【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

150 / 153
【小話】雪2

雪の日、甲鉄城が帰路にて蓬莱城とかち合った。蓬莱城は最後尾車両の左側に小規模な雪崩れにぶち当たり、完全に脱線しないまでも傾いていた。

右側は山の斜面となっており、完全に脱線していたら大事故になるところであった。

 

恐る恐る除雪が進められていたが、今しばらくかかりそうである。甲鉄城を見た吉備土が線路上を走ってきて、とんでもない報告をした。

 

「生駒と無名殿が遭難?」

 

「はい。丁度カバネを討伐して、車上から引っ込むところだったんですが、雪崩れの衝撃で2人が蓬莱城から投げ出されたようで…。」

 

「よりによってあの薄着二人組が遭難。捜索は?」

 

「崖下なのでまだ行けていません。」

 

蓬莱城が動けない以上、崖下に投げ出された無名達を探しに行くことも出来ず、困っていたところに甲鉄城が来たのだ。

 

「ふむ。なら私達で捜索するとしよう。瓜生!」

 

最上は瓜生を呼びつけて、ことの次第を説明し、前衛の2人が分かれる提案をした。

 

「俺は居残りとか嫌だね。」

 

瓜生は吉備土が好きでは無い。生駒とも合わないが、無名がいるなら生駒の方に行った方がマシである。

 

まあ、そうなるかと最上も思ったため、低体温症などの対処法などを、ささっと書きつけて瓜生に手渡した。

 

甲鉄城が引き返していくのを、蓬莱城の車上で見送っていると、除雪で汗をかいた歩荷が、最上に近寄ってきた。

 

「最上様がこっちなんですね。良かった。」

 

「…なんだ。お前も瓜生が苦手か?」

 

「えっ?違いますよ。だって最上様、雪歩き下手そうなんですもん。」

 

そう。最上は雪かきもしたことがない。雪を避けられた道ばかり歩いてきた男だ。

 

「そんなことは…。」

 

「言い淀んだ時点で自信ないってことですよね?というか、またいつ雪崩れが発生するかわからないんですから、せめて車内にいて下さいよ。最上様軽いんだから、無名達みたいに投げ出されちゃいますよ。」

 

ぐいぐいと背を押されて、最上は車内に引っ込められた。

 

車内では全くやることがない。カバネが出ない限り、なにもするなとばかりに茶まで出されてしまった。

 

家老どころか城主とは、普通はこんなものなので、なんらおかしい対応ではない。

 

たまに、除雪をしていた武士達が、手が霜焼けになる!と車内に避難してきて、蒸気管に手をかざして暖をとりにくる。

 

「手伝うか?」

 

「いえ。結構です。」

 

にべもない。悲しいかな駅内の雪かきもしたことのない人は邪魔なのだ。

 

暇すぎた。暇すぎたので、蓬莱城の出納簿を引っ張り出して、間違い探しをした。何人かで確認しているようで、訂正の朱書きの字がバラバラである。今回の分はまだ未確認だったようで、間違いがあるが朱書きはない。検算をして間違いを修正していく。

 

「おや、緊急監査ですか?」

 

「違うが?」

 

声の掛け方がいやらしいが、暇を持て余した商人である。どうせ暇だからと、お互いに情報を交換する。お互い大した情報でもないが、暇つぶしにはなる。商人と暇つぶしをしていると、歩荷が駆け込んできた。すわカバネかと立ち上がると

 

「熊です!最上様お願いします。」

 

まさかの熊。冬眠に失敗したらしい。雪崩が怖いから出来れば蒸気筒は使いたくないとのことであった。

 

「毛皮も売れるので、あんまりズタズタにしないで下さいね。」

 

商人は家老より毛皮の心配である。

 

「あっ胆嚢は無傷でお願いします。」

 

注文が多い。図太くて結構。

 

 

 

甲鉄城が戻ってくると、蓬莱城のクレーンに熊が吊られていた。

 

「なにやってんだ。お前。」

 

「熊狩り…。」

 

カバネを斬り殺した刀は嫌なので、他の者から刀を借りたのだが、まさか刀で熊を殺す日が来るとは、最上も思ってなかった。

 

熊は心臓を一突きにして殺した。来栖であれば、獣毛をものともせずに首でも刎ねるのだろうが、最上は得意な突き技を選んだ。人間相手でも首を飛ばすのは中々難しいのに、熊の首をなどもってのほかである。来栖はカバネに骨がないかのように、するりと腕だろうが首だろうが刎ね飛ばすが来栖が異常なのだ。

 

甲鉄城には、無名と生駒がきちんと回収されていたが、2人ともまだガタガタと震えていた。カバネリも寒いものは寒いらしい。回復するので凍傷にはならないが、低体温症にはなるらしく、無名は一時意識がなかったらしい。生脚を出しているから仕方ない。

 

「カバネは何故低体温症で死なんのだろうな。」

 

「回復するからじゃねぇか?動けなくなっても冬眠に近いのかもな。」

 

「冬季に全滅してくれたらいいのにな。あんな薄着ばっかりなのに…。そう考えると、冬季に活動してるカバネはかなり根性があるのか?」

 

「どうだろうな。元々意識ねぇみたいなもんだろ。根性論ではねぇと思う。」

 

「まだまだ謎だらけだな。カバネウイルス。」




熊は美味しく頂かれました。

無名ちゃんが海門で手に息をかけていたので、まあ寒いものは寒いんだろうと思います。しかしなんでカバネは凍らないのだろうか。新陳代謝がアホ程活発なのか?凍死してくれたらめっちゃ楽なんですけどね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。