ギャリン!ギャリギャリギャリギャリ……!アイボリーカラスのカタナとニンジャスレイヤーのブレーサーを纏うチョップが接触し、擦れ合った。二つの凶器は互いに押し合う。2人のニンジャは互いに跳躍軌道を歪めて、空中で睨み合いつつすれ違い、「「イヤーッ!」」飛び離れた。
「イヤーッ!」「グワーッ!」その横ではグレイシャスがワイヤープラーのガードを弾き、強烈なボディーブローを叩き込んでいる!「イヤーッ!」続けざまのアッパーカット!「イヤーッ!」ワイヤープラーはとっさに自分から前へ倒れ込み、重力を味方として回避!敵のアッパーが頭頂部を掠める!
「イヤーッ!」そのままグレイシャスへタックル!「あらら〜!」グレイシャスはたやすく押し倒され……逆にワイヤープラーの腰のベルトを後ろから掴む!「あはは!イヤーッ!」そのまま倒れ込みながら敵の体を後方へ持ち上げ、投げ飛ばす!トモエ投げめいたムーブメント!
「ウオオーッ!?」ワイヤープラーはかろうじてウケミを取る!CRASH!!背中から叩きつけられた床に破壊エネルギーが拡散し砕ける!「イヤーッ!」グレイシャスがワーム・ムーブメントから側転へ移行し間合いを離していくのと入れ替わるように、マンホールめいた金属円盤が空中を舞って、ワイヤープラーの下へ降ってくる!
「ええい、クソッ!」ワイヤープラーはネックスプリングで跳ね起き、バク転!ZDOOM!先ほどまで彼の首があった場所に金属円盤がギロチンめいて着弾!「イヤーッ!」ワイヤープラーはさらにバク転!ZDOOOM!!降ってきたのはもう1枚の金属円盤だ!廃墟の床に突き刺さる!
「ハハハーッ!見たかワイヤープラー=サン!」イリジスタブルが遠くで円盤の方へ手をかざしている。彼が円盤をネンリキめいた力で動かしているのだ!「これが俺のマグネ・ジツよ!」
「キヒィーッ!」アイボリーカラスと入れ替わるようにニンジャスレイヤーを襲うのはミーターである。「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」油断ならない3連続のカラテ・コンビネーションだ!タツジン!
「イヤッ!」しかしニンジャスレイヤーは首を傾げて初撃を紙一重で回避し、「イヤッ!」逆側に半身になって2撃目を回避し、「イヤーッ!」そのまま水平回転して3撃目をかわしつつローリングソバットで反撃!踊るような攻防一体!「グワーッ!?」ミーターは横腹に強烈な蹴りを受け、たまらず連続バク転を打って間合いを離しにかかる!
「イ……」ニンジャスレイヤーは追撃すべくスリケンを構えたが、瞬時に全身の皮膚が粟立つ感覚を覚えた。死の予感。「……ヤーッ!」振りかぶる勢いそのままに、その場でブリッジを「イアイド!」その時!シャウトとともに、銀色の光が流星のごとく一直線に突っ込んでくる!
「グワーッ!」ニンジャスレイヤーはブリッジしかけた姿勢のまま右側へ吹き飛ばされた。SPLAT!右胸が浅く裂けて出血!アイボリーカラスの低空ジャンプからのイアイ斬撃だ。反応が間に合わなければ魚のヒラキめいて胴体をざっくり裂かれていた!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」その頃、グレイシャスとワイヤープラーは激しい飛び道具ラリーに突入していた。弾き、弾かれて、吹き抜け空間を飛び交う無数のスリケンとクナイ!月光の下で繰り返し炸裂する衝突の火花!
「ノシイカになるがいい!イヤーッ!」イリジスタブルがその横でマグネ・ジツを再発動!2枚の金属円盤が宙を舞って、広い面をぶつけにいく形でワイヤープラーを左右から襲う!両サイドから叩きつけにいくスクラップ攻撃だ!
「イヤーッ!」ワイヤープラーは横へ倒れ込みながら転がり、スリケンと円盤の同時回避を試みる。ガーンッ!彼の頭上で円盤同士がシンバルめいて虚しく激突する。しかしマスターニンジャのスリケンは甘くない!「グワーッ!」グレイシャスのスリケンがワイヤープラーの左腕を深く切り裂く!SPLAT!舞う血飛沫!
「ヌウーンッ!」イリジスタブルがドラヤキめいて重なった2枚の円盤を力任せに叩きつけにくる!「イヤーッ!」ワイヤープラーはネックスプリングで起き上がって回避し、「イヤーッ!」「イヤーッ!」グレイシャスが踏み込みざま打ち込んでくるカラテストレートをクロス腕ガードし、その反動でバックジャンプ!
「「イヤーッ!」」ニンジャスレイヤーとワイヤープラーは背中合わせで着地した。「やれるか」ワイヤープラーは振り返らぬまま小声で問う。ニンジャスレイヤーはコンマ1秒思考した。……強い。アイボリーカラスは間違いなく、彼女が現代に目覚めて以来これまで戦ってきた中で最強の敵である。
ミーターも、昨日戦ったサンファイヤーと同等かやや上程度の戦闘力はあろう。このまま2人を相手にしていたら勝ち目はない……しかし、ニンジャスレイヤーは頷き返したのだ。「やれますよ。もちろん」
「わざわざ私たちをここで迎え撃ったのに、逆転の秘策はないのか。拍子抜けだな」アイボリーカラスがベッピンを振るい、血糊を払う。不意に、ニンジャスレイヤーが黄金フロッピーを取り出し、「ワイヤープラー=サン」「ああ」ワイヤープラーに渡した。ザイバツニンジャたちが重要オブジェクトの移動に注目したその時……
音もなく、イリジスタブルの背後の暗闇が歪み、膝立ちのニンジャの姿が滲み出た。アイボリーカラスでさえ反応が遅れた。未熟なイリジスタブルは、何かがいる、とだけ思い、「アッ」呆けた声を出した。
「イヤーッ!」「グワーッ!」SPLAT!シャウトとともに、血が舞い……手首がボトリと音を立てて落下した。グレイシャスの右手首が。彼女は瞬時にイリジスタブルを庇う位置に移動しており、燃える目で乱入ニンジャを見た。乱入ニンジャは間合いを取ろうと「イヤーッ!」「グワーッ!」グレイシャスの左拳がその顔面にめり込む!
アイボリーカラスはグレイシャスに遅れて乱入ニンジャへ注意を向けた。その瞬間、ニンジャスレイヤーの方で何かが小さく光った……次の瞬間には、ニンジャスレイヤーはアイボリーカラスの至近距離に走り込んできていた。さっきいた場所からここまで、センコめいて細まり光る瞳で軌跡を描いて。
アイボリーカラスは遅れて反応し対応を「イヤーッ!」「グワーッ!」SMAAASH!!ニンジャスレイヤーはアイボリーカラスの顔面にカラテストレートを叩き込む!目の覚めるような逆襲のクリーンヒット!
「アイボリーカラス=サン!?」それを見て驚愕するミーターの横面に、「イヤーッ!」「グワーッ!」ワイヤープラーが踏み込みざま大ぶりのフックを叩き込む!首90度回転!
アイボリーカラスは鳩尾への衝撃でタタミ1枚分押しやられ、そこでどうにか体勢を立て直した。ニンジャスレイヤーはロケット弾じみて一直線に突っ込んできている。「イアイド!」アイボリーカラスはとっさに迎撃のイアイ斬撃を放った……放ってから、それが何の工夫もなく読みやすい対応であることに気づいた。ニンジャスレイヤーはジュー・ジツで敵の手を絡め取り、軸足を払った。
「イイイヤアアアーーーッ!!!」「グワアアアーッ!!」CRAAAASH!!!2人のニンジャの体が空中でトモエを描いた次の瞬間、ニンジャスレイヤーがアイボリーカラスを床へ叩きつけ、突き抜けた。暗黒カラテ技、ヘルホイール・クルマである!間欠泉のごとく巻き上がる粉塵!
「イヤーッ!」「グワーッ!」ワイヤープラーがミーターに大ぶりのフックを叩き込む!首90度回転!……次の瞬間、0度に回復!ミーターが一つ目フルメンポ越しに睨む!「調子に乗るなァ!イヤーッ!」「グワーッ!」ワイヤープラーに大ぶりのフックを叩き込む!首90度回転!
グレイシャスの右手首の断面からは鮮血がボタボタと流れていた。乱入ニンジャのアンブッシュ斬撃からイリジスタブルを庇った際のダメージだ。彼女は前もってイリジスタブルをカバーしやすい位置に立ち、彼の周囲の状況に気を配っていたため、唯一襲撃に反応できたのである。
彼女は自分の右手首を拾い上げ、腕の断面に元あったような形で押し付ける。「……イヤーッ!」そして、ジツを発動した。彼女の赤みがかった髪が早送り映像じみてズルズルと伸びて、その毛先が寄り集まって細い触手を形成する。蠢く。
触手たちは彼女の右腕へ這い寄り、肉食寄生虫じみて肉をブツリブツリと食い破り、右手首をあるべき場所へ縫い付けた。グレイシャスは歯を食いしばって激痛を堪える。メンポを外し、顔に噴き出した汗を拭う。その裏の素顔は笑っている。「いいね。いいよ。ケンカはこうでなきゃ」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」乱入ニンジャがイリジスタブルとのカラテラリーを制し、ヤリめいたサイドキックで吹き飛ばす。そして先手を打ってアイサツした。「ドーモ、はじめまして。リファイナーです」マザーワスプのドローンカメラがその姿をズームした。
【Avenger in love】
『誰だあいつは!?』画面の向こうでヘクターが目を剥く。『こうも真っ向からニンジャスレイヤー=サンたちに与してザイバツに楯突くなど、ソウカイヤ……いや傭兵か?』「しかし、フリーランスのうえに我々ザイバツと事を構えているchemy=サンたちが昨日からの短時間でニンジャ傭兵を雇うなどと……とても信用が足りぬはず」ルストレスも困惑を隠せない。
彼らは中継映像の向こう、リファイナーと名乗った乱入ニンジャを注視する。メタリックブルーのシャープなサイバネ装甲を纏うニンジャだ。背中から左右へ翼かテンビン棒めいてブーム展開された2つの大型パーツが不穏である。左側のそれにはニンジャソードが1本マウントされている。手にはもう1本の同じソード。
『データベースの照合完了しました』ラプンツェルが彼らのIRCチャットルームに新たなデータを共有表示した。ほとんどデフォルトのままのニンジャ・ワイヤーフレーム3面図がクルクル回転する。メンポと装束部分、横に添えられたカタナがチカチカ光る。
『リファイナー=サン。10年前のマルノウチ抗争に続くメガコーポ動乱期に、オナタカミ社のニンジャとして活動していた記録があります。当時の武器は何らかのハイテク・カタナ。5年前のオナタカミ解体時の動向は不明。以後、現在まで、ザイバツ系の企業やヤクザと散発的に交戦した情報がいくつか』
「オナタカミの企業ニンジャが、カイシャの倒産後、ソウカイヤ系の傭兵ニンジャに落ちぶれたといったところでしょうか」ルストレスは分析した。『ゴースト・オブ・オナタカミ!』ヘクターが舌打ちする。『このようなところで歯向かってくるとは。ワイヤープラー=サンたちに雇われたのでしょうが……元々奴らとの間にコネがあったのか?』
「考えがたいことですね。chemy=サンはザイバツ寄りのフリーランスだったはず……ムッ」中継映像で動きがあった。ワイヤープラーが吹き抜け内で高く跳躍し、2階へ逃れたのだ。ミーターがそれを追う。
『どうも嫌な流れですね』ラプンツェルがセンスで口元を隠しつつ言う。『敵も昨日の戦闘で……あるいは、そこから今日までのこちらの追跡の様子を監視していればその情報も含めて……ミーター=サンが情報収集役なのは気づいているとみるべきでしょう。彼がフロッピーを持つワイヤープラー=サンを追うと予測するのは容易い』
『そして、向こうに全く情報がないウチのグレイシャスたちはリファイナー=サンが対処する、と』ヘクターは辟易した表情だ。『完全に仕組まれたマッチングですな。もちろん、こちらが依然アイボリーカラス=サンとミーター=サンだけならば3人がかりで囲んで棒で叩くつもりだったんでしょうが』
中継映像ではリファイナーも1階で逃走を始め、グレイシャスとイリジスタブルがそれを追う。『……そして逃げる。迎え撃つ立場、地の利を活かしてのゲリラ戦だ。こちらは負けはしないでしょうが、はてさて、果たしてボネンカイまでに殺せるものか』
『なに、そこまで奴らの思い通りにさせはしません』ラプンツェルがパチンとセンスを閉じると、中継映像画面が4分割された。1つはこれまでと同じドローンの視点で、グレイシャス・イリジスタブルを追う。もう1つは上空からの視点で、モール廃墟を俯瞰している。残り2つは他のドローンの視点らしく、廃墟内をまっしぐらに飛んで移動している……どこへ?
『それぞれミーター=サンとアイボリーカラス=サンの下へ急行させています。そして、マザーワスプ=サンは単なる中継カメラマンではない……彼はジツでこれらのドローンを同時に操作し、ニンジャ同士の高速戦闘状況においても有効な火力支援を行えます。各戦場で数的優位を保てましょう』
「マザーワスプ=サンはあなたの部下でしたね。たしかに優秀なニンジャです……それに、奴らの作戦は合理的なようで、一つ致命的な失敗を犯しています」ルストレスは余裕たっぷりに微笑を浮かべた。「アイボリーカラス=サンとフロッピーを引き離してしまったことです。これで彼はフロッピーを紛失しないように戦う制約から解放されました」
CRAAAASH……。モールを俯瞰する中継映像に動きがあった。地下駐車場へ通じるスロープの入口から、破壊音とともに猛烈な粉塵が溢れ出したのだ。
「おや、もう始めたようですね」ルストレスは余裕たっぷりの微笑を浮かべた。然り。アイボリーカラスはただのマスター位階ではなく、ザイバツ・シテンノだ。特別扱いされるだけの理由がそこにはある……。