異次元の逃亡者の息子に転生しました   作:読人不識

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この話を持って第一章は終わりです。

オリジナル作品日間ランキング48位、週間80位に入りました!
応援ありがとうございます。


発見

 1月

 

 松の内の雰囲気などなく、相変わらずせわしなく走り回っている我が全日プロ式トレーニング軍団であるが、この冬からは昼夜放牧とか言うので飯時以外ほぼ外で寝起きしてたので、それにつれてトレーニング時間も大幅延長、軍団員も疲れて脱落するまでしごきまくったのだが、1月に入ってから数頭ずつ育成部門に連れていかれて馴致を行っている。

 

 連れていかれ始めてから間の空かぬ間に全員が育成部門に移動したので、キツネにつままれたような感じだが、今俺がいるところは育成部門の厩舎であり、俺が育った仔馬の放牧地ではない。

 

 そして口にハミをつけられたり、背中に布を乗せたりして馬具に慣れさせる訓練が始まる。

 

 正直ハミとか慣れない内はうざったくて仕方がない。

 

 だがこれに慣れないとダービーどころではなく競争にすら出られないだろうから大人しくされるがまま身につける。

 

 俺が馴致を受けている間、大人しくされるがままなのをいい事に背中に載せる物を布から馬具、そして鞍へとひょいひょい載せ替える。

 

 こちらとしても言いたいことはあるが、いかんせん言葉が通じないので抵抗せず次々と課題をこなす。

 

 元人間の俺にとっては人間は脅威ではないし、何ならフィジカルに関してはこちらの方が上である。

 

 だから余裕をもって接してる訳だが、そんなことを知らない牧場スタッフさん達は人に慣れている俺の馴致を見て逆に驚いているようだ。

 

 ”こんなに人に慣れ切った幼駒は見たことがない”

 って事らしい。

 

 俺の幼馴染たちも俺を見て人間を信頼してされるがまま馴致をこなすものが多い。

 

 中には警戒心を解けないものもいることはいる。

 

 確かに見知らぬものは怖いし不安もあるだろう、それに馬具だって付け心地が良い訳でもない。

 

 だから俺はそういう怖がりな幼馴染にあいつらが俺たちに乗る為に付けさせてやれと辛抱強く説得する。

 

 それからはそいつらも怖いのを我慢して馬具を身につけていく。

 

 やっぱり大事なのは信頼なのだろうな。

 

 

「今年の馴致は順調だね~」

 牧場スタッフのおじさんが言う。

 

「今年はボス馬が賢いから、この子が手本になってくれるから皆大人しく受け入れてくれるんだろうね」

 やや年配の女性がそう返す。

 

「マキシマム様様だべ」

 おじさんがお道化てそう言う。

 

 牧場のスタッフさんに少しでも恩返しができて俺も嬉しい。

 

 俺と放牧地で最後まで駆けっこを続けた仔馬であるヤマネンアポロンと言う奴が馴致の過程をかなり消化しているのだが、流石のアポロンもゲートには驚いたらしい。

 俺も驚いたし。

 

 ガシャンって音が不意打ちで起きるからびっくりしたよ。

 

 だが二回目からはタイミングを見計らってゲートから出馬した。

 

 人が乗ってても大丈夫。

 

 竿立ちになったりはしない。

 

 でもこれ外国とかに行ったらスタートのタイミング違うだろうから、スタートの時出遅れないか? 

 

 まだそんなこと考えてる場合ではないけど……

 

 俺とアポロンは馴致を順調にこなしているので、三月もしない内にほぼ全ての課題をこなしてしまった。

 

 そうなると日中暇なので、コースに出て育成が始まる。

 

 要するに今度は人が乗っての駆けっこである。

 

 それを見た幼馴染が羨んでいるようなので、お前たちも人間の言うこと聞いてればまた駆けっこ出来るぞと煽ったら次の日から全員が素直に馴致を行った。

 

 馬の鼻先にニンジン吊り下げて走らせるっていう言葉があるけど、あれがリアルで意味ある事なんだと二度目の生で実感した。

 

 比喩だと思ってたよ。

 

 そして牧場のスタッフさんに連れられて初春のホースパークを散策していると、俺はそれを見て衝撃を受ける。

 

 

 プールあるやんけ!? 

 

 

 俺は牧場のスタッフさんを引きずってプールに入れろと催促する。

 

 最初は対魔忍の様に抵抗していたスタッフさんも俺にしつこく要求され、仕方なくオーナーに許可を求めたところ、

 

「好きにさせてやりな」

 

 という黙認を勝ち取った。

 

 どうも育成部門は俺とアポロンの人への対応に戸惑っているようで育成スケジュールを組みなおしている最中だったらしい。

 

 だがそんなことは知る由もなく俺は小躍りするような軽い足取りでプールへ潜ると慌ててスタッフさんが手綱を引っ張る。

 

 どうしたん? 

 

 と問いかけるように不思議そうに小首をかしげると。

 

「溺れたのかと思った……」

 

 いきなり潜ったので心配かけてしまったらしい。

 

 俺は肺活量強化のために水泳をしようと思ってたのであって本来のプールの利用法などは知らない。

 

 だがこれから俺がプールに潜る度にスタッフさんが慌てても仕方ないので、今日徹底的に潜って泳ぐことにした。

 

 鼻で息を吐いて鼻で息を吸う、それから深く静かに水へ潜り必死に泳ぐ。そして息が苦しくなったら浮かび上がり息継ぎをする。

 

 それを繰り返す。

 

 プールから帰る頃には顔面蒼白になりながらも溺れている訳では無いという事を分かって貰えたようで、それから毎日プール通いを始めた。

 

 暑い季節もプールでトレーニングしたらいい感じに過ごせるかもしれない。

 

 そんなことを考えながら二歳の春まで育成部門で心身を鍛えたのだった。




第二章以降はストック溜めてから開始したいと思いますので、しばらくお待ちください。

感想、評価などいつもありがとうございます。執筆の励みになり助かっております。
これからもよろしくお願いいたします。
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