ブルーアーカイブZEXAL:集いし三勇士 作:ハルトォォォォォォォ!
キヴォトスでもかっとビングだぜ、俺!
「…どうやら、別れの時が来たようだ。」
俺とアストラルの最初で最後のデュエル。
大勢の仲間達に見守られながら、とうとう決着を迎えてしまった。
「アストラル…。分かってる。絶対泣かねぇ…!」
「…遊馬、私は君の笑顔が大好きだった。忘れないで欲しい。その笑顔を、"かっとビング"を!」
空から降り注ぐ無数の粒子。
俺たちの世界が段々と光に包まれていく。
ヌメロンコードの力によって、今この世界は書き換えられようとしていた。
「かっとビング!…それは、勇気を持って一歩踏み出すこと!それは、どんなピンチでも決して諦めないこと!それは、あらゆる困難にチャレンジすること…!」
くそっ…泣かねぇって言ったのに…涙が勝手に溢れ出して止まらない。
でも、最後はちゃんと笑顔でって決めたんだ。
俺はぐちゃぐちゃになりそうな感情を抑えて歯を食いしばった。
「忘れねぇ…お前のこと、絶対忘れねぇ!…アストラルー!!」
「私も決して忘れない、遊馬…!」
こうして、俺は生涯の相棒に別れを告げた。
いや…別れなんかじゃない。
俺は心のどこかで、きっとまた会えるって信じてるんだ。
だから、俺にとっては別れなんかじゃないんだ。
眩しい程に輝いていた光が突然に消え、涙で滲んでほとんど見えてなかった視界が完全に真っ暗になった。
音も聞こえない。あるのは僅かに残った意識だけ…。
周りにいたみんなの気配もなくなった。
これからどうなるんだろう、俺は少しだけ不安になると無意識に首に掛けていた"皇の鍵′に触れていた。そうしていると心が落ち着くからだ。
「シッテムの箱へようこそ、九十九遊馬先生。」
暗くて無音の空間が続いていたさ中、不意に機械音が語りかけてくる。
もちろんオボミやオービタルの声でもない、聞いたことのない謎の声…。
何を言ってるのかはよくわからないけど、とりあえず俺も口を動かそうとした。
けど、声が出なかった。視界も変わらず真っ暗なまま…一体この空間はいつまで続くんだろう。
「遊馬先生…きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。」
始めはノイズが入って機械音のように感じていたその声が、徐々に鮮明になっていくと、それは知らない女の人の声だと認識出来た。
それに先生って…?俺まだ13歳なんだけどなぁ…。
「何も思い出せなくても、あなたは今までと同じように自分の信じた"選択"をされるでしょうから…。」
「あなたにしか出来ない選択の数々…これは本来、大人が背負うべき責任…。まだ子供であるあなたに背負わせるには荷が重すぎるかも知れません。」
選択や責任…俺に語りかけるその声は少し苦しくて、辛そうだった。
そしてそれを俺に背負って欲しいって頼んでるのか…?
困ってるなら力になってやりたいけど…生憎今の俺は他人のことを考えてられる余裕はなくて、自分のことでいっぱいいっぱいだった。
だからこの人の期待に応えられる自信は…正直なさそうだ。
「ですが、私が信じられる"最後の希望"であるあなたになら…。この捻れた終着点とはまた別の結果を…。」
最後の希望…か…。
そんな言葉を聞くと、ふと頭に浮かんでくる。
アストラルとの決着を付ける切り札として使ったあのカードを。
俺はこれからどんな未来を切り開いていくんだろうな。
アストラル…やっぱり俺、お前ともっと一緒にいたかった。
もっと一緒に、デュエルしたかったよ…。
「あなたが失った"大事な方達"に再会できる選択肢も、きっと見つかるはずです。」
え…?
淡々と語られる中で発せられたその一言を、俺は聞き逃すことはなかった。
俺が失った大事な奴ら…カイトやシャーク、そしてアストラルにまた会えるって、そう言ってるのか?
もしそれが本当なら、前言撤回だ…!
俺は声には出せないが頭の中で精一杯叫んだ。
この人の言った責任を背負う覚悟を。
その責任ってのがどれほど重いものかはわからない。
もしかしたらまたあの時みたいな辛い気持ちを味わうことになるのかもしれない。
それでも…それでまたあいつらに会えるなら…デュエルが出来るなら…!
「…ありがとうございます。先生。"キヴォトス"をよろしくお願いします。」
そんな俺の必死な思いに応えるかのように一瞬、視界が明るくなった。
そこに映ったのはさっきの声の主であろう女の人で、顔や身体は何故だか傷だらけでボロボロだった。
俺は咄嗟に大丈夫かと手を伸ばそうとしたけど、どう頑張ってもその手が届くことはなかった。
「遊馬先生はお優しいですね。けど、私のことは気にしないでください。」
そしてそう言って優しく微笑みかけてくれた女の人の表情を最後に、俺の意識は完全に闇の中へと落ちていった。
…
……
………
「やっべぇ遅刻遅刻〜!」
「また遅刻ですか…全く、先生が遅刻なんて教育者の立場としてどうかと思いますけど?」
「ごめんごめん!ユウカ!今日のシャーレの当番、よろしくな!」
「はぁ…まずはこの溜まった資料を片ずける所からですね。早く先生も作業に取り掛かってください!」
「は、はいっ!!」
…ヌメロンコードの力によって世界が光に包まれたあの後。
俺は目を醒ますと知らない場所にいた。
ハートランドシティとは似ても似つかない、近未来的な空間。
そして俺はそこで"七神リン"って人に出会った。
その人が言うにはここはキヴォトスっていう巨大な学園都市らしい。
何を言ってるのかさっぱりだったし、そんなことよりも鉄男や小鳥…みんながちゃんと無事なのか、心配な気持ちで頭がいっぱいだ。
でも、そんな俺にお構い無しにリンは話を進めてきた。
それでなんやかんやあって、俺はここで"先生"をやることになったんだ。
もちろん最初は納得出来なかったさ。
ここがアストラル世界でもバリアン世界でもないなら、俺がいる意味はねぇ。
今すぐにでも元の世界に帰る方法を探さないとって、そう思っていた。
けどそんな時、俺の本能が語り出したんだ。
俺にはこのキヴォトスで果たさなきゃいけない使命があるって。
背負わなきゃいけない責任があるって。
それはこの世界のためでも、俺自身のためでもあるって。
その時、皇の鍵が一瞬光ったような気がした。
もしかして、この世界にアストラルが…?
そんな根拠も確証もない可能性を感じた瞬間から、俺の消えかかっていた闘志には火がついてきた。
きっと俺を導いたこの世界には何かがあるはずだ。
そしてそれは、俺の大事な奴を取り戻すきっかけになるかもしれない。
そう考えたら不思議とやる気が溢れ出てきたんだ。
やってやるさ…"かっとビング"だ!俺ーッ!!
……そんな訳で、先生になった俺に与えられた活動場所"シャーレ"で今はこうして過ごしている。
右も左も分からない俺の為に一緒に仕事を手伝ってくれてるのがこの"早瀬ユウカ"だ。
リンにシャーレを案内してもらった時に会った生徒の一人で、おせっかいだけど優しいやつだ。
そんなところを見てるとどこか小鳥と重なるときがあるぜ。
「…先生、今他の女性のこと考えてました?仕事に集中してください!」
「はいぃぃ!…って言われても、書いてあることが難しすぎてさっぱりだぜ。」
「まぁ確かに、中学生には少し難しいかもしれませんね…。そもそもどうして君みたいな子供が先生に選ばれたのか、正直疑問に思います。」
「そんなこと言われてもよー。俺も気付いたらここに居て、気付いたら先生やることになっててさ…なぁユウカ、俺ってこれから何すればいいんだ?」
ここでの生活を始めてから1週間近く経ってるけど、特にこれといった収穫もない。
そろそろ何か行動に移さないと…そんな衝動に駆られた俺はユウカに相談してみることにした。
「そうですね…。先ずはキヴォトスのことを詳しく知る所から始めてみるのはどうですか?」
「ギヴォトスを知る…?」
「はい。ギヴォトスは学園都市ですし、ミレニアム以外にも色んな学校があります。とりあえず他の学校も見て回っていけば先生の探している人の手掛かりも見つかるかも?」
ユウカはそう言いながら学校の資料を並べてくれた。
ミレニアムサイエンススクールには、ユウカに当番を頼むときに1度行ったことがある。
でもそのくらいで、生徒達みんなに挨拶出来た訳でもなければ他の学校には行ったことすらなかった。
「…ナイスアイデアだぜ!そうと決まれば早速出発だー!」
「え?今からですか?…でもまだ資料も残ってますし…。」
「んなもん後でも平気だって!案内してくれよ、ミレニアム!」
「しかも1度行ったことのある学校から見に行くんですね…。」
「せっかくユウカが来てくれてるんだ、ユウカが通ってる学校を案内して欲しいぜ!」
ユウカともまだ知り合ったばかりだ。
お互いのこともあんまり話したことがないし、せっかくならとユウカが通ってる学校を紹介してもらうように頼んでみることにした。
「はぁ…わかりました。先生、ちょっとお時間いただけますか?」
この13歳の先生は私に屈託のない純粋な笑顔を向けてきた。
まるでそれは太陽のようで、何故だかこっちまで活力が湧いてくる。
軽く溜息をついたけど、嫌な気はしない。
散らかった書類を急いで片ずけて、私は先生の方へ手を伸ばした。