異次元の逃亡者の息子に転生しました   作:読人不識

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お久しぶりの方はお久しぶりです、はじめましての方はよろしくお願いします。
リハビリがてら不定期更新出でも書き続けていけれべと思っております。

全く何も書けなかった時期から少し書けるようになったので頑張ります。


誕生編
生まれ変わった?


「そのまま行けぇーっ!!」

 腹の底から絞り出した声でターフを力走する馬たちに声援を送る。

 

 俺がなけなしの一万円分で三連単を買った馬たちが第三コーナーを回って馬群を引き離す。

 

 最終コーナーを回る頃にはもうこの三頭の勝負だ。

 興奮で俺は顔を真っ赤にしながら、激しく脈動する胸を抑え大声を張り上げる。

「1-6-9! 1-6-9!」

 と馬券で買った順にゴールしてくれるよう、祈るように呟いていると

 その祈りに応えるようにラスト200mで、二番手の馬が二の足を使って伸び始め先頭の馬を交わしたところでゴール! 

 

「やったぁっ!! 三連単3300万! これで一生喰いっぱぐれがねーぜ!」

 と早鐘の様に脈打っていた心臓に激痛が走る。

 息がつまり苦しいが声も出ない。

 頭の中では早鐘のように危険信号がなっている。

 

 まさかこんなところで俺の人生終わるんか? 

 馬券を握りしめながら前のめりに頽れる。

 

 俺の人生いつもこんな感じだよ、心から愛したサイレンススズカはこれからという所で亡くなったし……

 今度生まれてくるとしたらサイレンススズカが生きて活躍した世界に生まれてぇなぁ~。

 

 そんなことを考えていると世界が暗転し息が苦しくなる。

 

 そのまま意識が薄れていくと頭の方に薄い明かりが灯っているのに気が付いた。

 

 そちらの方に両腕を延ばす、と両腕をつかまれ。

 

「そぉれぇー!」

 何人かの男女の声とともに引っ張られた俺は地面に引きずり落されたような感触と共に光に照らされた場所に寝転ぶ。

 

 ここは天国? 

 

 そう疑問に思って周りを見回すと、垢抜けないおじさんやおばさん、爺さん婆さん、若い娘と共に俺を優しい目で見つめる一頭の馬がいることに気が付く。

 

 その馬と目があうと俺の脳裏に直感がひらめく、あの馬が母さんだ。

 

 ああそうか、俺は馬として生まれ変わったんだ。

 

 そう思うと四肢に力を込め、反射的に立ち上がろうとしてしてしまう。

 

 

 確かシンボリルドルフは生まれて20分ほどで立ち上がったらしいな。

 

 

 競走馬の世界は生まれた瞬間から過酷なふるいにかけられるような生涯だ。

 生まれ変わって状況も環境も何も分からんが、既に競争は始まっている。

 まずはシンボリルドルフの20分で立ったという記録を抜く! 

 競走馬として生まれたなら、生き残るために最大限の努力をせねば。

 

 そう思うと俺は勝手の分からぬ身体で試行錯誤しながら力を込めて立ち上がるべく努力する。

 

 周りで俺を見つめる牧場のスタッフであろう人々の口から

「がんばれ……」

 というつぶやきが聞こえる。

 

 その声に励まされながら力の入れ方を学び、前肢と後肢に力を入れ立ち上がる。

 

 周りから小さなどよめきと安堵の息が上がる。

 

 俺はそのまま母馬に近づき彼女のお腹辺りに本能のまま吸い付く。

 

 あ~ママンのおっぱいうめぇ~。

 

 

「シュケルの最後のコッコはいい塩梅のようだべな」

 母の乳を懸命に吸う俺の耳に牧場スタッフらしき人達の会話が聞こえてくる。

 

「立ち上がるまで15分ちょっとってのは大したもんだべ」

 お爺さんがそう言いながら同意すると、次々称賛の声が上がる。

 

「あのルドルフでも立ち上がるまで20分かかったって話だから、この子も先は無敗の三冠馬だべ」

 冗談めかしてそういうスタッフの声でその場が盛り上がる。

 

 あ~期待してくれるのは嬉しいけど過度な期待は控えて頂けるとありがたいのですが……

 

 ママンのおっぱいを吸ってると、ママンが俺の身体を舐めてくれる。

 何か安心するな、この牧場の人達もいい人達ばっかりみたいだし、頑張っていい成績残すぞ。

 

「しかし白毛か……」

 不安そうに男が呟く。

「サイレンススズカ産駒で白毛っていたっけ?」

 若い娘が周りに問う。

「いや、アメリカでも産まれてねぇべ」

 爺さんがそう返す。

 母の乳を吸って人心地ついていた俺の耳にその言葉が入ると反射的にそちらを伺ってしまう。

 

 今サイレンススズカ産駒って言わなかった? 

 

 俺はよちよち歩きながら物知りそうな爺さんに向かって歩くと、その手を舐めて話をせがむ。

 

 爺さんは俺と視線を合わせるようにしゃがむと

「お~めんこいコッコだ。どうした? お前の父ちゃんの話が聞きたいか?」

 と問いかける。

 

 俺は爺さんの顔を舐めて話を促すと、

「お前の父ちゃんはなサイレンススズカっていうすげー競走馬で、3歳までは実力を発揮しかねてたんだが、4歳からは宝塚記念、天皇賞秋、ジャパンカップ、有馬記念を勝って、5歳で天皇賞春、宝塚記念を制した後凱旋門賞を勝って有馬記念にも勝ってG1を8勝した日本屈指の名馬でな。その後アメリカで種牡馬をして何頭か良い馬を出した後、日本に戻ってきて種牡馬引退前にお前のおふくろさんに種付けして貰ったんだ。だからお前さんはサイレンススズカのラストクロップって奴だな」

 そう言って俺の頭を撫でながら、諭すようにそう話してくれた。

 

 サイレンススズカがこの世界では生きている! 

 それもG1を8勝もした名馬として、種牡馬としても成功という栄誉と共に。

 しかも俺がその産駒だと!? 

 これは父の名誉の為にも生涯無敗の三冠馬くらいは走らねば!! 

 

 前世俺が人生で辛い思いをしてた時、サイレンススズカの走る姿を見て勇気をもらった。

 彼の走る姿を見て俺は人生を投げ出さず生き続ける事を学んだ。

 

 彼は惜しくも怪我で予後不良となったが、この世界では生きて活躍してくれていたらしい。

 その産駒として生まれ変わったのならその名に恥じぬ走りをせねばなるまい。

 歴史に残る名馬として、その血を継ぐ者として、そういう機会を与えて貰ったのだ、この機会を与えてくれた何者かに感謝しつつ、弛まぬ努力を積まねばならぬ。

 

 俺にとってサイレンススズカというのはそういう馬なのだ。

 

 それにしても身体が重い……

 いきなり動き過ぎたか? 

 

 生まれてまだ一時間も経ってないはずなのによちよち動き回ったせいで疲れているのかもしれない。

 いくらサイレンススズカ産駒で頭は人間並みと言えど無理をしたら元も子もない、今日はゆっくり寝て徐々にトレーニングを積んでいこう。

 

 俺は母馬の元へ戻って顔を一舐めすると、寝藁の上に横になる。

 体力の限界だったのかすぐにまどろみに落ちるのだった。

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