雪の日、甲鉄城が帰路にて蓬莱城とかち合った。蓬莱城は最後尾車両の左側に小規模な雪崩れにぶち当たり、完全に脱線しないまでも傾いていた。
右側は山の斜面となっており、完全に脱線していたら大事故になるところであった。
恐る恐る除雪が進められていたが、今しばらくかかりそうである。甲鉄城を見た吉備土が線路上を走ってきて、とんでもない報告をした。
「生駒と無名殿が遭難?」
「はい。丁度カバネを討伐して、車上から引っ込むところだったんですが、雪崩れの衝撃で2人が蓬莱城から投げ出されたようで…。」
「よりによってあの薄着二人組が遭難。捜索は?」
「崖下なのでまだ行けていません。」
蓬莱城が動けない以上、崖下に投げ出された無名達を探しに行くことも出来ず、困っていたところに甲鉄城が来たのだ。
「ふむ。なら私達で捜索するとしよう。瓜生!」
最上は瓜生を呼びつけて、ことの次第を説明し、前衛の2人が分かれる提案をした。
「俺は居残りとか嫌だね。」
瓜生は吉備土が好きでは無い。生駒とも合わないが、無名がいるなら生駒の方に行った方がマシである。
まあ、そうなるかと最上も思ったため、低体温症などの対処法などを、ささっと書きつけて瓜生に手渡した。
甲鉄城が引き返していくのを、蓬莱城の車上で見送っていると、除雪で汗をかいた歩荷が、最上に近寄ってきた。
「最上様がこっちなんですね。良かった。」
「…なんだ。お前も瓜生が苦手か?」
「えっ?違いますよ。だって最上様、雪歩き下手そうなんですもん。」
そう。最上は雪かきもしたことがない。雪を避けられた道ばかり歩いてきた男だ。
「そんなことは…。」
「言い淀んだ時点で自信ないってことですよね?というか、またいつ雪崩れが発生するかわからないんですから、せめて車内にいて下さいよ。最上様軽いんだから、無名達みたいに投げ出されちゃいますよ。」
ぐいぐいと背を押されて、最上は車内に引っ込められた。
車内では全くやることがない。カバネが出ない限り、なにもするなとばかりに茶まで出されてしまった。
家老どころか城主とは、普通はこんなものなので、なんらおかしい対応ではない。
たまに、除雪をしていた武士達が、手が霜焼けになる!と車内に避難してきて、蒸気管に手をかざして暖をとりにくる。
「手伝うか?」
「いえ。結構です。」
にべもない。悲しいかな駅内の雪かきもしたことのない人は邪魔なのだ。
暇すぎた。暇すぎたので、蓬莱城の出納簿を引っ張り出して、間違い探しをした。何人かで確認しているようで、訂正の朱書きの字がバラバラである。今回の分はまだ未確認だったようで、間違いがあるが朱書きはない。検算をして間違いを修正していく。
「おや、緊急監査ですか?」
「違うが?」
声の掛け方がいやらしいが、暇を持て余した商人である。どうせ暇だからと、お互いに情報を交換する。お互い大した情報でもないが、暇つぶしにはなる。商人と暇つぶしをしていると、歩荷が駆け込んできた。すわカバネかと立ち上がると
「熊です!最上様お願いします。」
まさかの熊。冬眠に失敗したらしい。雪崩が怖いから出来れば蒸気筒は使いたくないとのことであった。
「毛皮も売れるので、あんまりズタズタにしないで下さいね。」
商人は家老より毛皮の心配である。
「あっ胆嚢は無傷でお願いします。」
注文が多い。図太くて結構。
甲鉄城が戻ってくると、蓬莱城のクレーンに熊が吊られていた。
「なにやってんだ。お前。」
「熊狩り…。」
カバネを斬り殺した刀は嫌なので、他の者から刀を借りたのだが、まさか刀で熊を殺す日が来るとは、最上も思ってなかった。
熊は心臓を一突きにして殺した。来栖であれば、獣毛をものともせずに首でも刎ねるのだろうが、最上は得意な突き技を選んだ。人間相手でも首を飛ばすのは中々難しいのに、熊の首をなどもってのほかである。来栖はカバネに骨がないかのように、するりと腕だろうが首だろうが刎ね飛ばすが来栖が異常なのだ。
甲鉄城には、無名と生駒がきちんと回収されていたが、2人ともまだガタガタと震えていた。カバネリも寒いものは寒いらしい。回復するので凍傷にはならないが、低体温症にはなるらしく、無名は一時意識がなかったらしい。生脚を出しているから仕方ない。
「カバネは何故低体温症で死なんのだろうな。」
「回復するからじゃねぇか?動けなくなっても冬眠に近いのかもな。」
「冬季に全滅してくれたらいいのにな。あんな薄着ばっかりなのに…。そう考えると、冬季に活動してるカバネはかなり根性があるのか?」
「どうだろうな。元々意識ねぇみたいなもんだろ。根性論ではねぇと思う。」
「まだまだ謎だらけだな。カバネウイルス。」
熊は美味しく頂かれました。
無名ちゃんが海門で手に息をかけていたので、まあ寒いものは寒いんだろうと思います。しかしなんでカバネは凍らないのだろうか。新陳代謝がアホ程活発なのか?凍死してくれたらめっちゃ楽なんですけどね。