【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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菖蒲様と来栖の話


【小話】共感性

来栖はいつも通り菖蒲の後ろに着いて歩く。

 

(己が菖蒲様と婚姻…な…なんと畏れ多い…)

 

「〜ですよね。来栖。」

 

「え?」

 

「聞いていなかったのですか?」

 

菖蒲が振り返り、可愛らしく顔をむすりとしたのを見て来栖は赤面した。菖蒲は以前なら来栖の態度が気にならなかったが、婚姻が決まってから来栖を観察するうちに、もしかして来栖って私のこと好きなのかしらと気がついてからが駄目だった。今も来栖が赤面しているのを見て、菖蒲もなにやら恥ずかしくなってきた。2人は城の廊下で見つめ合いながら赤面している。

 

そんな2人の後ろから来た最上は、またやってるのかと呆れ返りながら来栖の膝裏を蹴飛ばした。膝カックンである。

 

「だぁっ!」

 

「来栖⁉︎」

 

「菖蒲様。八代の採掘量の件ですが、今よろしいですか?」

 

「えっえぇ。勿論。」

 

来栖が盛大に尻餅をついたのを無視して、最上は菖蒲に仕事の話を振り、菖蒲も戸惑いつつも最上の話を聞くことを優先した。最上は用件を終えると引き上げて行き、その間に立ち上がった来栖は、赤面したままの菖蒲の後ろを赤面したままついて行った。

 

菖蒲を執務室まで送り届けた後、来栖は最上の執務室へとやって来た。

 

「最上。今いいだろうか。」

 

「よくない。帰れ。」

 

襖ごしに断られたが、来栖は諦めずに最上の執務室にお邪魔した。

 

「服部。色ボケ野郎を叩き出せ。」

 

「最上。困っているんだ。話を聞いてくれ。」

 

来栖が話したのは、兵部頭の仕事の件であった。最上も服部もきょとりとした後、真面目に話を聞いて最上が解決策を提示した。菖蒲との件で来たと最上は早とちりして悪かったなぁと思い殊更丁寧に来栖に教えた。

 

 

一方菖蒲は

 

「静。どうしましょう。来栖が照れてる顔をみると私も照れてしまうわ。」

 

「ここ最近いつもではありませんか。慣れてください。というか来栖様は以前からずっとああですよ。」

 

「そうだったかしら。」

 

「そうです。来栖様が菖蒲様をお慕いしていることなど、甲鉄城にいた者全てが知っていますが?」

 

「す…全て?」

 

「えぇ。というか菖蒲様が微塵もお気づきでなかったことの方が驚きです。来栖様のあれは数年前からですよ。」

 

「数年…前…。」

 

菖蒲は来栖が女子が苦手なのだとずっと思っていた。見つめると頬を染めて目線を逸らすのを、寧ろ面白がってずいずい迫ったこともある。まさか自分限定だとは思っていなかったのだ。

 

「ど…どうしましょう。」

 

ここ数年の来栖の様子を思い出して、菖蒲は更に赤面して狼狽えた。

 

「とりあえずお仕事をなさいませ。」

 

「…はい。」

 

静にぴしゃりと言われて、菖蒲は仕事に精を出すことにした。

 

菖蒲が普段何かを相談するときは、道元、最上、静、来栖の4人であるが、道元と最上は最近また忙しくしているし、静は冷たくあしらってくる。来栖のことを来栖に相談する訳にもいかない為、どうしたらいいのかさっぱりわからない。お茶を持って来た下緒を捕まえて、こそっと聞いてみたが静と同じ表情である。

 

下緒から最上に報告が上がり、最上はとりあえず勘太郎と結婚した鯛との文通、仁助と結婚した楓の登城を手配したのだが、鯛と楓から当人が慣れるしかないとの回答をいただいた。

 

二人とも仕事はしているので、問題になる程ではないのだが、どうしたものかと考えていると歳の近い侑那を思いついたが、あまりこういった事に興味がなさそうな気がする。次いで出てきたのが鰍である。とりあえず鰍を手配するかと、服部に手紙を持たせて鰍に打診したところめちゃくちゃ食い付いて来た。

 

鰍はその日、蓬莱城が出かけており同居の無名が居ないことから、1人で晩御飯を作っていた。夕飯時に服部が最上からの手紙を携えて訪ねて来て、手紙の件は他言無用、返答は読み終わるまで待機する服部が口頭で受ける事、手紙は読み終えたら服部が回収する事との説明をされ、すわ何事かと仰天したが、内容は菖蒲の恋愛相談相手の募集であった。

 

「是非!」

 

と返答して手紙を服部に返却したが、服部は無名にも言っては駄目だと言い置いて帰って行った。

 

たかが恋愛相談、されど恋愛相談である。菖蒲の立場上触れ回ってはいけないことはわかる。だが言いたい。とはいえ言えばまずいのもわかる。手紙の扱いを考えれば、機密情報の類いなのだ。内容は恋愛相談相手の募集だが。

 

鰍は蓬莱城が不在の日に、鰍塾の授業状況の報告という名目で登城した。呼び出し内容を心得ている下緒が、そのまま鰍を菖蒲の執務室へと案内し、静、下緒が同席の下、恋愛相談が行われた。

 

よもぎのおやきを茶菓子に、行われた恋愛相談であるが、勿論こんなことに解決策などない。鰍は菖蒲に共感したりしながら話を聞き、菖蒲と鰍は時間いっぱいの一刻喋り倒した。今まで相談すると割と冷たくあしらわれていた菖蒲にとって、話を盛り上げ、共感してくれる鰍との会話でかなりすっきりとした。もう一度言うが解決策などないので、何にも解決はしていない。

 

同席していた静達は、きゃあきゃあと盛り上がる2人を眺めながら、しれっと茶菓子を美味しくいただいていただけである。下緒は何にも解決していないのに、すっきりした様子の菖蒲を見て、成る程共感してあげれば良かったのかと思ったが、鰍程きゃあきゃあと盛り上がれる気がしない。

 

鰍を城外へ送った後、最上の執務室に行き相談状況の報告をした。

結論から言えば何にも解決しておりません。となるのだが鰍が共感し喋り倒したことで菖蒲はすっきりした様子だったと告げたことで最上は納得したようだった。

 

「成る程。共感性か。鯖さんや秋刀魚さんは共感性は高いと思うか?」

 

「えぇっと。…鯖さんはどうでしょう。秋刀魚さんは鯏さんが料理番に来た時に、頬を染めていた内の1人ですから共感してくれるかもしれません。」

 

「わかった。どうもありがとう。下がってくれ。」

 

古来より女性の悩み事とは、解決したい場合とただ共感してほしいだけの場合がある。ただ共感してほしい場合、解決策を提示しても何やら不機嫌だったりするのだ。最上は父親を亡くした後、母親が時折そういう感じであったことを思い出して納得した。どうしましょうかと言うわりに、解決策を提示すると微妙な顔をしていた母親が、余所の上侍の奥方と同じ話題で盛り上がっていたのだ。当時は理解不能であったが、成る程共感か確かに聞かれた内容は割とどうでもいいことだった気がする。母親が解決策に思い至らないような内容でもなかった。

 

(要は共感してくれる相手に、お喋りしたかっただけなのだな。自分にそうしてきたということは、母上は寂しかったのだろうか。)

 

そこまで思い至って最上は少ししょんぼりした。

 




ホモ君母は別に寂しかったとかじゃなくて、なんとなくホモ君に話を振っただけ。解決策を提示されて、わぁ合理的。だけど違うんだよなぁ。愚痴りたいのよね。ってなってただけ。余所の上侍の奥方とめちゃくちゃ愚痴り倒した。現代で言うところファミレスとかに何時間でも居座ってお喋りできるタイプ。

静達共感できなかった女性達は、痩せたいんだけどって話題に運動を勧めるタイプ。共感してほしい女性達は、えっ?全然太ってないじゃんからの、全然食べてないのに太るのわかるぅ。みたいなのを求めてる。基礎代謝上げろとかの解答は求めてないんだ。作者は基礎代謝上げるのに筋力をつけるのを勧めて微妙な顔されたから知ってる。

女性だからといって全員が共感性高い訳でも、共感してほしいわけでもないし、男性でも共感性高い人って結構いるよね。共感性の高い人って大体聞き上手。

共感しながら、解決策が知りたいのか共感してほしいだけか見極めるのマジで難しい。作者にはできないのである。
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