「警笛返りません!」
「カバネにのまれたか…。」
「跳ね橋は降りてますがどうしますか?」
「線路が無事なら通過しましょう。」
「菖蒲様。北西の建物に助けてと書かれた旗が掲げられています。」
「救助に向かいましょう。」
「最上。どう思う?」
「救助に向かうより先に、通過時の線路が生きているか確認したい。あの建物の旗がいつから立っているか分からない。もぬけの殻かもしれないし、全員カバネかもしれない。なら退路を確認した上で行った方がいい。」
「私もその方がありがたいですね。」
侑那が手を挙げて、最上に賛成する。
「では線路の確認をしてしまいましょう。」
「反対側も跳ね橋が降りていますし、問題なく通れそうですね。」
「……。」
「最上。何かあるなら言え。」
「いや。なんでどちらも跳ね橋が降りているのかと考えていた。」
「どういう意味だ。」
「片側だけなら、駅から駿城が逃げる時に降ろしたんだろう。もう片方は?既に別の駿城が通過した可能性を考えていた。」
「ではあの建物はもぬけの殻の可能性が高いのですね。」
「可能性としてはそうですね。通過した駿城がいたとして、救助するかは別の話ですが。」
「何故です?」
「あそこは線路から直接出入りできません。カバネを殺す術がないなら助けにはいけませんし、乗せる余裕がない場合も考えられます。」
「そうですか…。では当初の予定通り救助に向かいましょう。」
「では作戦と人員を決めましょう。」
「…。」
「最上?まだ何かありますか?」
「…生きている人間はいないかも知れません。我々は駅に入る前に警笛を鳴らしました。線路確認のため駅内を走行しました。ですがあの旗が立っている建物で動きがありません。救助隊と別に先発を出すべきかと。」
「先発隊なら俺と無名が行きましょうか。」
「私たちならさっさと見てこられるしね。人がいなかったら旗も外してきてあげるよ。」
生駒が手を挙げ、無名も賛同する。
「ではお二人ともお願いできますか?救助隊はどうしますか?」
「では己が。吉備土、仁助、雅客、歩荷で編成します。カバネリ2人が先行するなら戦力も充分かと。」
「ではそれで。甲鉄城はどこに停めるのがいいでしょうか。」
「建物南側の線路の方が建物に近いです。」
服部から声があがる。
「侑那さん。どうですか?」
「私も問題ありません。南側の線路に移動します。」
「では参りましょう。」
甲鉄城は旗の立てられた建物の南側の線路に停車した。
「じゃあ行ってくるよ。生駒。行こ!」
「ああ。じゃあ行ってきます。」
「よろしくお願いしますね。」
生駒達が建物に入ってからもう少しで四半刻だ。生駒達から合図もなければ姿も見えない。
「遅いな。何かあったか?」
「救助隊で見てきていただいた方がいいでしょうか…。」
「いえ。もう少し待ちましょう。それで音沙汰がなければ一度離れましょう。」
「最「吉備土。」
吉備土が口を挟もうとしたのを来栖がとめる。
「あの2人が緊急事態の合図すら出していません。無名殿がいながら…。有事だとするなら、あの2人がなす術ない事態です。救助隊の面子まで突っ込んで連絡が取れなくなっては困ります。有事ではなく単純に探索に時間がかかっている可能性の方が高い。甲鉄城をここに止め続けてカバネを集めては、いざ救助という時に困ります。少し待ってなんの合図もなければ一度離れて合図を待ちましょう。半刻になっても合図がなければ…私と誰かでもう一組先発を出します。」
「何故己では「生駒です!生存者無し!」
来栖が質問しようとしたところで服部からの報告が上がる。
「最上。さっきの話。何故己ではなくお前だ?」
「馬鹿を言うなよ。あの2人がなす術なくやられた事態に無事に済むとでも?顕金駅でも言ったが捨て駒にするならお前より私だ。それに私では武士の統率はとれん。私たち先発からの合図がさらに半刻なければ、駅からの離脱をする作戦のつもりだった。」
「そうか。」
来栖は憮然とした態度ではあるが、理解はしたようだった。
(納得はしてないって顔だな。)
「ただいまぁ…。」
「ただいま戻りました。」
「遅かったな。何があった?」
「いや。単純に建物の中が迷路みたいな上、バリケードとかあるからなかなか進まなくてさ。旗は外してきた。」
「そうか。」
来栖と生駒達が話しているのを尻目に、雅客が最上に近づく。
「最上様。先発で連れて行くものをどうやって選ぶつもりでしたか?」
「自薦か来栖に選ばせるつもりだったな。勿論内容は説明してからな。」
「なら今のうちに自薦しときます。今度ああいうのがあったら、俺の名前を出して下さいね。」
「何故?状況によるだろう。自己犠牲精神は結構だが死にたがりはいらない。」
「あんたが言いますか?」
「近接戦闘ができるのは来栖と私だ。消去法だ。勝算が高いなら来栖を出した。」
「とにかく!ああいうのは今度は俺を自薦しときますので!別に死にたい訳じゃないですからね!」
「…?」
いつのまにか艦橋の全員がこちらを見ていた。
「最上。己の配下なら雅客が一番損切りができる。」
「なら今後の為にも残せ。損切り出来んやつばかり残ってどうする。」
「どうせ俺が推薦するのも雅客だ。諦めろ。」
来栖が少し楽しそうにしているのが、最上には解せないが来栖がそういうならそういうものなのだと納得することにした。
ホモ君としては"私では武士の統率はとれん"は嫌味とかじゃなく事実として言ってます。
無事ですまない可能性の高いところに、来栖を放り込んで帰ってこなかったら、ホモ君が武士の統率を取らなければならなくなります。でも克城で総スカンを食らっているので、従わないのが目に見えてる。
来栖より頭がよかろうが、駒が動かないなら意味がないので捨て駒なら自分って思考回路です。
ホモ君は別に自己肯定感がないわけじゃないので、来栖以外の武士と自分なら、自分を残した方が有益だと判断します。
来栖と菖蒲様がかなり早くホモ君に意見を言わせてますが、ホモ君的には"ちょっとまって。まって。まだ考えてるから"って状態です。元々ちゃんと考えてから発言したいホモ君ですが、菖蒲様達からすると自分達がいなかった時のトラブルを思えば、少し黙られるとまさか発言しないのでは?って思ってしまってるだけです。
吉備土は「最上。二人を見捨てるのか?」って言おうとしてました。付き合いが長いので来栖が爆速で阻止。
雅客がかなりわかりやすく攻めに行きました。ホモ君には伝わってませんが。来栖はホモ君が仲間を信頼できない現状を改善したいとは思ってるので、一番歩み寄ろうとしてる雅客のことは応援してます。