Muv-Luv Tactical Surface Fighter Variation   作:オデ オマエ マルカジリ(CV:戦車級)

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本SSは戦術機化されていない航空機の中から、戦術機になったらどうなったのだろうか? を元に書いた駄文です。
各章は【戦術機の紹介】を一話として【その戦術機の活躍(?)】を数話という構成になっております。


Episode.3
【Su-25】


 

 

 

 一九七八年。ソビエト連邦軍は新しいタイプの戦術機の開発を指示した。

 従来のソ連製戦術機は密集近接戦を重視した思想で設計されていたが、真逆の思想を持った長距離砲撃戦性能が要求される。

 戦術歩行襲撃機(シュトュルモヴィーク)とソ連で呼ばれるこのタイプの戦術機はアメリカの『A-10 サンダーボルトⅡ』と同じ戦術歩行攻撃機であった。

 BETA大戦勃発以来、BETAとの戦闘に明け暮れてきたソ連軍であるが、敗戦に次ぐ敗戦の結果、戦力とりわけ装備の喪失が深刻化しつつあった。

 多数の兵器を備蓄・モスボール保管していたソ連軍ではあるが、疾走するBETA群が一度前線を突破すれば戦車や火砲の多くが犠牲となり、その損失は各種兵器の生産・再生速度を上回っていた。

 またこの時のソ連軍の戦術ドクトリンは戦術核兵器による焦土作戦が基本であり、火砲等の兵器は放射能汚染下においての展開能力が劣っていた。

 ソ連は放射能汚染下に置いても運用可能かつ、高い機動力と展開能力を持つ戦術機を、新たな火力プラットフォームとして目をつけたのである。

 こうしてソ連軍はスフォーニ設計局、ヤクヴレニフ設計局、イリュージン設計局に対して以下の要求を満たす戦術機の開発を命令した。

・長距離砲撃戦能力。

・面制圧能力。

・放射能防護性能。

・重金属雲下での通信能力。

 開発競争の結果、スフォーニ設計局のSu-25がイリュージン設計局のIl-102を破って採用された。スフォーニにとっても悲願となる正式採用であった。

 Su-25は一九八一年から生産・配備が開始され、愛称はロシア語でミヤマガラスを意味する『グラーチュ』とされた。

 

 

 

 『Su-25 グラーチュ』は全体的にずんぐりとした印象を持たれる機体であった。

 全高は『MiG-21 バラライカ』と大差無かったが、大型の肩部ハードポイントや反動の強い武装を運用するために四肢が大型に設計されていた為である。

 本機の特徴は肩部に計四ヶ所、下腿部に計二ヶ所、合計八ヶ所のハードポイントと新規規格のБ-81兵装担架システムである。

 このБ-81兵装担架システムはオーバーワード式とダウンワード式のガンマウントをそれぞれ二基づつ装備していた。

 また、もう一つの特徴として、跳躍(ジャンプ)ユニットにターボジェットエンジンを採用している。このエンジンは従来のジェット燃料の他にガソリンや軽油、アルコール等が燃料として使用することができた。

 前線への火力支援を目的に設計された本機は、重金属雲影響下でも長距離通信を確立する為、高出力通信装置と大型ブレードアンテナを装備。

 射程距離の異なる複数の武装を運用できるように火器管制装置(FCS)は複数搭載され、砲兵用の長距離射撃統制システムも搭載されていた。

 その為、頭部も大型化してしまっている。

 脚部脹脛には反動制御用の駐鋤(スペード)が格納されており、この第三の足とでも言える代物はロケット斉射時に展開して使用された。

 

 Su-25は多彩な武装を同時展開可能であり、運用可能兵装の種類は他のそれとは一線を画していた。

 運用可能兵装は以下の通り。

四十連一二二ミリロケット砲(2B5)

 BM-21(グラート)の物と同様のロケット砲システム。肩部上部ハードポイントに各一基づつ装備可能で、斉射時は二十秒足らずで撃ち切る事ができる。

 飛行中の斉射は急激な失速と墜落を招くため禁止されており、斉射の際は脚部の駐鋤(スペード)を使用することが望ましいとされている。

・三六ミリ連装機関砲システム『Gsh-36L』

 肩部ハードポイントに装備されるガンポッド。

 給弾装置付弾薬コンテナと一体化されており、装備時は片側二ヶ所の肩部ハードポイント全てを使用する事になる。弾薬コンテナが上部、回転銃座(ガンターレット)が側面にくる。

 本システムを装備したSu-25(グラーチュ)は『東の戦車殺し(タンクキラー)』と呼ばれ、主腕と兵装担架システムの突撃砲と組み合わせた計十門の全力射撃は前線将兵の士気を高めた。

・短距離ミサイル『R-73』

 対大型種用の短距離ミサイル。肩部ハードポイントに装備され、上部に四基、側面に二基装備できた。

・長距離ミサイル『R-37』

 一九八八年にアメリカ製の『AIM-54(フェニックスミサイル)』を元に開発されたソ連製の長距離対BETAクラスターミサイル。

 肩部ハードポイント上部に三基、側面に一基装備可能。

・五五ミリロケットランチャー『S-5』

 下腿部外縁ハードポイントに装備可能な三二連ロケットランチャー。

 攻撃ヘリコプター等に装備されている物と同様。発射後は投棄可能になっている。

・八〇ミリロケットランチャー『S-8』

 下腿部外縁ハードポイントに装備可能な二十連ロケットランチャー。

 威力不足だったS-5の後継として開発された。

・9M113『コンクールス』

 車両搭載型対戦車ミサイル。連装タイプを下腿部外縁ハードポイントに装着できた。

・A-97突撃砲

 ソ連製の突撃砲。世界共通規格の三六ミリ砲と一二〇ミリ砲で構成されている。

・一二五ミリ打撃支援砲

 戦車砲を再設計した支援砲。一五二ミリ打撃支援砲の開発遅れに伴って運用された。

・一五二ミリ打撃支援砲

 Su-25専用に開発された支援砲。

 機動力の低い本機は、他の戦術歩行攻撃機と同様に突撃(デストロイヤー)級が天敵であり、突撃(デストロイヤー)級の装甲殻を貫き、正面から撃破する為に作られた。

 射撃時は両手で使用される。

・二〇三ミリ打撃支援砲

 より高威力を求めた結果開発された打撃支援砲であるが過剰な攻撃力の為、少数生産に留まった。

 砲身寿命が短い欠点がある。

 

 多数の武装を装備可能な本機であったが、近接戦用の装備は一切装備されていない。外見同様、鈍重な機体である本機は、元々の設計思想も相まって近接戦は一切考慮されていなかった。

 しかしながら後期生産型からは前腕外縁部にブレードベーンを装備し、一応の近接戦能力を持つことになる。

 

 ハリネズミの様に多数の武装を同時運用可能なSu-25は、非常に空気抵抗を受け安く、最高速度が遅く燃費も悪かった。一方でその重量からくる安定性は高く、とりわけ匍匐飛行の安定性は抜群であった。

 本機の欠点として新規規格のБ-81兵装担架システムが挙げられる。

 Б-81兵装担架システムは高い面制圧能力を持たせる事ができる画期的なシステムであったが、ダウンワード式の補助腕で故障や、ガンマウント同士が干渉するなどの不具合が頻発した。

 元々高い工作技術と制御技術が要求されるダウンワード式は、疎開による工場移転によって工作精度が落ちていたソ連の実情と合っておらず、整備性も非常に悪かった。

 前線ではダウンワード式ガンマウントを撤去する改修が行われ、中期生産型からはダウンワード式ガンマウントそのものが撤去された。

 後期生産型ではБ-87兵装担架システムに変更された。

 

 

 

 Su-25は一九八二年から本格的に運用配備が始まった。

 一九七八年のパレオロゴス作戦で負った損失を補えていないソ連軍において、不足気味な火力を補う存在として、設計・運用思想に違わぬ展開能力と火力を発揮し活躍する。

 圧倒的な面制圧力を有する本機は、当初の運用想定を超えて幅広い場面で使用された。

 戦線の火消し役として、火力支援や限定的な攻勢、拠点防御の為に飛び回り、『火薬樽』の渾名で前線将兵から絶大な指示を得ることになる。一方で設計思想を無視した近接戦への投入等により、甚大な被害を被る事もしばしばあった。

 ソ連軍に置ける戦術歩行攻撃機としての地位を確立した本機であったが、一九八九年にソ連軍が従来の核による焦土作戦から方針転換を始めると、より安価な自走砲やロケット砲が火力支援の中核を成すようになった。

 以来、後方での火力支援任務は減少し、前線への直接支援を主任務とするようになる。

 

 ソ連軍はSu-25のアップグレード、後継機開発を試みるも、戦術機のマルチロール化や改修費用が高価過ぎる等の理由から断念された。

 長距離制圧誘導弾(AIM-54/R-37)を運用できる『Su-32 ウツコノス*1』が後継機とされ、Su-25は唯一の戦術歩行襲撃機(シュトュルモヴィーク)となった。

 

 

 

*1
Su-27の戦闘爆撃型




○元ネタ解説
【Su-25】
ソ連が開発した近接航空支援用の亜音速機。ターボジェットエンジンを採用し、ジェット燃料の他にもガソリンや軽油、アルコール等も燃料として利用できる。
比較的小型な機体だが、重装甲で高い生存性を誇る。
二〇二三年現在も現役運用中。
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