恋する復讐者◆暗黒の7日間   作:ボブ・ニンジャ

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ブレーク・ザ・ブレード:ベッピン#5/10

 

……時間は数分遡る。

 

「……なるほど」アイボリーカラスが粉塵の中から姿を現した。平然としている。先ほどのヘルホイール・クルマは完全に防がれたのか?……そんなはずはない。勝負を決めるには至らなかっただけ。そのはずだ。

 

「逆転の秘策は……あの3人目のニンジャは、ここまで温存していたわけか。あえて貴様ら2人だけで劣勢に戦った後、それを布石としてのアンブッシュ。リスキーだが見事な戦術……」「手負いの獲物がペラペラとよく喋りよる」ニンジャスレイヤーはピシャリと言った。いまだその片目はセンコのように細まり、輝いている。

 

2人はモール1階の床を貫通し、地下駐車場へと落下していた。カタコンべじみた全き暗闇も、ニンジャ視力ならば見通せる。点在する放置廃車。壁にスプレーで書かれた「バカ」「棒で叩く」の落書き。地面に散乱するバリキの空き瓶と古い注射器、ホムレスの生活痕。そして目の前の敵の姿。

 

「サンシタを何人引き連れて来ようが、こうなればオヌシは1人よ」ニンジャスレイヤーは押し殺した声で言う。ナラクとの共振によってこみ上げる無限の殺意を、暴れ馬を操るカウボーイめいて制御する。弱体化し、粗雑ながら封印された今のナラク・ニンジャが相手ならば、彼女でもそれができる。「この穴蔵がオヌシの墓穴だ」

 

「サンシタを何人連れて来ようが、云々……その言葉、そのまま返そう」アイボリーカラスはジゴクめいた視線にも全く怯まず、不敵に返答する。「貴様は後悔することになる。せっかく増援を確保しておきながら、この私を、周囲の状況に配慮する必要のない単純な1対1に持ち込んでしまったことを」

 

そして自らの銀のカタナを、騎士の敬礼めいて両手で正面に捧げ持った。「そして貴様は知ることになる。ザイバツ・シテンノのシテンノたる所以、この妖刀ベッピンの恐ろしさをな」その柄を、ねじる。上半分と下半分が180度ずれる。

 

キイイイイン。刃が震えて鳴く。キイイイイベッピンイイイイイイカヌライイイイイギンカクイイイイイニンジャイイイイイイニンジャコロスベシイイイイイイイイイニンジャ殺すべし!ニンジャ!ニンジャ!ニンジャ!』その響きはいつしか憎悪の言葉に変わっている。カタナが叫んでいる!『ニンジャ殺すべし!』

 

ドウンッ!刃が松明のごとく燃え上がった。その炎の色は赤ではなく、黒だ。不浄の黒い炎である。今までニンジャスレイヤーがイクサで用いてきたのとまったく同じ種類の、超常の炎である!

 

(((ヌウウウーッ!やはり!やはりやりおった!)))ニンジャスレイヤーのニューロンの中でナラク・ニンジャが嵐のごとく猛り狂った。「イイイイイ……!」アイボリーカラスは腰を沈め、ベッピンを真横に振りかぶった。ドウ!ドウ!黒炎が暴走するロケットエンジンのごとく断続的に噴出し、周囲の駐車場の壁や床を焼き焦がす。

 

(((あれは儂の力!ニンジャを叩き伏せて殺し尽くすための無限のカラテぞ!それを当のニンジャが……それもあのようなゴジュッポ・ニンジャクランのレッサー位階風情が用いるなどと!増上慢!実際屑めいたサンシタが何たる思い上がり!)))

 

(黙ってください!ナラク!)ニンジャスレイヤーはニューロン同居者の暴走を強引に抑えつけた。極度の集中により細まっていない方の目が血走る。間合いは遠い。敵はどんな攻撃をしてくる?どんな軌道で?

 

集中の海に沈むニンジャスレイヤーの脳裏に、フラッシュバックする記憶がある。ごく最近の、鮮明な記憶だ……ヨロシサンのニンジャ、ボーンブレード。長射程イアイドの使い手。アイボリーカラスも同じか?黒炎で刃を延長して斬りつけてくるのか?……ニンジャスレイヤーは状況判断した。そして、自分の次の一手を決めた。

 

「イイイイイ……!」アイボリーカラスのカラテチャージが臨界に達した。彼はついにベッピンを振り抜……かない。「ヤアアアアーーーッ!!」KA-BOOOM!!黒炎のロケットエンジンが火を噴いた。アイボリーカラスの姿が弾け飛ぶようにして消えた。

 

「イヤーッ!」CRASH!!「グワーッ!?」次の瞬間、苦悶したのは……アイボリーカラスだ!ニンジャスレイヤーはいつのまにか、その場で左手チョップを振り抜いた姿勢!彼女の右斜め後方へ吹き飛んでゆくアイボリーカラス!一体何が!?

 

読者の皆様がザイバツ・グランドマスターに匹敵するニンジャ動体視力の持ち主ならば、その超音速の交錯を見届けることができたであろう。その瞬間、アイボリーカラスは後方へ振りかぶったベッピンから黒炎を噴射し、自分の体をニンジャスレイヤーめがけ水平に射出した。そして小柄な敵の鳩尾めがけトビゲリを繰り出したのである。

 

実際、彼の手札にはボーンブレードのような長射程イアイドがあった。遠心力で押し固め、研ぎ澄ました黒炎をカマイタチじみて飛ばすワザだ。しかし彼はそれを採らなかった。動き始めてから、カタナを振り抜き、刃が飛び、敵に達するまでにタイムラグがあるからだ。中距離から牽制かカイシャクとして放つべきワザであって、重要な最初の一撃として用いるべきものではない。

 

むしろ最初の一撃は、手練れの敵であれば想定しうるその長射程イアイドを布石として、多少決定力に劣るとしてもそれを上回るスピードで繰り出すものであるべき。それがロケット・トビゲリだった。……ニンジャスレイヤーはそれを読んだ。右側に半身になってトビゲリを紙一重で回避し、その勢いのままに、すれ違いざま敵の右側面に左手チョップを叩きつけたのである。

 

もしもアイボリーカラスが長射程イアイドを選択していれば、その体は水平にスライスされていただろう。しかしそうはならなかったのだ。ニンジャスレイヤーが読み勝ったのである。……しかし、これでイクサの趨勢は変わったのだろうか?

 

アイボリーカラスは空中で体を捻り、「徐行で安全」と書かれた路面に着地した。怪我は増えていない。チョップはカタナでガードしたようだ。ニンジャスレイヤーは追撃しようとして、よろめいた。右胸から右肩にかけて黒炎がまとわりつき、その熱で彼女を苛んでいた。ロケット噴射黒炎がこびりついたか。左手で払う。ブスブスと燻って容易には消えぬ。

 

ひとまず差し置いて、アイボリーカラスに向き直る。その一瞬に、敵はすでに3回カタナを振り抜いていた。千切れ飛んだ黒炎の塊が3つ、刃と化して飛来する。ニンジャスレイヤーは対応しようとした。アイボリーカラスはすでにそれを読んだ行動を開始していた。……ザイバツ・シテンノを相手に、1度読み勝っただけでイクサの趨勢は変わったのだろうか?本当に?

 

【Avenger in love】

 

……同時刻、モール廃墟2階フロア!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」ガキン!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ガキン!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ガキン!

 

2人のニンジャは細長い吹き抜けを挟んで通路を並行疾走しつつ、立て続けにクナイ・ダートを投げ合った。クナイは次々に空中で衝突し弾け飛ぶ。ニンジャの一方は青装束のミーター、他方は銀装束のワイヤープラーである。

 

「ヒヒィーッ!驚いた!実際驚いたぞ!」ミーターはフルメンポの裏で引きつったような笑い声を上げる。「まさか貴様らが昨日からの短時間で傭兵を用意しておったとは。奴の身元はすでに組織が調べたぞ!リファイナー=サン、オナタカミの残党!マケイヌ同士気の合いそうなことよな!イヤーッ!」クナイを投げる!

 

「イヤーッ!」ワイヤープラーはクナイを投げ返す!ガキン!相殺!「驚いただと?貴様らの見通しは相当甘かったようだな。マケイヌのやることも予測できないお粗末な頭で、よくぞここまで俺たちを追ってこれものだ!お駄賃が欲しいか!イヤーッ!」クナイを投げる!

 

「ヒヒィーッ!」ミーターはクナイを投げ返す!ガキン!相殺!「でかい口を叩きおる!畢竟、さっきのリファイナー=サンのアンブッシュでこちらの頭数を減らせなかった時点で貴様らの負けよ!我々はいずれもグランドマスターの覚えもめでたい精鋭。まともに戦って状況をひっくり返せるものか!イヤーッ!」クナイを投げる!

 

「イヤーッ!」ワイヤープラーはクナイを投げ返す!ガキン!相殺!クナイの衝突点は先ほどよりもワイヤープラーに近い。押されているのだ……素のカラテの力量においてはおおよそ互角のようだが、ワイヤープラーには回復しきれない連日の負傷・疲労と、ついさっきグレイシャスに負わされたダメージがある。

 

「まともに戦って、だと?」しかしワイヤープラーは凶暴に笑った。カノジョと話している時のセンチメンタルな表情とは違う、狡猾なフリーランスニンジャの笑いだ。「俺はまともに戦いやしねえよ!まともじゃねえイクサの中で不本意に死ね!イヤーッ!」右手でラリーを続けつつ、左手をミーターのそばにあるソファの残骸に向ける。左手が蛍光グリーンに輝く。ジョルリ・ジツの発動だ。

 

とたんに、CABOOOM!!ソファは爆発した!「グワーッ!?」爆風に呑まれるミーター!「イェーハー!」ワイヤープラーは勝ち誇った。彼が事前にソファ内にバクチクを仕掛けておいたのだ!これを期待して最初の吹き抜け空間からここまで逃げ延びてきたのである。地の利は彼にあり!

 

ワイヤープラーは吹き抜けに渦巻く爆炎から逃れるようにして通路から横へ逸れ、テナントショップ「熱い貝」の廃墟へ走り込んだ。ファミリー向けの飲食店だったらしく、テーブル席が並んでいる。割れた食器がいくつも床に転がっていた。

 

ワイヤープラーは懐からバイオ包帯を取り出し、左腕の傷に固く巻きつける。痛みに顔をしかめる。ZBRを注射するか?否。ミーターを先の爆破で始末できたとしても敵はまだ4人残っており、戦いは長引くだろう。無理にブーストして途中でガス欠しては困る。

 

続けてヒョウタン水筒を取り出し、中のスポーツ・マッチャをあおろうとしたところで、妙な物音に気づいた。微かな、UNIXの冷却ファンのような音だ。「イヤーッ!」とっさに店の奥、仕切り板の向こうの席へ飛び込む。その判断が彼の命を救った。

 

直後、廊下を飛んできた武装ドローンが店の前に姿を現し、BRATATATATATATA!!機関砲で店内を薙ぎ払った!数秒前までワイヤープラーがいた位置が重金属弾の直撃を受けて大きく破壊される!

 

(ワッタファック!ありゃさっきのマザーワスプ=サンのドローンか?)ワイヤープラーは仕切り板の陰で身を縮めた。チチチチチ。ドローンは鳴き声めいた高い機械音を発しつつ、緑色の走査光で店内を撫でている。(最初の戦場からここまで追ってきたのか?そんな気配はなかった。となると複数機いるのか?)

 

ワイヤープラーは仕切り板の裏で食器の破片を拾い、明後日の方向へ投げた。チチッ!ドローンがそれを捕捉し、機関砲をそちらへ向ける。「イヤーッ!」その隙にワイヤープラーが物陰から転がり出た。ドローンめがけ両手を突き出す。「ジョルリ・ジツ!イイヤアアーッ!!」その手が発光し、彼の意識はドローンの制御系に接続し……01深く、引き摺り込01れ1011101……

 

……唐突に、ワイヤープラーは宇宙の中に放り出された。否、宇宙じみた広大な暗闇だ。緑色のグリッド格子の地平がどこまでも広がっており、自分はそこに立っている。(どこだ、ここは)そして、目の前に、黒と緑の縞模様の大きな昆虫がホバリングしていた。猛禽ほどのサイズがあるが、どうやら蜂である。(なんだこいつは?)

 

(……オカシイ!何かが深すぎる)ワイヤープラーはとっさにこの異常な空間から自分をもぎ離そうとした。両手がバチバチと緑色の火花を上げ、彼の論理肉体はワイヤーアクションじみて後方へ引き戻された。グリッド格子空間が遠ざかっていく。

 

蜂がそれを見た。蜂の背後から、眩い虹色の光が溢れ出した。光はグリッド格子の地平を舐め尽01し、ワイヤ10プ01110の体を0111010001……

 

「……グワーッ!」ワイヤープラーはたたらを踏んだ。周囲は暗い廃墟、テナントショップの店内。"戻って"きた。どこからだ?今のビジョンはなんだ?……チチチ!ドローンが機関砲をそちらへ向ける。「イヤーッ!」ワイヤープラーは考えるより早く、とっさに側転!BRATATATA!!遅れて機関砲の火箭が飛ぶ。

 

「クソッ!イヤーッ!」ワイヤープラーは鼻血を拭い、ドローンにクナイを投げた。ZZTTT!クナイは弾かれた。ぐらぐら揺れるドローンの周囲で球状に電光が走る。(バリアーか!?)ワイヤープラーは2本目のクナイを投げようとした。

 

「イイイヤアアアーッ!!」CRAAAASH!!シャウトと破壊音が響いたかと思うと、粉塵がワイヤープラーの視界を埋め尽くした。彼はとっさに左腕を掲げた。……粉塵を突き抜けてカラテパンチが飛んできて、その腕をへし折った。「グ……グワーッ!?」

 

「イヤーッ!」続けざま水平チョップが首を刎ねにくる!「イヤーッ!」ワイヤープラーは片手ブリッジで回避!続けざまの連続バク転で距離を取る。

 

「チイーッ!腕一本か!」粉塵の向こうから姿を現したのはミーターだ!ドローンからの情報で壁越しに敵の位置を把握し、壁を破壊してアンブッシュを仕掛けたのだ。先ほどの爆破のダメージで装束のあちこちが焦げ、その下の肌の熱傷も覗いているが、明らかにいまだ余力十分!「だがもはや長く逃れることはできまいて!イヤーッ!」踏み込みざま、薙ぎ払う回し蹴り!

 

「イヤーッ!」ワイヤープラーは跳躍して回避した。「ヒヒヒ!苦し紛れェ!」ミーターは素早く振り返り、着地際を狩るべくクナイを構える。ワイヤープラーは……「イヤーッ!」空中のドローンを蹴り、バリアーから飛び散る火花とともに、斜めに再跳躍した!

 

「何ィ!?」ミーターは慌てて敵を目で追った。「オタッシャデー!」ワイヤープラーはモール通路に着地して走り去る!「ちょこまかとォ!」ミーターが追う!再びニンジャたちはモール内チェイスに突入した!ドローンは踏まれた衝撃でぐらぐら揺れながらそれを追う!

 

その道中、「ステーキ荒野」なる看板を掲げたテナント飲食店廃墟があった。入口に木造の軒が作り付けられ、その下に馬の水桶や樽が置かれている。西部劇の酒場を思わせる意匠だ。

 

ワイヤープラーはその店内へ飛び込み、懐から拳大の円筒を取り出して「イヤーッ!」地面に叩きつけた!SMACK!たちまち閃光が走り、白煙が溢れた。スモークグレネードだ!

 

「アア!?」ミーターは遅れてそこに到着し、苛立ちの声を上げた。白煙は早くも店内を覆い尽くしており、ワイヤープラーの姿はない。潜伏したのか?「キヒィ……!いつまでもくだらん遅延行為を!俺には通じんぞ!」

 

ミーターはその場に屈み込み、床に手をついた。サイコメトリー・ジツで敵の行方を探し出そうというのだ。……その近くに、カウボーイの等身大人形があった。テンガロンハットを被り、ピストルを握っている。肩にはモーターが組み込まれ、腕が可動式になっているようで、往時はその動作で客を喜ばせたものであろう。

 

「イヤーッ!」テーブルの1つを跳ね飛ばして、その下からワイヤープラーが飛び出した!ミーターに空中回し蹴りを仕掛ける!『3時方向より敵inc』マザーワスプがミーターへIRCでアラートを飛ばす!「イヤーッ!」ミーターは屈み込んだ姿勢からそのまま床にうつ伏せになって回避!高度な連携!

 

「イヤーッ!」ワイヤープラーはその横に着地し、伏せる敵めがけストンピングを繰り出す!「イヤーッ!」ミーターはワーム・ムーブメントで転がって回避!「イヤーッ!」転がりながらクナイ・ダートを投げる!「イヤーッ!」ワイヤープラーは右手チョップで弾き飛ばしつつ、さらに踏み込む!

 

そして立ち上がったミーターめがけ、「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」3連続のカラテキックを繰り出す!「キヒィーッ!苦し紛れ!苦し紛れーッ!」ミーターは冷静にそれを防ぎ、あるいは弾いていく……おお、見よ!その横で、カウボーイ人形の腕が微かなモーター音とともに稼働する!ミーターの横面に照準を合わせる!

 

その銃はよく見れば今やハリボテのピストルではなく、強力なデッカーガンにすり替えられている。それが今、論理トリガで火を噴く!BRATATATATA!!「イヤーッ!?」ミーターはモーター音に反応し、とっさにブリッジして回避!(ワイヤープラー=サンがジツで操ったのか!?しかしそんな様子は……)

 

その思考が反応を鈍らせた!「イヤーッ!」ワイヤープラーはブリッジするミーターの股間めがけ、容赦なく前蹴りを繰り出す!ゴキッ!「グワーーーッ!?」ミーターは吹き飛び、床に転がった。起き上がろうともがくが、激痛で果たせぬ!「股間……股間グワーッ!」股間から血と体液が流れる!ナムアミダブツ!

 

「いいザマだ!今カイシャクを……」意気込むワイヤープラーに、ドローンが横から機関砲を照準!「クソッ!イヤーッ!」回避!BRATATATATA!!店内を薙ぎ払う銃火!カウボーイ人形はテーブルの陰に入ったミーターを狙えず、代わりにドローンを撃つ!BRATATATA!!ZZZTTT!!ドローンは不可視のバリアーで銃弾を弾く!火花が散る!

 

BRATATATA!!KBAM!ドローンが機関砲で反撃すると、人形は爆発して機能停止した。しかしワイヤープラーがその隙に回転ジャンプで空中へ躍り出て、「イヤーッ!」ドローンめがけ踵落としを振り下ろす!CRAASH!!バリアー貫通!ドローンはひしゃげて墜落し、KBAM!床で爆発!

 

「ファッキン・ドローンめ、やっと叩き落としてやれたぜ……」ワイヤープラーが着地してそのさまを見下ろす背後で、「キヒィーッハッハッハ!!」ミーターが奇妙な哄笑とともに跳ね起きた。ZBRアドレナリンの空アンプルを投げ捨てる。「ワイヤープラー=サン……ワイヤープラー=サン!貴様を殺してやるぞ!特別惨たらしく!」

 

「ハーッ……往生際の悪い!」ワイヤープラーは毒づき、そちらに向き直る。「イヤーッ!」ミーターが踏み込み、カラテパンチを放つ!「イヤーッ!」ワイヤープラーの反撃カラテパンチ!「「グワーッ!」」クロスカウンターめいて双方命中!今や地力が互角なら蓄積した疲労とダメージも互角のゴジュッポ・ヒャッポ!

 

「キヒィーヒヒヒ!」ミーターはカウボーイ人形の残骸の方へゴロゴロと転がり、その足元を見た。床に真新しいドリル穴が空けられており、そこを通じて、LANケーブルが人形から地下へ伸びていた。「キヒィーッ!」ケーブル先端を人形から引き抜く!

 

「野郎!イヤーッ!」ワイヤープラーがクナイを投げて妨害!「イヤーッ!」ミーターはケリでそれをはね飛ばし、ケーブルを自分のIRC端末へ接続した。彼の端末を支配するザイバツのネットワークが……グランドマスター・ラプンツェルが、カウボーイ人形を操作する回線の存在を認識した。

 

【Avenger in love】

 

「エイッ!」チェミはカウボーイ人形が破壊されるとすぐに直結を解除し、LANケーブルをデッキから引き抜いた。直後、KBAM!デッキが爆発!ラプンツェルのハッキング攻撃だ!「ウオオッ!?」ハンザワが驚きの声を上げた。

 

「ヒュウ。今死にかけたね、アタシ」チェミは不敵に口笛を吹いて言う。サイバーサングラスの裏からタラリと冷や汗が流れる。「……さあ、こうなりゃもうアタシたちにできることはない。出しとくれ」言って、ハンザワに後ろからしがみつく。

 

「おうよ」ハンザワはペダルをキックした。ドルン、ドルンドルンドルン……!サキハラ重工製の旧式バイクが唸りを上げ、マフラーからドス黒い排気を吐き出し始めた。ヘッドライトが灯り、トンネルの暗闇を照らす。すぐ横でドス黒い水面が光を受けて揺らめく。

 

チェミとハンザワはモール廃墟の地下駐車場のさらに地下、忘れ去られた地下水路トンネルの中にいた。彼らは今日の夕方まで地上でザイバツニンジャ迎撃準備に取り組んでいたが、戦闘開始が近いと察するや、ここまで降りてきたのだった。

 

2人の近くの壁面には地上へ通じる梯子が設けられている。その下に簡易的な金属ラックが置かれ、照明ボンボリと共に、先ほどのUNIXデッキが据えられている。そこから電源コードとLANケーブルが伸びて、梯子に沿う形で、地上へと向かっている。ごく簡易的な拠点だ。

 

チェミは先ほどまでここから有線LAN直結によってカウボーイ人形とその周囲の隠しカメラを制御していたが、人形は破壊された。もはやニンジャではない彼らが地上の戦闘に介入する方法はない。これ以上ここにいても、ザイバツに発見されるリスクが増すだけだ。

 

ドルンドルンドルン、バオッ、バオオオオン!ハンザワはアクセルを捻り、バイクを発進させた。エンジン音がトンネル内に反響する。2人乗りのバイクが疾走し、すえた臭いのする風が行き過ぎていく。

 

「おいバアさん!」ハンザワがエンジン音に負けない大声で問う。「あんた、ヨロシサンの時もこういう地下水路知ってたよな。なんで詳しいんだ?」「年の功さね!ウェーゲホゲホ!」チェミは誤魔化した。排気ガスに咳き込む。

 

「……あいつら、死なねえよな?ニンジャスレイヤー=サンたち」ハンザワは少し小声になって問う。「さあ?人事は尽くしたけど、敵がああまで大所帯だと、もう運だね」チェミは軽い口調で答える。「……でも、偏った出目の反動を期待するのはダメなギャンブラーのやることさ」

 

「ニンジャスレイヤー=サンはあのヨロシサン戦で死ななかった。ワイヤープラー=サンは私ともっとたくさんの修羅場を潜ってきた。なら今回も死なない方に賭けるよ、私はね……ゲホゲホ!本当にケムいなこのオンボロバイクは!」

 

バオオオオン……。二輪は残響を伴ってトンネル内の水際をひた走り、戦場から離れていく。

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