【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

102 / 153
ネタストックすらもなくなってまいりました。


【小話】挑戦者

「やあやあ我こそは、美作の国、周匝(すさい)駅の内田将勝(うちだまさかつ)なり、九智来栖殿、手合わせ願う!」

 

来栖不在の屋敷に来栖宛のお客様である。奉行所の武士達は対応に困って城へ報告へ向かった。

本日来ているのは美作の国の駿城ではない。名乗りが本当であれば、駿城を乗り継いでここまで来たようである。

 

報告を受けた道元も最上も内田の名前は知らなかったが指名は来栖である。しかも要望は手合わせ。態々顕金駅最強だぞと噂を流している来栖に挑みに来た変わり者である。これは面白いなと手合わせの許可を出した。

 

「弁慶かな?」

 

手合わせ場所として城の開けた場所に内田を通したところ、吉備土より大きな体をした薙刀を持った男が来たので、最上の口から先程の言葉がポロリとした。来栖も一瞬うわっと微妙な顔をする。

 

「九智殿であらせられるか!手合わせ願う!」

 

身体もでかけりゃ声もでかい。手合わせ用に来栖には木刀、内田にも訓練用の薙刀が渡された。見届け役兼何かあった際に止める役兼医者として最上がここに来たのだが、内田を見て至極嫌そうに顔が歪んだ。

 

「どうしました?」

 

「どうもなにもあるか。何かあったら私が割って入るんだぞ。あの男の振り回す薙刀を止めるとか無理なんだが…。まあ来栖なら大丈夫だと思うが、駄目だったら諦めよう。」

 

「最上。聞こえているぞ。」

 

「いやお前に何かあった時点で私に出来ることとかないから。悪いな。」

 

「開き直るな。」

 

来栖はそう言うが、来栖が負けるなら最上が勝てるわけはないし、他の武士などもってのほかなので武士達はただ見守る事にした。

 

最上の掛け声で内田が来栖に斬りかかる。足を刈りにきた薙刀を後退してかわす。足は最上との手合わせで散々狙われているが、最上相手と違うのは臂力の差である。最上が相手なら打ち合って体勢を崩すのだが、内田はどう考えても臂力は強いし長物相手であるので、受けてしまえば最上に自分がやっている手段を取られる事になる。

 

苛烈な内田の攻撃を来栖は観察しながら何度か避ける。上段から振り下ろされた薙刀を受け流し刀を返して内田の首にぴたりと木刀を寸止めした。

 

「勝負有り!」

 

最上の声で2人とも離れ礼をした。

 

「九智殿!素晴らしい観察眼!素晴らしい太刀筋であった!」

 

「いや。内田殿も素晴らしい太刀筋だった。足を狙われ慣れていなければかわせず受けざるを得なかっただろう。」

 

内田は大声で来栖を褒め称え、来栖も賛辞を返す。あっさりと終わった手合わせに最上はほっと息をついた。

 

「最上。お前の苦手な手合いだ。お前も手合わせするといい。」

 

「そちらの御仁もお強いのか!?是非!」

 

まさかの裏切りである。なぜ苦手な手合いだとわかっていて薦めるのか。

 

「いや待て。無茶言うな。」

 

「最上殿!お頼み申す!」

 

内田が勢いよく頭を下げる。家老だと名乗っていない状態でこの様な対応をされて受けないわけにもいかない。来栖から木刀を受け取り、

 

「後で覚えていろ。」

 

地を這うような声で一言残して最上が内田と立ち会う。

 

来栖の掛け声で内田が斬りかかり、最上が避ける。間合いを詰めねばならないが、下手に間合いを詰めようとすれば石突で突かれかねない。何度か避けていると

 

「速い!速い!」

 

内田が喜んでいる。最上がげんなりしながら避けていると、だんだん内田の振り回す薙刀の速度が上がってきた。嬉しくない事に最上の速さに慣れて、振りを小さく速くして対応してきたのだ。本来なら大振りのうちに攻めておくべきだったのだが、内田の巨躯から繰り出される攻撃が恐ろしくて見切りを優先した結果がこれである。来栖もこれはまずいかもしれないなと思い割って入る準備を始めた。いつでも割って入れるように位置どりをしながら手合わせを観察する。

最上が体勢を低くしながら対応するせいで、内田の斬撃は低い位置に集中している。足を刈りにきた横薙ぎを飛んで避けると思いきや、柄を踏みつけて斜め上へと跳ね、内田の首に木刀を添わせて脇を抜けた。

 

「勝負有り!」

 

来栖の声で2人とも礼をした。

 

「軽やかな身のこなし!素晴らしい!素晴らしいですな!この様に素早い方をお相手したのは初めてです!」

 

「は…はは…内田殿に追いつかれはしないかとヒヤヒヤしました。…ところで内田殿は何故お一人でここまで?」

 

「主君が少々繊細なお方なのだ。顕金駅と交流を持つべきとの臣下からの声が多いのだが、そんな遠出はならんと言われてな。遠出もなにも食糧確保以外では殆ど篭りきりでなぁ。このままではならんというのと、噂に名高い九智殿に挑戦してみたかったのだ。」

 

(来栖への挑戦が殆どのような…。)

 

周囲で聞いていた武士達は皆同じことを思った。なにせ最上が聞くまで手合わせの話しかしていない。

 

「帰りはどうなさるので?」

 

「また乗り継いで戻ります。」

 

「甲鉄城で送りましょうか?」

 

最上からとんでもない発言が出た。

 

「よろしいので?」

 

「もちろん。ただし3日程薙刀を預けて頂きたい。金属被膜刀をご存じですか?是非その加工をさせて頂きたい。」

 

「話は聞いておりますが、残念ながら持ち合わせがそんなに無く…。」

 

「無料で結構。」

 

「しかし…。」

 

「周匝駅といえば製鉄の駅ではないですか。お近づきになりたいのはこちらも同じ。是非うちで作っている兵器の製造をして頂きたいので交渉に行きたいですね。」

 

「あいや。送ってくださる件もそうだが、最上殿にはそんな権限がおありで?」

 

「家老ですので。」

 

「かっ…家老⁉︎家老⁉︎これはとんだ失礼を!」

 

最上が笑顔で告げた事実に内田が仰天する。

 

(営業を始めたぞ。)

 

(内田殿を気に入ったのか?)

 

(金属被膜刀を薦めたぞ。)

 

武士達がひそひそと会話する中、最上は行商がてら、内田にカバネ殺しのやり方を教示しつつ周匝駅まで送ることが決定した。

 

生駒に薙刀の金属被膜の加工を頼み、道元と交渉項目を検討し、内田はひたすら来栖と手合わせさせている。どうも領主は臆病なようだから交渉を蹴られる可能性もあるが、販売範囲を拡大する上で美作の国の駅で兵器を製造できるのは大きい。顕金駅の直接的な利益ではないが、カバネを殺せる手段を広げる意味では大きな意味がある。今後販売範囲が広がった場合顕金駅だけでは数を用意できないのだ。流民を使い流れ作業で増産しているため、現状は賄い切れているが手が足りなくなるのは目に見えているからだ。

 

甲鉄城が出発してからは、狩方衆が掃射筒や手投げ擲弾の使い方を教え、最上と瓜生が前衛の立ち回りを教える。内田は周匝駅に着く頃には、最上達と前衛を熟せる様になっていた。

 

周匝駅で領主と最上が交渉し、武器生産の承諾を得た。領主は同行しなかったが、家老と周匝駅の武士を同行させて使い方や戦い方を教示し、甲鉄城は撤収となった。

 

顕金駅に戻って来てから、最上の執務室に来栖がやってきた。

 

「よく承諾を取れたな。内田殿の言い方では嫌がりそうに感じたが。」

 

「まあ一応断られるのも想定はしてたな。だが武器を生産していれば態々危険を犯して駿城で出ずとも、うちの行商範囲から買い付けが来る。主に食糧を望んでいると言っておけば、食糧に余剰がある駅は食糧を運んで来てくれる。駿城の出入りは増えるが、カバネ殺しの術を手に入れ、内田殿もいるとなればそこまで難しい話じゃない。今年は伯耆、美作あたりを行商がてらカバネ狩りをしておけば良い。蓬莱城も何度か入れればカバネもかなり減るしな。」

 

「ふむ。そういうものか。」

 

「うちには折角鈴木殿と生駒が居るんだから、既存武器の生産に時間を取られるより、改良や開発に時間を使わせたい。あと単純に生産力が低いからな。販売範囲が広がると行き渡らなくなる。今のうちから生産場所は増やしておかねばな。」

 

「最上。顔色が悪いが大丈夫か?」

 

「…忙しすぎる。もう少し政の出来る人間がいないと、今想定している行動範囲以上に拡大するのは無理だ。」

 

冬の内はまだ道元達も余裕があるように見えたが、小田駅の奪還あたりから忙しくし始めており、さらに行動範囲を拡大するためあちこちの人員配置の変更やらなんやらをしているのも知っている。勿論菖蒲と一緒に説明は受けているが、来栖はあまりついていけていないのが現状だ。

 

「すまん。」

 

「いや。そもそも人数が少な過ぎる。お前達ももうそれなりにできるようになってきたが、未だ兼業だからな。まあ、お前にはもっと頑張って貰うがな。」

 

「むっ。」

 

「当たり前だろう?菖蒲様の伴侶となるのだから政は分かりませんでは済まさん。…覚えてろって言ってあったなぁ?」

 

「…うっ。」

 

内田との手合わせを薦めたことで、確かに覚えていろと言われたのを思い出した来栖は冷や汗を流す。

 

「奉行所の業務を完全にお前に移譲しよう。なに雅客が十全に仕事が出来る様になればすぐに減るから大丈夫だ。頑張れよ。」

 

「…わ…わかった。」

 

来栖も正直に言えばやりたくないのだが、道元と最上の業務量が多すぎるのはわかっているし、道元と最上に倒れられる方が困るのだ。それに最上が振ってきたのは奉行所業務であるため、基本的に後ろ暗い処理や他の業務との折衝は必要のない業務である。明文化された法の下、処理を行えばいいだけなのだ。政治的事情が加味されるような場合はそうそうないし、あっても最初から道元達の手が入ると認識している為、それ以外が処理出来ればいいのである、ただし暗記できてないので、いちいち調べるのがすごく手間ではあるのだが。




内田君はホモ君的には不得意枠。
性根が真っ直ぐなのは好感を持ってるけど、脳筋武人はちょっと…。来栖。相手よろしく。みたいな。

イカれた前衛野郎が他駅に誕生しましたwとはいえ他のオリキャラ同様そう出ない予定。

そろそろ各駅とオリキャラまとめないと自分で分からなくなってきましたw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。