【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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【小話】道楽

服部が最上の執務室に入ってくると、鼻をすんすんと鳴らした。

 

「なんかいい匂いしますね。」

 

「あぁ。桔梗さんが先日買ったお香を焚いてたから移ったかな?」

 

「へぇ。流石お姫様ですね。」

 

「まあそうだな。香なんて金持ちの道楽だからな。」

 

「あれ?辛辣ですね。」

 

「いや。道楽に金が動くのはいい事だ。七夕の時に私が手持ちの物を手放したのを覚えてるか?」

 

「ああ。あれ。高価な物なんでしたっけ?」

 

「それなりにな。未だ上侍達はああいう高級品を見せびらかし合うような道楽をしてるんだ。下々が多少飢えていようがそういうのは変わらんな。」

 

「そうですか。」

 

「逆を言えば、上侍達にそういう道楽が見受けられない駅は余程余裕がないと取られる。正にうちだな。」

 

「えぇ…。」

 

「菖蒲様が生け花を飾ったりしてるのもそういうことだ。あれだって実質ただの無駄だろう。」

 

「む…無駄って。」

 

「花を飾る余裕がありますよって主張だな。交易品が売れる駅は余裕がある。売れない駅は余裕がない。そう見るのが殆どだ。質素倹約の領主の場合もあるだろうが、風雅のわからぬ朴念仁扱いされるぞ。うちはまだ再興中と見られてるからまだマシだが、そのうち貶されかねないから、少しでも桔梗さんが道楽してくれてる方が助かるよ。私と道元様は肩書きが家老である以上目につくしな。」

 

「貶されるんですか⁉︎」

 

「そうだな。カバネを殺すことしか頭にない野蛮人とか言われるんじゃないか?」

 

「えぇー。」

 

「武士とは名ばかりで道楽ばかりの腰抜け共め。とも返せるが、避けられる諍いは避けたい。そんな感じだからお前らもその内何か買っておけ。」

 

「何かって何を⁉︎」

 

「いざという時売れる物とか?お歴々の言うこともたまには役に立ったしな。」

 

クスクス笑いながら最上は筆を進めている。

 

「参考までに七夕の時の箱には何が入ってたんです?」

 

「鼈甲の簪。」

 

「べっ…鼈甲⁉︎」

 

「買い叩かれたみたいだが状況が状況だ。少々残念だが致し方があるまい。」

 

「うわぁ…うわぁ…。」

 

服部はその日雅客の家に押しかけて、最上とした会話の事を武士達に共有した。

 

「鼈甲とはまた…。」

 

「いざという時売れるって?そもそも見てもいい物とかわかんないんだが?」

 

「いっそ銀細工とか?」

 

「まぁ奪還当時回収された皿だの茶器だの掛け軸だのより、よっぽど価値はわかりやすいな。」

 

「というか最上様の言い方じゃ普段立ち寄る駿城から、ちょこちょこ工芸品とか買わなきゃ駄目ってことでは?」

 

「余計価値がわからんな。」

 

「お香…。燃えてなくなるのか…。正に道楽だな。」

 

 

翌日

 

「というわけでお呼びしました。阿幸地殿です。拍手。」

 

「なんだねこの集いは。」

 

目利きが出来ぬなら出来る人に相談しようということで、雅客の屋敷の集いに呼ばれたのが阿幸地である。手始めに最上と服部の話をすると阿幸地はぽかんとした後、

 

「ああ。あの鼈甲の簪か。」

 

と宣った。

 

「あのって何?」

 

「一個人の持ち物なんで知ってんの⁉︎怖い!」

 

「喧しい。この私が高価な買物をした上侍の話を知らん訳がなかろう!」

 

武士達は、そうだこいつ上侍と癒着してたわとジト目になった。

 

「お前らは知らんだろうが、堀川家は当時上侍の中じゃ金無しだ。普段殆ど贅沢せんかった堀川家が、話題になってた簪を買ったんだから騒がれもする。」

 

「えっ?そうなの?」

 

「当主が死んでから蓄財を切り崩して生活してた訳だからな。金のない堀川家など商売相手として上がらんかった。まあ元々質素倹約な家だったから、貯めてはいたみたいだがな。簪を買った時も借財はしとらんし。」

 

「へえ。最上様そんな感じだったんだ。」

 

「頭の出来が良いと堅将様に引き上げられて、元服前から多少の禄を貰ってちょろちょろとしていた小童程度の認識だったから交流は無かったな。おかげで脱出当初対応を誤ったわ。」

 

「なるほど。」

 

上侍と癒着してたくせに、随分と最上に敵視されてるなとは思っていたが、そもそも交流がなかったらしい。

 

「富永の当主など随分馬鹿にしておったからな。そのおかげで簪を買ったのなら、結果としてありがたい話ではあったわけだ。七夕以外でもあの簪を売り払った金は使っていたようだしな。」

 

「そんな感じだから最上様ってば、ああ言う割に道楽は桔梗様任せなのか。」

 

「まあそうだろうな。目利きは出来る様だが興味はなさそうだ。しかし勿体ない。あの簪は鼈甲ということを抜きにしてもかなりの芸術品だぞ。それをポロッと手放せるあたりが朴念仁なのだ。せめて我々が売りに行けば、鰍が売りに行くより2両は吊り上げられたというのに。」

 

当時六頭領は最上にそれなりに警戒されていたので頼むわけがないのだ。最上は六頭領をつけ上がらせたくなかったわけだから当然の対応だった。とはいえ2両。六頭領をつけ上がらせたくないから2両捨てた形となる。

 

「最初あんな大きく出るから…。」

 

「うるさい。わかっておるわ。お前ら協力して欲しいのか、して欲しくないのかどっちだ。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「ふんっ。先に言っておくが相場より高く売るぞ。」

 

「おい!ぼったくり宣言か⁉︎」

 

「目利き代だ。それとも偽物でも掴まされたいか?本当ならお前らに偽物掴ませても良いんだぞ。道元様達も多少は勉強代として目溢ししてくれるだろうしな。」

 

「そうだ。こいつこういう奴だった。」

 

「まあお前らには、甲鉄城での恩があるからな。相場より高い程度で勘弁してやる。」

 

「ぐあぁあ!ムカつく!でもお願いしますぅ!」

 

「お前らなぁ。…まあいい。うちの店に来ればお前らには本物しか出さんし、駿城から買いたい時は声をかけろ。目利きが出来るやつを有料で貸してやる。」

 

「偽物置いてんのかよ。」

 

「当たり前だ。目利きが出来ん奴が悪い。」

 

お互い若干喧嘩ごしではあるが、交渉は成立した。阿幸地がだいぶ譲歩した交渉である。なんだかんだで甲鉄城で戦い続けた武士達のことは評価しているのだ。それにさっきは多少はお目溢ししてくれる等と言ったが、処罰はないというだけで最上あたりはちくちく文句を言うのが想像できた。家老は道元と最上しかいないのに最上のご機嫌は損ねたくない。

 

「しかし、そんなに当時の堀川家って金なかったのか?」

 

「あの簪が買えたのだから無かったわけじゃないな。金無しに見えてただけで。使用人も少なかったし、贅沢品も買わんし、奥方も繕い物などの仕事をしておったからな。堅将様に引き上げられたのが面白くないからと、叩きのめそうとして剣術で誰それが負けたと話題になって、カバネには意味のない剣術を極める程道楽に割く金がないと言われていた。」

 

「そういえばもう一個の箱は?あれも高いの入ってるんだろ?」

 

「知らん。少なくとも簪前後に高価な物は買って無いはずだ。買っておったら商人の話題に上がらない訳がない。」

 

「実は空とか。」

 

「それはないのではないか?富永の当主対策で持っておったなら、空では通用せんからな。金剛郭に2度行っていたようだから、そちらで買ったか形見の部類だろう。いずれにしろ鼈甲の簪より最上様の中では価値があるんだろうよ。」

 

「はぇえ。あんないかにも手放しても問題ありませんよって態度だったのに。」

 

「見栄を張るのも武士の仕事だろうが。」

 

「えぇー。そういうのよくないと思う。」

 

「お前らが価値も分からん高級品を買おうとしとるのと変わらん。用件が終わったなら帰るぞ。良いな。」

 

「呼び立てて悪かったな。」

 

「本当にな。さっきの話で分かると思うが最上様は経験ではなく、殆ど知識だけで我々と渡り合いお前らに教えとるからな。盲信も程々にしておけよ。道元様がいるから良いものの、そうでなければ屋台骨は中々脆いぞ。さっさと武士としての立ち振る舞いを覚えてやれ。小僧に家老などさせてるのが可笑しいんだ。」

 

阿幸地は吐き捨てる様に口にして帰って行った。

 

「小僧って言ったぞ。」

 

「まあ確かにあの歳で家老してるのは可笑しいよな。」

 

「知識だけでなんとかなってるのも可笑しいけどな。」

 

「府中駅の後もそうだったけど、もしかしなくても最上様の負担でかすぎる?」

 

「最上様いないだけで凄い量の書類降りてきたもんな。」

 

雅客の屋敷に居た武士達は、もっと仕事を頑張ろうと思った。




阿幸地からしたら、こいつらあの小僧に任せ過ぎでは?と思ってます。道元様達は結構急ピッチで下侍を育ててるつもりだけど、それ以上に再興政策をガンガン進めてるからあんまり手が回らない現状。

ホモ君はそもそも元服したてで顕金駅が崩壊してるので実務経験は実はほぼない。ただ城をちょろちょろして色んな仕事見てるので過去の資料ひっくり返しながら頑張ってます。城が燃えなくて良かったね。そんなわけなので、顕金駅奪還直後一人で修羅場ってたホモ君はマジでド修羅場でした。道元・勘太郎コンビはバシッと身支度して颯爽と合流したら、ホモ君一人がアホみたいに紙束積み上げてるの見て、ダメだこれ。兎にも角にも仕事しよ。ってなりました。

家老の書類内訳 道元:ホモ君
難しさ  7:3
量    4:6
本来管理職の武士がやるべき仕事がホモ君担当分に多いので、武士達が仕事を習得すると、道元からちょっと難しいやつがスライドしてきてこの比率を大体維持。


顕金駅政レベル(容姿で舐められてる分も含む。)

道元様>>>>>>勘太郎>>>ホモ君>>菖蒲様>>>>>来栖

道元様
言うまでもなくNo.1。金剛郭の老中は伊達じゃねぇ。格が違うのだよ。格が。

勘太郎
容姿と経験分ホモ君より上。地頭的にはホモ君の方が良いけど、金剛郭での経験ってかなり強いと思うの。

菖蒲様
処理能力そのものは悪くないけど、非情な判断が出来ないのでそもそも動乱期の為政者に向いてない。

来栖
地頭は悪くないけど戦闘能力極振りだから書類とかの処理が全然追いつかない。菖蒲様よりホモ君に近い思考回路はしてるけど、根が真面目なので後ろ暗い手段を自分から思いつくことはない。ホモ君を見て察する事は時々ある。

阿幸地殿
ホモ君以上は一定値を越えると普通に消されかねないので怖い。全員しれっと殺してきそうだからご機嫌は損ねたくない。むしろ戦闘能力極振りタイプの来栖はそういう心配がないので別に怖くない。本編前の顕金駅なら後ろ盾がつよつよだったのでホモ君も別に怖くなかった。今はないので超怖い。上3人は怖いけどそれはそれとしてお互い上手くやってwinwinの関係でいようね。って寄っていくのでとっても強か。
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