異次元の逃亡者の息子に転生しました   作:読人不識

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何とか書けたのでアップします。


残暑の頃

 9月

 

 駿は夏休みの間牧童として散々走り回ってから帰っていった。

 

 その後俺の世話は瀬川さんと三姉妹、若手の牧場スタッフの石田さんが主に担当してくれるが、それ以外の牧場スタッフも総動員して世話をすることになったようだ。

 

 とはいえ9月に入ってすぐにママンとは引き離され、乳離れとなった。

 

 最初こそ戸惑った物の、すぐにいつもの生活サイクルに戻った俺と違って他の仔馬たちは不安げな鳴き声をあげていたが、

「ママンがいなくても人間いるから大丈夫だろ」

 と俺が一鳴きしたら、だいぶ落ち着いた。

 

 こちらのいう事は伝わってるのかね? 

 

 今日も運動して飯を食って一休みしてから運動をする。

 

 そのサイクルはママンがいた頃よりスムーズになったかもしれない。

 

 ママンには悪い事しちゃってたなぁ。

 

 そのママンは今年で繁殖を上がり功労馬として余生を過ごすようである。

 

 繁殖実績はないに等しいのだが、現役時に競争成績が良かったのでその待遇だそうだ。

 

 競争生活終えても競い合う生活は終わらないのだな……

 

 ちょっと切ない気持ちになったが馬になった以上は仕方ない。

 

 まずは産駒の心配より自分の競争成績だ。

 

 これがしっかりしないと産駒どころか最悪肉になる。

 

 それに打ち勝つために走り回ってるのだが、自分がどの程度の実力なのかさっぱり分からない。

 

 このホースパークには結構な数の仔馬がいるが、そいつらの駆けっこに混ざると俺は負けたことがない。

 

 だがそれでオーナーいや代々の悲願であるダービー制覇が出来るのか? と言えば疑問符しかない。

 

 俺はここまで実験と考察、他の仔馬の観察と三姉妹や瀬川さん達の意見や指導を受けて自分なりに最善の努力をしてきたつもりだ。

 

 だが他の牧場に俺をしのぐ才能の持ち主がいて、俺と同じかそれ以上に効率化された努力を積み重ねていたら? 

 

 勝負は時の運とはいえ、まともにやったら勝てない可能性の方が高い。

 

 逆に言えば俺が有利であっても、展開次第で負けてしまうかもしれないという事だ。

 

 サイレンススズカの息子が敗れるなどあってはならぬ! 

 

 俺の中で決意が燃え上がる。

 

 そしてハッと気づく。

 

 最初から速い馬がハナを切って走り終盤でさらに加速すれば負けないのではないか? 

 

 レース中一度も先行を許さなければ最初にゴール版の前を駆け抜けるのは俺だ、

 

 それは岳豊がサイレンススズカに騎乗したことで証明している。

 

 ならば問題はスタミナだ。

 

 少しでも速く、そしてそれを長く走る努力を積んでいこう。

 

 父の様に逃げて差す脚質で勝負をしよう。

 

 でなければ父を超えるのは無理だ。

 

 このホースパークには育成施設もあるらしく1歳からは馴致の訓練を行うらしい。

 

 ならばそこまでにどれだけスタミナをつけられるか、試してやろうではないか。

 

 俺の母父はトウカイテイオー、怪我さえなければ無敗の三冠を成し遂げていたであろう悲運の英雄だ。

 

 その血脈からくるスタミナにかけても、負けるわけにはいかない。

 

 少なくとも3200mを最初から最後まで先頭で走るつもりでトレーニングしなきゃな。

 

 当然レース中のペース配分などもある、だがそれは駆け引きのキャリアを積んだ後の話だ。

 

 当面の俺はただひたすら早く強い馬になるために努力するしかない。

 

 放牧されている間他の幼駒を煽って駆けっこを繰り返す。

 

 こいつらは俺の幼馴染だからな、全員が種牡馬は無理でも乗用馬になれるくらいには実績納めさせてやりたいし、駆けっこは駆け引きのシミュレーションにもなる。

 

 俺もこいつらにとってもwin-winな事だし、出来るだけ一緒に鍛えよう。

 

 こいつらの内何頭かが賞金くわえて帰ってきたら、生産牧場にもJRAからお手当出るはずだし、それが皐月の学費の足しになればみんな喜ぶ力こぶ。

 

『おらー! お前らの力はそんなもんか? 俺は一度も先頭譲ってねーぞ、トロいんだよお前ら!!』

 レベルが違うんだよと言いながら幼駒たちを煽り、丘になってる坂路モドキすら走らせる。

 

 かつてジャイアント馬場は自らの所属団体のレスラーに筋トレを課し、ヘトヘトになってからプロレスの技のトレーニングを受けさせたという。

 

 それが馬の育成に役立つかは分からないが、試してみる価値はあるだろう。

 

 ヘトヘトにへたばってからが本番です。

 

 それに一人で黙々と走り続けるより、競い合う相手がいた方がモチベーションが上がる。

 

『おら! 走れ! そんなんじゃ遅くて人間のご飯にされちゃうぞ!!』

俺の脅しを聞いて幼駒たちは必死で俺を追いかける。

 

そうして俺たちは毎日必死にトレーニングにいそしむのであった。




一章はもうすぐ終わると思います。
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