休暇の最上が操車場で車両整備をしている生駒のもとを訪ねてやって来た。
「無名殿が前に使ってた小型の蒸気筒みたいな形状の筒って作れるか?」
「作れなくはないですけど、あれはかなり有効射程が短くなるので無名位しか使えないんじゃないですかね。」
「あぁ。いやあれで火薬式の散弾銃を作って欲しいだけなんだ。」
火薬式等という骨董品、まして散弾などではカバネを殺すことはできないと生駒は訝しんだ。
「散弾?しかも火薬式ってカバネを殺せなくないですか?」
「殺すのが目的というより、目潰し的な用途だから威力より、取り回しと携帯性を重視したい。勿論近接戦闘での使用が前提だから大量生産はしないんだが。」
「なるほど。目潰しですか。」
「私の技量と臂力では、今後厳しい場面もあるだろうからな。最近は後ろに下がって蒸気筒撃つ方が少ないし、いっそ蒸気筒下ろして他の装備を充実させた方がいいかと思ってな。」
「形状的には単筒というより、蒸気筒を限界まで切り詰めるみたいな感じになりますけど大丈夫ですか?蒸気機関部分をなくせる分軽くはできますけど、装填できても2発が限度です。」
「むしろ2発も装填できるのか?」
「銃身を水平に並べることで2発は装填できると思います。無名のも銃口は水平二連式でしたから。」
「では片手間で構わないから頼めるか?」
「勿論です!…そういえば先日は俺じゃなくて鈴木さんに頼んでたのはなんでですか?」
「お前がいなかったからだな。それにお前にばかり頼むのも悪いかと思ったんだが。」
「やっぱり不在が多いからかぁ。」
「手間をかけて悪いが頼んだぞ。」
(まあカバネに毒を撃ち込む云々などというのは、生駒の反応がわからなかったのもあるがな。)
生駒は必ず用途を聞きたがるが、その点鈴木はそんなことは気にしないし、例え使い方を聞いたとして、それは開発に必要な情報としてしかとらえない。
最上が操車場から去って行く。
最上は府中駅の件で大怪我をしてから、鈴木とこそこそと投網砲を作ったり、暗器らしき弓を作ったりしていた。ワザトリに最上の戦い方が通用せず、瓜生と共に大怪我を負ったというのに、諦めたりせず他の手段を模索する姿勢に素直に好感を抱いていた。
そもそも最上は顕金駅が落ちた時に15歳で、自分が逞生達の協力を得て熔鉱炉にカバネを叩き落として殺した歳と同じであった。あの時ツラヌキ筒も完成しておらず、カバネから逃げるのすら一苦労であった自分とは大違いである。ツラヌキ筒が完成していたとして、カバネウイルスに感染せずにカバネを殺せたかと言われると、運次第といったところであるので、生身で前衛をはる最上と瓜生は凄いのだなと思うのだ。
来栖は無名とやり合える時点で人間とは認めていない。
暫くして最上に依頼された散弾銃が完成し、副産物として無名の2丁の蒸気筒も完成した。
「うーん!スピンカートリッジも悪くはなかったけど、やっぱりこれが馴染むなぁ!何より軽いのが良いよ!」
無名は取り回しを確認してからホルスターへと蒸気筒を納めた。無名は軽いと言っているが、最上の散弾銃ですら2斤(凡そ1.2kg)あり、無名の蒸気筒は3斤ちょっと(約1.8kgちょっと)あるので、決して少女が片手で振り回して軽いと喜ぶ重さではない。側から聞いていた巣刈は軽くはねぇだろと思いつつも、スピンカートリッジの蒸気筒を片手で撃っていたのを思い出して今更かと思った。
最近軽量化された蒸気筒ですら一貫七十匁(約4kg)はあるのだ。それ以前の蒸気筒やスピンカートリッジはもっと重い。
ちなみに掃射筒と擲弾発射器は二貫百四十匁(約8kg)はある。
最上は散弾銃を受け取った後、実験をすることにした。生駒には目潰しと言ったが、本当の目的はそこではない。
カバネは負傷すると、じわじわと回復する。とはいえ体内に入り込んだ異物は勝手に排出される事はない。ならば散弾を撃ち込めば、大腿筋や三角筋などの大きい筋組織に入り込んだ散弾が回復を阻害したり、関節に散弾が入り込めば関節が動かなくなる可能性がある。
更に言えばカバネの心臓を覆う金属被膜は網目状である。理屈上は散弾は金属被膜の隙間を通り抜ける。出来るだけ至近距離から心臓にむけて撃った場合、散弾は拡散しきる前にカバネの体内に侵入する。侵入した散弾が金属被膜をすり抜け入り込み、心臓通過後に進行方向の金属被膜に当たれば、体内で跳弾することで勝手に心臓をぐちゃぐちゃにしてくれるはずなのだ。
カバネやワザトリはそもそも警戒をしないし、カバネリも骨董品の火薬式の銃器などさして警戒しないだろう。金属被膜を破れないのが常識だからだ。
とはいえ至近距離で使わなければ、散弾が拡散しきってあまり効果はないだろう。瓜生が戻るまでは名目通り目潰しとして、その後は毒と併用して実験していくことにした。
結論からいうと瓜生復帰後の実験は大体失敗である。
殺したカバネを解体し確認すれば、体内に散弾は残留していたし、回復は少々遅くなる気はするが、そもそもが人外の筋力であるので、筋繊維のいくつかが回復出来ずともそれなりの運動機能を果たすのである。
心臓の金属被膜もすり抜けるが、外殻に弾かれる散弾の方が多く、そちらの跳弾が危険すぎた。失敗前提でカバネの四肢を落とし、盾で囲って実験したが、跳弾しまくったのである。殺せはするが、大変危険。
ただし、脊髄に対する効果は有効であった。カバネは首がへし折れようと回復するが、脊髄に当たれば四肢のいずれかが動かなくなる多いことが判明した。筋繊維と違い、脊髄神経は代替えが効かないのである。背面から撃たねば効果は薄く、実用的かと言われると疑問が残る。背面から脊髄を狙えるなら、心臓に刀を突き入れる方がいいのである。
重さだけで言うと掃射筒は軽機関銃の部類だけど用途と仕様が重機関銃。掃射筒は蒸気供給の都合上、基本的に据え置き式か携帯するなら蒸気タンクを複数持ち歩かなければならないので基本的には1人じゃ持ち運び出来ません。
吉備土なら、キャリーカート的なやつにでもタンク積んで、手持ちで乱射できますがわりと直ぐに蒸気切れになるので、持ち運びのメリットは低め。基本的には防衛用に据え置きで、向かってくるカバネを撃ちまくる。蒸気の供給がネック。
アニメとかで片手で銃撃つシーンって良くあるけど、重さ調べるとヤベェなって思いますwワンシーンだけの真似なら出来そうだなとは思うけど、大立ち回り続けてることを考えると、すごい体力と筋力ですよね。まあ反動とかも考えたらワンシーンすら無理ですけどw
ものの○姫のエボシさまとかヤベェと思うの。火縄銃普通に立位でぶっ放してるの。Twit○erで火縄銃撃ってる動画見たけど反動エグすぎたw
希望だけで言えば、ホモ君には刀と蒸気筒で無名ちゃんみたいに大立ち回りしてほしいんだけど、彼は人間なのでね。前衛してる時点で中々人外ではあるけど無双させちゃうのはちょっと違うかなって…。お陰様でホモ君は怪我したり、倒れたり忙しいけど未だ17才の青年なので。無双できちゃうキャラなら簡単に話は進むけど、あれは無名ちゃんと来栖の専売特許かなって思ってます。
来栖はほら。公式だから。駅外で彷徨こうが、ここは任せて先に行けってしようが無傷だから。ワザトリ君が唯一の大金星だから。