「叔父様!」
「菖蒲殿。ご健勝そうでなによりです。」
菖蒲と道元が和やかに会話をしている。菖蒲の後ろで来栖は些か緩んだ顔をしているし、最上も嬉しそうにしている。
(あれこれ知らなきゃ最上様も懐いてた道元様との再会を喜んでるんだなってしか見えないが…)
(共犯者との再会だからな…)
道元が最上をちらりと見やり、最上も笑顔を向ける。
(絶対何か通じ合ったぞ今。)
(目と目で会話したな。)
「菖蒲殿。領主へ挨拶へ向かいましょう。」
「はい。では来栖、最上、吉備土。よろしいですか?」
「私は残りますよ。道元様がおられるので来栖と吉備土がいれば充分かと。」
「わかりました。では甲鉄城を頼みます。」
「はい。お任せ下さい。」
菖蒲が来栖達を振り返って声をかけたところ、最上が軽く挙手して辞退をした。最上は普段から護衛というより、いざというときの交渉を担うために同行している節があるので、菖蒲は道元が一緒ということで特に不思議に思うこともなく了承した。
菖蒲達の姿が見えなくなったころ、道元の部下が最上にすっと近寄る。
「首尾は如何です?」
「最低基準は越えています。もう少し上回りたかったのですが力及ばず。」
「菖蒲様はお優しいですからね。」
「ご理解いただけて何よりです。」
最上と道元の部下は横並びで会話している。
(絶対金の話だ。)
(すごい稼いでるって思ってたけど最低基準なの?)
(いったいいくら稼ぐつもりだったんだ?)
「何人です?」
「3人くらいですかね。」
道元の部下は武士達をちらりと見て最上に質問した。
(なにが3人⁉︎)
(怖い!)
(まて算盤教室が残り3人じゃなかったか?)
(勘定とか言ってないのに通じ合ってる!)
(それだけ重要ということか?)
(えっ⁉︎そうなんですか?)
(頑張れ未来の勘定奉行。)
(やめてください!)
武士達がコソコソと会話している間2人の会話が続く。
「そちらはどうでした?」
「とりあえず一通りは。どこも余裕はありませんが捻出できるかと。」
「それはそれは。流石は道元様ですね。」
(知ってるこれ。食糧の話だ。)
(脅迫が順調ってこと⁉︎)
(…そういうことだろうな。)
(一通り脅迫したんだ…。)
「そうだ。阿幸地殿!」
「っ⁉︎…なんだね?」
最上が阿幸地を呼びつけたため、少し離れたところにいた阿幸地が、小走りで最上のところへやってきた。
(阿幸地殿可哀想。)
(いや阿幸地殿なら大丈夫。たぶん。)
「近々貴方達をまた六頭領にしておきたい。候補はいるか?」
「…経験不足は否めませんが、まぁ出来ないことはないかと。」
「それは何より。よく教育しておいて欲しい。」
阿幸地の回答に、最上と道元の部下が薄い笑みを浮かべる。
(怖っ⁉︎えっ?なに?今4人だから2人増やせって?)
(頑張れ阿幸地殿!)
(あれか?もう奪還後の流民対策か?まだ顕金駅に着いてすらいないが?)
(着いてからじゃ遅いんだろ。)
「阿幸地殿。この駅は受け入れ確実だ。民人達に準備をさせておいてくれ。」
「わかった。」
阿幸地はさっさと退散した。
「しかし本当に武力提供はよいのですか?」
「問題ありません。むしろまともに交戦したことのない者達を入れるくらいならいない方がましです。手柄を求めて余計な真似をされては堪りませんし。」
「なるほど。」
「初期は専守防衛に努めてもカバネが釣れるでしょうから、守る対象は少ないに限ります。甲鉄城一城で充分餌になりますから。」
(餌って言った!)
(甲鉄城に群がるカバネを殺す。ってことでいいんだな?)
(いつも通りでは?)
(確かに。言い方が悪いだけだな。)
(最上様はああいう言い回ししなきゃ吉備土とも上手くいくと思うんだがな。)
(最上様は菖蒲様とか吉備土みたいなタイプと根本的に相容れないからなぁ。)
(でも菖蒲様には気を遣ってるじゃないか。)
(吉備土に気を遣う必要ないってことだろ。)
(それはそう。)
「とはいえ完全封鎖後に食糧を追加搬入する駿城は必要です。候補はありますか?」
「二駅程なら都合がつきます。」
「見返りは?」
「堅将様に大恩ある駅です。食糧の供出量の予定はいまいちですが、搬送に協力したいと。まあ多少燃料費は出すようでしょうが。」
「いいですね。いずれにせよ搬送は必要です。食糧に支払う分が燃料にいくだけなら問題ありません。供出量が少ないなら他の駅ともとんとんですみます。」
最上も道元の部下も何気ない顔でとんでもない話を進めているが、遠くから見たら穏やかに世間話でもしているように見える。
(これが上侍。)
(いや一部の特殊な例だと思う。)
(確かに。)
「では話を詰めましょうか。こちらへ。」
「失礼します。」
最上の案内で道元の部下が甲鉄城内に入っていく。
(道元様がいないのにこれって。道元様と最上様が話してる時は近寄らんようにしよう。)
(カルガモの子みたいに見えたあの時からこんな会話してたってことだろ?怖すぎるわ。)
(ちょっと微笑ましい光景だって思ってた。)
(離れて眺める分には微笑ましいだろ。)
(どういう話してるか想像しちゃうからもうそんな目で見れない…。)
菖蒲様はなんだかんだ総領としての教育を受けているので、ホモ君が非人道的なことを言っても嫌ったりはしません。必要なことなのは分かるので。採用するかは別ですが。
吉備土はただのお人好しなので、ホモ君の偽悪ムーブがダイレクトに効きます。
克城のことがあるので、ホモ君は一応吉備土が居ない時に腹黒発言をするようにしてます。嫌われたくないわけじゃなくて面倒なので。必要悪が理解できない奴とは必要がなければ話したくないから。
ホモ君の中で吉備土は善人だが駒として無能。来栖がいる時は駒として有効。みたいな立ち位置。
他の武士達は、ちょいちょい構ってくるので相手してたら、こいつら別に(吉備土程は)善人じゃねぇなって理解したので、先のことを考えて色々教えとこう。って感じです。
一応仲良くなってますが、菖蒲様と来栖がいない場面という前提では信頼はしません。どちらかいればちゃんと動くだろうなとは思ってるので、2人が不在じゃなければ信頼はあります。
なんやかんや続けてますが、本編しか書き溜めてなかったので矛盾が出てきたりしたらごめんなさい。