【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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南海道 7

会議三日目

 

一日目、二日目ともに、早々に席に着いていた最上が席に居ないのを見て、そろそろ畳み掛けようかとか、まず遅いことから突いてやろうかと、領主達は舌舐めずりをしながら最上を待っていた。

 

開始時刻直前には顕金駅以外の全ての駅の者が着席しており、顕金駅の席だけぽかりと空いているのを見て、高松駅は少々焦っていた。顕金駅に逃げられると一番困るのは高松駅なのだ。

 

多度津駅で、単独で謁見までしてきたくらいだから、無断で逃走するとは思っていない。いないが、もし逃げられれば次の槍玉は高松駅なのだ。ただの遅刻なら良いのだが。などと思っていたら、襖がすぱりと開いた。開始時刻丁度である。

 

「すまんすまん。遅れてしもうた。」

 

襖を開けて入って来たのは牧野道元であった。会議に参加している者たちは血の気が引いた。

 

「い…いえ。丁度です。」

 

高松の領主は汗をかきながら返す。

 

「いやいや。二日も遅刻してしまった。申し訳ない。」

 

態度は全く謝っておらず、ずかずかと歩いて席にどかりと座った。後ろからちょこちょこと着いて来た最上も、軽く頭を下げながら道元の隣に着席した。

 

「進行は誰かな?始めてくれ。」

 

道元の一声で会議が始まった。

 

 

会議二日目の夜、下津井駅の駿城に乗って道元はやってきた。検閲をする武士など道元を見た事もないので、領主に報告されることはなかったのだ。

 

道元は顕金駅で、最上からの会議開催予定の文を見て、蓬莱城に飛び乗り脱線ギリギリの速度で下津井駅へと急がせた。下津井駅では、石見の銀のお菓子を少々領主に掴ませて、駿城まで出させて高松駅までやってきたのである。

 

大豊駅の領主は冴えない男だが、家老が老獪なのだ。鳩の帰巣本能を利用しているのが伝書鳩である為、高松駅に直接文を送ることはできない。最上に忠告したくとも、顕金駅からは周匝駅経由で下津井駅に運んで貰うしかないのだ。高松駅もやられっぱなしはなかろうと、勘太郎に顕金駅を任せて蓬莱城をかっ飛ばしてきたのだ。

 

甲鉄城で最上と合流して、やっぱりやられていたかというのが道元の感想である。最上の実力不足は、道元にとって想定範囲内である。だからこそ蓬莱城でかっ飛ばしてきたのだ。

 

会議は昨日までとはあからさまに状況が違った。道元はふんふんと意見を聞いてはいるが、それとなく擦りつけようとしようものなら、何故うちがそこまでしてやらねばならないのかね?あれだけの情報をとって来たというのに何が不服かね?別に尾道今治間の路線が生きてれば構わんよ。等と返してくるのである。東雲は駅から出るつもりが現時点はないのだから、顕金駅が積極的になる必要も本来ならないのだ。莊衛の研究は止めたいが、顕金駅のみの都合であり、他の駅はその話を知り得ない。勿論菖蒲は協力しましょうと言うが、それはそれである。

 

戦力を散々喧伝しておきながら、いざとなればお逃げになるかと三島の領主が責め立てたが、力があったら奉仕せねばならんのか?君達こそ恥ずかしくないかね。うちの主戦力はほぼ10代ぞ?子供におんぶに抱っこで。うちは情報も武器も提供しただろう?君達は何をするんだね?と全方位に喧嘩を売ってきた。

 

熱り立つ領主達を尻目に、道元は会議にならんな帰ろうかと席を立つ。南海道四国を敵に回されるおつもりか!と怒鳴られるも、おや?伊予も阿波も土佐も君達の意見が総意と捉えて良いのかね。と返したところ黙り込んだ為、その間に道元と最上はするりと会議の場から抜け出した。

 

「道元様。よろしいので?」

 

「良い良い。どうせ高松はこちらにつかねば、次に槍玉に上がるのだから機嫌をとりにくるさ。」

 

「ですが大豊、三島、つるぎが…。」

 

「まあそのあたりは他の路線を使う手もあるが、手を挙げておきながら、顕金駅が降りるなら降りるなどと言えまい。大豊など、わざわざ高知から自走臼砲を借りる話まで取り付けて来たのだろう?」

 

「しかし…。」

 

「私は前線に立たぬから、君達の強さを本当の意味では理解しておらん。君が、顕金駅の戦力なら余裕で勝てますと言うなら、それこそ突っ込んでもらっても構わんよ。だがそうではないのだろう?それこそ聞く限り、来栖君と無名君のみ単騎で渡り合える程度。うちの戦力を失うに足る利がなくば、無理をする必要などない。」

 

「はい。」

 

最上はしょんもりとしながら、道元の後ろについて行く。

 

道元とて正直に言えば、大豊、三島、つるぎを敵に回すのは、あまり嬉しくはない。だが取り込むには既に遅いのだ。

 

まあそれなりに揉めはしたものの、そこから二日ほどかけてやっと方針が決まった。

 

最初から砲撃を雨霰と降らせて、カバネリの所在が分からなくなるのは困るので、まずは顕金駅が跳ね橋付近の安全を確保。

橋頭堡となりえる場所の選定を終えれば、まずは高松駅と、三島駅が入る。

この時点でカバネリが2人程討てれば、つるぎ、まんのうが入り、大豊駅と三豊駅は瀬戸大橋の防衛である。

なにもなければ大豊駅も三豊駅も、ただ居るだけになるのだが、万が一融合群体が瀬戸大橋に向かった場合、玉砕しようとも死守するのが役目である。

 

顕金駅、高松駅、三島駅は損害が予想される為、予め規定した損害率を越えれば、つるぎ駅、まんのう駅が交代する。大豊駅と三豊駅も他駅の損害の程度によっては交代もありえる。大豊駅は駿城と自走臼砲は別城である為、大豊駅を前線に配置した場合も、自走臼砲は瀬戸大橋前に配置のまま、損害により下がった駅と瀬戸大橋の防衛となる。

 

顕金駅の負担割合は大きいが、顕金駅の戦力を考えると致し方ないし、下手に他駅を前に出して、カバネを量産させるわけにもいかないのである。

 

勿論ただで負担を請け負っているわけでもない。この作戦において顕金駅の駿城でかかる費用は、全て顕金駅以外の駅がそれぞれ負担することとなっている。顕金駅は、筆頭となる高松駅にかかった経費を請求し、高松駅が取り決められた負担割合で各駅に請求するのだ。湯水の如く弾をばら撒こうと実質無料なのである。

 

この取り決めにより、顕金駅は蓬莱城持ち込みの際は、抵抗弾を取りやめ、全弾噴流弾を使用する予定である。

 

ここまで決まれば、自分は不要と道元は甲鉄城に下津井駅まで送らせて、周匝駅経由で顕金駅へと帰って行った。

道元が顕金駅につけば、蓬莱城に準備をさせて送り出す予定である。

 

蓬莱城が着くまでは割と暇が出来た。各駅も領主や家老を駅に送り、体制を整えることになっている。そんな中、三島駅が喧嘩を売ってきた。

 

三島駅最強の男と手合わせしろと言うのだ。顕金駅も現在いる者の中から最強を出せとのこと。強さで言えば無名なのだが、無名は手加減は上手くない。そして女子である。衆人環視の中少女にのされる武士。外聞が悪い。来栖がいれば来栖一択なのだが、無名を出して良いものか最上が迷っていると、三島駅は早くしろと騒ぐので、最上が無名を出したが、三島駅側は顔を真っ赤にして怒り出した。

 

「そのような少女に戦わせておるのか!」

 

最もな言い分である。

だが、これで面白くないのは無名である。

 

「だったらなに?私が一番じゃ悪いの?私はカバネリ。あんたより強いよ。」

 

「今いる者で人間に限定するならこっちだ。」

 

最上は瓜生を出した。

 

「ちなみにその次が私だな。」

 

最上も前に出る。

無名、瓜生、最上が並ぶが、三島駅側からすれば、少女、武士には見えない若い男、幼く見える家老である。どれを選んでも、強そうに見えない。三島駅側が言葉に詰まっていると、無名が前に出た。

 

「一番が良いんでしょ?いいよ。遊んであげる。」

 

無名が馬鹿にしたように、笑ってちょいと手招きをする。

 

「小娘。後悔しても遅いぞ。」

 

「本気で来てよ?後で女だから手加減したとか、恥ずかしい言い訳しないでね?」

 

まあ当然無名の圧勝である。遊んであげるとの宣言通り、ちょちょいとひねって終了であった。

 

結果としては、良い宣伝にはなった。カバネリがなんぼのもんじゃいと、突っ込んでいって死なれてはかなわない。少女である無名が実力を見せたことで、観戦していた者達はカバネリの強さを知ることとなった。まあ同じカバネリでも無名と生駒では、段違いなのだがそれはそれ。

 

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