【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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南海道 8

蓬莱城が顕金駅を出発した。

 

「道元様が蓬莱城に飛び乗ってきた時は驚いたな。」

 

「本当だよ。寿命が縮んだ。」

 

来栖がぽつりと言った言葉に、吉備土が返す。吉備土は道元が苦手だ。相性が悪いのもあるが、以前徹底的に怒られたのが効いている。

 

「脱線するかしないかを攻めたんだって?」

 

雅客は他人事であったので、面白そうに話題を振る。

 

「そうだよ。下津井までひたすらかっ飛ばしたんだよ。」

 

「最上様が心配でって珍しいよな。まして交渉事だろ?」

 

「実際ギリギリだったらしいぞ。」

 

「6駅対最上だったらしいからな。相手は領主や家老らしいから、仕方ないのではないか?」

 

「あんまり想像できないな。」

 

「割と普段から道元様のところに相談にきてるぞ?道元様に色々教えられながら、そういうのを見ているとな。顕金駅奪還前の最上は、結構はったりだけの時があったのだなと気がついた。」

 

「「えっ⁉︎」」

 

「最上のやつ。いかにも拙い時は任せろって顔でしれっとしてたがな。どうにもならん場合は結構あると知ったぞ。」

 

「へぇ。そうなんだ。」

 

「気がつかなかった。え?しれっとしてたけど、実は俺たちの横で冷や汗流してたってことか?」

 

「まあ何回かあると思うぞ。」

 

「う…うわぁ…。良かった。なんとかなって。」

 

「確かに最上様元服したてだった訳だし、出来るのがおかしいんだよな。そんな15歳にすがってた俺たち…。えっ?俺たち恥ずかしくないか?」

 

「そうだな。己も最近そう思う。だが当時唯一の上侍の最上の立場を考えれば、無理です。できません。とも言えないのは己もわかる。」

 

来栖や倉之助あたりは17であったが、最年長の仁助など28である。上侍でござい。と、いかにも問題ありませんという顔をしていたから気にしてこなかったが、最近最上の事情も少し知った側としては、情けない気持ちにもなるというものである。

 

美馬率いる狩方衆と邂逅した時、最上が早々に菖蒲に自分では駄目だと申し出たのは、もっと真剣に受け止めるべきだったなと来栖は思っている。最上の立場で、あれを言うのはかなり苦しい選択だった筈なのだ。

 

 

蓬莱城には、雅客や服部、その他来栖の配下を可能な限り乗せているが、樵人は差添城の城主、倉之助は勘定方の要、仁助は医者として駅に残っている。来栖の配下は要職についている者が多いが、八代、倉吉の武士達が代打を務める。来栖の配下凡そ90名のうち、70名が動員されており、民人上がりの武士の殆どを駅防衛の為に顕金駅に残してきている。

 

なお、蓬莱城の行商の為に呼びつけられていた勘太郎は、道元が戻った今でも未だ顕金駅に残っている。

 

甲鉄城には、狩方衆と流民上がりの武士で凡そ40名がいる為、合流すれば凡そ110名となる。凡そ110名の動員は顕金駅には中々の負担だが、他の駅では通常運行時が大体武士100名程度であるので、大所帯ではなく寧ろ少ないくらいである。

 

高松駅などの南海道四国連合は、それぞれ凡そ300名程度は動員しており、凡そ1800名の参加である。

 

今回はかかる経費は、全て南海道四国連合に押し付ける取り決めを道元がもぎ取ってきたことから、蓬莱城には弾薬等が腐るほど積み込まれている。

 

蓬莱城に僅かばかり居る民人上がりの武士は、戦力というよりは炊き出し等の雑用要員で、看護師もいざという時を想定して数少ない男の看護師が動員されている。蒸気鍛治も同様で男ばかりが乗車しており、運転士の侑那が唯一の女人である。

 

 

蓬莱城が経由地として下津井に到着した時、山本が蓬莱城に対応した。

 

(最上様の友達だ。)

 

(うーん。わんこ感。)

 

山本は、カバネリである生駒にも絡みに行っており、生駒がたじたじになっていた。つっけんどんに返しても、笑顔でがんがん来るのだ。

 

下津井駅を離れた蓬莱城では、もっぱら山本の話題であった。

 

「凄かったな。山本殿。あれが最上様と仲良くなる社交力…。」

 

「笑顔に裏がない。」

 

「差し入れまでもらってしまった…。」

 

「凄い。城下のご婦人の如くぐいぐい来る。」

 

蓬莱城が高松駅に到着する頃には、高松駅を除いて3駅が到着していた。既に着いていた駅や高松駅の者達から、ジロジロと見られて居心地が悪かったが、操車場を出て理由が判明した。

 

操車場前の広場で、最上が手合わせで大立ち回りをしていた。

 

「何やってんですか⁉︎最上様ぁ!」

 

雅客がすっ飛んで行ったが、来栖は近くに居た瓜生に声をかけた。

 

「なんだあれは。」

 

「いやぁ。領主や家老と違って血気盛んな武士殿達に喧嘩を売られてな。仔犬ちゃんが対応してる。」

 

「なんで最上なんだ?無名で良いのでは?」

 

「仔犬ちゃんがな。白刃戦担当最弱は私だ。私に勝てん奴は黙ってろってさ。笑ったわ。」

 

「何をやってるんだ…。」

 

「いや最初はお話し合いしてたんだぜ。でもまあ最後にものを言うのは暴力ってことだな。」

 

「そうか。」

 

来栖の視線の先では、最上がばったばったと武士を薙ぎ倒しており、雅客は間合いの外からおろおろとしていた。

 

大立ち回りを終えて、最上が来栖達に合流した時には、割ところころとして来たのか、見た目はぼろっとした状態であった。

 

「白刃戦ができそうな奴が2人くらいいたぞ。まあ私以下だが。」

 

「そうか。なら今回はあてに出来んな。」

 

とりあえず全勝してきたらしい。

領主や家老と違い実力で黙らせてきたようで、最上は良い笑顔であった。最上とて鬱憤が溜まりに溜まっていたので、ちょうど良く発散させてきたのである。

 

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