恋する復讐者◆暗黒の7日間   作:ボブ・ニンジャ

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ヴァーサス・タンク#2/3

 

ガチャン!「イヤーッ!」戦車上部のメインハッチを開けて、老ニンジャが体を乗り出す!ガチャン!「イヤーッ!」サブハッチを開けて、若いニンジャが体を乗り出す!

 

ガチャン!「スッゾー!」戦車下部のハッチを開けて、運転手クローンヤクザが体を乗り出す!「貴様は出て来んでいい!」「ハイ」老ニンジャが一喝し、ヤクザは車内に戻った。

 

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ザイバツ・シャドーギルドのギアレイヴンです」老ニンジャがアイサツを返す。「同じくサブメタルです」若いニンジャが続く。

 

ニンジャスレイヤーは鼻を鳴らした。「ニンジャは2人でしたか。反応が早いので1人はいるとは思ってましたが、複数いたとは予想外でした……なにせ、やることがバカの一つ覚えみたいに遠巻きに大砲を撃ってくるだけでしたからね」

 

「バカだとォ!?」サブメタルが青筋を立てるが、ギアレイヴンは冷静だ。「ほう。お主はそのバカの一つ覚えに腕一本焼かれているように見えるが、わしの老眼かのう……一応聞いておこう。いかにして我々の目を欺き、ここまで接近してきた?」

 

「簡単なことです」ニンジャスレイヤーは懐から携帯UNIX端末を取り出し、足元に放った。端末は血で赤黒く汚れていた。「アッ!そりゃあ、俺が観測員のヤクザに持たせた……!」サブメタルが驚愕のあまり口を押さえる。

 

「砲撃がやたらと正確なので、戦車に私の位置を通報している人がいるのはわかりました……おそらく視界が良い、高い場所にいるだろうと思って時計塔に登ったら、案の定でした」CRASH!端末を踏み壊す。「あとはこの端末で偽情報を流しながら走ってきたまでです。まんまと釣られてくれましたね」

 

ギアレイヴンは唸った。そもそも、廃村とこの高台との間には掩体のない荒野空間がある。敵が何の工夫もなくこちらに接近してくるならば、その空間で補足し、砲撃殺できるはずだった。

 

しかし、これまで自分たちは全員戦車の中に籠っており……だからこそハイペースな砲撃が可能だったが……視界が狭く、ニンジャ感覚によって敵の音や臭いを感じることもできていなかった。それゆえに、ひとたび偽の位置情報に集中したが最後、敵の接近に反応できなくなってしまっていたのだ。

 

「なるほど、的確な戦術よの。褒めてやろう」ギアレイヴンは思考を切り替え、泰然と応じる。「……しかし残念ながら、戦略スケールの結果への影響はない」

 

「そうだ!まさかこうして近づいただけで勝ったつもりになってるんじゃねえだろうな?」サブメタルが凄む。「俺たちがアウトレンジ砲撃を続けようと、近接カラテに切り替えようと、貴様が理不尽にひねり潰されることには変わりないぜ!」

 

「口で言うのは簡単です。試してみましょうか。理不尽にひねり潰されて死ぬのはどちらか」ニンジャスレイヤーは右腕一本でジュー・ジツを構える。「……ニンジャ、殺すべし」

 

状況はしばし膠着した。頭上で太陽が燃え盛り、巨大なオーブンの中に入れられているかのような暑さだ。たちまち、戦車から上体を乗り出したザイバツニンジャたちの額に汗が浮く。それに身一つで相対するニンジャスレイヤーはすでに汗だくだ。互いの姿はこの近さにも関わらず陽炎に歪んでいる。

 

メキメキメキ……。その横で、一本松が幹の半ばでへし折れてゆっくりと傾いていく。先ほどニンジャスレイヤーがトライアングル・リープした際に、幹を破壊するほどの衝撃が加わっていたのだ。

 

メキメキメキ……ズズン。一本松が地面に倒れ、乾いた粉塵を巻き上げた。その瞬間、「「イヤーッ!」」ザイバツニンジャたちが動いた!戦車から飛び降りたか?否!ハッチを閉めて戦車内に戻った!ヴォルルルン!戦車のエンジン回転が加速!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは地を蹴り、走った!戦車の側面へ回り込みつつ、装甲越しにでも車内を破壊すべく、大ぶりなカラテパンチを振りかぶる。

 

ギャルルルルッ!!瞬時に、戦車の左右のキャタピラが猛然と回転した。今度はニンジャスレイヤーが電撃めいた焦燥を覚える番だった。(((これは……敵は、単に大砲と装甲を頼みにして戦車に籠ったわけじゃない!)))とっさにヨコットビして回避行動を取る!

 

次の瞬間、おお、見よ!ギャロロローッ!!キャタピラ駆動音の沸騰とともに、戦車が巨大殺人コマじみて高速回転!さらに真横へ向けて弾かれたように急発進したのだ!ニンジャスレイヤーは重量70トンの重機械に回転轢殺されるところをあやうく免れる!

 

『ガハハハッ!よく避けたな、カンのいいやつめ!』車外スピーカー越しにギアレイヴンの笑い声!『ならば時間をかけてたっぷりと味合わせてやるとしよう。ワシのカラテ、"タンク・ドー"の恐ろしさを!』

 

ギャロロロローッ!見よ!今や戦車は車体全体がコマめいて回転しているだけでなく、砲塔までもが高速回転!残像が見えるほどのスピード!さながら巨人用ミキサーの回転刃か!?

 

『イヤーッ!』ギャロロローッ!そのままニンジャスレイヤーの方へ突進してくる!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはこの突進を側転で回避!ゴウッ!重量70トンの重機械が殺人的速度で通り過ぎていく音!

 

『まだだ!イヤーッ!』ギュイン!ギャロロローッ!戦車は突進が外れたとみるや否や、ピタリと移動を止め、次の瞬間には回避後のニンジャスレイヤーめがけ再発進した!特殊なキャタピラ制御と重心制御によりカーブ動作なしで方向転換が可能なのだ。蟹が横歩きせずまっすぐ前進してくるような理不尽!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは低くバックジャンプ!そして背後にあった一本松の切り株を踏み台にして、さらに高く跳躍して回避する!高速回転突進戦車は敵を捉え損ね、CRAAAASH!!!切り株をフガシか何かのように粉砕!

 

ニンジャスレイヤーは空中で姿勢を制御し、真下の戦車を見下ろす姿勢となる。右拳をカワラワリめいて振りかぶる。急降下爆撃じみた落下しながらの攻撃だ……狙うは戦車の回転の、軸となっている一点!(((ここなら回転の勢いに弾かれることはない。さっきのトビゲリに続いて、2撃目を入れる!)))

 

しかし、ニンジャスレイヤーが拳を振り下ろそうとしたその瞬間!「イヤーッ!」ガチャン!サブメタルがハッチを開け、車内から吹き矢で攻撃してきたのだ!

 

「ヌウーッ!?」ニンジャスレイヤーはとっさにカワラワリを早めに放ち、手甲で吹き矢を弾き返した。しかし結局攻撃できぬまま、虚しく戦車の後方に着地する。

 

『低能兵士めが!頭上の死角に対策せずにいると思うてか!』ギアレイヴンが勝ち誇る!ギャルルルン!戦車は派手に砂埃を上げてドリフトしながら停止し、主砲でニンジャスレイヤーを照準!『イヤーッ!』ZDDOOOOM!!!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは全力の連続側転で回避!砲口から噴き出してくる発射炎と榴散弾の嵐を辛うじて振り切る!そして戦車が再び回転し始める前に攻撃しようと、

 

「オットそこまでだ!イヤーッ!」ガチャン!サブメタルが再びハッチを開けて姿を現し、吹き矢を撃ってくる!「ヌウーッ!?」ニンジャスレイヤーは辛うじてブリッジ回避!しかしその間に、ギャルルルッ!戦車は再び回転開始!

 

「ウワーッ!振り落とす気ッスか、クソジジイ!」慌てて車内に戻るサブメタル!『若いならテキパキ動けい!イヤーッ!』ギャロロロローッ!!!再び無敵のミキサー刃状態となって襲い来る戦車!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはムーンサルトで回避!

 

(((愚かなり、ミフデよ……このようなサンシタどもを相手に手こずるとは))) 激しいイクサの最中、ニンジャスレイヤーのニューロン内に浮上してくる邪悪な影がある。彼女に憑依した謎のニンジャソウル存在、ナラク・ニンジャだ。

 

(((若い方の敵はオケラ・ニンジャクランのグレーターニンジャ……老いぼれの方はクルマ・ニンジャクランのレッサーニンジャか。タンク・ドー?児戯!イクサ場でこのようなカラクリ仕掛けのオモチャを乗り回して粋がるとは噴飯物なり。ドーと呼ぶのも実際馬鹿馬鹿しい)))

 

(((ナラク=サン、嫌味と悪口を言うためにわざわざ出てききたんですか?とっとと引っ込んでください)))ニンジャスレイヤーは現実世界で戦車の突進を回避しつつ、ニューロン世界ではナラクをつっけんどんに突き放す。(((見ての通り、あなたと違って暇じゃないんです)))

 

(((シツレイ!つけあがりも甚だしい。オヌシを死の淵から救って力を与えた儂に対して)))ナラクが恨み言とともに黒い炎を立ち上らせる。

 

(((オケラニンジャのドトン・ジツに警戒せよ。グレーター級ともなれば土に潜るばかりではない……用件はそれのみよ。タンク・ドーなど、オヌシが勝手になんとかせよ。よもやこのような荒れ野で、サンシタどもを相手に爆発四散なぞするまいな?)))

 

(((当然です。……ナラク=サン)))(((まだ何か用か?引っ込めと言ったのはオヌシだが)))(((ご助言、アリガト・ゴザイマス)))(((フン、オヌシがあまりにも不甲斐なきゆえしたことよ)))

 

(((とにかく、このセキバハラじみた灼熱ジゴクにはもうウンザリした。疾く片付けるのだ……)))ナラク・ニンジャはニューロンの水面に不快そうなさざなみを残して、精神世界の深淵へと沈んでいった。

 

『イヤーッ!』ギャロロローッ!!戦車の回転突進が迫る!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは回避!『イヤーッ!』ギュイン!ギャロロローッ!方向転換からの再突進!「イヤーッ!」なおも回避!

 

『敗残兵めいて逃げ回るだけか、ニンジャスレイヤー=サン!それでは遅かれ早かれ死ぬことになるぞ!』ギアレイヴンががなり立てる。……実際、戦闘が長引くことはニンジャスレイヤーにとって不利に思われた。

 

彼女はこれまで廃村で散々砲撃に追い回され、負傷もした。休憩する間もなくこの高台まで全力疾走して、その後すぐに近接戦闘が始まった……それもこの殺人的な猛暑の中で。もはやいつスタミナが切れてもおかしくない状態なのだ。

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケンを投げつけた!ガキン!戦車は装甲と回転力でたやすく弾き返す!『スリケンなど効くものか!イヤーッ!』ギャロロローッ!突進!「イヤーッ!」紙一重で側転回避!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケンを投げつけた!ガキン!戦車は装甲と回転力でたやすく弾き返す!『くだらん苦し紛れよ!イヤーッ!』ギャロロローッ!突進!「イヤーッ!」紙一重で側転回避!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケンを投げつけた!ガキン!戦車は装甲と回転力でたやすく弾き返す!『無駄なことだ!イヤーッ!』ギャロロローッ!突進!「イヤーッ!」紙一重で側転回避!

 

「ゼーッ、ハーッ……!」ついにニンジャスレイヤーの息が上がり始めた。目が血走る。これまで滝のようだった汗が減り始めた。熱射病の初期症状だ!3人目の敵ニンジャじみて攻撃を加えてくる灼熱の太陽!

 

しかし敵戦車の車内でも!「オゴーッ!」運転手クローンヤクザが長時間の高速回転に耐えかねて嘔吐!サイバネや薬物で強化された個体だが所詮非ニンジャではもはや限界!

 

「ギアレイヴン=サン!そろそろ決めなきゃッスよ!」サブメタルがそれを一瞥して叫ぶ!「よかろう!ゆくぞ、ヒサツ・ワザ!」ギアレイヴンが応じ、砲塔回転レバーと主砲を一際忙しく操作!

 

砲塔の回転がピタリと停止した。主砲の向きはニンジャスレイヤーとは逆方向!「俯角4度!ホノオ!」ZDDOOOOM!!!そのまま主砲発射!CABOOOM!!!戦車のすぐ後ろで砲弾が炸裂!ギャロロロローッ!同時に左右のキャタピラが火花を上げて全力駆動!

 

……ニンジャスレイヤーは人生で初めて、戦車の底面というものを見た。目の前で戦車が飛んでいた。主砲を後方へ下向きに撃った反動と、背後の地面で炸裂した砲弾の爆発力、そしてキャタピラの全力駆動により、70トンの鉄塊が軽やかにジャンプしたのだ!そのまま押し潰しにくる!

 

『死ね!ニンジャスレイヤー=サン!ワッフルめいて潰れ焼かれ死ねーッ!』ギアレイヴンが白い髭の下から泡を吹きながら叫ぶ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは右拳を振りかぶった!ZDDDOOOOOM!!!

 

【続く】

 




全2話の予定でしたが、全3話に延長させていただきます。
次回は明日の夕方に更新します。
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