Muv-Luv Tactical Surface Fighter Variation   作:オデ オマエ マルカジリ(CV:戦車級)

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本SSは戦術機化されていない航空機の中から、戦術機になったらどうなったのだろうか? を元に書いた駄文です。
各章は【戦術機の紹介】を一話として【その戦術機の活躍(?)】を数話という構成になっております。


Episode.1
【MiG-21 MFN】


 

 

 

 BETA、人類に敵対的な地球外起源生命。

 

 一九五八年に火星にて初めて観測されたそれは、一九六七年、月面サイクロボスコクレーターにて初接触。

 以降人類とBETAは戦争状態に突入した。

 BETA大戦の勃発である。

 

 一九七三年、新疆ウイグル自治区喀什(カシュガル)へBETA降下ユニットが落着。

 人類とBETAは地球上で戦闘状態へと突入した。

 圧倒的な物量を誇るBETAの侵攻は留まる所を知らず、光線(レーザー)級の出現によって航空戦力を封殺された人類にこれを押し止めることはできなかった。

 

 一九七四年。

 アメリカにて世界初の戦術機『F-4 ファントム』が開発される。

 戦術歩行戦闘機────戦術機と呼ばれるこの新兵器は、高機動かつ三次元的な機動が可能であり、対BETA戦における効果的な対抗手段として広く普及していくことになる。

F-4は世界中に広く供給されたがその多すぎる需要を満たすことはできず、世界中で開発が盛んに行われて行くようになった。

 

 

 

 一九七四年に開発されたF-4を寒冷地用に改修したソビエト連邦によるライセンス生産モデルF-4R。これを徹底的に軽量化、機動力と運動性を強化、高い近接格闘戦能力を付与したのが『MiG-21 バラライカ』である。

MiG-21は一九七五年にミコヤム・グルビッチ設計局によって生産・配備が開始され、またたく間に東側の主力戦術機として東欧諸国でもライセンス生産が開始された。

 本機は世界で最も成功した戦術機の一つとして知られ、BETA大戦初期からF-4、『F-5 フリーダムファイター』と共に今日まで人類の戦線を支えてきた名機である。

 膨大な戦闘記録を元にMiG-21は改修を重ね続け『MiG-21 bis』で一つの完成形を迎えた。

 

 

 東側を構成していた東欧の共産国家群は一九八四年迄に、西進するBETAによって国土を追われ、欧州の地を離れグリーンランドやアイルランドへと亡命することになる。

 シベリアへと追いやられて行く東側の盟主ソビエト連邦との距離が物理的に離れて行き、一九八五年にソ連の政府機能等が租借したアラスカへと移転されると、欧州に残るワルシャワ条約機構加盟国は東ドイツを中心に『東欧州社会主義同盟』を結成。祖国奪還に向けて欧州連合と共同歩調を取るようになってゆく。

 連合を組んだとはいえ、度重なる敗戦での損失は補えきれず、東欧諸国はそれぞれ軍備拡張を勧めてゆく事になる。

 そんな中で一九八八年にルーマニアから提案されたのが『MiG-21統一規格化計画』である。

 東側で広く運用されたMiG-21であるが、各国でライセンス生産された結果、規格がまちまちで整備性、互換性に問題があった。

 これを各国統一規格へ変更・改修しようという計画である。

 MiG-21の規格問題は各国共通の悩みでもあった為、計画は受け入れられた。

 しかし、計画は直ぐに行き詰まることになる。

 原因はチェコスロバキアが提案した『規格の西側化』であった。

 東欧州社会主義同盟加盟国その全てが、政府機能を西側のグリーンランドやアイルランドに移転させている現状、規格を北大西洋条約機構(NATO)規格に合わせる事で、西側とのより強力な連携と整備性向上を狙ったのである。

 同時にチェコスロバキアには、この機会に脱ソ連を図る政治的意図も含まれていた。東へと逃げていくソ連を見限る動きがこの時期から東欧では活発になってゆく。

 あくまで東側規格で統一するルーマニア案と新規に西側規格に統一するチェコスロバキア案が対立。ルーマニア案にはルーマニア、ブルガリアが賛同。チェコスロバキア案にはチェコスロバキア、ポーランドが賛同。どちらも譲ること無く議論は並行線であった。

 そこへ政治的影響力を維持する為に欧州へ派遣されていた在欧ソ連軍が介入。ルーマニア案を支持し、採択を強行に迫ったことでチェコスロバキア、ポーランド、東ドイツが計画からの脱退を宣言。

 対立候補が無くなったことでルーマニア案が通るも、当初の目的であった東欧州社会主義同盟全体での統一規格化が成される事は無くなった。

 一方でチェコスロバキアは自国のS-106*1を西側規格に改修する計画を独自で進め、自国の案を続行した。

 そんなチェコスロバキアに接近したのが東ドイツである。

 一九八三年のクーデター以来、西ドイツとの東西融和を初めとし、西側に接近していた東ドイツは、更なる関係強化へと繋がる可能性があったチェコスロバキアの改修案に乗り気であった。

 こうしてMiG-21改修計画『Reinkarnace計画』がチェコスロバキア、東ドイツ、ポーランド、そして独自路線を行った欧州連合唯一の共産国ユーゴスラビアによって開始された。

 

 『Reinkarnace計画』では各種パーツの西側規格化に加え、センサー系や通信装置、火器管制装置等も高性能な西側製に更新し、基本性能の向上も計画された。

 また、基本OSの更新と処理速度の向上等、ハード面だけでなくソフト面でも能力向上が計られる。

 東ドイツの技術者を中心に、一九八九年には試作機が完成、テストを開始した。

 順調に進んでいた改修計画であったが、ストップがかかる。

 困惑する開発チームに告げられたのはコストの問題であった。

 新規に西側製品を導入したことによる高額な改修費用、ランニングコストの増加、改修期間が長期に渡る等の理由から開発を修正する様に指示がきたのだ。

 人員も装備も大半を喪失した東欧州社会主義同盟は少数精鋭を目指さざるを得ず。少数運用であるならば高コスト機であっても性能を重視すべきとの声も挙がったが、少数運用であるなら高コストな第一世代改修機を使うよりも高コストな第二世代機を運用した方が良いと真っ当な反論を受け沈黙した。

 余談ではあるが、これを契機に東欧州社会主義同盟は『MiG-31 ブラーミャリサ』のライセンス生産権を取得。更には同機をベースに西側技術を多数導入した『MiG-31M フォックスハウンド』を開発する事になる。

 結局、『Reinkarnace計画』は修正され、西側規格への統一、一部西側装備の導入とOSのアップデートに留まった。

 こうして完成したのが『MiG-21 MFN』である。東ドイツでは非公式の愛称として『ノイエ・バラライカ』や『ヴェスターバラライカ』等と呼ばれた。

 

 MiG-21 MFNは計画に参加した各国で改修と生産が進められ、ソ連製第二世代戦術機『MiG-29 ラートスチカ』の導入が決定される一九九五年まで各国軍における中核を担い続けた。

 

 

 

*1
チェコスロバキアでライセンス生産しているMiG-21の名称




○元ネタ解説
【MiG-21 MFN】
チェコスロバキアで運用されていたMiG-21 MFを、チェコ独立後にNATO仕様に改修した機体。
二〇〇五年まで運用されグリペンへと代替された。
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