ヤマなしオチなし 作:マンドゴラ
ここは街はずれにある冒険者ギルド。ただの昼間だというのに、装備を着込んだ冒険者たちが飲み食いをして騒ぎ立てていた。
今日の依頼が終わったアルは、カウンター席でブドウジュースをちびちびと飲んでいた。
「よお」
声をかけられて後ろへ振り返れば、同期のランスが立っていた。
少々強面の顔立ちに、身長を超えるほどの大剣を背負っているせいで如何せん威圧感が強い。顎にこしらわれた立派なひげを剃れば多少はましになるだろうが、それを言っても本人が聞くことは無いだろう。
「隣、良いか?」
「問題なし」
大剣を背中から下ろしカウンターに立てかけ、滑らないように微調節。
満足いく位置を決めてからやっと椅子を引きずり出して、ドカッと座り込んだ。
「今日の依頼はどうだったよ。魔物をどんぐらい殺ってきたんだ?」
「シルバーウルフを3体ほど。そこまで強くなかったから、一瞬で終わった」
「かぁーッ! 流石、Aランクは言う事がちげぇなあ! オレがソイツを殺るってなったら、三日三晩は死闘を繰り広げないといけないってのに」
「ランスなら1日でいける」
「褒めてるよな?」
頷くことなく、ジュースを口に含む。
ランスはその様を見て、やれやれと首を振ってから、「ジンジャーひとつ!」とオーダーをした。
少し待てば店主が「あいよっ」と言いながら、キンキンに冷えたガラスのコップに、ジンジャーエールが並々と注がれた状態で出てきた。
「そういやアルはこんなうわさがあんの知ってっか?」
ブドウジュースを飲むのをいったんやめて、アルはランスと目を合わせる。
「ギルド育成施設あんだろ。あー、なんつったっけな」
「リトス学園のこと?」
「ああ、それだそれだ。そのリトス学園から主席で卒業したやつがよぉ、このギルドに加入するらしいぜ」
「どんな人?」
「聞いた話によると、ありとあらゆる魔法を使いこなし、固定の得物は選ばす、その身一つで駆け抜けていく! らしいぜ」
「らしいなんだ」
「オレもまだ見た事ねぇからわかんねぇ。このうわさが本当かどうかはさておき、主席で卒業したのは事実だから、十二分にすげぇ奴なんだろうなって言う事は分かってる。もしかしたら、このオレ様が新人教育を任されちまうかもしれねぇぜ?」
「それだけは無いと思う」
「ばっさりと切り捨てんなよなあ!」
不貞腐れるランスを肴にブドウジュースを飲み干し、アルは席を立ちあがった。
「僕はもう行くから」
「もっと飲んでもいいんだぜ?」
「遠慮する」
「じゃあね」と、ランスに向かって軽く手を振ってから、アルはその場を後にした。