ、入口側の壁に背中から激突!ずるりと滑って、床に落下した。
「グワーッ!」同時にカバジマが3発の銃弾を浴びて倒れる。「グッワ!」ニンジャスレイヤーもその脇に転がるようにしてウケミ着地したが、そのまま立ち上がれず苦悶した。左脚のダメージが重篤!「グワーッ!」のたうち回る!
あの一瞬、何が起こったのか?……ニンジャスレイヤーは3発目の銃弾を踏んで跳躍し、スゲンに殴りかかったのである。彼女がスゲンと戦い続けて彼の射撃のクセを掴んだこと、カバジマの乱入がスゲンの集中を乱したこと、そしてニンジャスレイヤーが2発目の銃弾への対応をあえて捨て、3発目に集中する選択をしたことが揃って初めて成立した極限のカラテ・マニューバであった。
あるいはスゲンがニンジャであればその動体視力をもって対応できたかもしれないが、彼はあくまでニンジャではないのだ!
スゲンは床に落下し、うつ伏せになったまま動かない。脳震盪を起こして気絶したか。『装備者の意識レベル低下を確認な。あと5秒で覚醒措置開始ドスエ』彼のパワードスーツが微かに電子合成マイコ音声を発した。
「ハーッ……ハーッ……!」ニンジャスレイヤーがよろよろと立ち上がった。彼女はさっきの不穏なマイコ音声を聞いている。復活を許すな!このままカイシャクし、ビル爆破の望みを完全に断つべし!左足を引き摺るようにして、スゲンに近づく。
『あと2秒……1秒……』マイコ音声がカウントする。ニンジャスレイヤーはスゲンの頭をストンピングで破壊すべく、右足を振り上げる!「サヨナラ、スゲン=サン!」しかしその時、(((イヤーッ!)))スゲンの体の下あたりから奇妙な響きを持つカラテシャウトが発され、そこからスリケンが飛来したのだ!
「イヤーッ!?」ニンジャスレイヤーはとっさに倒れ込むようなブリッジで回避!さらに連続バク転で間合いを離す。(この人ニンジャだったの!?いや、ニンジャの味方が!?)
『覚醒措置実行ドスエ』マイコアナウンスとともに、スゲンのパワードスーツが彼に電気ショックと薬物注入を行った。スゲンはビクリと痙攣し……手をついて、起き上がった!「ニンジャ……スレイヤー!」顔面の装甲は完全に吹き飛び、額から血を流す青年の顔が露わだ。その表情は憤怒と屈辱に歪んでいる。
「ハーッ……ニンジャ並みにタフですね。忌々しい」ニンジャスレイヤーは吐き捨てるように言って、痛む体でなんとかジュー・ジツを構え直した。さっきの一撃で敵のパワードスーツにもダメージが入ったはず。奴は今までほど素早く動きはしないだろう……しかし銃は2丁持っているままだ。殺せるか?弾幕を突っ切って?
『社長。損切りの時です』スゲンの耳元に部下からの通信が入る。『ご存知のことと思いますが、今の衝撃でパワードスーツの戦闘機能が50%ダウンしています。顔面部装甲も喪失。いかな手負いとはいえそのレベルのニンジャと戦闘を続けるのは危険です』
スゲンは舌打ちした。しかし迷わなかった。次の瞬間、バラパパパパ!猛烈な閃光と騒音!「ヌウーッ!?」ニンジャスレイヤーはとっさに目を覆った。白煙が周囲に立ち込める。スゲンがパワードスーツの各部からスモーク・バクチクを射出したのだ!
「この借りはいつか返すぞ!」スゲンは捨て台詞とともにシェルター奥の脱出エレベータへ走り込む。「逃げるんですか!バカ!腰抜け!オナタカミ野郎!」そしてニンジャスレイヤーの罵声を背に、ギュグン!エレベータを上昇させ、シェルターから逃走した。
(((追うのだミフデ!)))ニューロン内でナラク・ニンジャが叫んだ。(((先のスリケンが飛んできた一瞬、奴からニンジャソウルの臭いがした。ハデス・ニンジャクランのカビめいた臭い……それも相当な高位ソウルぞ!奴の身の回りにキンボシがおる!)))ニンジャスレイヤーはイクサの高揚に駆られ、一瞬それに従いかけた。
『ニンジャスレイヤー=サン!早く自爆装置を!』しかしその時、インカムにチェミの叫び!ニンジャスレイヤーはハッとしてコンソールへ向かった。画面のUIを睨み、キーボードを操作して自爆中止コマンドを……
ブガー!『一定時間操作がなかったのでログアウトしましたドスエ』ナムサン!マイコ音声とともに入力欄がロック!その上ではカウントダウンが無情に進む!
「アーッ!?なんですかこれ!ファーック!」ニンジャスレイヤーは激しく動揺!『何のトラブルだい!?この端末を直結しな!』チェミの声!ニンジャスレイヤーは自分のIRC端末を取り出し、LANケーブルで自爆装置操作コンソールに直結した。
すると、コンソールの画面がひとりでに動き始めた。チェミが端末経由で自爆装置をハックしているのだ。入力ロックが解除され……自爆中止コマンドが……入力完了!パワリオワー!クリティカルな電子音声とともに、画面に「自爆中止な」の文字が点滅した。残り秒数は4.643秒!
「……アア」ニンジャスレイヤーはその場にへたり込んだ。安堵ゆえにだ。「ハーッ……」とたんに、疲労が全身に重くのしかかった。肩のニードルガン銃創、ボーンブレードに殴られた脇腹の打撲傷、さっきスゲンに撃たれたいくつもの銃創が強烈に痛み始め、脳をぐらぐら揺るがす。
『ニンジャスレイヤー=サン、お疲れだろうがもう一働き頼むよ』老ハッカーのしわがれた声が彼女を急かした。『まもなくベンテンの調剤が終わるから、40階に行って解毒剤を受け取るんだ。ヨロシサンの増援はまだ来ないようだから、ゆっくりでいい……転ぶんじゃないよ!』
【続く】