数日前の甲鉄城にて
「下がれ!下がれ!」
「テメェは忠犬野郎かっつうんだよ!くそっ!」
最上と瓜生がワザトリと打ち合っているが、完全に押されている状態で車両に入り込まれた時点で既に死者が出ていた。
「掃射します!」
狩方衆の声で最上と瓜生は体勢を低くしながら全速力で後退する。
「てぇっ!」
車内には掃射の音が響くが、通常の蒸気筒での掃射の為、数が足りないのかワザトリは刀で打ち払いながら前進してくる。
「駄目だなこれは。厩舎車両まで後退!タラップから叩き出す!」
「掃射やめぇ!下がれ!突っ込んでくるぞ!」
ワザトリが突っ込んで来ながら振られた一撃を、最上が受け流そうとするが流しきれず押し込まれて後方に吹っ飛んだ。
「この馬鹿力めっ!」
最上が吹き飛んだことで、前線に取り残された瓜生はワザトリの振るう太刀を避けながら後退する。
「こら!テメェ軽々吹っ飛ぶな!」
「無茶言うな!」
最上と瓜生が入れ替わりながら殿を務めているが、誰の目から見ても有効打も入っておらずジリ貧であった。
「進行方向からも入り込まれてます!」
「くっそ‼︎」
「掃射!」
「抜けてくるぞ!」
進行方向からもカバネが3体むかって来ていた。2体は掃射で仕留めたものの、1体が2体を盾に掃射を抜けた。前後を抑えられたため手が足りない事で、掃射の数が少なかった為たった3体を倒しきれない。
「任せる!」
「はぁ⁉︎」
最上はワザトリを瓜生に任せて、狩方衆を擦り抜け進行方向へ向かう。一番前にいた狩方衆の右手首にカバネが噛み付いたのを見て、カバネに刀を投擲してから、流民上がりの武士の腰から刀をすり取って、噛みつかれた狩方衆の肘関節に振り下ろした。
「ぐぁっ!」
「下げろ!止血!」
刀から手を離し、カバネに突き刺さった自分の刀を引き抜いて、心臓に刀を突き入れる。
「瓜生様!」
武士から悲鳴の様な声が聞こえて最上が振り返ると、瓜生が進行方向まで吹き飛んできた。
「伏せろぉ!」
前線に取り残された武士と狩方衆に指示を飛ばすが、伏せるのが遅れた武士の首が飛ぶ。狩方衆にも刀がかすり、背中を少し切られ転倒しながら退避して来た。
ワザトリの後ろからくるカバネは首の飛んだ武士に齧り付いているが、ワザトリは見向きもせずにこちらにむかってくる。最上と瓜生が狩方衆と入れ替わって前衛に戻る。
「次が厩舎車両です!」
「タラップ下ろせ!」
「擲弾用意しておけ!」
「馬鹿!車内で擲弾使う気か!」
「お前があいつを!叩き出せるなら使わん!っが!」
「そりゃ!っ無理だなぁ!」
ワザトリからの攻撃を受け流し、逃げ惑いながら最上と瓜生が口論している。
2人とも息が上がっている中、厩舎車両まで後退を済ませた。厩舎の柱に空振った太刀が食い込んだ瞬間、瓜生がワザトリに突っ込むがワザトリに蹴りを食らい大きく吹き飛んだ。突っ込んでいっていたこともあり完全に蹴りが入ったのか、瓜生が嘔吐しながら激しく咳き込んでいるのが聞こえた。最上も瓜生に遅れて突っ込んでいたが、瓜生が吹き飛ばされた直後に太刀が柱から抜かれたのを見て、大きく後退した瞬間最上がいた場所に太刀が振り下ろされた。
「瓜生を下げろ!」
最上には後ろを見る余裕もなく太刀を捌きながら後退したが、狩方衆が引きずる瓜生を追い抜いてしまったのに気がつき急停止。瓜生に振り下ろされた太刀をなんとか受けたが、次の踏み込みで瓜生の左足がへし折られた。最上はワザトリの足もとに一閃したが、数歩後退され躱される。最上はしゃがみながら指示を飛ばす。
「掃射ぁ!」
瓜生の悲鳴をかき消す様に掃射音が響くが、ワザトリに殆どが撃ち落とされる。近距離での掃射を弾かれ、跳弾が掠る武士や狩方衆もいた。
「タラップ降りました!」
タラップが降りきり、あとは叩き出すだけであるが既に瓜生は戦闘不能、跳弾でも当たったのか馬の嘶く声が車内に響いている。最上がワザトリと打ち合いタラップ方向に吹き飛んだ。危うく車外に叩き出されるところであったが、ギリギリ踏みとどまり向かってきたワザトリの足下を滑り込んで抜ける。ワザトリは直ぐに振り返り横薙ぎの一閃を放つ。横薙ぎの一閃は最上が咄嗟に上げた小手にあたり、最上が柱に激突。見ていた狩方衆と武士は最上の腕と首が飛んだと一瞬思ったが、最上は小手に金属被膜で作った金属板を挟んでいる為腕ごとの切断を免れていた。
ワザトリから最上への追撃が放たれ、擲弾を使うべき位置から遠のいた。最上が柱に激突しなければ擲弾を使えたのだが、柱に激突したことでワザトリと最上の位置が近すぎたのだ。
もう少し下げなければ擲弾を使っても叩き出すことは叶わない。残されているのは、前衛で1番非力な最上である。
「て…擲弾用意しとけ。俺の合図で…げほっ…投げろ。最悪仔犬ごと叩き出す。」
「瓜生様⁉︎」
「あれを…叩き出す方法が他にねぇ。」
「「了解。」」
流石の狩方衆は瓜生の提案に異論なく了解した。流民上がりの武士達は顔を歪めたが、代案など出せる訳もなく反論はしなかった。
勿論瓜生の指示は最上にも聞こえていたが反論する気はない。なにせ最上にも代案はないのだ。まして全滅するくらいなら安い犠牲である。
再度ワザトリと最上が打ち合いになるが押し込まれてタラップから遠ざかる。疲労で集中力を欠いてきていた最上が中段に構え直した瞬間、刀が巻き上げられ天井に突き刺さった。カバネの臂力で半ば無理矢理巻き上げられ、最上は万歳の状態でがら空きであった。ワザトリが太刀を振り下ろし最上を袈裟懸けに斬り裂いた。
「ゔっ!」
「最上様っ!」
咄嗟に後ろに飛んだものの、ざっくりと袈裟懸けに斬られた。襷掛けにしていた蒸気筒の負い紐が切れ床に蒸気筒が落ちる。最上は足で蒸気筒を跳ね上げ追撃を銃身で受け、横に吹き飛ばされる様に後退する。
「ぐぅっ!」
血がばたばたと床に散るがこれ以上は下がるわけにはいかない。もう捨て身で突っ込もうかと最上が考えた瞬間、ワザトリが床に落ちた血で足を滑らせた。最上は自決袋を放り投げ、ワザトリの顔面に当たった自決袋を撃ち抜いた。
自決袋の爆発でのけぞり後退したワザトリに突っ込んでいき、銃身の先を握って下から上に向けて思いきり振り抜いた。銃床がワザトリの顎に下からぶち当たり数歩後退した瞬間。
「投げろ!てぇっ!」
瓜生の号令で擲弾が3つ投げられ、さらにワザトリの顔面に向けて掃射が降り注ぐ。最上は蒸気筒を振り抜いた直後全力で後退した。直後擲弾の爆風に押されて最上は狩方衆に突っ込んで意識を消失。タラップから吹き込む風に吹かれ、爆煙が晴れワザトリの姿がないことを確認した時、全員の顔が喜色に染まったが、後方の爆発の中からカバネが3体むかって来ているのを見て蒸気筒構えた。最上はもうピクリとも動かないし、瓜生も戦える状態ではない。
流民上がりの武士達が怖気付く中、狩方衆は冷静に蒸気筒を撃ち込んでいく。カバネが全て討ち取られた後、瓜生は事態の収拾に努めることになった。
「仔犬ちゃんは生きてるか?」
「はい。ですが我々では応急処置以上は出来ません。」
「わかってる。駅までどのくらいだ?」
「四半刻位かと。」
「運転士に可能な限り飛ばせと言え。タラップは上がるか?」
「無理です。歪んでしまっているのでタラップが全く上がりません。」
「じゃあ応急処置でいいから塞いどけ。怪我してない奴らで此処につけ。他の破損箇所も塞げ。もう平地だから取りつかれはしねぇとは思うが、塞いで警戒は怠るな。つうか前方車両からカバネが来てたが運転士無事だろうな。暴走車両は勘弁だぞ。狩方衆中心に前方を確認しろ。」
「了解しました。」
「ちっ俺は指揮官じゃねぇぞ。おい!お前感染したか?」
「分かりません。片腕では自決袋を使えません。どうか殺していただきたい。」
最上によって、右肘から切断された狩方衆が願い出る。
「駄目だ。これも実験だな。悪いがお前には3日耐えて貰うぞ。」
「…わかりました。」
これが流民上がりの武士であればさっさと殺した方が良いのかもしれないが、非道な実験を繰り返していた克城に乗っていた狩方衆である。非道な実験の実験台になったことで、顔を歪めはしたものの喚き散らすでもなく黙って従った。
「止血は終わったな。見張りを立てて拘束しておけ。」
流民上がりの武士達が戸惑う中、狩方衆が瓜生の指示通り行動していく。
(狩方衆が使えりゃとりあえずはなんとかなるな。)
「駅が見えたぞ!」
「今のうちに人的損害纏めとけ。駅に着いたら鳩飛ばせ。蓬莱城寄越せとも書いとけよ。」
「了解しました。」
(はぁ。駅についても俺が対応すんのかこれ…。)
意識が戻りそうにない最上を見て、瓜生は深々とため息を吐いた。
ホモ君も瓜生も一太刀足りとも入れられてません。蒸気筒フルスイングが唯一の当たり判定。来栖クラスなのでもう悔しいとかの問題ではない。2人とも死ぬわこんなんって思いながら戦ってました。ホモ君の刀はよく突き刺さるね。手貫緒なんてつけたら逆に危なくてつけられない。
蒸気筒を軽量化したのでフルスイングはあんまり効いてません。体勢を崩してたので後退してくれましたが、軽量化の弊害。まあ元々の重さがあったところで、ホモ君では叩き出せないんであんまり変わらない。
図らずして切断によるカバネウイルス回避実験に成功しました。生駒の腕を考えると義手つければまだ戦えるね。(鬼畜)
あの義手って機械鎧なの?某錬金術師なの?
扉を開けて侵入してきたカバネは音がうるさかった方を目指して来たので艦橋は無事。