ブルーアーカイブZEXAL:集いし三勇士 作:ハルトォォォォォォォ!
…私は最初、この少年がシャーレの先生に選ばれたと知った時はとても驚いたし、反発していた。
本来先生に選ばれるのは大人であるべきだし、自分よりも歳下の子供にそんな責任を負わせるなんて有り得ない話だって。
どうしてこんな子供がシャーレの先生という重要かつ責任重大な立場に選ばれたのか疑問に思う。
でも、そこにあるのは疑問だけで不思議と不安はなかった。
この少年を見ていると、何故だかわからないけど普通の大人よりも頼りになるような安心感みたいな…強さを感じたから。
だから…少し期待してるの。
この小さい先生がキヴォトスでどんな未来を描くのか。
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「…それでは先生、ここが"ミレニアムサイエンススクール"です。早速校舎を案内するので着いてきてください。」
「おう、頼んだぜ!」
シャーレを出てから暫く経ち、ミレニアムの校門前まで到着する二人。
生徒であるユウカが同じくらいの背丈の少年を連れて歩いている光景はやはり目立っている様子。
周りから発せられる異様な視線に、横を通りかかれば姉弟だの親子だのと好き勝手呟かれている。
ユウカは余裕のある表情で平静を装っているが、内心は羞恥心で震えていた。
「へ〜…なんかミレニアムってハイテクそうな機械とかいっぱいあるよな〜」
「ミレニアムは常に最先端技術を追求する学園ですからね。
でも少し意外でした。先生ってそういうの見たら絶対はしゃぐと思っていたので…。」
先生という立場であろうと中身は年端もいかない少年。
その振る舞いも特別大人びているという訳でもなく順当に天真爛漫な中学生といった感じだ。
そんな少年がこう言った機械を見れば、我を忘れる程に好奇心をそそられるものだろう。
しかし意外にも遊馬にそのような気はないようで、ユウカにとってそれは小さな計算外のひとつだった。
「こういうのは俺の元いた世界でもあったからな。てか絶対はしゃぐって、お前俺のことどういう目で見てるんだよ…」
たとえ中身が子供だろうと、先生と生徒という関係には変わりないはず。
てっきり遊馬の中ではもう少し慕われたりするものかと思っていたみたいだが、案外そんなこともなく普通に子供扱いされている始末。
少しばかり頬を膨らませた遊馬はじとっとした目つきでユウカの方を向いた。
「どういう目でって言われてもねぇ…弟とか?」
ぼーっとユウカはそうつぶやく。
弟かぁ…
そう聞いた遊馬の中でのユウカのイメージが幼馴染だったものから姉へと変わりかけると少し顔を引き攣らせた。
「ユウカ先輩、弟が出来たんですか!?」
そんなたわいもない会話をしていると唐突に、後ろから驚く声が聞こえてきた。
その驚いた声に連鎖するように遊馬達も驚いて振り返ると視界にうつったのはピンク色の髪をしたツインテールの小柄な少女だった。
「ひゃっ!?コユキ!?ち、違うわよ!この人はシャーレの先生で…ってあなた、また反省部屋から抜け出したわね?」
「にはは〜…そ、そんなことより、この人が噂の先生なんですか?どう見ても子供にしか見えないですけど!」
ユウカがコユキと呼ぶその少女は、指摘に対して誤魔化し笑いをしながら自然に話題をすり替えようとしていた。
"反省部屋"ということは、かなりの問題児であることが伺える。
だがコユキ自身、連邦生徒会に選ばれたシャーレの先生の素性にはそれなりに興味があるのは確かだ。
ユウカの視線から逃げるように目線を遊馬の方へ変えた。
「俺、九十九遊馬!コユキって言ったっけ?よろしくな!」
「確かに子供ではあるけど、これでもちゃんと連邦生徒会が選んだ先生よ。失礼のないようにね、コユキ。」
遊馬の言葉足らずな自己紹介に補足するように付け足すユウカ。
「ユウカ先輩がそう言うってことは本当なんですね…。ふーん、この人が…。…私、黒崎コユキって言います!よろしくお願いしますね、遊馬先生!」
中学生の少年がシャーレの先生という半信半疑だった事実が確信に変わるとコユキは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
彼女と関わりが深かったユウカはその怪しい表情を瞬時に読み取ると、またろくでもないことを考えているなと溜息をついた。
「コユキ…失礼のないようにねって言ったはずだけど…?」
「うわーん!まだ私何も言ってないじゃないですかー!」
鬼のような形相で詰め寄るユウカに、わざとらしい嘘泣きをしながら後ずさりするコユキ。
「コユキ、俺になんか頼みでもあるのか?何かあるなら言ってくれよ!なんてたって俺は先生だからな!」
「本当ですか?にひひ…それじゃあ……」
コユキの悪巧みに気付くどころか、遊馬は先生として胸を張って純粋に好意を向けていた。
そんな疑うことを知らないといった彼の姿を見たユウカはますますこの先生とコユキに接点を持たせるのはまずいと、遊馬の手を引いてこの場を去ろうとした。
その時だった。
バンッ……!
唐突に鳴り響いた銃声と共に、放たれた弾丸が真横を掠め通っていった。
何事かと振り返ると先ほどまでの無邪気で悪戯な笑みは豹変し、不気味で殺意を放った笑みをしたコユキが、こちらに銃口を向けていた。
間一髪、ユウカは反射的に遊馬を庇ったが、突然の想定外な出来事に頭の中は真っ白になる。
バンッ!バンッ!
しかし思考を止めている暇はない。
二発、三発、こちらへ放たれる弾丸を、先生である遊馬を守るという一心でユウカは捌き続ける。
「ちょっとコユキ、いきなりどういうつもり!?いくら何でも洒落にならないわ!今すぐ銃を下ろしなさい…!」
ようやく今起きているこの状況を頭の中で整理したユウカは、コユキを止めるため説得を試みる。
本当なら力ずくで止めるという手もあった。
寧ろコユキの能力は計算力や解析力に特化している方であり戦闘力自体は並以下。
一対一なら、先生を庇いながらでも圧倒出来るという自信がユウカにはあったのだ。
だが計算外なことに、今のコユキには何らかの力が作用しているのか明らかに普段よりも高い戦闘力を有していた。
それはこのままではこちらの戦況が悪化すると分析するほどに。
その結果辿り着いたのが説得という望み薄な結論。
C&Cやセミナーに救援を求めるという選択もあったが、何故だか連絡が繋がらない。
おそらく回線経路をハッキングされているのだろう…弾丸から逃げている内に人気のない校舎裏まで追い詰められており助けが来る可能性は極めて低かった。
「にはは!それは無理な相談ですね!私はユウカ先輩が必死になって守ってるその"先生"に用があるので!」
「俺に…?」
一時的に鳴り止む銃声。
しかし銃口は下ろさぬまま、その殺意が消えることもなく。
「先生に用ってどういうこと…?やっぱりあなた正気じゃないわ!」
ユウカから見たコユキはやはり正気ではなかった。
それはまるで別人のように、何かに取り憑かれている。
「にはは〜私は正気ですよ!…先生に用があるというよりも、先生が持ってる"未来の大人のカード"に興味があると言った方が正しいですかね」
"未来の大人のカード"
一体何のことを言ってるのかとユウカは首を傾げるが、それを聞いた遊馬はハッと心当たりがあるように立ち上がった。
遊馬はコユキの右手をじっと見つめる。
そこには身体を蝕むように刻まれた禍々しい数字の刻印が書かれていた。
それを遠目で認識した遊馬は小声で"ナンバーズ"と呟く。
「でもどうして集めたはずのナンバーズがこの世界に……!」
「ナンバーズ…?先生、何かご存知なんですか…?」
ユウカは簡易的なシールドを展開しコユキの攻撃を捌きながらも遊馬が発した言葉を聞き逃さなかった。
「あーもうユウカ先輩のシールドめんどくさいです!!こうなったら……」
このままでは埒が明かないと判断したのか、銃弾を通さない程のユウカのシールドに嫌気がさしたコユキは懐から一枚のカードを取り出した。
「現れろ!"No.17 リバイスドラゴン"!!」
そして黒い縁で真ん中に青い竜が描かれたそのカードを掲げたコユキは、その名を唱える。
するとカードから黒い渦のようなものが湧き上がり、辺りが地響きを起こす。
その渦の中から"召喚"されたのはカードに描かれていた"モンスター"そのもの。
6本の羽を生やした青い竜がコユキの目の前に、遊馬達の前に敵意を向け立ちはだかった。
「な、なにあれ……」
「リバイスドラゴン!?なんでコユキがあのカードを……それに、Dゲイザーをセットしてねぇのにモンスターが見えるなんて……」
"No.17 リバイスドラゴン"……。
それはかつて遊馬が相棒であるアストラルと初めて共に戦った相手であった。
そしてこのナンバーズはそのアストラルが失った記憶のピースの一部。
そのカードを何故この世界の住人が持っているのか…。
更に今この場に現れたあのモンスターは本来の"デュエル"で使われるARソリッドビジョンには見えない。
明らかに実体を持ち、現実となっていた。
「せ、先生はあの竜をご存知なんですか…?どうしてただのカードからあんな化け物が……」
この光景を目の当たりにしていたユウカは、恐怖心から手足を震わせていた。
しかしそれでも、先生である遊馬を守るまいと震えた手で銃を強く握りしめる。
「ああ…!……ユウカ、ここは俺に任せとけ!」
「任せとけってそんな……危険です!」
「安心しろ。俺がコユキを正気にもどしてみせるぜ!」
覚悟の決まった表情でそう宣言した遊馬は、今までとは違いユウカの後ろではなく前へ。
銃器を持った少女とその少女が従えている青い竜の前に立ち向かっていく。
「コユキ、お前の狙いはこれなんだろ?」
そう言って遊馬が取り出したのは一枚のカード。
「にはは!その通りです!…さぁ、わかったなら早くそのカードをこちらに渡してください」
「へっ、そんなにこのカードが欲しいんなら…俺とデュエルしろよ!」
「はい?デュエル?なんですかそれ」
「なっ…!とぼけんなよ!デュエルだよデュエル!デッキは持ってんだろ?」
「そんなの持ってないですよ。私はただこの力を利用して、先生が持ってるって言う"未来の大人のカード"を奪いにきただけですよ!さぁ、覚悟してください!」
「ど、どうなってるんだ……」
遊馬にとってこの状況を解決出来る策はデュエルだけだった。
そう信じていたが、想像もしていなかった可能性がそれを裏切る。
それは本来、このキヴォトスにはデュエルモンスターズというものは存在していないのではないかということ。
確かによく見れば、コユキはデュエルディスクもDゲイザーも持っていなければカードもあの一枚だけ。
それに改めると遊馬はここに来てから一回もデュエルをしていないことを思い出す。
デュエル好きの遊馬にとってそれは有り得ないことだった。
遊馬の元いたハートランドシティでは一般人や、女子供老人でもデュエルを知らないなどということは無かった。
あって当然だったものが無くなっている。
その常識の違いを感じた遊馬は、改めてここが異世界なのだと実感する。
「だったらなおさら、アイツはどうすりゃいいんだ…!」
遊馬は再びコユキの召喚したモンスターを見やる。
デュエルが出来ないなら、どうやってあのモンスターに対処するのか。どうやってコユキをナンバーズの呪縛から解放するのか。
精一杯に考える遊馬だったが、そんな暇は与えられ無かった。
「いつまでぶつぶつ喋ってるんですか〜?にはは、そろそろ始めますよ!いけ、リバイスドラゴン!!」
「先生、危ない!!」
獲物の生命を刈り取るように、モンスターが牙を剥き出し遊馬の元へと高速で迫っていく。
遊馬は反射的に目を瞑り腕を前に出して自分の身を防ぐように覆った。
しかし、数秒以上経っても痛みは衝撃はやってこない。
どういうことだ、と遊馬は恐る恐る目を開いた。
するとそこには、モンスターの攻撃から遊馬を庇い腕から血を流し倒れているユウカの姿があった。
「ユ、ユウカッ!!おい、しっかりしろ!!」
「先生……逃げてください……」
自分が狙われていることなどすっかり頭から離れ、ユウカの元へと駆け寄る遊馬。
幸いキヴォトス人であるユウカはその攻撃で死に至ることは無かったものの、受けた衝撃の強さからもう立ち上がる気力も残っていなかった。
そんなユウカは不甲斐ない顔で遊馬に"逃げろ"と告げる。
「にはは!逃がしませんよ…!」
ユウカの告げた言葉をしっかりと聞き取ったコユキは、再びモンスターに攻撃の指示を合図する。
そしてまた、鋭利な牙が遊馬達の元に迫っていった。
『戦え、遊馬!"かっとビング"だ!』
(今のは…"アストラル"…!?)
攻撃が届く最中…遊馬の"皇の鍵"にほんの一瞬、光が灯された。
同時にたった一言、遊馬の失われかけていた心を鼓舞するように脳内に語りかけられる。
「先生、早くッ……!」
「……ダメだ、絶対逃げねぇ!!もうこれ以上、仲間が傷つくのは見たくねぇ!!だから俺は戦う!!"かっとビングだ、俺ぇ!!"」
その声を聞いた遊馬は歯を食いしばり立ち上がった。
一か八か。
決死の覚悟で遊馬は自分の力を信じ、未来を切り開くために"あのカード"を天高く掲げる。
「頼む、力を貸してくれ…!"FNo.0"!!」
そしてその想いに応えるように、カードに宿った力が遊馬達を救うため今この次元に現れようとしていた。
(ありがとな…アストラル……)
「「…天馬、今ここに解き放たれ…縦横無尽に未来へ走る!これが俺の天地開闢!俺の未来!!
……"未来皇ホープ"!!」」
「す、すごい…!こんなことって…」
まさに奇跡と呼ぶべきか。
現れたそのモンスターはどこか遊馬の分身とも言えるような雰囲気を醸し出していると。
あの不思議な力が何なのかはわからない。
ただひとつわかったことがあるとするなら。
"九十九遊馬"という少年は、大人にはない特別な強さを持っているのだろう。
だからこそ、シャーレの先生という"特別"に選ばれた。
気絶寸前の意識の中、ユウカはそう感じていた。
「な、なっ…!?先生もモンスターを"実体化"できるなんて聞いてないんですけど!?」
「実体化、ってことは…やっぱこれは現実なんだな」
このモンスター達が実体を持ってこの場に存在しているのは傷を負ったユウカが身をもって証明しているが改めて、今までも経験したことのない新たな戦いに遊馬の緊張感は高まる。
「…コユキ、今度はこっちのターンだ!!」
「で、でも!先生のそのモンスターは攻撃力0と書いています!私のリバイスドラゴンは攻撃力2000!到底及びませんよ、にはは!!」
「それはどうかな?…いけ、未来皇ホープ!リバイスドラゴンに攻撃!!」
「なにっ…!!」
それでも構わず、遊馬は未来皇ホープでリバイスドラゴンに対して立ち向かった。
「「ホープ剣フューチャースラッシュ!!」」
未来を変える一閃が、リバイスドラゴンを両断する。
しかしそれでも、手応えはあまり感じられなかった。
リバイスドラゴンもダメージを受けている様子はない。
コユキはそこで自身の勝利を確信する。
そして再びリバイスドラゴンに攻撃の指示を仰ごうとしたがその時、従えていたはずだったモンスターがこちらに牙を剥く形で静止しだした。
さらには手に持っていたカードまでもが遊馬の方へと吸い込まれていく。
「どういうこと……ですかぁ…………」
「よし、勝手は違うけどモンスターの効果はちゃんとそのまま使えるみたいだな。"未来皇ホープ"は戦った相手モンスターのコントロールを得ることが出来るんだ……とりあえずナンバーズはもっかい皇の鍵に封印しておくか」
アストラルとのラストデュエルで遊馬本人も初めて知った自分自身の正体。
それは数千年もの昔、アストラルがドン・サウザンドと戦った際の衝撃で分かれたもう一人のアストラルであった。
それを知った今ならあの時アストラルがやっていたことも出来るだろうと、遊馬は"No.17 リバイスドラゴン"そのカードを皇の鍵の元へと近付け、体内へと封印してみせる。
ナンバーズの脅威が去った瞬間、コユキの右手に刻まれた刻印は消えると溢れ出ていた邪気は祓われ、眠るようにその場に倒れた。
「コユキ…ユウカ……とりあえず、ミレニアムの誰かに知らせないと…………」
戦いを終えた遊馬も力を使ったことにより発生した疲れからか、意識が朦朧としていた。
それでも今ここで自分が倒れる訳にはいかないと何とか踏ん張っていたが…
「後は私達に任せて、休んでください。先生…」
白い髪のロングヘアの女性に優しく肩を叩かれる。
同時に深い安心感を覚えると、そのまま意識を失った。
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「失敗…ですか…。まぁいいでしょう…」
決して表に出ることはない世界の裏側。
黒く淀んだ世界の中には悪意が詰まっている。
「これからです…"ゼアルの力"。必ず手に入れて見せます。」
学園都市"キヴォトス"
異世界での遊馬の新たな戦いは、今ここから始まろうとしていた…。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回はこの話の続き…ではなく兄さんのお話を書く予定ですハルトぉぉぉぉぉぉ!!!!