【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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【小話】三城目

蓬莱城と甲鉄城では手が足らないとして、顕金駅における三城目の建造が決定した。三城目は奪還作戦時に、掩体壕とした車両などを流用し建造することとなる。まだ三城目を運用するための人員配置などは決定していないが、三城目が完成すれば蓬莱城と甲鉄城が遠出をしても出雲を任せることができるのだ。

 

有志で蓬莱城や甲鉄城に乗りカバネ討伐に出ている民人を武士に引き上げ、現在運用中の二城からそれぞれ人を出すというところまで決まっている。あくまで蓬莱城と甲鉄城が出雲をあける際に、出雲の防衛を担うためのもので、最前線に行くことも、他駅に行商や交渉に行くことも想定していない。

城主は樵人を予定している。

 

楓により育てられた看護を担える者、以降看護師と呼称するが、看護師も蓬莱城、甲鉄城、八代の駿城に一人ずつ配置がされており、三城目が運用になればそちらにも配置予定である。

 

運転手は蓬莱城、甲鉄城、八代の駿城でそれぞれ育成中であるが、一朝一夕で育つものでもない。

蓬莱城で見習いをしている者は、一番運行回数が多いのもあり一番早く仕上がる見込みである。蓬莱城の見習いがもう少し育ち、三城目が完成したら甲鉄城の運転手が三城目を担当し、蓬莱城の見習いが甲鉄城に就任する予定だ。甲鉄城には狩方衆がいるため多少の手助けが可能なため一番未熟な運転手を甲鉄城に据えるのだ。さらに甲鉄城の見習いを蓬莱城へと異動させる。一番危険を伴う蓬莱城は侑那の代理を置いておく必要があるからだ。侑那が怪我をする事態は考えていないが、体調不良などは充分考えられるからである。

 

とはいえこのままでは、全車が人手不足となるため、他駅から研修を募ることとなる。手取り足取りカバネ殺しの術を教えて駅に返すのだ。比較的安全にカバネ殺しの術を習得でき、自駅に技術を持ち帰れるためそれなりに人数を確保できる予定であり、現在各駅に道元が伝書鳩を使って交渉中である。

顕金駅からすれば、民人でも使える掃射筒を任せられれば良し。蒸気筒がちゃんと使えれば尚良し程度なので人選は他駅に任せることになる。

 

そもそもが掃射筒や手投げの擲弾は、誰にでも使えるのを目的に開発されている為、武士であれば少し教えれば充分戦力となる。

 

蒸気鍛治はいくらいても足りないが、流民を使った流れ作業の生産形態をとったことで、三城目が完成したらそちらにも回せる予定である。

 

現状想定しているのが以上の通りであるが、顕金駅内も人は足りていない。

元々顕金駅には4300人程度が住んでいた。本来顕金駅は、全ての業務を十全に回すとなれば、健康な大人が凡そ2000人程度必要となる。働けない子供を入れて1550程度の顕金駅では手が足らないのは当然であるのだ。まして八代駅も抱えている。想定の2000人とて、担当業務を十全に回せる者が前提であり、駿城を二城保有し、基本的に一城を運行表通りに動かしている程度の状態での適正人数である。駿城も本来なら100程度の武士が乗るのが普通であるが、有志の民人を含めて40〜50程度である。

武士も通常業務を兼任しつつ、有志の民人を引き上げ、蒸気鍛治も流民を組み込んで回している今の顕金駅は慢性的に人手不足だ。

それでも不満がでないのは、衣食住が満たされ、目に見えて再興しているからだ。働けば働いただけ生活が豊かになる。高度経済成長期のサラリーマンみたいな感覚である。

 

「「人が足りない。」」

 

道元と最上は頭を抱える。

 

「何度試算し直しても人が足りません。これ以上経済を活性化すると、武士か蒸気鍛治のどちらかは間違いなく潰れます。」

 

「余所から流民を引き取るしかあるまい。…とはいえどこから引き取るか。」

 

「関係性からいけば石見駅がよかったのですが、銀山で結構死にましたし採掘には流民を使っている割合が多いですから駄目ですね。出雲の駅はこれ以上引き取らずとも大丈夫でしょうし、伯耆、備後あたりでしょうか。」

 

「かといってお荷物である流民を引き取る以上、何かと引き換えにしたいな。」

 

顕金駅は人手が欲しいから流民を引き取りたいわけだが、欲しいといえば足元を見られる。何かを要求し、それの代償として引き取るのが良いのだ。菖蒲あたりが聞けば、流民を手放したい駅と人手が欲しい顕金駅で、お互い望みが合うのだからそれで良いのではと言い出しかねないが、政とはこういうものなので仕方がない。

 

「伯耆と備後ならどちらがいいでしょう。」

 

「備後なら鉱山があるな。銅鉱山のある岩谷駅と仲良くしたいが、石見と同じく流民は採掘か?伯耆の方が流民を持て余してそうだな。しかし伯耆になにを要求する?食糧は凡そ目処がついた。織物は素晴らしいが交易品だな。」

 

「「うーん。」」

 

「最上様。今よろしいでしょうか。」

 

二人で首を捻っていると倉之助から声がかかった。最上の許可の返答を聞いて襖を開けた倉之助は、道元がいると思っていなかったのか、目を見開いた後背筋を正した。

 

「取り込み中に申し訳ありません。」

 

「許可をだしたのだから問題ない。何かあったのか。」

 

「…実は勘定方で使用してる部屋で盛大に墨を零しまして…申し訳ありません。」

 

「なにやってるんだ…。まあ良い。去年は畳を変えてなかったし、どうせ勘定方の部屋に部外者は入ら…。」

 

「あの…。最上様?」

 

「畳…。」

 

「畳だな。」

 

倉之助がオロオロとする中、最上と道元が通じ合う。

 

「沼隈駅の備後表。」

 

「今年は総入れ替えだな。」

 

「倉之助!良くやった!」

 

「いや私は謝罪に来たんですが…。」

 

「今のうちから要求しましょう。」

 

「ついでに岩谷駅で銅を買い付けつつ、流民の状態を確認して持て余しているようなら、銅を値切って流民を引き取る。沼隈駅には年末に城の畳表を総入れ替えできるように注文をかけて、優先若しくは値引きしてもらう分流民を引き取る。備後表といえば金剛郭にも納めていた御用表だ。金剛郭亡き今そこまでさばく先がないだろう。よし!値切ろう。」

 

「あ…あの…。」

 

「流民の受け入れ数はどうしますか?最低100は欲しいですが。」

 

「100以上300未満だな。いやこの先別の駅から引き取る必要が出るかもしれんから200未満だ。ふむ。岩谷駅は帰りの方がいいな。畳表が優先だ。食糧は沢山持って行かせんとな。」

 

「使用人も連れて行きます。流民の面倒を見るのに我々だけでは手が足りません。」

 

「あの…失礼します…。」

 

「三城目用の車両を増設して行きなさい。通常の行商もするべきだ。車両が長くなると武士の手も足りんだろう。一時的に蓬莱城から引き抜いて行っていいだろう。民人上がりなら10人程度なら引き抜いても討伐に不都合はあるまい。蓬莱城の手が足りなければ一時的に八代の武士を使えばいい。」

 

道元と最上が今後の計画で盛り上がる中、放置された倉之助は静かに退室して行った。

 

後日、菖蒲に建前で綺麗に繕った報告書が道元から提出され承認された。行商に向かった甲鉄城は185名の流民を連れ帰り、流民は六頭領の采配で農業、製鉄、蒸気鍛治等に振り分けられた。しかし武士の人数は民人を引き上げた分のみの増員となり、本格的に政を行う立場の者達の不足が問題となっている。




現代で言うところ正社員2000人で回す仕事を、正社員300人(武士約90、蒸気鍛治約100、その他六頭領、流民の武士、狩方衆など約110)とパートで回しているようなものです。しかも武士は正社員って言ってもまだ2年目社員。
一番やべぇのは武士。蒸気鍛治もアホほど生産数を求められてるのに、人が足らんので結構やばいですが、下侍一同と違って、基本的に元々やってた業務量が多くなっただけなのでどうとでもなります。
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