黒龍を討ち損ねたリンク(厄災)が、ダンまち世界に出現したようです。 作:さぬきのみやつこ
吾輩は、剣である。
名前は・・・ある。
剣として生き、様々な時代の勇者と共に、いくつもの伝説を残してきた。
人々は吾輩を、“マスターソード”や“退魔の剣”と呼び、女神ハイリアと同様に信奉してきた。
・・・昔はよかった。
勇者の背に背負われ、羨望の眼差しを一身に受け敬われる。
儀式等の折には、最高級の砥石と当時最高峰の鍛治氏の腕で丁寧に手入れをされたものだ。
女神に選ばれた巫女の胸に抱かれて、眠ることもしばしばあった・・・1番の思い出だ。
そんな吾輩だが、ここ数千年は平和な日々を送っていた。
最後に振るわれたのは“黒龍”の討伐の時で、以降、吾輩を必要とするほどの強敵が現れなかったのか、ウエストポーチの中でゆっくりとお休みを満喫していた。
思えば、最後の数年が忙しすぎたのだ。
勇者に引き抜かれた後、魔物との戦いでこき使われ、なんか6本足の機械と戦う時にも呼び出された。
眠って目覚めるとすぐ出番・・・まあ、剣として出番があるのは嬉しいことだ。
その後も、粉々に砕かれたり、変なものくっつけられたり、手入れすらまともにしてくれない持ち主にイライラもしたものだが、1番許せないのはあれだ・・・
『何故、木を切るのに、我を使う?』
本当に合ってる?吾輩の使い方、本当にそれで合ってる?
最初の頃は、嬉々として魔物をしばくのに使ってくれてたじゃん?
え?威力が足りない?
“剣の試練”全部クリアしてたじゃん?
クリアしたらクリアしたで、より一層木を切るのに使い出したじゃん!
魔物倒す時が1番の見せ場なのに、なんだったら途中から、吾輩以外の剣も使ってなかったよね?
吾輩知ってるもん!ポーチの中、属性矢がいっぱいあるから弓があればなんとかなってたもんね!
電源化かなにか知らないけど、魔物との戦闘で出番がある“雷の剣”とか、ちょー羨ましかったもん!
まあ、それも昔の話・・・今何してるのかって?
『畑の中でスタンバッています。』
最初の頃は、
『こいつ・・・吾輩をこんな所に置くとは、正気か?』
なーんて、思ったりもしたんだけど、木を切るよりかはマシなんだよね。
カラス避けのカカシ扱いされてるのも、どうかと思うんだけども・・・マシな理由はもう一つある。
当代の勇者は仲間がたくさんいるらしく、その者達がよく話をしにくることだ。
人生相談だったり、愚痴だったり、相槌も打てないこちらに一方的に話して帰って行くので、いい暇つぶしになっている。
噂をすれば早速来たぞ。迷える子羊が、
「あ〜、疲れた!どうしてこう毎日、毎日!新しい問題ばかり起こせるのか⁉︎」
ああ、よく我が持ち主に振り回されている、妙齢のエルフではないか?
彼女には世話になっているからな。
相談にくらい、乗ってやるとしよう。(喋れないので聞くだけ)
➖相談者:リヴェリア・リヨス・アルーヴ
彼女は、おおよそ1時間ほど愚痴って帰って行った。
その間、畑の草むしりや、虫取りをしていたが、ものすごい怒気を感じとってか、誰1人として中庭に近づいてくることはなかった。
色々と話していったが、中でも面白かったのは“金のリンゴ”の話だろう。
ファミリアの副団長である今では想像もつかないかもしれぬが、彼女にもお転婆な時期はあったらしい。
年中、森に引き篭もり状態に嫌気を刺し、エルフの王族という立場を捨て家出した過去がある彼女は、年に一回ほど実家に贈り物をしている。
たまに用事でもあれば帰省しているらしいが、そう頻度は多くない。
せめてもと、中庭で育てた珍しい野菜や果物(ハイラル産)を送るのが恒例となっているらしく、父親には大変喜ばれているようだ。
今年も、収穫期が終わった後に、例に漏れず贈り物をしたらしいのだが・・・そこでリンクが要らぬ気を回した。
送る直前の荷物に、リヴェリアに黙って、金色に輝くリンゴを3つほど追加したのだ。
荷物が届いた時、リヴェリアの故郷“アルヴの王森”では、今年もこの時期がやってきたか!王の側近達により荷解きがされたのだが、いつもの内容に、見覚えのないものが入っている。と話題になったのだ。
が通常であれば、珍しいだけで終わるのだが入ってる物が悪かった。
ここで読者諸君に、ギリシャ神話の一説を話そうと思う。
“エデンの知恵の実”をご存知だろうか?
え?知ってるからいい?ならば話が早いな。
荷物の中に入っている金のリンゴを見た側近の1人が、その神話をたまたま聞いたことがあり曲解してしまったのだ。
『リヴェリア様は、神ゼウスと恋仲になってしまったのではないか!?』
と、神話を交えて憶測を広げて話した。
すると、割と世間知らずが少なくないエルフ達は大騒ぎ
ゼウスはとうの昔に、ファミリアが壊滅してオラリアを去っているといことも忘れ、ゼウスの討伐隊まで編成されたほどらしい。
少し遅れて、事態を把握したリヴェリアが止めに入ったことで、ことなきを得たが、原因を知った彼女は、リンクを三日三晩、磔にして折檻した。
リンクは、最後まで何をやらかしたのか、わかっておらず。
ケロッとした顔で、3日間の磔を乗り切った。・・・リンクに3日は短すぎる。
・・・おや、また誰か来たな・・・これは、これは、ようやく吾輩の出番か?
➖相談者:リンク
全く!
1週間も出番がなければ、刀身は錆びずとも心が錆びるというものだ。
まあ、貴様は普段、団員達に遠慮してダンジョン以外で剣を振らぬから、しょうがないかもしれんがな。
さて、今日はどこまで行く?吾輩的には、36~7階層辺りで暴れたい気分なんだが・・・ふむ、めずらしいな。素振りか?
あの後、リンクは気になる雑草を剣ビームで刈って、そのまま帰りやがった。
『・・・・・・3年は眠りについてやる‼︎』
読んでくれて、ありがとうございます。