ファンタジック遊園地に入場した小太郎たちは淫魔王がいると思われる場所をマップで探していた。
「考えられる場所と言えば……あそこの城だけど」
蛇子は指をさし、それに小太郎と鹿之助、リーナが見上げる。某夢の国に出てくるような絢爛豪華なプリンセス城があり、ファンタジック遊園地の目玉であると窺える。ゆきかぜと達郎は最早デートテンションで二人いちゃつきながら遊園地をエンジョイしていた。
「おんどりゃーーーー!!!」
「「!!?」」
唐突にボーボボが叫び走る。それに合わせて頭領パッチも小太郎目掛けてダッシュする。
「遊園地といえばーーーーー!!」
「遊園地といえばーーーーー!!」
「「ジェットコースターで決まり!!!」」
絶妙にダサいポージングを決めて再び走る。
「お、おい待て!ここは仮にも魔族の領域なんだ!慎重に行かないとやられちまうぞ!しかも!」
「乗りこめ!」
「おうっ!」
小太郎はボーボボと頭領パッチの乗り込んだ先を見る。
「そこジェットコースターじゃなくてメリーゴーランドだよ!!」
「「着!」」
呑気な笑顔でメリーゴーランドを楽しむボーボボと頭領パッチ。その隣の馬に乗る魔族に気付き、そちらへ振り向く。
「っ!あいつはまさか淫魔王の!」
「やっぱり淫魔王は私達へ刺客を放っていたのか!」
「私はこのメリーゴーランドの守護神“サイクルン”。淫魔王様より貴様等を倒す命を受け馳せ参じた。これより貴様等の命は無いものと思え!」
「「「っ……」」」
小太郎、鹿之助、リーナはサイクルンの言葉に戦闘態勢に入ろうとする。しかし、サイクルンはメリーゴーランドの性質上、反対側に回ってしまい、ボーボボと頭領パッチと共に姿が見えなくなる。
「これは、奴の戦術なのか?」
「恐らくそうだ。奴はここの守護神と言っていたし、このメリーゴーランドだって何か仕掛けが……」
リーナと小太郎が考察していると、三人の乗った馬が戻ってくる。戻ってきた三人はデフォルメが施された……というより
「ゆるキャラになってるーーー!!!」
「I am……アンパンマン」
「いや違う!!」
く○モンやふっくら○まこ。頭領パッチだけゆるキャラでなくアイア○マンスーツに着替えていた。頭領パッチの頭身に合わせていたので分かりやすかった。
「くっ……まさか一瞬の間にくま○ンに着替えさせられるなんて……」
「これが鼻毛真拳奥義“ご当地はや着替え”だ。しかし、貴様もハジケリストとは」
「え?そうなのか!?」
「え!ハジケリストってなんだ!?」
小太郎は着いてきていたがリーナはさっぱり理解できず、小太郎に顔を向ける。因みに小太郎もよくは知らない。
「バレましたか。しかし一度滅びたハジケリスト、その復活を知った時、私は歓喜しました。歴史の闇に消えたあのハジケ勝負……楽しませていただきます!!」
着ぐるみを脱ぎ捨てたサイクルンは乗っている馬のポールを股にかけ、くるくると回転する。徐々にその回転は強くなり、強風を巻き起こしていく。
「これぞメリーゴーランド真拳“相乗回転撃”!!私の守護せしメリーゴーランドで、私に挑むことを後悔するがいい!!」
「なっ!?メリーゴーランドである必要が無い!!」
「そこ!?」
リーナのツッコミに突っ込む場所が違うと驚く小太郎。それを余所にサイクルンの放つ斬撃は周囲の鉢植えや防護柵を容易く切り裂く。ついでに頭領パッチのトゲも切り飛ばされた。
「これ、カマイタチか!」
「真空刃で皮膚を切り裂くっていうアレか!何も見えなかったぞ!」
「上等だー!俺達も遊園地ならではの攻撃を見せてやる!!」
「え!あるのか?」
ボーボボの言葉に小太郎は驚きの声を上げる。ボーボボは全身に力を籠め、金色のオーラを放ち、必殺技を放つ。
「ふん、面白い!なら見せてもらおうか!!」
「おおおおおおおおおおおおお!!!
“ノートルダム聖堂餅つき大会”!!」
パリのゴシック建築を代表するカトリックの大聖堂で、日本の稲作信仰行事を行うというある種罰当たりな必殺技。一瞬にして杵と臼を取り出しているのはどういう原理なんだと小太郎は戦略の幅が広がる可能性を思案する。
「クソ!こんなにもハジケた男とは、だが勝つのは私だ!メリーゴーランド真拳“白馬の蹴撃”!!」
サイクルンは自身の乗る馬に力を与えると、馬がポールから外れ自由自在に動くようになった。他の遊具は上下に格納され、馬の行動制限も無くなる。
「このメリーゴーランドは内部からの脱出は不可能!どちらかが倒れるまで、この回転が終わる事は無い!!この一撃で終わりだボーボボ!!」
メリーゴーランドの回転に乗り、高速でボーボボと頭領パッチに迫るサイクルン。小太郎は蚊帳の外のため、見守る事しかできない。
「ボーボボ!!」
「面白れぇええええ!!なら俺も鼻毛真拳の超奥義を見せてやる!!」
「ち、超奥義だと!?」
「鼻毛真拳……超奥義!!!」
ボーボボは全身から金色のオーラを発し、鼻毛を展開する。更に横半分に割れたアフロから飛び出したラグビー部員がサイクルンを拘束する!
「な、なんだこのラグビー部は!?」
「“限界タッチダウン”!!!」
「ぐっはああああああああああああ!!!」
「鼻毛関係ねえーーーーーーーーー!!!」
さっきまで展開した鼻毛はどこへやら。剣道の袴に着替えていたボーボボがサイクルンの頭にダンクシュートを決める!最早色々とごちゃ混ぜだが、それを突っ込むキャパシティはふうまにはまだなかった。
「な、なるほど……これが、真の……ハジケ……リス……ト……」
地面に激突するサイクルンと、華麗に着地するボーボボ、まだメリーゴーランドで遊んでいる頭領パッチと、両者の決着は明らかな結果で終わる。しかし、まだサイクルンは意識を保っていた。
「流石は……ハジケリストボーボボ。淫魔王様に抗うに足る強者。これを……受け取るがいい」
「これは……」
サイクルンが渡したのは透明なプレート、サイズ的には最早カードと言えるものであった。
「それは淫魔王様の下に行くためのカードです。全部で5枚あり、それぞれこのファンタジック遊園地の目玉アトラクションに存在する守護者が所持しています。詳しくはパンフレットを」
「……もしかしてこの大きい番号のやつか?」
「いかにも。残り4つの守護神も淫魔王様直々の配下なり。因みに、あの城もただのアトラクションだから淫魔王様はいないぞ。淫魔王様は貴様等に備えるため、我らにも行方を告げず身を隠しておられる」
「なるほど、つまりこれらを集め、重ねる事で、淫魔王への道が分かるという事だな」
「然り、諸君らの健闘を……祈る……グフッ」
話す事を話して、サイクルンは意識を飛ばす。サイクルンを見下ろしながらボーボボは呟いた。
「サイクルンよ、お前もまたハジケリストだったというわけだ。せめて次生まれ変わる時は、真っ当な奴になれよ」
「いや死んではないだろ」
「兎に角次の行先は決まった。先を急ぐぞ」
「あれ?そういえばイングリッドは?」
「イングリッド様は戦力を割いて戦った方が効率的だとお一人で探索に行かれた。私はお前達が暴れないかを監視する役目を与えられた」
「……さっきのは暴れた範疇じゃないか?」
「あの程度ならノマドでは日常だぞ?」
「ノマドはハジケリストの巣窟だった?」
リーナ達の職場環境に少し、いやかなり変な想像をするふうまであった。
何があったわけじゃないがハジケが足りなかったのだ。