恋する復讐者◆暗黒の7日間   作:ボブ・ニンジャ

40 / 58
ヘブンズ・プレリュード#2/2

 

「私を殺す?それは違います」ニンジャスレイヤーは目を見開いた。「殺すのは私で、殺されるのはあなたです!イヤーッ!」そして足元の金属棒を拾い、高速回転落下してくるウォンバットめがけ突き上げた。適切な角度で、適切な箇所へ!ガツン!衝突!

 

「ハハーッ!そんなボーで俺の装甲は貫けんぞ!」ウォンバットは高速回転しながら勝ち誇る。「このまま押し潰してネギトロに……押し潰して……ヌウッ!?」しかしすぐに異常に気づいた。押し潰せぬ。落下が止まり、空中に固定されてしまっている!

 

(((何が起こっている!?)))ウォンバットはLAN直結しているリモコンを介して、周囲のドローンからのカメラ映像を確認した。……ニンジャスレイヤーが金属棒を突き上げ、回転するウォンバットを1点で支えて……棒の上で皿回し大道芸めいて回しているのだ!「バカナー!?」

 

「イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは棒を巧みに揺すぶり、ウォンバットの回転速度を加速!「グワーッ!ヤメロー!グワーッ!」ウォンバットはもはや自分の体勢をコントロールできず、仰向けのまま回されるばかりだ!遠心力で頭に血が上って視界が赤く染まる!

 

「イイイヤアアアーッ!!」ニンジャスレイヤーは金属棒を大きく振り、ウォンバットを横へ投げ放った!「グワーーーーッ!!」ウォンバットは高速回転しながら吹き飛び、積み上げられた物流コンテナの山に激突!ガラガラガラッ!「グワーッ!」破損したコンテナの中から何らかの金属棒が大量に溢れ出し、彼を打ち据える!

 

「ち、畜生……」ウォンバットは仰向けでもがいた。コンテナにぶつけた頭頂部から血がドクドクと流れている。「ハーッ……やっと、あなたの顔が見えましたよ」ニンジャスレイヤーが手に金属棒をぶら下げて近づいてくるのが見える。ドローンの映像ではなく肉眼の視界でだ。正面から近づいてきている。「ウォンバット=サン、ハイクを詠んでください……!」

 

「チイーッ……ナメるなよ……」ウォンバットはよろめきながらも立ち上がり、「小娘がーッ!」ZBAMN!!唐突に胸から火を噴いた。サイバネ指向性散弾!「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーはとっさにブレーサーで顔を庇うも、多数の散弾を体の前面に浴びて怯む!

 

「ナメるな!俺は無敵の拳法ウラオモテ・ケンの使い手!名誉あるザイバツマスターニンジャだ!」ウォンバットはその隙に再び背中を向け、鉄壁の構えを回復!シブトイ!「必ずや貴様の首は、我がグランドマスター・ヘブンズゲート=サンの下に持ち帰る!バックします!」そしてムーンウォーク接近!

 

「1人で勝手に盛り上がって、ベラベラと……」ニンジャスレイヤーは言い捨て、両腕のガードを下げた。ルビー色の瞳がギラリと輝き、迫る敵を睨み据える。「さっきのヒサツ・ワザで私を仕留められなかった時点であなたの底は見えました。特に聞きたい情報もありません……ハイクが要らないなら死んでもらいます」ボー・ドーめいて構えた金属棒が空を切ってヒュンと音を立てた。

 

「ほざけ!イヤーッ!」ウォンバットが右バックキックを繰り出す!「イヤーッ!」ガキン!ニンジャスレイヤーは金属棒を体の右側に立ててガード!「何!?イヤーッ!」ウォンバットは左バックキックで追撃!「イヤーッ!」ガキン!ニンジャスレイヤーは金属棒を体の左側に立ててガード!なんたる完璧な対応か!

 

「おのれーッ!イヤーッ!」ウォンバットは泡を食って両手の電気ジュッテを繰り出す!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは金属棒を水平にして投げつけた。金属棒が左右の電気ジュッテに接触し、電流が流れる!ZZZTTTTT!!!「グワーッ!?」閃光!火花が散り、ウォンバットは感電!インガオホー!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは間髪入れず飛びかかり、ウォンバットの装甲に包まれた後頭部を掴む!そしてそのまま押し倒し、装甲のない顔面を床に叩きつける!SLAM!「グワーッ!」ウォンバットはうつ伏せで苦悶!ひしゃげたメンポが吹き飛ぶ!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはウォンバットの後頭部を掴み上げ、もう一度叩きつける!SLAM!「グワーッ!畜生ーッ!」ウォンバットは鼻を砕かれながらも拘束を脱しようともがく!ニンジャスレイヤーは容赦なく三度叩きつける!「イヤーッ!」SLAM!「グワーッ!」

 

「イヤーッ!」SLAM!「グワーッ!」「イヤーッ!」SLAM!「グワーッ!」「イヤーッ!」SLAM!「グワーッ!」CLACK!床に蜘蛛の巣状の亀裂が入る!ニンジャスレイヤーは意に介さない!「イヤーッ!」SLAM!「グワーッ!」「イヤーッ!」SLAM!「グワーッ!」

 

「アバッ……アバッ」今やウォンバットはうつ伏せのまま顔面をむごく破壊されて虫の息だ。「イイイイ……」ニンジャスレイヤーはそれを見下ろすように立ち、跳躍!「ヤアアアアーーーッ!!」水平に伸ばした脚をギロチンじみて叩きつける!おお、これは伝説の暗黒カラテ技、ウチクビ・ドロップではないか!

 

SMAAASH!!「アバーーッ!!」命中!CRAAAASH!!!床が砕ける!ニンジャスレイヤーが反動跳躍で離れる一方、ウォンバットは床を貫通して薄暗い下階へ落下し、「サヨナラ!」床にぶつかると同時に爆発四散!KABOOOM!!「「「ピガーッ!!」」」同時に周囲のドローンも何らかのフィードバックにより一斉に爆発墜落!

 

ニンジャスレイヤーは床の大穴を前にザンシンし、深く息を吐いた。ザイバツニンジャ、ウォンバット。ソウカイヤの息のかかったメガロマンション「ネコソギ・パレス」の爆破・住民虐殺を企んだ邪悪ニンジャ。謎多きウラオモテ・ケンの使い手。油断ならない敵だった……だが殺した。

 

バラバラバラバラバラ……。外から何機ものオムラジャイロ社製ヘリコプターの飛行音が聞こえてきた。漢字サーチライトが降り注ぎ、ニンジャスレイヤーのいる物流ビルの周囲を貪欲に走査する。ザイバツの増援であろう。

 

今まではウォンバットのジツの巻き添えを喰らわないよう彼1人に戦闘を任せていたが、その死を知って遠慮をやめたものと思しい。ヘリのうちいくつかにはニンジャが乗っている気配。頭の奥で邪悪なニンジャソウルが新たな獲物の予感に喜び、打ち震えるのを感じる。

 

「……いいでしょう、受けて立ちます」ニンジャスレイヤーは飛来する鋼鉄の猛禽の群れを眺め、独り言ちる。CRASH!カラテで窓を破壊!「ザイバツニンジャ、殺すべし!イヤーッ!」復讐者は跳躍し、ネオサイタマの摩天楼の狭間に身を踊らせる!CRA-TOOOOM!!間一髪、ミサイルを撃ち込まれた物流ビルが背後で大爆発!

 

【Avenger in love】

 

タカマハラ・オムラ・カギコは最強だ。彼女は今をときめく女子高校生であると同時に、その有り余る才覚でもって暗黒メガコーポ「オムラジャイロ」社のCEOをも勤めている。弱冠17歳にして、生き馬の目を抜くネオサイタマ経済界において競合他社の老獪な経営陣と互角以上に渡り合っているのだ。

 

タカマハラ・オムラ・カギコは最強だ。女子高校の渡り廊下をゆく彼女の姿を見よ。カモシカめいてすらりと伸びる脚、ニーソックスの上に覗く太ももの肌は輝くように白く、ヒップからウエストへのボディラインは無個性なセーラー制服の下からでも吸い込まれるような魅力を発する。そしてバストは豊満だ。

 

「あら、ヤマウリ=サン。オハヨ・ゴザイマス」すれ違う女生徒を呼び止める。「アッ、タカマハラ=サン……」女生徒ヤマウリはカギコを見返したが、すぐに赤面して目を伏せた。……カギコは女神のように美しかった。すっきりと整った顔立ち、滑らかで血色の良い肌。ふさふさしたまつ毛の下のキャラメル色の瞳はたしかな自信と余裕に満ちて、ヤマウリに慈しむような視線を投げかけていた。

 

「その後、お祖父様の体のお加減はいかが?」「エッ?アッ」ヤマウリは一瞬呆気に取られたが、すぐに得心した。(私がお祖父様の体調が悪いと話したのを覚えていてくれたの?前に話したのは何ヶ月前?カギコ=サンは私なんかより何倍も忙しいだろうに!)

 

「エート、元気、元気です……!胃をサイバネにしたらしいので!」ヤマウリはしどろもどろになりながら答えた。カギコはにこりと微笑み、「よかった。わたくしも勝手ながら心配してしまっていたのです」「そんな、勝手だなんて!」「お祖父様を大切になさって」

 

カギコはヤマウリと別れて再び歩を進める。彼女の髪は濃茶と淡茶の二色で、左右をサイバー円盤髪飾りで留めている。髪飾りから下は縦巻きの強いカールがかけてあり、髪色と併せて、クロワッサンめいた印象を与えた。

 

生徒会室の扉は電子ロックされていたが、カギコが電子生徒手帳をスキャンするとたやすく開いた。彼女こそが生徒会長だからだ。始業30分前、人気のない生徒会室で、生徒やクラブから提出された申請書の山に順次目を通し、適切なハンコを押してゆく。可。可。可。不可。可。不可……。

 

作業の手はどんどん加速する。可、可、不可、不可、可、可、不可、可、不可、不可、不可。今や残像が見えるほどのスピードだ。それでいて内容に間違いは一つもない。人間業ではない……もはや読者の方々もお察しであろう。彼女はニンジャだ。

 

バタン!「イヤーッ!」その時、天井の秘密トラップドアが開き、新たなニンジャが降ってきた。そしてカギコの背後に着地するや、恭しくオジギした。「ドーモ、偉大なるオヤブン。ネヴァーラストです」

 

「ドーモ、ネヴァーラスト=サン。ヘブンズゲートです」カギコは振り返りもせず、平然と返答した。「オヤブンなんて呼び方はもうよしてと言ったはずでしてよ」

 

ヘブンズゲート!我々はその名前を知っている。ザイバツニンジャ・ウォンバットが、組織の最高幹部グランドマスターとして挙げた名前……然り。カギコの正体はザイバツ・グランドマスターなのだ。すなわち彼女は女子高生で、CEOで、ニンジャで、なおかつグランドマスターなのだ!

 

「グフフ、スミマセン」ネヴァーラストは大柄な男性ニンジャだ。指は何本かケジメされており、腰にドス・ダガーを差している……明らかにヤクザである。ヤクザのニンジャなのだ。「実は、良いニュースがありまして……シテンノのアイボリーカラス=サンの意識が回復したそうですぜ」

 

「それはチョージョーですわね」カギコは目を細める。「彼は去年の年末にニンジャスレイヤー=サンと戦い、重傷を負いながらも生き延びた……かのお尋ね者についてよく知っているはず。ぜひ一度話を聞いておきたいものですわ。先日私の部下のウォンバット=サンを殺したのもニンジャスレイヤー=サンのようですからね」

 

「ニンジャスレイヤー=サン……あっしはルストレス=サンから、奴は10年前にロードに殺されたものとアナウンスされてたんですがね」ネヴァーラストは鼻を鳴らした。「それが今になって実は生かしてありました、まんまと逃げられて暴れられてます、とは。いまだに納得いきませんな」

 

「無知な組織末端が抱く不安を取り除いて目の前の仕事に集中させるには、わかりやすいカバーストーリーを流布するのも一つの方法でしてよ」カギコは書類をたちまちのうちに処理し終え、ハンコを片付け始めた。「しかし今回は、その組織末端が抱く不安というものが実現してしまった形……ルストレス=サンは一事を完璧に仕上げようとするあまり他所に新しく面倒を作るきらいがありますわね」

 

ウィーン!「オハヨ・ゴザイマス!」電子扉が開き、生徒会書記のツガワが入ってきた。「あら、ツガワ=サン。オハヨ・ゴザイマス」カギコは聖母イコンめいた穏やかな笑顔でそれを迎えた。ツガワは生徒会室を見回す。「……アレッ、どなたかと一緒じゃなかったんですか?話し声が聞こえたと思ったんですが」

 

「あら、今朝はずっとワタクシ1人でしてよ。おかしなこと」カギコはとぼけた。ネヴァーラストはツガワが入ってくる直前に天井トラップドアへ姿を消していた。「話し声は私の聞き間違い……?あるいは」ツガワは制服のスカーフを口元に巻き、でたらめなカラテを構えた。「ギンホマレ七不思議の一つ、精神破壊ニンジャオバケの仕業ですか……!私は屈しませんよ!キエーッ!」

 

「ウフフ。冗談はおよしになって」「冗談じゃないですよ!本当に自我を破壊される生徒が出てるんですから!4組のクメタ=サンとか!」「あれはIRC中毒とお聞きしましたが……」「ところで申請書の処理は?」「もう済ませました」「エーッ!せっかくお手伝いしてカギコ=サンの好感度稼ごうと思ったのに」

 

……キンコーン、カンコーン。朝のHR開始を告げるチャイムが鳴った。カギコはすでに生徒会室から自分の教室へ移動し、着席している。「ハイ、皆さんオハヨ・ゴザイマス」小柄な中年女性教師が入ってきた。「「「オハヨ・ゴザイマス」」」女生徒たちが声を揃えて答える。ハキハキとしながらも淑やかさを失わない適切な声量だ。

 

彼女たちはカギコのような完全無欠の才女でこそないが、多くは小綺麗な外見で、気品を感じさせる所作である。カチグミ家庭の令嬢なのだ。ここはギンホマレ女子高校……ネオサイタマでも有数の教育レベルを誇るカチグミ向け高等教育機関である。

 

「エート、今日からこのクラスに転入生が来ます」女性教師が言う。「転入ですって?この高校そんな制度あったんですね」ツガワがカギコに後ろから囁きかける。彼女はカギコも同じクラスで、席はすぐ後ろなのだ。「どんな人でしょう。親の都合で引越してきたとかですかね?ドサンコかオキナワあたりから?」「もう、ツガワ=サン。詮索はハシタナイでしてよ」

 

ウィーン!電子扉が開き、転入生が姿を現した。カギコのような華々しさはないが、かなり整った外見の少女だ。ストレートの黒髪は長く美しい。バストも豊満だ。教師に促されて黒板に自分の名前を書き、アイサツする。「ドーモ、はじめまして。モリタ・ハナです」

 

おお、どうか読者の方々は今一度かの転入生に注目いただきたい。髪型を変え、瞳の色もカラーコンタクトで変装してはいるが、その顔立ち、体つき……まさしく我々のよく知るニンジャスレイヤー、ミフデ・シュノンではないか!

 

【ヘブンズ・プレリュード】終

(第2部「暴虐のヘブンズゲート」へ続く)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。