「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが渾身のチョップを振り下ろす!「イヤーッ!」アイボリーカラスはベッピンでガード!
CRAAAASH!!二つの凶器が激突し、衝撃波が粉塵を引き裂いた。ZANK!ZANK!二者は駐車場の路面を踏み締め、鍔迫り合いに入る。SMACK!吹き飛んだチャカ・ガンが遠くの壁に激突し、バラバラの部品になって散乱した。
「また驚かされたな。よもやこのレベルの戦闘中にチャカなど使うとは」アイボリーカラスはカタナ越しに敵を見やる。言葉とは裏腹に、その視線は低く沈んだ無表情である。「頼り切るのは論外だが、たしかに、不意に使ってこちらの調子を狂わせるにはいいかもしれん。しかしそれも、俺に反撃を通すには及ばなかったわけだが」
CRAAACK……。2人の足元から蜘蛛の巣状に亀裂が走った。双方、相手が武器を押し付けてくるエネルギーを地面に受け流しているのだ。亀裂はアイボリーカラス側の方が大きい……より無駄なく敵のカラテを受け流しているのだ。その肉体はほとんど負荷を受けずに済んでいる。
対して、ニンジャスレイヤーの四肢はミシミシと軋んでいる。彼女はすでに目に見えて満身創痍である。全身にいくつも裂傷と熱傷を受け、黒い炎が手足や背中に燃え移っている。彼女自身も体から新たな黒炎を発し、炎同士で対消滅させていくが、その速度は少しずつ衰えつつあり……
「イヤーッ!」アイボリーカラスが圧縮したカラテを解き放ち、ベッピンを強く押してニンジャスレイヤーを弾き飛ばす!ニンジャスレイヤーは弾き飛ばされながらスリケンを投げる!「イヤッ!」1枚!「イヤッ!」2枚!「イヤーッ!」3枚!
「イヤッ!」アイボリーカラスはベッピンを手先で切り返し、1枚目を弾いた。ドウン!ベッピンから黒炎が巨大バーナーじみて噴き出す!それを振り回す!「イイヤアアーッ!!」
KA-BOOOM!!黒炎は彼の正面で渦を巻き、たちまち直径2メートルほどの炎の竜巻と化した!2枚目と3枚目のスリケンはなすすべなく焼き尽くされ、払い飛ばされる!さらに竜巻は路面を砕きながらニンジャスレイヤーへ向けて猛進!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは全力の連続側転で回避!センコめいて輝く瞳が虚空にレーザーポインターめいた軌跡を描く。ニンジャスレイヤーは反撃に移るべく、「イヤーッ!」KA-BOOOM!!ナムサン!アイボリーカラスはすでに次の竜巻を放っている!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは全力の連続側転で回避!センコめいて輝く瞳が虚空にレーザーポインターめいた軌跡を描く。ニンジャスレイヤーは反撃に移るべく、「イヤーッ!」KA-BOOOM!!ナムサン!アイボリーカラスはすでに次の竜巻を放っている!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは全力の連続側転で回避!センコめいて輝く瞳が虚空にレーザーポインターめいた軌跡を描く。ニンジャスレイヤーは反撃に移るべく、「イヤーッ!」KA-BOOOM!!ナムサン!アイボリーカラスはすでに次の竜巻を放っている!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは半身になってのけぞり、竜巻を紙一重で回避した。黒炎が豊満なバストを炙るが、この際やむを得ない。こびりつく炎は自らの炎を育てて対消滅させる。無視できない体力消耗だが、これで先ほどまでよりも早くアイボリーカラスに向かっていける!反撃を!
アイボリーカラスは次の竜巻が間に合わないと見るや、黒く燃えるベッピンを顔の前に構え、「フーッ!」ニンジャ肺活量で思い切り吹いた。すると、BOOOM!!ナ、ナムアミダブツ!黒炎が噴出して前方の広範囲を焼き払った!なんたる即応近接防御!
「前から駐車」「エンジン停止な」の壁面表示が巻き込まれ、たちまちのうちに焼け焦げる。すわ、ニンジャスレイヤーも焼死したか!?
「イイヤアアーッ!!」否!黒い火の海の中から矢のように飛び出す人影を見よ!ニンジャスレイヤーである!上半身は下着姿だ。装束を脱ぎ捨てて火炎放射を逃れたのだ。下半身は脱ぐのが間に合わず燃えているが、この際やむを得ない!反撃の空中回し蹴りを放つ!
「イヤーッ!」アイボリーカラスは顔の前のベッピンを瞬時に側面へ構え直し、ガードした!ニンジャスレイヤーの脛当てとベッピンの刃が衝突!おお、なんたることか!またしてもアイボリーカラスにダメージ無し!
「イヤーッ!」「グワーッ!」押し返され、弾き飛ばされるニンジャスレイヤー!「イヤーッ!」BOOOM!アイボリーカラスが降らせてくる黒炎のメテオを、「イヤーッ!」着地際の連続後転で回避!KA-DOOOM!!メテオの着弾炎上を挟み、2人のニンジャは再び向かい合う。
「装束を脱ぐとはな。的確な対応だ。火炎放射を使うニンジャと戦う経験があったのか?」アイボリーカラスはひらりとカタナを返し、悠然と構え直す。「……しかしそれもこの通り、有効打にはならなかったわけだ。あといくつ残っている?奇襲のタネは」
ニンジャスレイヤーは答えない。それに消費する体力をも温存する。「シューッ……」低く、鋭く息を吐き、肉体に残るエネルギーをかき集め、練り上げる。下半身に負った熱傷の痛みを抑え込み、次のアクションに備える。
しかし、嗚呼!無情にもセンコの瞳が明滅し始めた。時折、ミフデ・シュノン自身の黒い瞳に戻るようになる。ナラク・ニンジャソウルのガス欠が近いのだ!ナラクの力を使っても目の前の敵に圧倒されているというのに、それが尽きたらどうなってしまうというのか!?
(((ミフデよ!もはや一刻の猶予もない、儂に体を渡すのだ!)))彼女のニューロンの中でナラク・ニンジャが絶叫する。(((これ以上消耗してからでは、儂に投げられてもどうにもならぬ!そうなればもはや全てが手遅れ!残るはジゴクへの一本道ぞ!)))
(嫌です)ニンジャスレイヤーはその求めをはねつける。思えば、トキシーと戦った時も同じような会話をした。今はワイヤープラーは側におらず、彼を直接的に守るためという動機はない。しかし今の彼女は、サンファイヤーたちとの戦闘を経て、自分の復讐心を明確に認識している。
(母さん、お爺ちゃん、ブンジ……家族を殺されたのは私です。ナラク=サン、あなたじゃない。だから私がやるんです。勝機はある!)
「勝機などない」アイボリーカラスが言い捨てた。「貴様がその"狙い"を達成したとしても、その時には他の全てを消耗しきっている。貴様の努力は無駄だ」そのどんよりした目はミフデの考えを見通していた。
「何ですって?」ニンジャスレイヤーのこめかみに血管が浮き上がった。「ニンジャが……ニンジャのくせに……知ったふうな口を聞きますね。私のやることに」その怒りは、考えを見通された驚きに誘発されたものだっただろうか?……そうだとしても。
(ナラク=サン、次で決めます。絞り出してください)(((ふざけるな!焦るでない!奴の思う壺ぞ!)))そうだとしても!(奴が隙を見せないのはもう十分わかりました。これ以上粘っても、その間にワイヤープラー=サンかリファイナー=サンが殺されるリスクしかありません)
(((他のニンジャなど勝手に死なせておけばよい!またしてもワイヤープラー=サンへの色気で判断を鈍らせるか!一番要らぬ部分だけ大人になりおって!愚かの極み!)))
ニンジャスレイヤーはもはやその罵声を無視し、睨んだ。アイボリーカラスを。彼が握る銀のカタナ、ベッピンを。(決めると言ったら決めます。「作戦」はたしかに進んでいる……元はと言えばあなたが命令したことでしょう、ナラク=サン。それを今から完遂するんです)
ニンジャスレイヤーとアイボリーカラスはタタミ5枚の距離を挟んで睨み合った。膠着は10秒、20秒と続く。直前までの戦闘音の残響が地下駐車場を木霊して、やがて消える。路面や廃車の上で燃える黒炎が微かにパチパチと音を立てているのが聞こえてくる。ニンジャたちは動かぬ。
今や2人とも集中の極みにあり、互いの目だけが見えている。アイボリーカラスのどんよりと暗い目。そして、ニンジャスレイヤーの殺意に燃える目。今、その目尻から血の涙が流れる。勝機はどこだ。ラクダを通せる針の穴は。
……フィイイイ。UNIX冷却ファンめいた微かな異音がその集中を乱す。音源を見る。柱の陰から、ホバリングする武装ドローンが顔を出している。マザーワスプのドローン。最初の吹き抜けから追ってきたのか?別の機体か?いつからここに?……そう思考する、微かな隙。
「イイヤアアーッ!」アイボリーカラスが先手を打って動く!BOOOM!!ベッピンが彼の左右へ大量の黒炎を噴出する!これまでの攻撃の何倍もの質量!余剰分が吹き飛び、晴れると、そこには黒炎で作られたブンシンたちが並んで立っていた。アイボリーカラスの左右に4体ずつ、計8体!全員、手に黒炎のカタナ!
(((ヌウウーッ!忌々しい!)))ナラクが恨み言を発する。次の瞬間、ニンジャスレイヤーの体に邪悪なカラテがみなぎった。ナラクが温存していた最後の力だ。センコめいた瞳が一際強く輝く。消えかけのロウソクが最後に明るく輝くかのように。
(((これで全部だ……!とにかくなんとかせよ……!)))ナラクの声は遠ざかる。邪悪なニンジャソウルは持てる力を出し尽くし、宿主たるミフデと共鳴する中で、彼女の自我の陰へと溶けていった。
(アリガト・ゴザイマス!)ミフデは内心で最オジギしてそれを見送った。そしてアイボリーカラスを見た。黒く燃え盛るベッピンを、大上段に構えている。左右のブンシンたちも、鏡映しめいて同じ構えだ。
ニンジャスレイヤーの主観時間が泥のように鈍化する。目の前のこの光景を見よ。次なる敵の攻撃を予測しなければならない……そのプロセスは、この地下駐車場で戦い始めた直後のロケット・トビゲリを巡る攻防と同じだ。あの時はニンジャスレイヤーが読み勝った。今回はどうだ?
再び、ボーンブレードとのイクサが脳裏にフラッシュバックした。何故だ?あのニンジャもタフではあったが、そのワザマエはアイボリーカラスには遠く及ばない。この極限状況においてあの戦闘経験に頼るのは危険なのでは?
……しかし、自分に他に頼るべきものなどあるのか?ナラク・ニンジャの経験はともかく、ミフデ・シュノン自身の戦闘経験は、12月25日から今日まで7日分しかないのだ。ましてイアイドー使いとのイクサなど、ボーンブレード戦以外には一度もない。
(私の手札は限られている。これが通用しなかったら、どのみち負けなんだ)ニンジャスレイヤーは覚悟を決めた。ボーンブレードとのイクサの記憶を解きほぐし、咀嚼して、目の前のアイボリーカラスが繰り出そうとしている攻撃を予測する。
……時間の流れが、戻ってくる!
「イイイイイーーヤアアアアーーーッ!!!」SLAAAAASH!!!アイボリーカラスがカタナを振り下ろす一瞬、彼はそれに先んじてすでにカタナを振り下ろし終わっていた。空間ごと切り裂かんばかりの亜光速斬撃である!不浄の黒炎が瞬間的なカラテの爆発にすすがれて銀色の閃光に昇華する!
KA-DOOOOOOM!!!閃光は路面を一直線に砕き割り、アスファルトを蒸発させながらニンジャスレイヤーへ迫る!
……それはつまるところ、切先から黒炎の刃を放つ長距離イアイドーの発展系である。しかしその速度と破壊力はまったく別の技といってもいいほど段違いだ。まもなく切られる、と思った箇所は、頭でそう考えた時にはすでに蒸発しているのである。そして大上段から振り下ろす一撃ゆえ、斬撃は縦に長く、跳躍によって逃れることはできない。
そしてワンテンポ遅れて、「「「イヤーッ!」」」黒炎ブンシンたちがカタナを振り下ろした。その1振り1振りから黒炎の長距離イアイドーが放たれた。アイボリーカラスがこれまで自分で放っていたのと同じ威力だ。これもまた縦に長い。
ブンシンはアイボリーカラスの左右に4体ずついる。それら全てが真正面へイアイドーを放った。これが何を意味するか?……アイボリーカラスの左右から、丸めたカーペットを転がしていくがごとく、帯状のキルゾーンが展開したのだ。
これまでこのワザを受けたニンジャは2人いる。1人目はアイボリーカラス本体の亜光速イアイドーに反応できず蒸発して死んだ。しかし2人目は特殊なジツでその初撃を予知して、片腕を失いながらも回避してみせた……その後どうなったか?
ジャンプ回避が通用しない以上、初撃を回避するということはすなわち左右のどちらかに避けるということを意味する。そして、それは左右どちらかの帯状キルゾーンに捕まることをも意味するのだ。ナムアミダブツ!なんたる回避不可能攻撃か!かの2人目のニンジャもブンシン体が放つイアイドーに切り刻まれて死んだのだ。
攻撃後の一瞬、アイボリーカラスは連なって飛んでいく長距離イアイドーの刃を無表情に見送った。妖刀ベッピンの力……元は眼前の敵、ニンジャスレイヤーのニンジャソウルの力。(しかし、俺はこの力を奴より上手く使いこなせている)見よ、このヒサツ・ワザ、ブンシン・イアイドを。一瞬の面制圧力ならば多くのザイバツ・グランドマスターをも凌いでいよう。
……凌いでいるはずなのだ。「何だと」アイボリーカラスは呻いた。目の前に、ニンジャスレイヤーが迫っていた。さっきと変わらぬ、センコめいて細まって輝く片目の瞳。左耳が溶けている。左腕は……ナムアミダブツ……肩口で溶断され、どこかへ吹き飛んでいる。しかし右腕は!
「イイイイヤアアアアアーーーッ!!!」ニンジャスレイヤーのチョップが燃え、虚空を焼き焦がしつつ迫った。アイボリーカラスは怯んだ。回避。間に合わぬ。ベッピンでガードを!
KRAAAAASH!!!ニンジャスレイヤーのチョップはベッピンの刃を折り砕いて、アイボリーカラスの横面を捉えた!「グッ、ワーーーッ!?」アイボリーカラスは滅茶苦茶に回転しながら吹き飛び、KRAAASH!!廃車のボンネットに背中から叩きつけられた。
このイクサが始まって以来、ニンジャスレイヤーの打撃は何回ベッピンに命中しただろうか?このカタナとて相当な強度を持っていたが、ダメージの蓄積と最後の渾身のチョップの衝撃が、ついにその耐久性を上回ったのである!カラテだ!
「グッワ……グワーッ!」ニンジャスレイヤーはうずくまり、体の両側面を襲う激痛にのたうち回った。その近くに、彼女自身の左腕がボトリと落下した。
……あの一瞬、ニンジャスレイヤーはまたも読み勝った。時間差での多重イアイドー。ボーンブレード戦で見たワザだ。もちろん速度も精度も攻撃範囲も、アイボリーカラスのそれが何倍も上である。しかしニンジャスレイヤーはその経験を応用する形で対応してみせた。
最初に襲いかかる、アイボリーカラス本体の亜光速イアイドー。ニンジャスレイヤーは避けなかった。体を少し右側へずらしただけで、結局、左耳と左腕を溶断されてしまったのだ。その被害はもしかすると、イアイドをまったく予測できなかった場合と大差ないかもしれない。
差があるのはその後だ。ニンジャスレイヤーはその被害を覚悟しており、衝撃を堪えて、前に進んだのだ。そしてこの時、ずらした体を元に戻した……すなわち、亜光速斬撃波の後方へ入り込んだのである。いかに左右がブンシン斬撃波で薙ぎ払われていようと、アイボリーカラスの真正面はその時にはもはや安全地帯である!
むろん、全て予測通りとはいかなかった。本体のイアイドからブンシンのイアイドへのタイムラグは予想よりもずっと短く、ブンシン・イアイドの余波で右半身をかなり焼かれてしまった。
ガランッ。ベッピンの柄側の破片がニンジャスレイヤーの足元に落下した。アイボリーカラスの手から吹き飛んだのだ。柄には"ベッピン・壱"と刻まれている。「ゼーッ……ハーッ……」ニンジャスレイヤーは荒い息をしつつ、血走った目でそれを見て、震える右手を伸ばす。
「……実際、大したものだ」嗚呼!アイボリーカラスが、立ち上がった!先ほどのチョップのダメージは左目から血を流しているのみだ。ニンジャスレイヤーの全霊のチョップもベッピンのガードに勢いを殺され、彼の頭蓋骨を破壊するに至らなかったのだ!なんたるイクサの無情か!
「まさか本当にベッピンを折られるとは思わなかった……しかしやはり、貴様はそのために他の全てを消耗し尽くしたようだな」そう言って、ワキザシ(訳註:予備の短剣のこと)を抜く。「ハイクを詠むか?それともその折れたベッピンで、最後の抵抗でも……」
バチッ。火花が光った。赤黒の火花だ。「……」アイボリーカラスは訝しんだ。バチバチッ。また火花だ。ニンジャスレイヤーと、彼女が握るベッピンの破片から迸っている。ニンジャスレイヤーがぶるりと身震いした。
「イヤーッ!」アイボリーカラスはとっさにスリケンを投げた。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは膝立ちになり、隻腕でベッピンを振るって払い飛ばした。バチバチバチッ!火花はいよいよ強まり、閃くごとに、ニンジャスレイヤーの体内に邪悪なカラテが漲っていく!枯れたオアシスが蘇るかのように!「スーッ……ハアーッ!」立ち上がる!
「こいつ……!?」アイボリーカラスは初めて焦りの表情を見せた。「イヤーッ!」踏み込み、ワキザシで切り付ける!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはヤリめいたサイドキックで迎撃!その鋭さ!「グワーッ!?」アイボリーカラスは脇腹を蹴られて吹き飛ぶ!
ドクン!ニンジャスレイヤーの鼓動がタイコめいて響く。「グ、グググ」ドクン!「グググググ……!」ドクン!ドクン!ドクン!「グワーッハッハッハッハッハ!!」ニンジャスレイヤーは哄笑した。両目がセンコのように細まって輝く!ナラク・ニンジャ顕現状態!
「バカな、貴様……」アイボリーカラスはウケミを取って立ち上がり、その異様な有様を見た。敵が発散する邪悪なアトモスフィアと潤沢なカラテの気配。そして今更、何が起こったのかを察知した。「……まさか!」
「そうだ!コワッパめが!」ニンジャスレイヤーはベッピンの破片を投げ捨てた。ガシャンッ!妖刀は壁に激突し、バラバラに砕け散る。もはや空の器だ。「このようなオモチャで弄びよってからに……返してもらったぞ!儂の力を!」中身はたった今、ナラク・ニンジャが吸収したのだ!
ナラク・ニンジャは昨日の戦闘をニューロンの奥から観戦し、分割された自分の……ナラク・ニンジャソウルの力の一部がアイボリーカラスのベッピンの中に封じられていることを悟っていた。ゆえにミフデに対し、「ベッピンを破壊しその力を回収すべし」という作戦を託していた。そしてその目論見は今、達成されたのだ!
ドクン!ドクン!ドクン!鼓動はまだ強まってゆく。「ほう、これは。一部とはいえ力が戻った直後というのは、思った以上に良い按配よ」ナラク・ニンジャは目を細めて笑い、アイボリーカラスを指差す。「コワッパ。オヌシはよくもまあ儂の力を、断りもなく好き勝手使ってくれたものよのう」
「何だと……」アイボリーカラスは圧倒され、もはや強気な口を聞けぬ。ドクンドクンドクンドクンドクン!ニンジャスレイヤーの鼓動は今やはち切れんばかりだ!「お返しに良いものを見せてくれよう。真の、ニンジャを殺す者のカラテを……!カーッ!」
ボウン!シャウトとともに、ニンジャスレイヤーの全身が黒く燃え上がった。メキッ、バキバキ、ボキン!黒炎の向こうから怪音が響く。全身の骨が折れて、破断部を鉄と硫黄が繋いで再構成する音だ。「グハハハハ……!」邪悪な笑いとともに、松明めいて燃える輪郭が伸び上がっていく。
……不意に黒炎が四散すると、もはやそこにローマ風白金装束の少女ニンジャはいなかった。そこにいたのは成人女性ニンジャだ。静脈血めいて赤黒い装束、黒鉄の防具。腰まである長髪を黒鉄の髪留めで一つに纏め、その穂先に松明めいて超自然の黒炎を灯す。メンポには恐ろしげな「忍」「殺」の文字……!
「さあ」ニンジャはセンコの目でアイボリーカラスを見た。「児戯は終わりぞ。ここからは真のニンジャの世界なり」
【Avenger in love】
「バカな!バカな!」ルストレスは画面を凝視し、我知らず立ち上がって叫んでいた。銀色の髪が奇妙にざわめく。「ニンジャスレイヤー=サン!?その姿は……バカな!こんなことが!」
『ハッハッハッハッハ!』ヘクターは笑った。前髪をかきあげ、その下の隻眼を爛々と輝かせる。『これはまさしくニンジャスレイヤー=サンだ!ルストレス=サンの仰っていた通りではないですか!どうやってこれほどの肉体の変化を!?滅茶苦茶だ!』
然り!今のニンジャスレイヤーの姿は、隻腕であることを除けば、まさしく2人の知る10年前の「ニンジャスレイヤー」のそれであった。すなわち、マルノウチ抗争直後に突如出現してソウカイニンジャもろとも数多のザイバツニンジャを殺害し、グランドマスターまでも手にかけた悪鬼である。
『イヤーッ!』『イヤーッ!』中継映像内でニンジャスレイヤーがアイボリーカラスに襲いかかった。ニンジャスレイヤーのカラテは隻腕となりながらむしろ別人のように冴え渡り、苛烈!アイボリーカラスも抵抗するが、彼もすでにいくらかのダメージを受けているうえに主武装のカタナも失っており、限界がある!
『イヤーッ!』『グワーッ!』『イヤーッ!』『グワーッ!』ニンジャスレイヤーが右拳で連続カラテパンチを叩き込む!『イヤーッ!』『グワーッ!』『イヤーッ!』『グワーッ!』連続カラテキックを叩き込む!まるでベイビー・サブミッションだ!
「ヌウウーッ!アイボリーカラスーッ!」ルストレスは絶叫した。「何をやっているかーッ!」すると画面の中のアイボリーカラスはその言葉を聞いたかのようにカッと目を見開き、『シテンノ!』ワキザシを鋭く繰り出して反撃する!
『Wasshoi!』しかしニンジャスレイヤーはその手をジュー・ジツで絡め取り、体を返して、アイボリーカラスを背負うように投げ飛ばしたのだ!イポン!『グワーッ!?』CRAAAASH!!駐車場入口スロープに激突バウンドして地上へ跳ね飛んでいくアイボリーカラス!
『グググ……!』ニンジャスレイヤーはそのさまを見て満足げに笑ったあと、溶断された自分の左腕を拾い上げ、肩の断面に押しつけた。ボウッ!ボウン!接続面から黒い炎が噴き出し、腕が電流を流されたカエルのようにびくりと痙攣した。その手が強張り、握って、放す。今や右手を離しても左腕は脱落しない!溶接のごとく接合したのだ。フシギ!
『イヤーッ!イヤーッ!』左手で何度かチョップを放つ。少なくともカラテする身体機能は元通りだ。それで十分!
不意に、カメラを睨む。モニター越しにグランドマスターたちをも射殺さんばかりの眼力である。『この気配、ハチ・ニンジャクランのオモチャか……こんなものを遠くから飛ばして粋がるとは片腹痛し。実際虫と同程度のサンシタの大道芸よ!イヤーッ!』
ニンジャスレイヤーの姿が霞み、カメラが激しく揺れたかと思うと、砂嵐になった。グランドマスターたちはもはや一言も喋らず、そのさまを黙って見ていた。