【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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【小話】一騎討ち

婚儀から暫くして、最上からの申し入れで来栖と最上が手合わせをすることとなった。

 

来栖に一騎討ちで勝ったら、甲鉄城の城主へ戻すように道元に要求したのだ。瓜生と2人がかりでも勝てないのにも関わらず一騎討ちである。来栖に一騎討ちで勝てるなら、城主に戻すのは吝かではないものの、瓜生が復帰するまではと元々決めた期限があるのだ。

道元としては、最上を城主に復帰させることを前倒す必要性はない。とはいえ断固拒否する程の事でもない為、負けた場合は二度と蒸し返すなと約束させた上で認めることにしたのだ。

 

最上が多少実力を上げたところで来栖に勝てるわけがない。一騎討ちは暗殺するのとはわけが違う。相手は一切油断していない状況で、格上に勝利せねばならない。

 

木刀とゴム弾の入った蒸気筒を装備した最上と、木刀を腰に差した来栖の一騎討ちである。武士達を集めて鍛錬場で行われることになった。

 

武士達も道元と同じく、一騎討ちで最上が来栖に勝つのは無理だろうと思っている。なにせ来栖は銃弾すら弾く男である。銃口の向きと引き金を引く指さえ見えていれば問題ないと曰うのだ。理屈上は最上も出来るだろうと、以前最上に銃弾を弾けるかと聞いた者がいたが、今から撃つから弾けと言われれば可能かも知れないが、戦ってる最中にそんなことできる訳ないだろ。アレと一緒にするな。と返されている。

 

最上は甲鉄城から外された面子とコソコソと話した後、中央で待つ来栖の下までやってきた。

 

「悪いが手段は選ばんぞ。仮想ワザトリなのでな。」

 

「それは構わん。」

 

来栖は道元に、最上がせめて以前の実力程度まで戻っていなかった場合、いっそ腕の一本でも折っておけと言われている。流石に折りたくはない。とはいえそんな状態で、自分に一騎討ちを申し込んだのなら折らざるを得ない。冷静になるまで大人しくしてもらわないとならないと思っている。

ただし想定より実力を上げて来ていた場合、折るつもりがなくても折らないように手加減出来るかは分からない。むしろ実力差が無いほど負傷させる可能性が高くなる。

 

そう考えている時点で、来栖には最上に負けるつもりは微塵もないのである。

 

樵人が2人の間に立ち手を挙げる。

 

「始め!」

 

樵人は手を振り下ろした後、巻き込まれてはかなわないと急いで後退した。

 

2人が激突し、打ち合いになっているがやはり最上が押されている。かつての体力も筋力も取り戻したようだが、言ってしまえばそれまでだった。今までも使っていた突き技の精度が上がってはいるが、飛び抜けて向上したとまでは思えない。元々技術的には仕上がっているのだから、劇的に技術が向上することはないのだ。

 

来栖は頭の片隅で、このくらいなら態々腕を折る必要はないなと考えた。

 

来栖の横薙ぎを受けて最上が吹き飛び、追撃の為来栖が最上に斬りかかる。来栖の斬撃を避け来栖の斜め後ろに抜けた。

 

「ふっ!」

 

更に振り返りざま横薙ぎの一閃をしたが、来栖の予想より最上は後退しており、来栖が完全に空振りの横薙ぎを振り抜く直前、最上の左手には信号弾の様なものが握られていた。

 

(目潰しか⁉︎)

 

片目を死守すべく左手を左目の前に翳した瞬間引き金が引かれた。

 

ぱんっと軽い音がなり、出てきたのは投網の様な物だった。

 

「はっ⁉︎」

 

後退しようとしたが既に遅く、来栖が網に捕われた。最上が突っ込んできた為、木刀を振ろうとしたが網が絡んで思うように振れず、最上が精度を上げてきた突きが来栖の心臓の前で寸止めされた。

 

「言っただろ。手段は選ばないって。」

 

「まさかこんな方法とはな。樵人。」

 

「し…勝負あり!」

 

甲鉄城から外された面子は手を叩き合い道元と瓜生は爆笑した。

剣術もそこそこに新兵器。しかも非殺傷の網である。もう一騎討ちというより、実演販売の為の商品紹介であった。

 

「本当なら剣術で勝ちたかったがもうそれは諦めた。私がどれだけ鍛錬しようがお前には届かん。」

 

勝ったくせに大層不満気な表情である。

 

「勝ったんだから不満そうにするな。というかこれをどうにかしてくれ。」

 

咄嗟に動こうとしたせいで網が絡んで身動きが取れない。最上が網を解こうとするが中々解けない。

 

「あれ?…うーん。ちょっと待て。」

 

「おい。いっそ切ったらどうなんだ。」

 

「これ金属被膜の鋼線を編み込んだから中々切れないんだ。」

 

「なんてものを作ってるんだ。お前は。」

 

武士数人でなんとか解く事に成功した時には、網に捕われてから四半刻も経過していた。

 

来栖は網が解かれるのを待つ間、最上が甲鉄城への復帰を焦るあまり、無謀な勝負を仕掛けてきたわけではなかったと理解して安堵した。

 

「実は顔面に散弾の案もあったんだが、車内じゃ使えないし、腕を翳されて目を死守されたら意味がないってなってな。」

 

「散弾の場合どう試すつもりだったんだ。」

 

「ぶっつけ本番しかないからとりあえず今回は廃案にした。お前相手に散弾は流石に使えんしな。」

 

「しかし網が出るとは思わなかった。」

 

「これなら誰でも使えるだろ。それこそあのワザトリでもなければ、多少やり方は限られるが前衛無しでもワザトリすら捕らえられる。鈴木さんには大変世話になったよ。」

 

常日頃から武器の類の開発は、誰でも使えることを重視しているだけあり、開発された武器もそれに則った物だった。

 

投網砲と名づけられ、掃射筒が配備されているところに追加配備されることになった。とはいえ金属被膜の鋼線製の為他の駅では製造不能な上、大量販売も無理であるので網の素材は検討予定である。

 

最上と来栖の一騎打ちを見て爆笑した道元は、最上の甲鉄城復帰を認めた。本音を言えば出したくはないのだが、来栖も菖蒲の伴侶としての教育中なので、来栖も実は外に出ている場合ではない。勿論行商範囲は少々狭目を設定しているが、瓜生が復帰するまでとされた。

 




最初散弾を想定してたのは作者です。車内でも一騎討ちでも使えねぇなと色々と検討した結果の網。ついでに新戦法も一応あるけど少なくとも狩方衆が数人必要なので、一騎討ちでは使えないんですよね。

武士達は婚儀の後祝えなかった分、一騎討ちの祝勝会したいけど、負けたのは自分達の首長なのでそうもいかないジレンマ。

これは完全に初見殺しなので、次回があっても来栖に通用しません。

今回新兵器に関わった人間以外誰もホモ君が勝つとは微塵も思ってませんでした。ちなみに瓜生達も勝てたら面白いくらいで、絶対勝てるとは思ってませんでした。

ホモ君は甲鉄城に戻ります。
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