【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

106 / 153
【小話】月間

「今月は甲鉄城も含めてひたすらカバネを狩る。蓬莱城は凡そいつも通りではあるが、甲鉄城も行商を後に回してひたすらカバネを殺す。来栖や雅客なんかもローテーションに入れて、可能な限りカバネを殺す事に注力する。」

 

操車場に甲鉄城、蓬莱城の面子が集められて最上から通達された内容がこれである。ざわざわと声が上がる中、仁助が挙手する。

 

「はい。仁助。」

 

「今まで行政も同時進行で慎重に進めて来たのに、何故今月はカバネ狩りに注力するのですか?」

 

「石見、安芸、備後、備中、備前、伯耆、美作あたりを今年中にはもう少し復興させておきたい。再来年辺りに南海道の伊予、土佐、讃岐、阿波を復興させ、南海道の四国を山陽道、西海道奪還のための安全な生産拠点とするためだな。…とはいえこれらは政が必須になるが、今の顕金駅は自駅の運営すら怪しい。顕金駅が何においても突出すれば、実利はどうあれ面白くないと思う駅は必ず出てくる。今の顕金駅の状況は、全く嬉しくないことに他の国にも察せられている。今の内に周辺国のカバネを減らしておけば、顕金駅を気にせず国の中で勝手にまとまる。ある程度均衡を図る事で顕金駅が目の敵にされるのを防ぐ。」

 

「なんで均衡を図らないと目の敵にされるんですか?」

 

生駒は素直に疑問を口にした。別に頭は悪くないのだが、政方面では全く頭は回らないらしい。とはいえこういった事は、権力者の矜持と欲望の都合なのでわからなくとも無理はない。

 

「あー…。なんて言えばいいんだろうな。うちには天子様もいなければ、菖蒲様が将軍に任命されたわけでもない。従う理由がないし、うちだけ力をつけるのは面白くないと思うものなんだ。…わかるか?」

 

「わかりません。面白い面白くないの問題じゃないと思うんですけど。」

 

「…だよな。まあそういうものなんだとしかいいようがないんだが、とりあえず今月はカバネ狩りの月です。ってことだけわかってれば良いよ。蓬莱城は概ねいつも通りだから。」

 

「わかりました。」

 

カバネを殺す事には、全く異議はないので生駒はすんなりと引き下がった。

 

このカバネ狩り月間で一番楽になるのは最上である。何も考えずにカバネを殺すだけで良いのだ。だったらひと月と言わずにと言われそうであるが、これは利益度外視なので恐ろしい勢いで金が飛ぶ。ひと月分の金銭的な体力が限度であったのである。

 

出雲の各駅からは、試験的に武士を出させて同行させる事になっており、各駅から武士を回収しつつ周辺国のカバネ討伐をすることとなっている。

 

カバネ狩り月間であった月、顕金駅の駿城は狂ったようにカバネを狩りまくった。蓬莱城が融合群体を撃破したり、甲鉄城がめちゃくちゃ強いワザトリと当たって最上と瓜生がぼろぼろになって帰ってきたり、来栖と雅客も時折編成しながら怒涛のひと月を終えた。

 

尚倉之助は笑えるほど吹っ飛び続ける金の勘定に追われて、目の下に隈をこさえて泣きながら算盤を弾いていた。カバネ狩り月間は勘定方から忌み嫌われる月間となった。

 

そして前衛組が来栖と生駒の日に、蓬莱城が余所の駅の施設をぶっ壊した為倉之助が修羅となった。ぼろぼろの最上と瓜生が甲鉄城で戻ったとき、操車場で"私たちは○○駅管理の給水塔を破壊しました。"と書かれた立て札の隣で正座をさせられている2人を見て仲良く合掌した。将来の菖蒲の伴侶を、操車場で正座させた倉之助に文句を言う者はいなかった。金を握っている者は強いのだ。

 

破壊した施設の弁償分多少予算から足は出たものの、怒り狂う倉之助のおかげで、道元と最上は笑いはすれど怒りはしなかった。

 

顕金駅は周辺国との折衝なしにカバネ狩りを実施した為、周辺国からすれば勝手にカバネを減らしてくれた形となる。勿論補給等で立ち寄る為、顕金駅の駿城がカバネ狩りをしている事は知っているが、それを恩と捉えるかは各駅の領主次第であり、勝手にやっているのだから恩と捉えない駅も多い。とはいえカバネが激減したことにより、道元達の目論見通り、周辺国の大きい駅が周辺の駅との交易を活性化させる結果となり、それぞれで互助関係を再開させる駅が増えた。

 

「これで新見駅のように、完全に孤立する駅を防げれば良いのですが無理ですよね。」

 

「無理だろうな。だが今回の事で各国で主導権を握る駅が出てきた。各駅と折衝するより、代表駅と折衝するだけで済むようになるだろう。もう少し政が出来る者が多ければ各駅と折衝した方が利はあったがね。居ないものは仕方がない。」

 

「道元様と勘太郎殿がいてくださって本当に良かった。いなかったらと思うと恐ろしいですよ。早々に宍道駅の傘下に入って政を丸投げせねばならないくらいです。」

 

「まあ君には伝手がないからなぁ。」

 

道元は酒を飲み、最上は茶を飲みながらの食事会である。周辺国の各駅との折衝が面倒すぎて、各国で勝手にまとまるのを期待して、今回のカバネ狩り月間を企画した事の反省会である。

 

「また行商で金策せねばなりませんね。勘定方の怒り狂いぶりはまずいです。」

 

「予算を多めにしておいて良かった。報告には驚いたが、まさか倉之助君が飛び出して行って、来栖君に雷を落とすとは思わんかったかったよ。」

 

「立て札を見て道元様ではないなとは思いましたけど、まさかの倉之助でした。逞しく勘定方をしてくれているようで何よりです。一番早く我々の手を離れそうですね。」

 

倉之助にとっては全く嬉しくない評価である。仕事ぶりを評価されるのは良いことではあるが、さらに仕事が増えるのだ。全く嬉しくない。

 

 

カバネ狩り月間により、蓬莱城の全ての車両の金属被膜化が終了したのは余談である。




菖蒲様なんもしてないじゃん?ってなるけど、ぶっちゃけ最終決裁は菖蒲様なので、道元達からの書類に署名押印するだけで忙しいのです。沢山新しいこと企画されるので覚えるのが大変。来栖はそこまでできてないけど、菖蒲様は覚えるべきはきっちり覚えてます。政治的な派閥がないので、そのあたりのバランスを取らなくていいのは楽なところ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。