前回、淫魔王の支配するファンタジック遊園地の守護者、サイクルンを撃破したボーボボ達。彼らは今、次のアトラクションへ向けて歩を進めていた。
「ふうまちゃん!クレープ一緒に食べよ!」
「蛇子……敵との連戦に食い物を腹に入れるのはどうかと思うんだが」
「でも腹が減ってはって言うでしょ?ほら、あーん」
そう言いながらふうまの口元にクレープを持ってくる。ふうまとしては、敵の本拠地でものを口にしてもいいものか、しかし女子の好意を無下にするのも憚られる。二つの思いに揺られ、ふうまが出した結論は……
「……っはむ!」
「っ!」
「……美味いな」
「うん!あ、こっちも美味しいよ!」
蛇子に付き合うふうまと、ふうまのリアクションに喜ぶ蛇子。傍から見れば只の遊園地デートである。が
「お前達、ここに来た理由を忘れてないか?」
「り、リーナ!?」
「リーナちゃん!これは作戦なのだよ!!」
「作戦?これのどこが?」
リーナの訝し気な顔を気にする事も無く、蛇子は自信満々に説明を始める。
「まず、私達はここで淫魔王を倒す事になったじゃないですか?」
「いや、確かにそうだが……」
「そこで!賢い蛇子は考えたの。ここには沢山の観光客がいるんだから、蛇子達もそれに紛れて楽しんでいれば、敵も一般客を巻き込めないから、敵を探すのに集中できるって事!!」
「蛇子……それ、今考えたろ」
「えへへ、バレちゃった♪」
絆されそうになる事も無くツッコむふうまとペロリと舌を出してとぼけている蛇子。まるで反省の色が無い。
「ん?そういえば色黒の少女はどうした?一緒にいた男もいないが」
「え?ゆきかぜ!」
リーナに言われ周囲を見回しても、ゆきかぜも達郎もいない。なんならボーボボ達もいない。完全に迷子である。
「何やってんだあいつらーーーーーー!!!」
所変わって、ここはファンタジック遊園地のアトラクションの一つ『アニマルトレイン』。ゆきかぜは鼻歌を歌いながら、達郎と腕を組んで歩いていた。
「ふんふんふふ~~ん♪」
「ゆきかぜちゃん楽しそうだね」
「当然でしょ!達郎とデートなんだから!」
敵地にいるなど欠片も感じさせない空気は、今からこの地に血の雨を齎す人物などと考えられない程に甘ったるい。
「ふっふっふ、そんな気持ちでこのヨミハラに入るとは……余程の間抜けなようだ」
「……何よ」
ゆきかぜ達がアニマルトレインに入ろうとした時、一人の魔族が立ちふさがる。
「我が名はアニマルトレインの守護神『ワンヒン』!!貴様ら対魔忍と、ノマドの目障りな魔界騎士を葬るため参上した!さあ覚悟してもらうぞ!!」
ワンヒンが一つ指を鳴らすと、大量動物が二足歩行で二人に突撃し、某ジ〇リの恩返し物映画のワンシーンが如く動物達は達郎とゆきかぜを運んで……
「イヤー痴漢ーーーーーー!!!」
否、ゆきかぜは躊躇など一切無くライトニング・シューターで動物達を撃ち抜いた。もしもここにふうまがいれば「何やってんだテメーーーーーー!?」とあっただろうが、ここにふうまはいない。
「ゆきかぜちゃん……可憐だ」
某愛護団体が激怒しそうな一撃も、恋愛脳にやられている達郎には可愛い女の子がぶりっ子しているようにしか見えていない。余りに手遅れである。
「お前……マジか?」
ワンヒンはドン引きしながらも、自分の使命を忘れず、目の前の対魔忍に対峙する。
「ま、まあいい。ここは一人ずつ倒していこうじゃないか。行くぞ!」
高速で動くトレインの上を、ワンヒンは慣れた動きで達郎に迫る。達郎も対魔刀で応戦するが、技術の連弩はワンヒンの方が二枚三枚と上手であった。
「ぐ、ぐううう……」
「はっ!口ほどにも無い。他の対魔忍もそうなのかもな。何にせよトドメだ!トレイン神拳!『縦横無尽列車』!!!」
ワンヒンが最後の攻撃と言わんばかりに神拳技を使う。16方向に伸びる線路から、激突なぞ考えていないようにトレインがアトラクションの規制をぶっちぎる速度で達郎に迫る。
「全16方位からのトレイン爆弾!!傷ついた貴様に逃れる術は無い!!貴様を殺した後は、あの小娘を始末させてもらおう!!」
「っ!?」
ワンヒンの言葉に、達郎は憤慨した。自分が貶される事は良い。しかし、自分の仲間や、大切な恋人が貶されるのには我慢がならない。彼の瞳に光が宿った。
「皆の……ゆきかぜちゃんの悪口は、許せない!!」
「ほざけ!!これから死ぬ貴様に、物を語る道理など無いわ!!!」
「死ぬ……か。ならその道理をぶっ壊す!!」
達郎は懐から新たな武器を取り出す。自らの在り方に立ち返り、身に着けた力を最大限引き出す獲物。それは
「フライ返しじゃねえか!!!」
「遊園地のアトラクションを武器にしてる奴が言うな!!」
ワンヒンに文句を言いつつフライ返しを中腰に構える。一呼吸吐き、脱力。
「これが僕の、皆を見続けて得た答え!一刀ハジケ流壱の型『千変万化』!!!」
達郎が振り抜いたフライ返しは、重量差を物ともせずに線路を宙へ弾き、達郎の頭上でトレインが激突する。
「なんじゃあーーーー!!?」
「一刀ハジケ流は、かつて魔を滅する為に開発された一刀流の派生剣術。あまりの危険性から、天才の姉さんですらその存在は伝えられる事は無かった禁断の流派」
「な、ならばなぜ貴様にそれが伝わっている!?」
「簡単だよ。見つけたんだ。そして修行した。これ以上、皆に離されないように」
それは、達郎なりの苦痛の表現なのかもしれない。仲間の皆はそう思っていないのかもしれない。ゆきかぜは自分が守ると言うのかもしれない。しかし、達郎は自分が守りたいのだ。力を欲し、守る手段を欲し、そして見えた新たな地平。皆に追いつくには周回遅れかもしれないが、達郎はこの力で前に進む!
「ふざけるな!!ただのフライ返しがーーーーーー!!!」
「一刀ハジケ流肆の型『雲外蒼天』!!!」
新たに現れたトレインの雨。再び中腰に構えた達郎は全て十字に切り裂く。狼狽したワンヒンの隙を見逃す事無く。達郎は一瞬の内にワンヒンとの距離を詰める。
「なっ!?」
「一刀ハジケ流膝の型!!『
「ぎゃああああーーーーーーー!!!」
居合の刃に風遁の力を乗せ、フライ返しの面でワンヒンの顔面を振り抜く!強大な風の力に煽られたワンヒンは耐える間もなく天上へ激突した。
「僕は絶対に負けない。魔族にも、悪意にも」
フライ返しを懐にしまい、丁度周り終えたアニマルトレインを降りた達郎は、自分を待つ女の子に目をやる。
「あ、達郎!!!大丈夫だったの?」
「ゆきかぜちゃん、心配してくれてありがとう。何とか倒してきたよ」
「達郎一人で?すっごーい!!いつの間にそんな強くなったの!?」
「ゆきかぜちゃんをびっくりさせたくてね。……ゆきかぜちゃん」
「?どうしたの?」
何事か分からないゆきかぜに向き直り、達郎は告げる。
「これからは、僕も隣に立ち続けるから。もう、置いてかれたりしないから」
「達郎……ならしっかり追いつきなさいよね!!」
ゆきかぜは誰にも見せないような笑顔で返す。互いしか知らない誓いを立て、二人はアニマルトレインをあとにした。
……死屍累々とした動物達の惨状を放置したまま。
「いや絶対もっとツッコむとこあるだろ!!」
「ふうまちゃんどうしたの?突っ込むだなんて」
「こんなところで盛っている場合か愚か者」
「そういう事じゃねえよ!!」
カービィのエアライダーの情報。いつでも待ってるぜ!!