新馬戦を戦った後、俺は美浦の厩舎に戻ったが、足の違和感が痛みを持ち始めたのを訴えるとすぐに獣医さんが来てくれた。
そしてソエと診断された俺は、美浦で手当てされた後ホーストレーニングセンターヤマネで放牧されることになった。
ホーストレーニングセンターヤマネでも、スタッフの人達が足を冷却して、治療してくれる。
うぅ迷惑かけて申し訳ない。
すまなさそうにうめき声をあげると
「大丈夫だ、すぐよくなるからな。また元気に走る姿を見せてくれよ」
分ったよ。
優しくそう慰めてくれるので了承の意味で声を出す。
どうやってもソエを治さなければ次にはいけないのだったら、手間をかけさせるのは申し訳ないが治療に参加してもらって、早めに治して復帰して活躍しなくちゃな。
俺はそう開き直って治療に専念するのだった。
◇◆◇
室内に二人の男と一人の女性、一人の老婆が対面でソファーに座って話しをしている。
「ではヤマネンアポロンのローテーションは朝日杯FSを目指すという事で、これで行きましょう。次に現在休養中のスズカマキシマムですが9/30の芙蓉ステークスで復帰後、東スポ杯2歳ステークス。その後結果次第でホープフルステークスを目指したいと思うのですが、いかがでしょうか?」
「それでお願いします。あなたもそれでいいわね睦月?」
竹林調教師がそう提案し、ヤマネホースクラブの代表である山根安子が次期代表である息子の睦月にそう確認する。
「問題ないです」
「ではその予定でスケジュールを組みます」
山根睦月がそう返し、主戦旗手を務める駿もそれに応じる。
「睦月、あの子の経過はどうですか?」
「痛みもだいぶ引いたようですが冷却を続けています。食欲も戻ってきてますし、もうしばらくしたら完治するかと思います」
「昔はソエを発症した馬は名馬の証だと言って祝ったりもしたんですが、今はそんな迷信よりもあの子が健やかに走ってくれる姿を見せてくれる方が、何ともありがたい事か……」
「新馬戦は圧巻の大差勝ちでしたからね。私は9番に入っていたシャンパンタワーに警戒していたんですが、マキシマムは杞憂だと言わんばかりの走りを見せてくれました。駿君もありがとう」
山根安子がマキシマムについて息子の睦月とそうやり取りし、竹林調教師がレースを総評して俊に感謝を示す。
「いえ、こちらこそマキシマムに乗せてくださってありがとうございます。あいつは重賞勝てるのは間違いないと思わせてくれる走りをしてくれたので、こっちが足を引っ張らないことだけ考えて乗ってますよ」
「マキシマムは賢い子だから彼にレースを任せるのは正解かもしれないわね。あなたの判断は間違ってないわ」
駿と竹林調教師が騎乗に関してそう意見を交わす。
「次走の様子を見てみないと何とも言えませんが、大きい所を狙えるかもしれませんね」
「私もあの子には期待してますので、竹林先生にはお手数をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いいたします」
竹林調教師が誇大にならないようにマキシマムを内心とは裏腹な控えめに評価するとヤマネ代表と睦月が揃って頭を下げる。
「来年の初夏にはヤマネの悲願を達成できるといいのだけど……」
「代表、来年の事を今から言ってては鬼が笑いますよ」
「でもマキシマムはそこをターゲットにしたい逸材ではありますね」
安子が一族の悲願を漏らすと、睦月がそれを揶揄するように押しとどめるが、竹林調教師が安子に同意するかのように口を添える。
「サイレンススズカは種牡馬としての最後にとんでもない仔を残してくれました」
安子がそういうと、一同がしみじみとそれに同意しため息をつく。
スズカマキシマムは活躍してもしなくとも周囲に心労をかける存在になってしまったようだった。
しばらく間が空くかもしれません、遅くなったらすみません。