謎の女性イモラ―出現。
「ご入場の前にこちらをご覧ください」
イモラ―がリモコンで何かを操作すると、空中にホログラムでモニターが出現した。そこには浅黒い肌にブロンドの長髪をなびかせた美丈夫が高級感のあるデスクチェアーに腰掛けていた。
「ようこそ、ファンタジック遊園地へ。私はここの経営者、淫魔王である」
「淫魔王!?」
「淫魔王……これはどういうことか?」
「どういうこと……だと?
俺が一番聞きたいわ!!!」
それは、小太郎たちからしても悲痛な叫びだった。彼からしても突如、といったところだったのだろう。淫魔王は叫びながら続ける。
「メス共とヤッてたらよー!部下がいきなり入ってきたと思ったら外の異常事態知らせて来やがってよー!!そんで外見たら今まであった娼館全部なくなって米連でもほとんど見ないような大規模遊園地できてよー!!なんで判明してから即情報隠蔽してたのになんでファミリー層がこぞってきてるんだよ!あの坑道どうやって通って来たってんだよ!!!」
ヨミハラへ続く坑道は、一定の道順を通らなければすぐに袋小路に入ってしまう迷路となっている。道程を知る者は限られており、それは闇の世界を生きる者が半数を占める。
「入り口に看板あったぞ?」
「そうだな」
「え!!?」
小太郎とイングリッドのカミングアウトと共に、小太郎が見せて来たスマホに二頭身にデフォルメされたイモラ―と、坑道の道順が寸分違わず正確に書かれていた。
「これはお前が仕掛けたものじゃなかったのか?」
「そんなわけないだろうが!!何のためにこんな僻地に建てたと思っている!?一般人巻き込む程困窮しとらんわ!!」
淫魔王は机をバンバン叩き、涙を零している。その姿が淫魔を統べる王というにはあまりに惨めで、小太郎と魔族二人は顔をそむけるしかなかった。
「せっかく……せっかくここまで来たのに!!対魔忍とか魔族のハーフとか何人か奴隷にして戦力も増えて来たのに!政界にも財布できて日本で好き勝手できるところだったのに!なんでこうなんだよお~~~~~~~~~~~!!!」
「い、淫魔王様……」
たまらず淫魔王の部下らしき淫魔が淫魔王のフォローに入る。離れて蹲っている淫魔王に代わり、部下の淫魔が説明を始めた。
「兎に角、現在我々は原因究明とファンタジック遊園地運営に忙しい。ゲストとしてくるのはいいが、ビジネスで来るのは遠慮願いたい」
「バッカお前俺タニシじゃねえよー」
淫魔王が笑いながら部下の頭を叩きながらふざけている。ふざけていないとやってられないのだろうが、部下は淫魔王の胸倉を掴んで額に青筋を浮かべていた。
「ウソ。ゴメン……」
ちょっと涙目で謝る淫魔王。長としてそれでいいのか。
「まあ今聞いた通りだ。この遊園地は一応稼働している。ゲストとしてなら歓迎するので、好きに楽しんでくれたまえ」
淫魔王が仕切り直しと言わんばかりに空気を変える。小太郎としては気が進まないが、調査が任務のため、ファンタジック遊園地の入園を決める。
「小太郎、テーマパークとはいえ、敵の本拠地に変わりは無い。十分に警戒して行くぞ」
「俺たちはこういうの慣れてるけどよ、注意しておくことに越したことはねえからな」
小太郎にボーボボと頭領パッチがアドバイスとばかりに話しかけてくる。
「二人共……
その恰好で言っても説得力ねえぞ」
ボーボボの恰好は少年を想わせるTシャツとハーフパンツ。頭領パッチはその一頭身のどこをカバーするのか疑問に思わせるワンピースと麦わら帽子だった。完全に遊ぶ気満々である。
「うっしゃー!!遊ぶぞオラ―!!」
「ボボきゅん!私メリーゴーランドがいい!!」
ボーボボの腕に絡むようにクネクネアルク頭領パッチ。すぐさま投げられているところから慣れたものだと考える小太郎にふと声をかけられる。
「ふうまちゃん!見てこれ!」
「蛇子……ってそれどうした?」
蛇子は着ていた対魔忍装束ではなく、桜色のワンピースの上に落ち着いたカラーのテーラードジャケットを羽織り、まさにデートに行くために御洒落しましたと小太郎に視線を送っている。しかし小太郎はそれ以上に疑問に浮かぶものがあった。
「ふふふ~どう?似合ってる?」
「似合ってるがどこで買った?お前こっち来る時そんなの持ってきて無かったろ」
「あそこにブティックがあったの!メンズもちゃんとあったし何より!!」
蛇子が自身の後ろにいる人影を前に突き出す。魔界騎士のリーナだが、彼女もまた先程までの魔界騎士衣装とは違ったコーデに身を包んでいた。しかし恥ずかしいのか、赤面させて俯いている。
「あ……あまり見るな……」
「お、おう……その、似合ってるぞ?」
「っ!……つぅ」
手提げ鞄で赤面した顔を隠すあざとさ。小太郎は少しときめき、蛇子はライバル出現かとリーナを見るが、リーナにはそれどころでは無かった。
「おい貴様ら、ここは未だ淫魔共の本拠地であるという事を忘れるな。気を引き締めて行け」
「イングリッド様……申し訳ありません!」
イングリッドの言葉にリーナが答えるが、小太郎は見逃していなかった。イングリッドの左手にファンタジック遊園地の園内マップが書かれたパンフレットが握られている事を。
「ちょっとあんたどういうことよ!!」
そんな中にゆきかぜの文句を言う声が聞こえた。どうやらイモラーと言い合っている。
「なんで『ファンタジックカレー』の具にチキンじゃなくてビーフ使ってんのよ!!」
「こちらのシェフの意向ですブー」
「意向って何よ!こんな……!」
「おい!ゆきかぜ!!」
ゆきかぜがイモラーのマスクを取りにかかる。小太郎が止めようとするが、距離的に間に合わない。
「こんなマスク取って、ちゃんと謝りなさいよ!!」
ゆきかぜがイモラーのマスクを剥がす。その下にあったものは
「私は残念よ……ゆきかぜ」
「そんな……
お母さん?」
ゆきかぜの母親、水城不知火だったのだ。ゆきかぜは数歩後ずさり、足をガクガクと震わせる。
「お母さん……なんで……?」
「淫魔王様は私を救ってくれた。母親としての私ではなく、女としての私を取り戻してくれたの。ただ枯れてゆくだけだった私を」
不知火は艶やかに笑いながら自身の胸に手をあてる。その表情に娘を想う様子は何処にもなく、自らの悦楽を求めるメスの顔をしていた。
「ウソだ……
ウソだーーーーーーーー!!!」
「ええ!!?」
ゆきかぜは起こった事が信じられず、目の前にいる母親をライトニング・シューターで打ち抜くために引き金を引く。小太郎が驚きの声をあげ、不知火はどこからかバーニアを吹かし、垂直に飛行。ライトニング・シューターから打ち抜かれた雷が追尾し、数秒ドッグファイトしたのちに不知火に激突。『I LOVE SUKIYAKI♡』と形作られた雲が浮かんでいた。
「……」
「お前達は、いつもこうなのか?」
「そんなわけあるか!!!」
小太郎の叫びは地下に広がるヨミハラに吸い込まれていった。
アクション対魔忍でも蛇子が出てきて作者筆が遅くなってしまう……!