【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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【小話】鈴木と小太郎

鈴木は外国の人間である。

 

鈴木は外国の蒸気船の整備士をしており、日本近海で蒸気船が難破し日本に流れ着いたのだ。鈴木は自国の他の船が来るのを待ち、帰国するつもりでいた。しかし、外国におけるカバネの状況がよくなかったのか、外国の船はぱったりと日本に来なくなってしまったのだ。

 

せめて大陸に渡れれば、どうにか帰国出来るのではと、大陸に渡る手段を探していたところ、西海道で美馬率いる主戦派とカバネが激突した。日本は駅建築に躍起になっており、到底大陸に渡れる状況では無くなった。

 

本来ならば、外国の人間である鈴木は駅内に迎えて貰える筈はなかったが、高い技術を持った蒸気鍛治は重宝された。鈴木はまず生き延びることを優先した。当時西海道を目指していた鈴木は、運良く製鉄を主産業に振られた顕金駅の近くにおり、技術を売り込んで顕金駅内に入ることが許されたのだ。

 

当然であるが、鈴木の本名は鈴木鍛左衛門ではない。顕金駅で働くにあたり、名乗りはしたが日本人には上手く聞き取れず、日本名をつけてしまった方が何かと楽だと、鈴木鍛左衛門の名がつけられた。ニックネームのようなものであると認識しているので、呼び名としては気にならなかった。

 

元々片言の日本語は使えていたが、必要に駆られてどんどん日本語が上達した。ただ、読み書きはあまり得意では無く、自分につけられた呼び名の画数が多すぎて、署名しようとすると真っ黒になってしまう。筆で書くには鈴木の呼び名は難しかった。

 

最上に企画書を上げる時は、代筆を頼むことが多いが、ミミズがのたくったような字で上げても、最上は怒らない。署名なんてカタカナでスズキと書いているだけだが、特に文句を言われることもない。むしろ署名のカタカナを見て、企画書も全部カタカナで書いて良しと言われたくらいである。

 

最上からすれば、鈴木は優秀な技術者で、重要視すべきはその頭脳と技術である。書類の形式などどうでもいいのだ。カタカナが比較的綺麗に書けるなら、全てカタカナで書いてもらった方が、読む側としても助かるくらいだ。

 

筆記具についても、鈴木は筆に馴染みがないからと、大鍛錬場から出る煤と駅外から採集された粘土を使って黒鉛もどきを作った。最初は現在で言うところのクレヨンのような仕上がりで、細い字を書くことが出来なかった。

 

操車場に来ていた小太郎が、クレヨンのような黒鉛もどきを見て、最上の屋敷から先が駄目になった筆を持ってきて、筆先を切り落として中に詰めちゃえば?と言ったことで、筆先を落とした後、筆管に少し切れ目を作り、細く形成した黒鉛をさし、紐で巻いて鉛筆もどきが完成した。

 

初めて鉛筆もどきで企画書を上げたとき、最上は企画書の内容ではなく筆記具に食いついた。

 

鈴木は外国の鉛筆の説明と、ゴムで擦ると消えてしまうこと、作ったのはもどきであるので、本来の鉛筆より定着が悪く、指で強く擦るとのびて真っ黒になってしまうことを説明した。

 

最上は道元と阿幸地を呼び出して、鉛筆もどきの議論を始めた。煤で黒い字が書けるなら、朱粉で朱色のものが出来るのでは?と議論は盛り上がった。朱色は置いておいても、煤は腐るほどあるのだ。これは良い発明だと、煤と粘土の割合の検討がされ、筆管は竹細工の得意な神西駅に頼り、現在で言うところの鉛筆が生産された。

 

重要な文書の作成には向かないが、それ以外では中々便利な品であった。

 

鉛筆もどきは、顕金筆と名付けられて、主に商人層を対象とした商品として、急速に広まっていった。

 

鈴木が小太郎のアイディアがあってのことだから、開発者として小太郎の名前も併記してほしいと言ったことで、鈴木だけでなく小太郎にも金一封が渡された。

 

最上の執務室にて、書類の進達に来た服部が微妙な表情で最上に話しかけた。

 

「小太郎にも鈴木さんと同額あげたんですか?」

 

「鈴木殿が開発者として名前を併記してほしいと言うのだから、同額に決まっているだろう。」

 

「いや小太郎には多すぎませんか?」

 

「ではいくつだったら良かった?線引きを元服とするならば、例えば一歳違いで元服した者と、していない者であったら差をつけるのか?信賞必罰。貢献した者にはそれ相応の賞が必要だ。」

 

「そりゃそうですけど。」

 

「あぶく銭ではないが、得た金が身につくかは小太郎次第だ。」

 

 

最上の執務室で話題となっていた小太郎は、操車場で鰍にお金の使い道を相談していた。

 

「日頃の感謝の気持ちで最上さんに何かお礼するとか、貯めておくくらいかしら。」

 

「じゃあ貯める。」

 

「あれ?お礼しないの?」

 

「一之進と小夜はもらってないから。」

 

「なるほどね。ところで小太郎は鈴木さんのお手伝いするんだって?」

 

「そう。代筆するんだ。そのかわり蒸気鍛治の仕事を教えてもらうことになってるよ。」

 

「じゃあ将来は蒸気鍛治ね。」

 

「まだわかんないよ。」

 

小太郎は鰍塾でも蒸気鍛治の授業に参加しており、着々と蒸気鍛治の技術を学んでいた。蒸気鍛治の仕事はそれなりに力も使う為、まだまだ子供の小太郎では、十全に仕事をこなすことは出来ないが、このまま学んでいけば確実に知識豊富な蒸気鍛治になるだろう。小太郎はまだわからないなどと言っているが、駅内の仕事で一番興味があるのが蒸気鍛治で、鰍塾や操車場をちょろちょろとしているものだから、蒸気鍛治達も小太郎は将来蒸気鍛治になるんだろうなと思っているのである。

 




今更だけど鈴木さんって外国人よね。この話では鈴木さんの奥さんは海外にいます。エンジニアの兄と美人な奥さんがいるって言うけど、甲鉄城に乗ってるとは思えないし、死んだって感じでもない。となると別の駅か海外かなって。

海門で生駒が矢立使ってたから、鉛筆はまだ日本に入ってきてないものともしました。あれだけの蒸気技術があるのに矢立。
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