暫くして最上は事務仕事に復帰した。
最上の快気祝いとして、倉吉駅の桔梗からまさかの馬2頭が届いたが、最上の屋敷の厩が足りない為、増設まで城で馬を預かることになり武士達が面倒を見ていた。
「快気祝いで馬。」
「最上様疾風が怪我してから落ち込んでたし良かった…のか?」
「牝馬2頭。最上様の嫁から疾風の嫁が届いた形か。というかなんで知ってんの最上様が疾風のこと好きって。」
「これは良い馬だぞ。流石倉吉の姫。」
最上の回復に合わせて疾風は屋敷に戻されており、最上が甲斐甲斐しく世話をしている。桔梗はカバネ討伐に同行した際、最上に疾風の話を振っていたため"おや?この子馬好きだな?"とは気がついていた。疾風は牡馬だったので嫁入りの時にでも、牝馬を連れて行こうと選定を終えた時に最上の負傷の件を聞き、丁度良いから先に贈っておこうとなったのだ。倉吉駅で選び抜かれた牝馬2頭である。
最上は安静の指示が解かれてから仕事に追われていたが、暇を見つけては疾風の世話と鍛錬に没頭していた。縁側でゆるゆると読書をする姿は見られなくなり、刀を振っているばかりであったので武士達も心配していたのだ。一之進達も、読書している時の最上には話しかけていたが、鍛錬中は話かけるわけにも行かず会話はかなり減っていた。最上が疾風にも乗らず、本も読まなくなったため、小夜など目に見えてしょんぼりしているが、最上の目には入っていないようであった。
今まで前衛組最弱だろうが、戦線の維持にも問題がなかったことから、余暇は読書などに当てていたが、今回の件は最上に焦燥をもたらしていた。
甲鉄城は蓬莱城と違い利益を生む為に運行している。いつまでも運休するわけにはいかない。ただでさえ執務を優先し、体力不足は自覚していたのにも関わらず、今回の件でさらに下がった体力と筋力で出るわけにはいかないのだ。まして瓜生は足を骨折しているため甲鉄城を運行する時には間に合わない。
最上がどれだけ努力しようが、来栖や無名のようにはなれない。
朝議の場にて
「瓜生君の復帰が未定の為、甲鉄城は来栖君を城主にして運行を再開する。商談の際手を借りる件は商人組合と話がついている。」
「えっ…。」
道元の言葉を聞いて最上の顔から血の気が引いた。武士達はざわついているが、菖蒲や来栖を見ても驚いている様子はなく、既に話はついているようである。
「何か問題があるかね。」
「…あ…ありません。」
余所の駅は、前衛等という存在無しに運行しているのだから、まさか自分が外されるとは最上は想定していなかった。せいぜい運行範囲を狭める程度の対策で運行するつもりでいたが、道元は違ったようである。なんの反論材料もなく、朝議の場で諾と言わされてしまった。
その日帰宅後、最上は深夜であるのに厩に行った。立ったまま寝ていた疾風が気配を感じて起きると、暗闇の中に最上が立っており疾風に手を伸ばしてくる。
「起こしたか?ごめんな。」
暫く震える手で疾風を撫でていた。
一方朝議の後、道元の執務室には菖蒲と来栖が訪ねていた。
「叔父様。最上に話をしていなかったのですか?」
「いつまでも運休できぬ以上、これしかありません。最上君とて鍛錬を始めているようですが、まだ無理をさせられません。次ワザトリと遭遇したとして勝てますか?先日ほどではなかったとして、最上君が単騎でワザトリを討ち取ったことはありますか?私はとんと聞いたことがない。端的に申し上げれば実力不足です。金剛郭で同道しましたから、その辺のカバネなら問題ないのはわかっています。余所の駅の駿城なら最上君のような戦力ですら破格ですが、顕金駅の駿城はそういうわけには行きません。甲鉄城の面子とて、今の最上君と行ってこいと言われたらさぞ不安でしょうな。」
「ですが事前に言わない理由には…。」
「事前に君は実力不足だから単騎では運用しない。と告げれば良かったですか?どれほど優しく告げようが、意図はそれしかありません。」
「…そっそれは…。」
「それに今の最上君には、桔梗殿との婚姻も控えています。実務的にも政治的にもいなくなられては困る駒なのですよ。今回の件で失われなくて本当に良かった。最上君はその辺りまで思考が回っていないようです。その時点で外に出すなどもってのほかです。少なくとも瓜生君が戦線復帰出来るまでは、最上君を外に出すつもりはありません。」
「…わかりました。」
道元とて事前に話をすることはやぶさかではなかったのだが、菖蒲達が思っている以上に最上は賢しいのだ。事前に打診しようものなら、対策をしてきかねない。最上を出す理由、来栖を出さない理由など、見つけられては困るのだ。わざわざ朝議の場で諾と言わせたのもそのためだ。
菖蒲と来栖は、道元の執務室を後にして菖蒲の執務室に来ていた。
「まさか最上に話していなかったとは思いませんでした。」
「己もですが、朝議の場で諾と言わせたのは良かったですね。」
「何故です?あの場にいた者全てが、最上に事前の説明がなかったのはわかるではありませんか。」
「経緯はどうあれ朝議の場で了承したのです。後から理由をつけようと、それは簡単には覆りません。それこそ先手を打たれてこちらが了承させられれば、最上を出さざるを得なくなります。」
「そんな味方内で騙し合いのようなこと。」
「最上ならやります。ですが今のあれにはそれをする程の余裕もない。療養期間中に落ちた体力も筋力も一朝一夕では戻りません。余裕がない最上は前線に出さない方が良い。金剛郭のような真似をされては困ります。」
「…仕方がありませんか。」
金剛郭の事を出されると菖蒲ももう何も言えなかった。
その日から、最上には来栖の分の仕事も一部流れてきたが、ちょこちょことっていた休憩時間を排除して、まとまった時間を少しでも作っては鍛錬に勤しんだ。休暇も疾風の世話と鍛錬に注ぎ込んで、努力を重ねたが暫く続けて無駄な努力だと気がついた。
背も伸びず、来栖達と比べれば非力な自分は、今までと同じ戦い方ではいくら鍛えても意味はない。
狂ったようにしていた鍛錬を減らしたのを見て、周囲はやっと落ち着いたかと胸を撫で下ろしていたが、そう簡単に諦めるものかと雅客は訝しんだ。
最上はじりじりと焦燥だけが募る中、ふと気付きを得た。同じく甲鉄城から外された瓜生達を巻き込むことにして色々と試し始め、雅客が最上を観察していると、何やら重傷者組でコソコソとしている事に気がついた。最上、瓜生、狩方衆3名、流民上がりの武士1名と中々不穏な面子である。
最上が菖蒲に不利益になるような事はしないとわかっているから、雅客はどこにも報告しなかったし、必要以上に探りも入れなかった。増設した厩へと入った牝馬の面倒も見始めた最上が、馬に乗るようになったのを見て観察するのもやめる事にした。
瓜生が戦線復帰する前に、最上が婚儀を上げる方が先であるので、それまではそっとしておくことにしたのだ。
最上、瓜生、狩方衆3名、流民上がりの武士1名と中々不穏な面子である。→流民上がりの武士に熱い風評被害w他の面子は仕方ないね。
道元様の屋敷は鳩屋敷。ホモ君の屋敷は馬屋敷。
またすぐに敗走されたら困るのでホモ君単騎は認めない道元様。ホモ君に死なれたら困るのもあるし、死ななくても甲鉄城にまたすぐに敗走されるのも困る。甲鉄城は金属被膜なし、人間のみの広告塔駿城なので、そう立て続けに敗走されると実現モデルとして不適格になっちゃう。
他駅でも実現し得るモデルケース(行商時前衛はカバネを引っ張ってくるのがお仕事なので、カバネを倒すのは狩方衆と流民上がりの武士達が担当)が甲鉄城、顕金駅の強さのアピール担当が蓬莱城。
実際のとこワザトリが出たら、他駅の駿城は全滅するか、車両を切り離すのが精々だけど、それはそれとして他駅でもカバネを討伐できると体現する事で、他駅にもカバネを殺させたり、流通を活性化させている。
ホモ君はへし折れそうになってたけど、中々ぺっきりはいかない。主君を轢き殺す指示をだして、家族、友人、知人みんな死んで、ちゃんとやることやりながら下侍達にじわじわ歩み寄って梯子外されて、顕金駅で友人知人のカバネ殺してもメンタルぺっきりとは折れず、ダメージは受けつつも立ち直ってる奴なのでなんやかんや無事。
ダメージコントロールそのものは上手くないので、割とギリギリまでいくけど折れる前に方向転換して戻ってくる。