Muv-Luv Tactical Surface Fighter Variation   作:オデ オマエ マルカジリ(CV:戦車級)

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【シベリアの怪鳥】Ⅲ

 

 第一バイカル方面軍が守るウダ川防衛線から後方約三〇キロ程の地点に、戦術機甲部隊向けの野戦整備処が設けられている。

 第八〇戦術歩行攻撃大隊(カチューシャ大隊)はそこで補給と簡単な整備を受けていた。

 Su-25(グラーチュ)と自走整備担架が並び、その周囲を補給車両が走り回る。

 

「二一〇と二一一はクラスターと通常弾頭を混載しろ! 二一と二三は成形炸薬弾(HEAT)と通常弾頭だ!」

 

 第二中隊付整備班班長イヴァン・パホモフ曹長が怒鳴りながら整備兵達に指示を飛ばしていく。

 四十連一二二ミリロケット砲(2B5)への弾薬装填作業が行われる。

 その頭上をソビエト空軍のTu-22が低空飛行で飛んでゆく。

 長距離制圧誘導弾(AIM-54/R-37)の広域殲滅攻撃により、光線(レーザー)級が殲滅されたことで、BETA第三梯団到達までの短い時間であれば空軍の活動が可能であった。彼らは前線への航空支援に向かうのである。

 衛士達は野戦整備処の直ぐ傍にあった無人の家屋を一時的に接収して、休息や次の任務の準備を行っていた。

 カチューシャ二一/アレクサンドル・ヴァジエフ大尉は地図を眺めながら変更された周波数や部隊符号、地雷原の位置、部隊の展開位置等を頭に叩き込む。

 不意に頬に温かい物が触れた。

 顔を向ければカチューシャ二二/オクサナ・イヴァネンコ中尉が合成コーヒーの入ったコップを持って笑みを浮かべる。

 

「はい、オレク」

「ああ、ありがとう」

 

 コップを受け取って一口。合成食料らしい安定の不味さを遺憾なく発揮したそれはコクも深みも無く。苦味と酸味だけの黒い液体であった。後付された匂いも弱すぎて全く感じない。

 人は慣れる生き物だ。この不味さにもヴァジエフ大尉達はすっかり慣れてしまっていた。

 地図から目線を上げると、ソファに並んで座る前衛三姉妹の姿が目に入る。

 中央に座ったアナスタシア・セメンチェンコ少尉の肩と胸に寄りかかる様に、左右に座ったエリザヴェータ・ウィッテ少尉とエレーナ・モシェンコヴァ少尉が両側から頭を預けて眠っていた。防衛線開始から続く連戦の疲労が見え始めていた。

 

「ヴァジエフ大尉」

 

 第八〇戦術歩行攻撃大隊(カチューシャ大隊)大隊長フェドセイ・スヴェトキン中佐が家屋の玄関から現れた。

 ヴァジエフ大尉はコップをイヴァネンコ中尉に預けると彼の元へと向う。スヴェトキン中佐が顎で外へ出るのを促し、それに従った。

 

「何かありましたか?」

「そのだな…………、あー……」

 

 ヴァジエフ大尉の問いかけにスヴェトキン中佐は言い淀む。ヴァジエフ大尉は経験からこれはあまり良くない事だと悟った。

 

「……BETA第三梯団の規模が判明した。十万だ」

「は?」

「十万だ。十万体のBETAが向かっている」

 

 H.15 クラスノヤルスクハイヴから続々と溢れ出たBETA第三梯団の数は、最終的に推定個体数約九八〇〇〇体にまで膨れ上がっていた。

 梯団に含まれる光線(レーザー)属種の数は約二〇〇〇。効果的な面制圧を行うには、この数を漸減させる必要があった。

 

「司令部は光線級吶喊(レーザーヤークト)の実施を決定した。……我々も参加する」

「鈍重なSu-25(グラーチュ)光線級吶喊(レーザーヤークト)ですか……」

「第二四八戦術機甲連隊が我々を光線(レーザー)級が狙える位置まで先導してくれる手筈になっている。第二中隊はプラーツクから北回りで進め、第一中隊は南から行く。やることはシンプルだ。近づいてロケットを叩き込んで離脱する」

「…………了解です」

 

 軍人である以上、命令には従わねばならない。ヴァジエフ大尉は敬礼すると部下への説明の為に家屋へと戻った。

 

 

 

 イルクーツク基地の第一バイカル方面軍司令部は想定以上に膨れ上がったBETA第三梯団への対応に追われていた。

 方面軍司令官ルカ・スヴィーニン上級大将は参謀達と協議の末、作戦を修正する。

 BETAの死骸で埋め尽くされつつあるウダ川の防衛線は放棄。第四親衛戦車軍及び第二八軍は、後退しつつアンガラ川防衛線前衛まで遅滞戦闘を継続する。

 第二四八戦術機甲連隊、第二四二戦術機甲連隊、第八〇戦術歩行攻撃大隊による光線級吶喊(レーザーヤークト)を実施。梯団内の光線(レーザー)属種を漸減させる。

 その後、第六一戦術機甲連隊による長距離制圧誘導弾(AIM-54/R-37)攻撃及び空軍の空対地巡航ミサイルによる飽和攻撃で残存する光線(レーザー)級ごと第三梯団を殲滅する。

 

 約九八〇〇〇体で前進するBETA第三梯団の内部は大きく五つの集団に別れていた。各集団はそれぞれが師団規模で、第一波から第五波と呼称される。

 一部偏りはあるものの集団ごとのBETAの構成比率に通常との差は殆どなかった。

 光線級吶喊(レーザーヤークト)は大隊単位で第二波から第五波のBETA集団に対して実施される。光線(レーザー)属種が少ないと見積もられる第一波は通常の対レーザー戦闘にて撃滅する。

 第八〇戦術歩行攻撃大隊(カチューシャ大隊)は第二四八戦術機甲連隊と共に、確認される光線(レーザー)級の個体数が最多かつ重光線(レーザー)級の存在が確認された第三波への攻撃に参加していた。

 MiG-23 MLDがマチェットタイプの短刀を振るい飛びかかってきた戦車(タンク)級を両断する。

 

イグナートフ中尉(ヴォルガ二五)! 後ろのお客さんは遅いから突っ込み過ぎないでよ!》

《わーってるよ!》

 

 先日の戦闘から補充を受けられないまま再編成された第二四八戦術機甲連隊 第二大隊(コサック大隊)十八機と同第三大隊(ヴォルガ大隊)十二機は、合同で第八〇戦術歩行攻撃大隊(カチューシャ大隊) 第二中隊の進路を切り拓いていた。

 噴射地表面滑走で進むMiG-23 MLDとMiG-27(アリゲートル)が進路上のBETAを駆逐していく。そのすぐ後ろを匍匐飛行するSu-25(グラーチュ)が続いた。

 鈍重で速度の遅いSu-25(グラーチュ)は先行する第二四八戦術機甲連隊についていくのがやっとであった。

 

《こっ……のぉ……!》

 

 跳躍ユニットの巡航速度を保ちながら先行部隊が片付けたBETAの死骸を躱し、その上高度にも気を付けなければならない。更には時折現れる先行部隊が取りこぼしたBETAを片付ける。

 カチューシャ二七/モシェンコヴァ少尉は進路上に現れた戦車(タンク)級を突撃砲のバースト射撃で挽き肉へと変えた。

 BETA梯団の最深部まで進出する必要がある光線級吶喊(レーザーヤークト)は非常に難易度が高い任務である。第二世代戦術機の普及により、戦術が確立された頃よりは成功率が上がったものの、依然として高難易度任務であることに変わりは無かった。

 進路上のBETAを倒しすぎてもいけない。帰りの分や本命の光線(レーザー)級との戦闘の為に、弾薬の消費を抑える必要がある。

 必要な場所へ必要な分だけ、それは熟練の衛士でも難しい。第二四八戦術機甲連隊は度重なる損耗で衛士練度に大きなバラつきがあった。その為、撃ち漏らしや半矢状態のBETAが出ることになる。

 

《えっ……! はぁっ!? そん──────ぐびゅっ!!》

 

 三六ミリ弾を浴びて沈黙したフリをしていた要撃(グラップラー)級が、カチューシャ二一〇/マイヤ・ノジコヴァ少尉のSu-25(グラーチュ)が飛び越えようとした瞬間に起き上がり、硬い衝角を胸部装甲へと振り下ろす。

 ノジコヴァ少尉は何とか回避しようと操縦桿を引き起こしたが鈍重なSu-25(グラーチュ)で間に合う筈もなく、衝角は胸部装甲ごと管制ユニットを叩き潰した。

 グチュッと人が潰れる音が無線にのって響く。

 何人かは顔をしかめたがそれだけだ。いくつもの戦場を乗り越えた彼ら彼女らにとっては、既に聞き慣れた人間の最期の音である。

 

(嫌な慣れだな)

 

 冷静にノジコヴァ少尉を殺した要撃(グラップラー)級を射殺したヴァジエフ大尉は、部下を失う事に慣れてしまった自分自身に嫌悪感を覚えつつも先へと進む。

 先導する第二四八戦術機甲連隊の二個大隊にも被害は当然でていた。

 

《嫌ぁあ゛あ゛あ゛! とって! どっでぇ!!》

 

 MiG-23 MLDが撃破しそこねた戦車(タンク)級に組み付かれた。戦術機のオートバランサーが働き倒れる事は無かったが、その場で主腕をバタつかせながら旋回する。

 

《コサック三一二! 落ち着け今────》

《嫌゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛!》

 

 パニック状態に陥った衛士が跳躍ユニットを噴かして上空へと飛びがった。

 急激な加速で組み付いた戦車(タンク)級が剥がれる。

 

《やった! 大隊長やりま──────》

 

 光線(レーザー)級は誤射をしない。戦車(タンク)級が剝れた事で、それまで上空でも照射を受けなかったMiG-23 MLDに光線(レーザー)級の本照射が襲いかかった。

 対レーザー塗膜が蒸発し、装甲を溶かし、そのまま衛士ごと管制ユニットを貫く。

 跳躍ユニットの燃料が引火、炎上しながら墜落する。

 要撃(グラップラー)級の一撃を回避できなかったMiG-27(アリゲートル)が跳躍ユニットと左主脚を抉り取られて錐揉みの末墜落。闘士(ウォーリア)級を巻き込みながら爆発炎上した。

 

《見えた! 前方、光線(レーザー)級と重光線(レーザー)級だ!》

《こちらヴォルガ二一。目標確認! 護衛の戦車(タンク)級及び要塞(フォート)級を確認!》

 

 最先頭を進むヴォルガ二五/イーゴリ・イグナートフ中尉が護衛に護られた重光線(レーザー)級を含む光線(レーザー)属種約三〇〇体の集団を発見する。

 

「カチューシャ二一より中隊各機。射撃地点を確保する!」

 

 光線(レーザー)級からの照射を避ける為に匍匐飛行から噴射地表面滑走へと移っていたSu-25(グラーチュ)は両翼から迫る戦車(タンク)級を前衛と中衛の強襲掃討(ガン・スイーパー)が鏖殺する。

 そうして確保した空間へと四十連一二二ミリロケット砲(2B5)を二基装備した五機のSu-25(グラーチュ)が射撃態勢に入った。

 接近してくる脅威に気がついた光線(レーザー)級が一斉に第二四八戦術機甲連隊の進路を視た。

 背の低い光線(レーザー)級は周囲の戦車(タンク)級が障害となり照射へは移らなかったものの重光線(レーザー)級は違う。

 

《うぉっ!?》

 

 光線(レーザー)級のそれとは比べ物にならない本照射の奔流が吹き荒れ、MiG-27(アリゲートル)の上半身を消し飛ばした。

 

《生きてるBETAを盾にしろ!》

 

 第二四八戦術機甲連隊 第二大隊(コサック大隊)大隊長コサック一一/セルゲイ・オルロフ少佐の指示に従って迫りくるBETAを使って重光線(レーザー)級の予備照射を躱す。

 そこへオルロフ少佐らの頭上を飛び越える様に五五ミリロケット弾の群れが飛来した。カチューシャ二六/セメンチェンコ少尉とカチューシャ二四/ライサ・ゲラーシェンコ少尉、カチューシャ二五/アンフィーサ・グラツカヤ少尉が、各二基の三二連五五ミリロケットランチャー(S-5)から発射した計一九二発のロケット弾である。

 光線(レーザー)級と重光線(レーザー)級が一斉に空を見上げた。

 飛来する五五ミリロケット弾を迎撃しようとするが、迫りくる戦術機から護ろうと動いていた四十体近い要塞(フォート)級の巨体が視線を遮る。

 光線(レーザー)級はそれでも半数近い五五ミリロケット弾の迎撃に成功してみせた。

 着弾する五五ミリロケット弾の威力では要塞(フォート)級を倒すのは難しい。要塞(フォート)級が壁になった事で光線(レーザー)級へと命中するロケット弾の数は僅かであった。

 

《いくわよ!》

 

 光線(レーザー)級の視線が上空へと向いた隙にヴォルガ二一/ゾーヤ・ジョキナ中尉以下第三大隊(ヴォルガ大隊)の残余八機が突撃砲を撃ちながら吶喊した。

 三六ミリ劣化ウラン弾が向かってくる戦車(タンク)級を穿ち、一二〇ミリ砲弾が重光線(レーザー)級へ着弾する。

 

「撃てッ!」

 

 ヴァジエフ大尉の号令の下、一二二ミリロケット弾が斉射される。

 ロケット弾は光線(レーザー)級の迎撃を受けながら、ジョキナ中尉らの頭上を通過して襲いかかった。

 通常弾頭が着弾し、その爆風で戦車(タンク)級を吹き飛ばし、破片が光線(レーザー)級を引き裂く。成形炸薬弾(HEAT)要塞(フォート)級に命中し、その巨体を揺らす。クラスター弾頭が光線(レーザー)級の頭上で炸裂し、ばら撒かれた子弾によって光線(レーザー)級がまとめて吹き飛んだ。

 ロケット弾による破壊の暴風が吹き荒れると、三〇〇体近く居た光線(レーザー)属種も三分の一近くまで減少していた。そこへジョキナ中尉らのMiG-23 MLDが突入する。

 残弾を気にすることなく突撃砲を掃射し、生き残った光線(レーザー)属種を片っ端から殺し尽くしていく。

 分厚い保護膜を閉じていた重光線(レーザー)級が保護膜を開き迫りくるMiG-23 MLDに予備照射を開始する。その瞬間、一二五ミリ砲弾が重光線(レーザー)級の照射粘膜を貫いて体内へと飛び込んだ。重光線(レーザー)級はそのまま内部から炸裂し、肉片と体液を大地へとぶち撒ける。

 重光線(レーザー)級を撃破したヴァジエフ大尉は次の標的を要塞(フォート)級に定めた。

 突入した第三大隊(ヴォルガ大隊)を支援する様に、一五二ミリ打撃支援砲を装備したSu-25(グラーチュ)が一列横隊で射撃する。

 肉薄するMiG-23 MLDを狙った要塞(フォート)級を複数の徹甲弾が貫き、キャニスター弾が光線(レーザー)級をまとめて薙ぎ払う。

 BETAの返り血で赤紫色に染まったMiG-23 MLDがこれまでの鬱憤を晴らすかのように暴れまわる。

 耐久力の無い光線(レーザー)級は無力であり、護衛の戦車(タンク)級ごと薙ぎ払われ、それなりの耐久力を持つ重光線(レーザー)級は一五二ミリ打撃支援砲の集中射撃を浴びて一つまた一つと倒れていく。

 光線(レーザー)級の群れの中で暴れまわる戦術機へ予備照射を繰り出すも、BETAと射線が被ってしまい本照射へと移行できないままお返しの三六ミリ弾が光線(レーザー)級へと届けられる。

 そこへ第二大隊(コサック大隊)十四機も加わった。

 要塞(フォート)級が迎撃の為に触手を発射するが、その前に一二五ミリ砲弾が頭部に突き刺さり破裂する。

 光線(レーザー)級の群れはあっという間にその数を減らし、十数分後には光線(レーザー)級が存在した証は大地の染みのみとなっていた。

 

《周辺のBETAの殲滅を確認!》

「全周警戒しつつ、残弾確認! 燃料もだ!」

 

 ヴァジエフ大尉は指示を出しながら機体パラメータに目を通す。

 先導部隊に置いていかれない様に匍匐飛行を多様した事もあり、推進剤の残量が心ともなくなっていた。

 同時に広域戦域マップにも目を通し、顔をしかめた。

 南から突入したスヴェトキン中佐の第一中隊の反応がない。先導を担当した第二四八戦術機甲連隊 第一大隊『ウラル』の反応も同様である。

 

ジョキナ中尉(ヴォルガ二一)、ヴォルガの残余を掌握してカチューシャの離脱を支援しろ》

《了解です》

 

 オルロフ少佐もSu-25(グラーチュ)の推進剤が残り少ない事に気づいていた。そして、光線級吶喊(レーザーヤークト)がまだ終わっていない事にも……。

 

オルロフ少佐(コサック一一)。弾薬を半分置いていく、機体を少しでも軽くしたい》

《……感謝する》

 

 ヴァジエフ大尉は腰部装甲に格納されているマガジンを第二大隊(コサック大隊)MiG-27(アリゲートル)へと受け渡す。他の機体も同様である。

 離脱の先導を努めるジョキナ中尉のMiG-23 MLDが跳躍ユニットの可変翼の具合を確かめた。

 第三大隊(ヴォルガ大隊)のMiG-23 MLDが楔壱型(アローヘッド・ワン)の陣形を組む。彼ら彼女らの機体はここまで先頭を努めてきた為にできた大小様々な傷や損傷が所々に見て取れた。

 

《全機跳躍開始!》

 

 ジョキナ中尉の合図で第三大隊(ヴォルガ大隊)の機体が飛び立つ。ヴァジエフ大尉ら第二中隊もそれに続いた。

 

(幸運を……!)

 

 ヴァジエフ大尉は、その場に残るオルロフ少佐以下第二大隊(コサック大隊)の衛士達へ敬礼しながら飛び立った。

 

 

 

 BETA第三波から離脱した第二四八戦術機甲連隊 第三大隊(ヴォルガ大隊)第八〇戦術歩行攻撃大隊(カチューシャ大隊) 第二中隊はそれぞれプラーツク基地とイルクーツク基地へと帰還した。

 第二四八戦術機甲連隊、第二四二戦術機甲連隊、第八〇戦術歩行攻撃大隊による光線級吶喊(レーザーヤークト)により、第三梯団に内包される光線(レーザー)属種の半数近くを撃破する。

 一方でその被害も大きく、第二四八戦術機甲連隊に至っては一個中隊以下の戦力にまで減少。壊滅を通り過ぎて消滅一方手前といった具合であった。その他の部隊も少なくない損害を負っていた。

 ウダ川防衛線を越えた第一波は、着実に前進しつつも既にその数は半数近くまで漸減されている。相互支援による遅滞戦闘でアンガラ川防衛線に到達するまでに消滅させられると予測されていた。

 補給を終えた第六一戦術機甲連隊 第一大隊(ボストーク大隊)と第二大隊『ボイジャー』のMiG-31(ブラーミャリサ)Su-32(ウツコノス)がイルクーツク基地の滑走路から飛び立つ。

 その後に続く様に戦線の後方から低空で爆撃機Tu-22が飛来する。第四級光線照射危険地帯を飛翔するTu-22のパイロット、イヴァン・ペトゥホーフ少佐は油っぽい嫌な汗を全身からかきながら前線へと向う。

 いつ光線(レーザー)級による照射を受けてもおかしくない。そして、航空機にとってそれは死刑宣告と同じである。

 

(あと少し……!)

 

 編隊を率いるペトゥホーフ少佐はTu-22の胴体に懸吊された空対地ミサイルの発射地点を睨む。

 高速で飛行するTu-22にとっては数分であるが、ペトゥホーフ少佐にとっては永遠に感じられた。

 

「全機発射!」

 

 懸吊した空対地ミサイルを一斉に発射する。

 機体から切り離された空対地ミサイルはロケットエンジンに点火。自ら推進力を得て滑空しながら飛んてゆく。

 ペトゥホーフ少佐ら空軍の攻撃開始と同時にバイカル湖周辺に展開した戦略ロケット軍隷下のロケット旅団が地対地ミサイルの射撃を開始する。

 空と地から放たれた巡航ミサイルが第三梯団へと襲いかかった。

 飛翔するミサイル群を生き残った光線(レーザー)属種による照射が襲う。

 ミサイルが上空で迎撃される下で、梯団側面から第六一戦術機甲連隊 第一大隊(ボストーク大隊)が接近すると、肩部ハードポイントに装備した長距離制圧誘導弾(AIM-54/R-37)を斉射した。

 放たれたクラスターミサイル群は、GPS誘導に従ってBETA第二波へと飛んでゆく。

 クラスターミサイル群は一斉に子弾をばら撒き、BETAの頭上から襲いかかった。それに続く様に光線(レーザー)級の迎撃を抜けた巡航ミサイルも次々と着弾する。

 一方的な破壊の嵐が吹き荒れた。

 

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