Muv-Luv Tactical Surface Fighter Variation   作:オデ オマエ マルカジリ(CV:戦車級)

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【ズールー戦士は怯まない】前編

 

 

 

 一九八四年以来、インド亜大陸では喀什(カシュガル)のオリジナルハイヴから南進するBETAと激しい戦闘が繰り広げられていた。

 一九九〇年、ボパールにH.13────通称ボパールハイヴが建設される。

 このハイヴ建設によってインド亜大陸及び東南アジアの戦況はより一層苦しいものへと変化していった。

 一九九二年。国連軍主導のもとボパールハイヴ攻略を目的とした『スワラージ作戦』がインド政府の反対を押し切って決行される。

 大規模反抗作戦であるスワラージ作戦の目的は「喀什(カシュガル)のオリジナルハイヴに対する橋頭堡の確立」、「東進するBETAへの牽制」、「インド亜大陸の安定化」など複数の目的を持って立案された。

 参加兵力は約三十万人。作戦を主導する国連印度洋方面第一軍の外、インド、東南アジア諸国に加えてアフリカ連合諸国も参加することとなっていた。

 更には新編された国連宇宙総軍の第一・第三艦隊と第一軌道降下兵団による軌道爆撃と軌道降下戦術の初投入が決定された。

 作戦予定日(D-Day)は七月二十五日であった。

 

 作戦は四段階に別けて実施される。

 準備段階としてハイヴ周辺のBETAの漸減。これは国連軍とインド国軍によって三回に分けて実行された。約一個師団強約二万八千のBETAを殲滅している。

 作戦の第一段階は陽動部隊の攻勢によるBETAの誘引。

 東から東南アジア諸国軍と国軍印度洋方面第一軍が、南西からアフリカ連合軍がそれぞれ誘引を担当する。

 ハイヴ内から増援のBETA梯団の出現を確認次第、作戦は第二段階へと移る。

 第二段階では国連宇宙総軍によるハイヴへの低軌道爆撃から始まり、ハイヴ周辺に残るBETAを一掃。

 第一軌道降下兵団の一部が軌道降下、突入路を形成、確保する。

 同時に国連軍、インド国軍、アフリカ連合軍の一部が主体となった地上攻略部隊が攻勢を開始。

 第一軌道降下兵団との合流を目指す。

 第三段階は第一軌道降下兵団の本隊が降下し、ハイヴ内部へ突入する。

 地上部隊は一部を除いて突入部隊の退路確保の為、ハイヴ周辺を保持する。

 そして、反応炉の停止を確認したならば、作戦は最終の第四段階へと移行する。

 ハイヴの機能停止後、残存BETAは近郊のH.02 マシュハドハイヴあるいはH.01 オジリナルハイヴ方面へ逃走すると予測されていた。これを追撃、残存BETAを殲滅又は漸減し、戦線の押上と安定化を容易にせしめることが目的であった。

 

 アフリカ連合に属するアフリカ諸国は国連から要請に従う形で兵力を抽出、提供した。

 アフリカ連合軍の統合司令官は南アフリカ国防軍所属、アントン・マッキントッシュ中将。参加兵力は述べ約八万である。

 南アフリカ国防軍は『スワラージ作戦』に二個旅団、一個機甲旅団、増強一個戦術機甲連隊の戦闘部隊とそれらを支援する後方支援部隊を派遣。戦術機甲連隊の一部を除く全てがBETAへの陽動作戦に投入される手筈になっていた。

 分離された一部。南アフリカ国防軍 第二戦術機甲連隊 第三大隊と増強として配属された南アフリカ国防軍 第三二戦術機甲大隊『バッファロー』のエコー中隊、ゴルフ中隊は作戦の第二段階で投入される地上攻略部隊に割り当てられていた。

 

 

 

 多連装ロケット砲(MLRS)から発射されたロケット弾が噴煙と轟音をあげて空へと登ってゆく。

 その数は空を多い隠す程であった。

 ナーグプルに設営された前進基地(FOB)の滑走路から第三二戦術機甲(バッファロー)大隊ゴルフ(C/S ズールー)中隊B(前衛)小隊の衛士達がそれを見上げていた。

 

「凄えッス……」

 

 感嘆の声を溢したのは突撃前衛(ストームバンガード)のズールー〇五/コルネリアス・マーシャル少尉だ。

 実戦経験の少ない彼にとって、これ程濃密な火力発揮を目にするのは初めての経験である。

 

「これからハイヴを攻略しようってんだ。これくらいは必要だろ」

「……ハイヴ周辺の光線(レーザー)級はこれで全滅だ。……中から出てくるまではな」

 

 B小隊長ズールー〇二/サム・ランドル中尉とマーシャル少尉の僚機を務める黒人衛士ズールー〇四/ンジャブロ・マレー少尉が飛んでゆくロケット弾を見送りながらマーシャル少尉の呟きに答えた。

 煙草をふかしながら白人とアジア人の混血(カラード)衛士、ズールー〇六/ゴードン・スキナー少尉もリラックスした様子でぼうっとロケット弾を見つめる。

 『スワラージ作戦』は未だ第一段階であり、第二段階に投入される彼らは駐機場(エプロン)に駐機された乗機、チーターCの側に屯していた。

 

「見ろよ、本当に黒人が衛士強化装備きてるぜ!」

「おいおい、黒人に混血が衛士ってマジかよ!」

 

 第二戦術機甲連隊 第三大隊 第九中隊に属する衛士達が、人目をはばかる事なく指を差し、冷笑を浮かべる。

 アパルトヘイト政策による人種隔離を進めてきた南アフリカにおいて、国防軍は長らく白人のみで構成されてきた。

 しかし、BETA大戦勃発と情勢不安定な周辺諸国の存在等、様々な理由から軍の拡大を決定。人材確保の為に人種の垣根を越えて拡大に努めた。それでもエリートたる衛士の多くは白人で構成されていた。

 そんな中、第三二戦術機甲(バッファロー)大隊は、衛士の人種関係なく衛士適正の高い者や優秀な人材が集められていた為、黒人や混血の衛士も多く在席している。

 

「テメェ……ッ!」

 

 白人ではあるが、仲間を侮蔑されたマーシャル少尉がいきりたつ。

 今にも怒鳴り散らして殴り掛からんとするマーシャル少尉の肩をマレー少尉が掴んで止めた。

 

「何で止めるんスか!?」

「……落ち着け。……戦場では冷静になれなかった奴から死ぬ」

「そうだぞ。ああいうケツの穴が小さい奴らは、誰かを貶して自分を強く見せたがってるのさ。そうやって自分の気持ちを落ち着かせてんだ。気にすんな」

 

 抑揚の無い声で諭すマレー少尉、補足する用にスキナー少尉が続けた。

 

「ゴルフ中隊ィ!! 全員搭乗ォ!!」

 

 駐機場(エプロン)に野太い声が響き渡る。

 熊のような大男、ゴルフ中隊長ズールー〇一/ジョナサン・リチャードソン大尉が大股で歩み寄ってくる。何故こんな大男が衛士に成れたのかは中隊全員の疑問であった。一説では専用の管制ユニットを使っているとかいないとか……。

 

「仕事だ。行くぞ!」

 

 衛士がそれぞれ乗機へと走って行く。駐機場(エプロン)や格納庫で一斉に同様の光景が見られた。

 『スワラージ作戦』は第二段階へと移行したのだ。

 

 

 

 ボパールハイヴのBETA誘引を担当するアフリカ連合軍はインドールを攻撃発揮地点とし旧アシュタまで前進。旧シュジャルプルを目指していた。

 同じく誘引の為に西から進軍した東南アジア諸国連合軍と国連軍はBETAを駆逐しながら旧ビディシャを目指して進軍を続けている。

 低軌道衛星が接近する陽動部隊へ向けてハイヴ内から増援が出現したのを複数回確認。合計して軍団規模約三万のBETA集団。

 作戦を指揮する国連印度洋方面軍作戦司令部は『スワラージ作戦』を第二段階へと移す。

 

 MLRSやBM-21(グラート)等の多連装ロケット砲から発射された無数のロケット弾がハイヴ周辺に溜まっているBETA群へと襲いかかる。

 (ゲート)前に陣取っていた光線(レーザー)級の双眸が、飛翔するロケット弾を捉えた。

 光線(レーザー)級は定められたプロセスに従って行動する。

 照準を定める約五秒間の予備照射から膨大な熱量を持った灼熱の本照射へ。約十二秒のクールタイムを置いて再び予備照射。

 飛翔するロケットを迎撃するも、重金属雲によって大幅に威力を減衰させられることでその迎撃効率は低かった。

 重金属雲を抜けたロケット弾が着弾と同時に起爆。内蔵された高性能爆薬が破壊を撒き散らす。

 至近弾を受けた光線(レーザー)級は爆風と破片に身体を引き裂かれて絶命する。

 群れの大半が絶命しても変わることなく生き残りが照射を繰り返す。

 

 そしてその遥か上空。

 地球軌道上に展開した国連宇宙総軍第三艦隊がボパールハイヴへの軌道爆撃コースに入る。

 

《投弾軌道よし、最終軌道修正よし》

《『メイルシュトローム』より各艦。コースそのまま。爆撃目標、H.13 ボパールハイヴ! 人類史上初の大規模軌道爆撃だ。しくじるなよ!》

 

 第三艦隊は旗艦である装甲駆逐艦『メイルシュトローム』を先頭に軌道上を定められたコースから数センチもズレる事なく進む。

 

《突入弾分離!》

 

 旗艦の合図と共に無誘導対レーザー弾を分離、地球軌道へと落下させてゆく。

 大気圏へと落下した無誘導対レーザー弾は重力に引かれ加速しながら目標へと突き進む。

 ハイヴ周辺の重光線(レーザー)級の照射が無誘導対レーザー弾を捉え、蒸発した砲弾は空中に濃密な重金属雲を展開させる。運良く照射を免れた弾は加速によって極超音速にまで達した運動エネルギーをそのまま地表のBETAへと叩きつけた。

 

 光線(レーザー)級の照射を受けない様に地表すれすれを這うように飛行するMi-24(ハインド)が、ハイヴ周辺に蠢くBETA群外縁に接近し、両翼に懸吊した空対地ロケットを斉射する。発射された八〇ミリロケット(S-8)が外縁の戦車(タンク)級の群れを吹き飛ばす。

 射撃を終えたMi-24(ハインド)の編隊が旋回して離脱すると、後続の戦術機甲部隊がMi-24(ハインド)が加えた傷口に突入していく。

 ハイヴ外縁に最初に突入したのはインド陸軍 第三戦術機甲師団である。同師団に所属するF-5(フリーダムファイター)MiG-21(バラライカ)MiG-23(チボラシュカ)が手当たり次第にBETAを駆逐し傷口を拡げる。

 自国の領土内に建てられたそびえ立つクソ、ハイヴを攻略するとあってインド軍衛士の士気は高い。

 彼らは地上からハイヴ内部に突入する国連 第一戦術戦闘攻撃部隊(A-01)及びインド陸軍 第一戦術機甲師団の為に、突入路となる(ゲート)の確保及び保持を任務としていた。

 第三戦術機甲師団が犠牲を出しながら切り開いた後を突入部隊が続く。アフリカ連合軍戦術機甲部隊は突入部隊の直掩についていた。

 

 

 

 連続跳躍噴射でチーターCが進んで行く。

 気色の悪い体液をぶち撒けて沈黙した戦車(タンク)級や要撃(グラップラー)級等、多数BETAの死骸が散乱する中を進む。

 死骸の間に破壊され黒煙を上げるF-5(フリーダムファイター)や散らばった型式の解らない戦術機の部品が目につく。

 

《前方に要撃(グラップラー)級八!》

 

 突入部隊の右側面を守る第三二戦術機甲(バッファロー)大隊ゴルフ中隊の前に第三戦術機甲師団が討ち漏らしたBETAが現れる。

 

《ズールー〇一から中隊各機。兵器使用自由! 速やかに敵を排除せよ》

《 《 《了解!》 》 》

 

 先頭を行く前衛B小隊四機のチーターCが中距離砲撃戦を開始する。

 要撃(グラップラー)級は硬い前肢の衝角を盾の様に構え三六ミリ弾を防ぎながら向かってきた。要撃(グラップラー)級は多少三六ミリ弾が当たっても問題なく活動し、接近を続ける。

 しかし中衛A小隊が射撃に加わり、側面をつくように放たれた三六ミリ弾の射撃を十数発も喰らい絶命してゆく。

 視界の端に表示されるレーダーには、友軍を示す青い光点がBETAを示す赤い光点を削り取りながら前進を続けているが、青い光点の後にぽつぽつと赤い光点が残っている。

 ハイヴに近づくに連れて討ち漏らしが増えていた。

 要撃(グラップラー)級に続いて小隊規模の戦車(タンク)級集団に遭遇する。ゴルフ中隊は砲撃戦にて危なげなくこれを撃破した。

 

《CPより各部隊へ。これより国連宇宙総軍第一軌道降下兵団降下誘導(パスファインダー)大隊が降下する。再突入殻(リエントリーシェル)の落下予想地点に注意せよ》

 

 戦域マップに落下予想地点の情報が反映される。予想地点の範囲は大きく設定されていた。

 

(ついに、来たっス……!)

 

 チーターCのセンサーが軌道上から降下してくる極超音速の飛翔体を捉えた。

 ハイヴ地表構造物(モニュメント)周辺にいた重光線(レーザー)級の照射が上空へと伸びる中、重金属雲を突き破って、真っ赤に灼熱した鉄塊が地表へ激突。轟音と衝撃波が遠く離れたチーターCにまで伝わる。

 続いて重金属雲を抜けてきた再突入殻(リエントリーシェル)が分解し中から、戦術機が飛び出す。

 マーシャル少尉は軌道降下戦術の初披露の場に立ち会える事に興奮を覚えていた。

 

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