勢いだけで書きました。(いつもですが)この話はノリで書いた1割の部分から生えた9割の話で構成されています。
最上の下に備前国下津井駅の山本から手紙が届いた。どんなくだらない内容が書いてあるかなと開いてみたら、とんでもない内容であった。讃岐国の武士でカバネリになった者がいると書かれていた。山本はカバネリと断定しては書いていないが、その武士はカバネを瞬く間に斬り倒し、一見すると人間だが、少しはだけだ着物の隙間からカバネの光が溢れていたのだと書いてあるのだ。確定以外のなにものでもない。最上は山本と食事をした際にカバネリの話題は出していないが、顕金駅に来ていた以上それとなく城主あたりから聞いてはいるだろう。
山本がカバネリを話題に出したのは、助けて欲しいとか、カバネリってどんな感じ?とかを書いてきている訳ではない。助けてもらった。めちゃくちゃ強かった。等という内容で、カバネリの事を報告しようとしたというより、先日死ぬかと思ったけど命拾いしたという内容であった。しかもその駅で学者みたいな怪しいおっさんがすごいもてなされてたなどと書かれていた。
(怪しいおっさんとは莊衛じゃないのか⁉︎違うとしても絶対克城にいた学者だろう!っ〜…晶さん!もっと詳しく書いて下さいよ!)
くだらない話を望んでいたくせに、非常に理不尽である。
最上は取り急ぎ道元に報告に走った。道元の執務室に、血相を変えた最上が飛び込んできて道元は仰天した。
大変失礼な話ではあるが、山本の手紙から無駄話を省いて要約すると
讃岐のいずれかの駅に、学者らしき男が大層もてなされており、その駅にはカバネリの武士がいる。
ということである。
学者らしき男がもてなされているということは、駅に利益をもたらしたということで間違いない。その駅にはカバネリがいる。ならばカバネリを作り、戦力を与えたと考えられる。
美馬がいない以上、破滅を望むかはわからないが、学者であるなら研究をしたいはずだし、莊衛であれば滅火の鵺で大喜びしていたくらいだから、カバネリを作って、はいおしまいとはならないだろう。
その駅は実験場として選ばれただけではないだろうか。カバネリは何体いるのか。鵺の実験はしないか。鵺に代わる何かを見つけてはいないか。
「とりあえずは何処の駅か聞いてみます。駅単位に取り入っているとなると、下手に動けば嗅ぎつけられます。」
「とにかく詳細が判明するまでこの件は内密にしよう。知れば突っ走りかねないのもいるしな。」
最上は山本に対して素直にその駅についてもっと教えて欲しいと書いた。迂遠な表現は伝わらない可能性が高いので仕方ない。手紙は何駅か経由して届く形だ。時刻表もない為届くのに中々時間がかかる上、確実性もないのだが、誰にも嗅ぎつけられずに情報を集めるにはこれしかないのだ。蓬莱城は念の為備州の三国に近寄らないように采配した。
ひと月ほどして山本から手紙の返信が届いた。道元の下に持って行く前にひと通り目を通して、目頭を抑えて深々とため息を吐く。今度は道元の部屋を普通に訪ねたが、道元は最上の微妙な表情を見てこれは良い知らせじゃなさそうだなと思った。
讃岐国多度津駅がカバネリのいた駅だそうだが、最上の手紙が届く前にカバネにのまれたと書かれていた。多度津駅からの流民は、今のところ下津井にはいないとのことであったが、当時多度津駅にいた高松駅の駿城の者が、城ほどの大きさの化け物がいたと怯えているとのことであるから、融合群体か鵺なのだろう。学者の存在を考えれば鵺の可能性が高い。
以前聞いたところによれば、女のカバネリしか鵺にならないとのことであったので、山本を助けたカバネリの武士は男であろうから、少なくとも2体はカバネリがいたことになる。
かつて鵺となった滅火は、鵺崩壊後暴走し狩方衆を殺し、無名は白血漿により正気に戻っている。鵺が崩壊してもカバネリは生きている可能性が高い。
もてなされていた学者は行方が分からず、容姿の特徴としては莊衛と考えられる。今となってはなんで殺しておかなかったと来栖に詰め寄りたいが、まさか金剛郭から生きて脱出できるとは誰も思わない。というか油虫並みの生存能力である。油虫とは現代で言うところのゴから始まる黒い虫のことである。
道元と最上は為政者側として考えた。自分達が何も知らないとして、カバネリの技術を知った時どうするか。得体の知れない者が、埒外の戦力を持つのは恐ろしい。しかし忠臣ならどうか。暴走の可能性を知らねば手を出す可能性はある。周囲をカバネに囲まれ、じわりじわりと、あちらの駅がカバネに飲まれただの、こちらの駅の駿城は行方がわからないだのと聞けば、外法の術にすら手を出したくなるのはわかる。まして学者とやらが提供するカバネリの技術は、生駒の方法とは違いカバネに噛まれる必要もない。
手を出すと決めたなら1人では済まさない。自分の横に1人、駅の防衛に1人、駿城に1人の最低3人は欲しい。そこに女は含まない。最低2人は確定しているが、推測では最低でも4人はいる事になる。鵺のみで崩壊したのか、それとも武士のカバネリの暴走もあったのかは不明だが、カバネリが4人以上いるつもりでいるくらいがいいだろう。
「しかし美馬率いる狩方衆ですら、無名殿、滅火、美馬の3人でした。あの面子の忠誠を疑っていたとも思えない。数が用意できないのか、成功率の問題かわかりませんが、欲しいだけカバネリにできるというわけでもないでしょう。」
「少なくとも克城が爆発した以上、手段も失っていた筈なんだがなぁ。どこかの駅に預けてあったか?」
「まあカバネリ2体は、確実ですからそういう事でしょう。女の方を領主が把握していたかはわかりませんが、武士の方は記録があるかもしれません。忠臣に使うのなら、専門的なことまでは分からずとも記録は残すでしょう。」
「カバネリ2体以上は確実な場所か。最上君はどう見る。多度津駅で剣豪の噂は聞いたことはないが、来栖君とて下侍であったから噂になっていなかっただけだ。」
「下侍には使わないのではないですか?下剋上されては堪りません。とはいえ素人の生駒があの強さですから、武士のカバネリとなれば無名殿や来栖の手は必要でしょう。」
「本来なら触らずにいきたいところだが、その内蓬莱城の者達が嗅ぎつけかねん。いつもの面子で突入して帰って来ませんでした。では話にならん。」
「やりそうなのがなんとも言えませんね。」
「崩壊を招いたのが女のカバネリであるなら、武士のカバネリは此方側に着くやもしれん。調査せねばならんか。」
「高松駅の城主あたりなら何か知っているかもしれません。甲鉄城で高松駅まで行きましょうか。」
「だが讃岐となると距離がなぁ…。」
高松駅は讃岐の国の駅である。備前を経由して、讃岐に行くとしてどうしても日数がかかる。府中の時に使った長距離対応の伝書鳩がいるので、とりあえず連絡は出来るが、最上が長期不在となると資金面などの都合もあるため、色々と話を詰めなくてはならない。