【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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【小話】桔梗

桔梗は阿幸地達や余所の駿城の商人を時折屋敷に呼びつける。

 

少し前は上質で派手な羽織を、先日は笹紅を購入しており、他駅では堀川家に嫁入りした倉吉の姫は高級品を買うと囁かれている。

 

とはいえ元々が領主の娘であるので目利きも出来る為、中途半端な物を持ち込んで出入り禁止にされた商人もいるのだ。

 

阿幸地は呼びつけられても、商品を見せることもさせて貰えない。ただし、阿幸地は物価情報や他駅の情報を買い取って貰っている。勿論そう高価な情報ではない為、かかる時間の割に利益は少ない。その上、阿幸地から高価な商品を購入したかのような噂を流すことも要求されており、単純に商売としてはいまいちであるが、顕金駅の家老の屋敷へ出入りしている商人という肩書きはかなり美味しいものである。

 

他駅からくる商人は、阿幸地を経由して堀川家へと繋ぎを取るため、まずは阿幸地の機嫌を窺わなければならない。阿幸地はなんの見返りもなければ、基本的に桔梗に繋ぐ必要はない。見返りさえあれば、桔梗に繋ぎを取る。阿幸地の顔が広くなれば、その分阿幸地が得られる情報も多くなり、それを桔梗が買う。桔梗も阿幸地もお互いを使って利益を得るのだ。阿幸地は多少手間ではあるが、その程度の損で済むので否やはないのだ。阿幸地が流す噂により、桔梗は大層な浪費家になっている。

 

良い商品を携えた商人は城に上がる為、菖蒲、道元、最上には目通り出来るが、桔梗は阿幸地が繋がなければ会う事が出来ないシステムなのだ。だが現状顕金駅で、浪費しているように見えるのは桔梗だけであるので、商人はこぞって阿幸地を訪ねるのである。話を聞きつけた道元からも資金提供があるため、桔梗は話題性のありそうな良い品を買い付けている。掛け軸や器の類は物が残り、他へと回せばバレる可能性があるため、基本的には飲食にかかるものを多く買い付けている。酒を買えば道元に、甘味を買えば菖蒲に、珍しい作物は料理番の鯏や六頭領と活用方法を模索する。消え物ばかりだと受けは良くない為、稀に反物だの紅だの装飾品だのを購入する。

 

噂では大層な浪費家であるので、民人達の視線は多少冷たいが、最上の嫁であり、特段桔梗の浪費により何か害が出ている訳ではない為、やっぱりお姫様ってのを嫁にもらうと金がかかるんだな。それに引き換え菖蒲様は…。程度である。そもそも上侍達が浪費家であったので、民人達も上の人間はそういうものだという認識なのである。

 

桔梗は顕金駅の政を手伝うべく、勘定方に顔を出して計算を手伝うことが多い。勿論倉之助が取り扱うような重要な部分には触れることなく、雑費などの計算を手伝っている。雑費となると重要度は低いが、なにぶん計算が多い。桔梗が勘定方に顔を出すと勘定方は顔が明るくなる。

 

顕金駅の規模に対して、勘定方の数が足りていないのだ。そもそも武士自体が足りていないので、当然どの役職でも人は足りていないが、甲鉄城の収入、蓬莱城の出費だけでかなりの金額が出入りする為、勘定方の負担はかなり重くなっている。そして何より他の役職と違って、簡単には他から人を回せないのである。なにせ学がない武士が殆どであるので。

 

本来なら不満のひとつでも出るところではあるのだが、家老をしながら甲鉄城で前衛をして、行商で各駅を回る最上に文句を言える者などいないのである。道元相手は怖すぎて文句を言おうとすら思わない。そんな中手伝いに来たのが桔梗である。桔梗は護衛の旭も連れ歩いているので、手伝いに来ると単純に2人の手が増えるのである。

 

旭はそこまで計算は早くないのだが、桔梗は勘定方と同じ速度で算盤を弾く上、無駄に数の多い雑費の計算をしてくれるのだからありがたいことこの上ない。

 

桔梗からすれば、算盤を習得しても活かす場はなく持ち腐れていた技能であった。雑費を計算するだけで、拝むが如く感謝されるので気分良く仕事をしている。倉吉駅では武士が有り余っていたので、領主の娘が算盤を弾くのは勉強の時だけであった。旭もゆっくりではあるが、慎重に算盤を弾くだけで感謝されるので苦笑していた。

 

桔梗も旭も若い最上が、問題のある桔梗を娶ることに多少の疑問は感じていたのだが、見れば見るほど顕金駅には武士が足りない。そりゃあ年増に片足を突っ込み、顔の焼けた女でも娶りたくなるだろうと思える人材の足りなさである。

 

聞けばかつての上侍は最上しかおらず、その最上ですら元服して割とすぐに顕金駅がカバネにのまれている。人が足りない上に、今まで政務を取り仕切っていた上侍が、軒並みいなくなっているのだから、今の体制でこのような速度で再興をしている顕金駅は普通ではない。城下で務める者達には多少余裕があるようだが、城で働く武士達は殆どが独楽鼠のようにくるくると忙しそうに働いている。

 

普通の駅からすれば、国賊扱いの下侍など嫁入りの際に連れて行きたいと言えば、無駄な食い扶持が増えるので嫌な顔をされるのが当然なのだが、顕金駅では大歓迎された上、それぞれの場所で即戦力とされている。最上が家老をしている時点で、人材不足というのは想像できていたが、想像を上回る人材不足であった。最上の帰宅時間もかなり遅いが、自宅に帰れるようになっただけ良くなった方、と言われた時はどうしようかと思った程である。

 

大体の駅で武士は6時間程度が勤務時間とされており、朝から晩まで働いているのは異常なのだ。まして家老陣など4時間程度しか働いてなくとも不思議ではないというのに、顕金駅は家老陣と勘定方の勤務時間が非常に長い。

 

桔梗は最上に許可を取り、更に20名程下侍にあたる武士達を呼び寄せた。屋敷に通わせ、算盤塾を行い勘定方にする為である。今以上の金の動きは現在の勘定方には賄いきれない。倉吉駅ではどうせ扱いが良くない武士達であるので、倉吉駅からも喜んで差し出された。武士達も要らぬと放り出されれば面白くないが、桔梗は倉吉の姫である為、姫が望んでいるとなれば否やはない。妻子持ちは妻子ごと転居を許されたし、国賊どもと詰られることのない顕金駅は、とても過ごしやすかった。

 




嫁いだからには良くするわよ!な桔梗さん。
倉吉駅も駅の圧迫具合は結構やばいので、下侍?好きに持ってけって状態。上侍は行きたいなって匂わせた奴(デカい顔できそうだから)はいるが、桔梗にすっこんでろ無能共ってお返事をもらっている。ぶっちゃけ政においてはそこまで無能じゃないけど、顕金駅で上手くはやれない。

浪費家の汚名を頂いた桔梗さん
ご本人はそれが何か問題あるの?家老の妻がケチじゃあ格好つかないでしょう?ってしれっとしている。

阿幸地
最上の嫁が嫁いできてから、すぐにフルスロットルでかっ飛ばしてくるので結構びびったが、かつての上侍と癒着していた男なので、普通に仲良くさせてもらっている。暫くしていなかったタイプのやり取りに少し満足感を得ている。だって顕金駅怖すぎる奴(道元、最上)か馬鹿正直しかいなかったんだもの。
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