ブルーアーカイブZEXAL:集いし三勇士   作:ハルトォォォォォォォ!

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お待たせしました。カイト編の後編になります!


復活のナンバーズハンター

 

 

 

 

 

場所はトリニティ総合学園の広大な敷地内。

 

通りがかる女子生徒から発せられる異様な視線を気にもとめず、顎に手を当て深く頭の中で思考を巡らせながら歩く青年。

 

天城カイトは、先ほど聞いた話を再び頭の中で整理していた。

 

そして、自分がこれからするべき事を模索する。

 

案としてカイトの頭に浮かんでいたのは三つ。

 

ひとつは"百合園セイアの予言"というものを信じる前提で、この世界に来たであろう二人の少年…"九十九遊馬"と"神代凌牙"を探すというもの。

 

しかし、この択はいささか望み薄だろう。

カイトはもう既に数時間以上は足を進めていたが、未だにトリニティの敷地を出ることはなかった。

数千の学校が存在すると言われた学園都市は恐らく想像以上の広さであることがわかる。

そんな異世界の中手がかりもなくたった一人で人探しなど奇跡が起こらない限り不可能だ。

 

「せめて"アイツ"がいればな……」

 

そして二つ目の択。

今カイトが呟いた"アイツ"。

その存在があれば、人探しも無謀ではなくなるだろう。

 

カイトはただ宛もなく歩いている訳ではなく、自身の右腕となる"パーツ"に利用出来そうなものが無いかを探していた。

 

兵器や銃器のような機械の利用が当然な世界ならば、スクラップの溜まり場があってもおかしくはないはず。

 

「…ん、なんだこれは?」

 

歩きながらふとポケットの中を漁ると、覚えのない一枚の紙切れが入っていた。

 

トリニティスイーツ店一品無料クーポン券……十中八九、桐藤ナギサの仕業だろう。

 

因みに三つ目の案はティーパーティーに戻り素直にナギサの提案を受け入れることだったが、それはカイトのプライドが許さなかった。

可能なら自分の力でどうにかしたいというのがカイトの心の何処かにあったのもそうだが、ナギサを完全に信用し傘下に加わるのはまだリスクが大きい。

 

せめて同じトリニティの生徒にティーパーティーやナギサ本人の評判や内情を聞いてから決断するのが懸命である。

 

「…一旦休むか」

 

一度は顔を顰めその紙切れを再びポケットに仕舞うカイトだったが、ふと横を見ると丁度クーポン券の対象内であるカフェが見えた。

 

疲労の限界という程でも無いがこのまま闇雲に歩いていても埒が明かないと改めてこれからの計画を練るためにカイトはその店へと足を踏み入れた。

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

「いらっしゃいませ〜!一名様でよろしいですか?」

 

トリニティの某所、笑顔で元気よく接客をしている学生の少女。

 

黒髪で髪を二つに結んだその少女は、客として入店したカイトの姿を見ると物珍しそうな反応をする。

 

(大人の人が来るなんて珍しいなぁ...し、しかもなんか気品があってかっこいい…)

 

「…おい、案内はまだか?」

 

「はっ…!し、失礼しました!こちらの席へどうぞ…!」

 

無意識に顔を赤らめ幻想に浸る年頃の少女は、指摘を受けるとようやく現実へと戻る。

 

カイトは案内された席へと座ると、未だにおどおどした様子の少女からメニューとお冷を受け取った。

 

「えっと、ご注文はお決まりですか…?」

 

「そうだな…キャラメルラテを一つ」

 

「キャラメルラテが一つ…と。他にご注文はございませんか?」

 

「ああ。それと、これを使いたいのだが…」

 

カイトはそう言って懐にしまっていた小さな紙を取り出す。

 

「有効期限は……ちょうど今日までですね。かしこまりました。ごゆっくりお過ごしください!」

 

少々落ち着きのなかった黒髪の少女は接客を終えるとカウンターの裏に戻っていった。

 

時間帯的な影響かまだ周りの客の数はそこまで多くなくカイトは一人静かな空間でリラックスする。

 

「しかし、これからどうするか…。ハルトは無事だろうか」

 

現状手がかりも何も得れていなかったカイトは行き詰まった様子で、ふと自分にとってかけがえのない大事な存在へと思いを馳せる。

 

"ハルト"その名前を口にしたカイトは、決して人には見せない寂しげな表情を浮かべていた。

 

もしもここが異世界ではなくヌメロンコードによって創り変えられた世界ならば、家族や知り合いが危険な目にあっているかもしれない。

 

カイトはそれを危惧していた。

 

しかし、今のカイトにはこの不安を打ち消す力もなく、その事実には無力感を感じざるを得ない。

 

 

 

 

 

「お待たせ致しましたでアリマス!こちらキャラメルラテにナリマ……ア、アババババババ」パリィン

 

そんな焦燥感にかられていたカイトの背後から、聞き覚えのある機械音が聞こえてくると同時に衝撃で地面に落ちるグラスの音が響く。

 

姿を見ずとも理解出来る。この声の主を。

カイトは脊髄反射で振り返る。

 

「オ、オービタル!?」

 

「カ、カイト様!?」

 

振り返ったカイトの目に映ったのはこの店のエプロンを着た自分のよく知るロボットの姿。

 

お互いは顔を合わせると同時に驚く。まさかこんな場所で再会を果たすなど思ってもいなかったからだ。

 

「ど、どうされましたかお客様!?」

 

グラスの割れる音と大きな声を聞いた先ほどの少女は急いでカウンターを飛び出し騒ぎの場所へとかけつける。

 

「"アイリ"さん…オイラ、とうとう我が主"カイト様"に再会出来たでアリマス!」

 

普通の人よりも感情豊かなそのロボットは涙を流し歓喜の声を上げ主であるカイトとの再会を喜んだ。

 

「ほ、本当!?…って、さっきのお客様だ。この人がオービタルの言ってたカイトさん?」

 

「如何にもでアリマス!まさかこのお店で再会出来るとは思いませんでした……」

 

「ふふ、良かったですね!えっと…私もうすぐ上がりなので後で少しお話できませんか?色々説明したいので…」

 

喜びに舞っているロボットとは裏腹にカイトは険しい顔で色々と問い詰めようと口を開こうとするが、少女の提案によりそれは遮られる。

 

「あ、ああ……」

 

落とされ無駄になってしまったキャラメルラテはこの際どうでもよく、カイトは一番に説明を求めていた。

 

今すぐにでも直接問い詰めたかったが、流石にこの場だと他の客の迷惑にもなるだろう。カイトは一度冷静に考え少女を待つことにした。

 

 

 

「ほらほら!カイト様もオイラが居なくてさぞ恋しかったことでしょう!共にこの喜びを分かち合うでアリマス!」

 

「…オービタル、貴様は少し黙っていろ!」

 

「カ、カシコマリ!!」

 

意気揚々とはしゃぎ回る子供のような機械にカイトは激昂する。

 

しかし、失っていた日常が一つ戻ったことで心の中には多少の安堵感を覚えさせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

 

「うちのオービタルが世話になったな。礼を言おう」

 

少女がアルバイトを済ませた後、カイト達は店の近くにある公園で話をした。

 

少女の名は"栗村アイリ"というらしく、敷地内なら当然というべきかトリニティ学園の生徒であった。

 

ゴミ処理場に捨てられそうになっていたオービタルをたまたま近くを通りかかったアイリが拾ったそうだ。

 

そして今日はバイト先の人手が少なかったようでオービタルのお節介から仕事を手伝ってもらっていた所こうして再会を果たしたと。

 

 

説明を聞き終えたカイトはアイリに対して礼を言った。

 

 

「いやいやそんな!でも凄いですね!オービタルからはしょっちゅうカイトさんの話を聞いてたんですけど、カイトさん自身でオービタルを作った、とか……」

 

「ま、まぁな………おいオービタル、貴様余計なことは話していないだろうな?」

 

「いない!いないでアリマス…!」

 

口が達者なオービタルに対し、カイトはアイリに聞こえないほどの声量で睨み問い詰める。

 

「…ではそろそろ俺達は失礼する。改めて助かったな。アイリと言ったか?この借りはいつか必ず返そう」

 

「オイラからも礼を言うでアリマス!」

 

「借りなんてそんな気にしないでください!……あ、行っちゃった」

 

風みたいな人だったな…と、空へ舞うカイトの後ろ姿を見たアイリはそう感じた。

 

(って、どうして空を飛んでるの!?)

 

 

 

 

 

 

 

「おいオービタル、貴様この世界に来てから1週間は経つらしいな。何か知っていることはあるか?」

 

「そうでアリマスね…年端もいかない少女達が当然のように銃器を振り回している、くらいでアリマスか?」

 

「それは俺も話には聞いている。しかし物騒な世界に来てしまったようだな」

 

「全くでアリマス!オイラも何度巻き添えをくらいそうになったか…」

 

アイリと別れた後、カイトはオービタルの力を使い空からトリニティの建物を見下ろしていた。

 

始めは普通の世界に見えていたが通りかかる生徒は皆実銃を携えていたり、人の言葉を喋る動物のような見た目をした二足歩行の生き物が当然のように日常に馴染んでいたりなど、バリアン世界での一件を経験したカイトでなければこうも冷静にはいられないだろう光景が広がっていた。

 

「ッ…!?オービタル、少し止まれ!」

 

「カ、カシコマリ!どうされましたかカイト様?」

 

そんな中何か異変を感じたカイトはオービタルに停止を促す。

 

ズドドドドドドドド!

 

カイトの見る視線の先にあったのは噂をすればと互いに銃を打ち合い、争っている女子生徒たちの姿だった。

 

「えっと、物騒でアリマスね…?」

 

「そういう事ではない。あの生徒の右手をよく見てみろ」

 

カイトが驚いているのは銃声や爆発音ではなく、争いの中にいる一人の不良のような風貌をした生徒が持つ"カード"だった。

 

「あれは…デュエルモンスターズでアリマスか?」

 

「ああ、それにあの妙なオーラは……」

 

そのカードは遠目で見てもわかるほどに禍々しいオーラを放っておりカイト達はそれに見覚えがある。

 

カイトはふと桐藤ナギサの言葉を思い出した。

 

手にした者は精神を操られ正気を失う"呪いのカード"。

 

イコール、"ナンバーズ"……。

 

 

 

「…?アイツ、何を始めるつもりだ?」

 

上空から目を凝らすと、恐らくナンバーズであるそのカードを持った不良生徒はカードを天に向かって掲げだした。

 

すると突然辺りの雰囲気が変わり出す。

太陽が隠れ満点の青空を支配するかの如く暗雲が立ち込み、雨が降り出す。

 

そしてカードを掲げた生徒の頭上に黒い渦が出現した段階で、カイトは何が起きるのかを察した。

 

「まさか…モンスターを召喚するつもりか!?」

 

「ええ?でもアイツら、デュエルをしているようには見えないでアリマスが…」

 

オービタルが口に出した疑問を、カイトも感じていた。

しかし、カイトは既に結論に行き着いていた。

これは空想のデュエルではない。紛れもない現実でカードの力を使っていると。

 

「あれは…No.15"ギミック・パペット-ジャイアントキラー"…」

 

カイトの予想は的中していた。

かつて一度は敵対したが最後は仲間として世界を救うために共に戦った戦士が使っていたナンバーズである。

 

その巨大さからこの地に現れた瞬間、地震が起きたかのように辺りが揺れ出した。

これはやはり現実で実体を持っていると実感させられる。

 

「いくぞ、オービタル!」

 

「へ?あ、カシコマリ!」

 

このままでは犠牲者が出てもおかしくはない。

そうと決まればカイトの取る行動はひとつ。

抗争の渦中に"ナンバーズハンター"は単身乗り込む。

 

 

 

 

「さぁ、ハンティングの始まりだ…!」

 

 

 

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

人通りの少ない廃れた通り街、一人の少女は正義という名のもと多勢に対峙していた。

 

「自警団のエース"宇沢レイサ"、ただいま参上!!」

 

「ちっ、お前いつもしつこいんだよ!」

 

「ウザいから宇沢ってか?ハハハ!」

 

「一回本気でわからせた方がいいんじゃね?」

 

星のような輪っかを浮かべ水色と薄い紫色が混じったような髪色をしたその少女は、三人の不良生徒の前に立ち強気に立ち向かっていた。

 

何を言われようとめげない。三人に銃口を向けられようとも、少女は気圧されることは無く自分の正義を信じ言葉を続ける。

 

「なんとでも言うがいい!さぁ、観念しろスケバンどもー!」

 

そうして少女も愛銃を取り出し不良達にその銃口を向ける。そしてたった一人、恐れも知らずに走り出した。

 

 

 

 

 

そして約10分……大量の銃声と爆発音が落ち着き、煙が晴れる。

 

「正義は必ず勝つ……!」

 

そこに立っていたのは正義を掲げる少女だった。

 

決して余裕のある表情とは言えないが、少女は勝ち誇っていた。

不良達もまさかこの人数差で負けるとは思っていなかったようで、屈辱から唇を噛み少女を睨み付ける。

 

「さ、さぁ…これに懲りたらこのトリニティの街で悪事を働くのはやめてください。あなた達のせいで迷惑を受けた人が大勢います」

 

「……っるせェな!!」パンッ!

 

少女は疲労ながらに懲らしめた不良達を諭そうと言葉を発するが、当然かそれが心に響くことはない。

 

不意をつかれた少女は額に一発打ち込まれグラッと体勢を崩す。

 

「うっ……」

 

その隙が仇となったか反撃を取ることもままならず二発三発と銃弾が降り掛かってくる。

 

「おい、ちょっと待てよ」

 

「あん?どうした?」

 

「こいつしぶといからこんなんじゃくたばんないだろうし、いっそこれの力使って"ヘイローを壊しちまおうぜ"」

 

「いや…でもそれヤバいんじゃね?呪いのカードなんだろ?」

 

「ビビってんの?大丈夫でしょ少しくらいなら」

 

突然、不良のうちのリーダー格である一人が銃を下ろさせる。

するとポケットから取り出した一枚のカードを、ゴクリと唾を飲み緊張感と好奇心の中天に向かって突き上げる。

 

「「現れろ!!No.15"ギミック・パペット-ジャイアントキラー"!!」」

 

まるで詠唱のようにそう唱えると、辺りは一転し暗くなりその暗闇の中から地獄の使者を呼ぶ。

 

その姿はまるでからくり人形のようで、無表情。

しかしとてつもない狂気を発していた。

 

「おいおいやっぱヤバいって…逃げるぞ!」

 

「そ、そうだな…」「ひぃぃ!!」

 

不良達はそこで初めて理解した。自分は取り返しのつかないことをしてしまったのではないかと。

 

とにかく、この場を離れないと"死ぬ"。

本能的にそう感じ逃げ出した。

 

そして、疲労と追い討ちから身動きが取れず倒れていた少女がその化け物の姿を見た瞬間に感じたこと。

 

それは"絶望"だった。

 

「な、にこれ……こわい……だれか……たすけ…て……」

 

不良程度ならいくら態度が強く反抗的でも恐怖など感じなかった少女だったが、これは別だ。

 

人ではない、化け物。少女の正義は一瞬にして折られてしまう。その化け物に。

 

意志を持たない人形は機械的な眼差しで、一番近くにある人間の姿を捉える。

 

それは一人倒れ取り残された少女だった。

 

「に、にげなきゃ…!」

 

それを認識した人形はその巨大な手をこちらに伸ばす。

その後どうなるかは想像もしたくないが浮かび上がってしまう。

捕まったら、終わりだ。

 

「いやっ…」

 

少女はなんとか立ち上がり一歩、その化け物の影から遠ざかるが間に合うはずもなく、その小さな足を身体よりも大きな手が掴み取る。

 

(ああ…私、死ぬんだな……)

 

奇跡でも起きない限りどうすることも出来ないこの状況に、少女は自身の死を悟る。

 

そう、奇跡でも起きない限り。

 

 

 

 

「いけ!"フォトン・スラッシャー"!」

 

抵抗を諦め目を瞑ると同時。絶望の縁に追いやられた少女を救うかの如く、上空から甲高い声が響く。

 

急な浮遊感と誰かに抱きかかえられているような人肌の温もりを覚えた少女は、え?と驚きから目を見開く。

するとその光景は思い描いていた"希望"を体現していた。

 

少女を掴む魔の手は巨大な大剣を持つ剣士によって切り落とされ、落下して行く少女の身体を空を舞う青年が抱え上げる。

 

そのままゆっくりと高度が下がっていき、身体を地面に降ろされると浮遊感による恐怖は無くなった。

 

しかし未だ脅威が過ぎ去ったわけではないだろう。少女は恐る恐る前を見るが、そこに見えるのは化け物に立ち塞がる青年の逞しい背中である。

 

 

 

 

「無事か?」

 

「えっと…は、はい!」

 

振り返り少女の様子を見た青年はひとまず状況を理解出来るほどには落ち着きを取り戻したと認識すると、改めて口頭で大事に至っていないかどうか確認を取る。

 

しかしそれでも気が動転していた少女は急に言葉をかけられたことに驚きを隠せず身体をはね上げると、手間をかけさせまいという気使いからか咄嗟に傷の深い部分を手で隠す素振りを見せた。

 

「その傷、深いな…オービタル!手当てをしてやれ」

 

「カシコマリ!」

 

だがそんな一瞬の素振りも、青年は見逃すことはなかった。

少女の痛みに耐えようとする表情や仕草から察し、すぐさま処置を施そうと横にいたロボットの名であろう"オービタル"を呼ぶ。

 

「っ……!」

 

「動くな!でアリマス!傷が開くでアリマス!」

 

「す、すいません!」

 

名を呼ばれたロボットは主の命令に答えると地面に伏した少女へと近付いていった。

 

ビックリした少女は反射的に身体を動かしてしまう。と同時に身体に痛みが走りつい声が漏れてしまった。

 

その行動に対してロボットは一度叱りを入れると前腕のアームを伸ばしそのまま傷の治療を開始し出した。

 

「えっと、その…あなたは一体…?」

 

「話は後だ。まずは"アレ"をどうにかしなければな」

 

今度こそ本当に気を落ち着かせたようで、少女は勇気を出して命を救ってくれた青年に対して言葉をかけるが、どうやらそこまでの長話をする余裕はないようだ。

 

安堵もつかの間、先ほど腕を切り落とされたはずだった巨大で不気味な人形はもう片腕を使い切り落とされた腕を拾い上げ、糸で縫うかのように繋ぎ合わせる。そして再び、こちらにその無機質な殺意を向けるのだった。

 

「(どうやら、こちらがモンスターを実体化出来るのは一時的なもののようだな…)」

 

心の中で青年…天城カイトは呟く。

少女を助けたあの時、カイトは自身もカードの力を使えるのではないかと半ば賭けではあったがその僅かな可能性を信じ、その賭けは成功した。

 

だが、呪われしナンバーズの力とは違いカイトの召喚したモンスターが実体を為せるのは一時的なようで、いつの間にか姿が消えていた。

 

「(この際、今起きている現象について考えていても埒が明かないか…)」

 

突拍子もない事象の続き、この謎を今解き明かすのは不可能だろうとカイトは考えるのを辞める。

 

それよりも今優先すべきは、この脅威を退けること。

今戦わなければ、一人の少女の命がない。

 

カイトは腕を曲げ構える。そして展開されたデュエルディスクに装填されたデッキトップの上に手を置き、勢いよくその手を引いた。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「い、一体どうするつもりなんですか…?あんな化け物、どうやって……」

 

「黙って見ていろ。俺は"フォトン・チャージマン"を通常召喚!」

 

不安から震え声を漏らす少女の口を咎め、カイトは引いたカードをディスクのソリッドに重ねる。

 

するとカイトの前に光体スーツを纏った胸筋な戦士が一人現れた。

 

「くっ……!」

 

「カイト様…!」

 

カイトはある"切り札"を呼び出す為に、その下準備を始めようとしていた。

然し人形の化け物もそれをただ見物しているほどに知能がない訳ではない。

カードを片手に持ち自由な動きを制限されていたカイトを狙い攻撃を開始する。

 

間一髪、その攻撃は躱すことに成功した。しかし直撃は免れても振り下ろされた巨腕が地面に当たったことによる衝撃の余波でカイトは体勢を大きく崩してしまう。

 

「…私のことはいいので、あの人の所へ行ってください!」

 

「エ?ですがシカシ…」

 

「治療してもらったおかげでこの通り多少は動けるので大丈夫です!私も微力ながら支援します!ほら早く!」

 

「わ、分かったでアリマス…デスが決して無茶はするなでアリマス!」

 

使いであるオービタルはあくまでも命令に従い少女の身を案じていたが、主であるカイトが危険に晒されるとその様子から伝わるほどに心配な眼差しを向けていた。

 

それを感じ取った少女…宇沢レイサは決心する。

このまま自分が足でまといになっていてはダメだと。自分の命を救ってくれた彼の力に少しでもなれたらと。そんな思いが芽生えた時、レイサは自身を取り巻く不安や恐怖心を振り払い再び正義の心を取り戻す。

 

彼はたった一人で健闘しているが、限界が来るのも時間の問題。そうと決まればとレイサは傷の治療に回っていたオービタルに対し自分に構うことなく彼のサポートに回って欲しいと呼びかける。

 

「カイト様ー!!」

 

「オービタル!?貴様はあの生徒の治療に回っていろ!」

 

「主であるカイト様の危機を、ただ見ている訳にはいかないでアリマス!それに彼女もやる気のようでアリマスよ?」

 

体勢を崩し攻撃を躱し続けることに限界を感じてきていたカイトの元に、飛行モードへと変形したオービタル7が颯爽と現れる。

 

カイトは怪我をした少女を気にかけていたが、どうやらそこまでの心配はいらないようだった。

 

「正義の使徒、宇沢レイサ…今ここにふっかーつ!!」

 

敵の注意を引きつける為か、レイサは大声で名乗りを上げ両手で持ち上げたショットガンを勢いよく発砲する。

 

「無茶はするなとあれホド…」

 

「……俺は"フォトン・バニッシャー"を特殊召喚!自分フィールドにフォトンモンスターまたはギャラクシーモンスターが存在する場合に特殊召喚できる!更に俺はフォトン・チャージマンの効果を発動!このカードの攻撃力を倍にする!」

 

レイサの忠告を無視した突拍子もない行動に動揺する二人だったが、その時間稼ぎのお陰でカイトが"切り札"を出す準備は整ったようだ。

 

「そして俺は攻撃力2000以上のモンスター二体をリリース!!」

 

 

 

 

闇に輝く"銀河"よ…"希望"の光となりて、我が下僕に宿れ!

 

 

光の化身、ここに降臨!…現れろ!銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズフォトンドラゴン)!!

 

 

 

気高い口上と共に、淀んだ空気は輝き出した。

十字架の槍を天に向かって投げれば、そこに集結するように光の粒子が集まりその竜は形を成す。

 

銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズフォトンドラゴン)

天城カイトの切り札にして最強の下僕が今姿を現した。

 

 

 

「か、かっこいい……!」

 

その様を間近で見ていたレイサは無意識の内にそう呟く。

まるで神話の中で語られる人物のような高貴な青年に懐柔されている一体のドラゴン。

自分は今歴史的な瞬間に立ち会えているのではないかと、レイサは目を輝かせ不思議と心を踊らせていた。

 

グギギギギ…

 

そんな青年と竜に見とれ油断していたレイサの背後に人形の魔の手が忍び寄る…。

 

 

 

「おい、伏せろ!!」

 

「え?は、はい!!」

 

カイトは口を開くとレイサに対し回避を促すことはせず、振り返ることもなくただそこに留まることを要求する。

 

「懺悔の用意は出来ているか!いけ!銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズフォトンドラゴン)

 

 

 

破滅のフォトン・ストリーム!!

 

カイトは対象の敵に対して指をさし、攻撃命令を下す。

 

すると竜の口元に強力な波動が溜め込まれ、宣言と同時にその一撃は放出された。

 

人形の腕がレイサを拘束するよりも先に、その波動はカラクリを木端微塵に貫く。

 

「うわぁ…すごい…」

 

レイサは当たったら一溜りもないであろう光の柱が自身の真横を光速で通り抜けていった事につい冷や汗を垂らすが、同時に自身を襲う脅威が無くなったことに安堵を覚えた。

 

「終わったか……。呪われしナンバーズの力…どうやら俺達の戦いはまだ終わっていないようだな」

 

「その様でアリマスな…」

 

戦いを終えたカイトも一息つくと、散らばったカードを拾い上げ静かにそう呟く。

 

「あ、あの……助けていただきありがとうございました!!」

 

「ん…?ああ……怪我は大丈夫なのか?」

 

「はい!これくらいへっちゃらです!えっと…よろしければお名前をお聞きしてもいいですか?」

 

「天城カイトだ。貴様は?」

 

「トリニティの自警団、宇沢レイサです!よろしくお願いします!カイトさん!」

 

 

こうして学園都市キヴォトスという新世界に降り立ったカイトの新たな出会い、そして新たな戦いの物語は始まる。




思ったよりも文字数が多くなってしまいましたがここまで読んでいただきありがとうございます。次回はシャーク編になります。お楽しみに!
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