【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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手前の駅の名前ですが、宍道湖からいただきました。
宍道(しんじ)駅となってます。


顕金駅奪還作戦 1

作戦初日。予定通り西門の様子を確認するため、甲鉄城は大きく南周りに回り込む形で進路をとっていた。

 

「跳ね橋が完全に残っていた場合どうするんですか?」

 

「甲鉄城が入れるなら中の偵察をしてもいい。扶桑城が線路を全く塞いでおらず、跳ね橋が上げられるなら西門を閉じてそのまま東門へ進行する。望み薄だがな。」

 

「一度戻る想定なのに、そんなことして大丈夫なんですか?」

 

「問題ない。あくまで食糧の搬入の手筈は、日付け指定になっている。不測の事態に備えて甲鉄城に食糧は充分積んであるし、搬入を任されている駿城は東門が上がっていれば、必ず指定した日付けに東門前で警笛を鳴らす。そういう契約だ。まあ駅では道元様が待っているかもしれんが、定刻に来なければ察していただけるだろう。」

 

「なるほど。」

 

倉之助の疑問に最上が回答し、続けて来栖が疑問をぶつける。

 

「跳ね橋の破壊方法はどうなっている?」

 

「5割以上残っていれば火薬樽を使う。以下なら擲弾発射器だな。」

 

「擲弾発射器?」

 

「海門で吉備土が試射しただろ?あれだ。」

 

「なるほど。」

 

「鈴木殿は天才だな。顕金駅が再興したら是非兵器開発に勤しんで欲しい。再興したところでカバネを殺さねば我々に未来はない。使う者を選ばない兵器は必要だ。」

 

最上は鈴木を手放しで褒める。今でも鈴木や生駒が企画書を持ち込めば、可能な限り資金を提供しているだけのことはある。生駒のツラヌキ筒の普及は、使い手を選ぶとのことで叶わなかったが。

 

半日をかけて西門にたどり着いた。トンネルを抜けた先には、損傷し3割ほど残っている跳ね橋が確認できた。

 

「まあこんなことだろうと思っていたよ。通行できない以上落ちていると評して差し支えない。だがそれは駿城に限ったことであり、カバネは通行可能だ。吉備土。出来るだけ跳ね橋の根元から破壊してくれ。」

 

「わかった。」

 

鈴木と吉備土が発射準備を進め、武士達は周囲の警戒に努めた。

擲弾が発射され、一発で跳ね橋の残骸は堀へと落下していった。

 

「西門はこれにて終了だ。宍道駅に戻るぞ。」

 

西門付近の壁は大きく壊れ、扶桑城が折り重なるように横たわっている隙間から、駅内が少しだけ確認できた。

顕金駅に戻ってきたというのに、入ることは叶わず、破壊工作だけを実施して離れなければならないことに、悔しさは感じるものの、ここから奪還作戦が始まるのだと武士達は奮起した。

 

 

宍道駅に戻ると操車場で道元と領主が待ち構えていた。

 

「菖蒲殿。如何でしたか?」

 

「跳ね橋が3割ほど残存しておりましたので、完全に落として参りました。当時は西門の状況を知ることは叶いませんでしたが、あのようなことになっていたとは…。」

 

菖蒲が沈痛の面持ちで説明した。

 

「いくら損傷が激しいとはいえ、破壊せねばならなかったのは、お辛かったことでしょう。しかし明日からが大事です。今日は英気を養われるとよろしいかと。」

 

「そうですね。そうさせていただきます。領主様にも大変お世話になります。」

 

「いえこちらこそ、こんな協力しか出来ませぬ故。」

 

「そのようなことを言わないで下さい。とても助かっております。」

 

菖蒲が、大変申し訳なさそうに頭を下げているのを見て、慌てて領主も頭を下げる。

 

(菖蒲様は真っ白だからな。戸惑ってるんだろうなぁ。)

(怖いのは道元様だけだからな。領主の認識では。…うちにも怖いのがいるが。)

 

武士達は微塵も顔には出さないが、最上から色々聞いていたため、領主の反応を察した。事情を知らぬ来栖達は随分と腰の低い領主だと思っていることだろう。

 

 

翌朝早く、甲鉄城は宍道駅の領主と道元が見送る中、顕金駅へと出立した。

 

甲鉄城が東門に着くと、脱出した時のまま跳ね橋は下りており、甲鉄城を中へと迎え入れた。検閲所内に入り生駒と無名で跳ね橋を上げた。まずは検閲所が拠点となるため検閲所内にいた僅かなカバネを掃討し封鎖を実施した。

検閲所内にはカバネのみならず、人の死体も放置され悪臭を放っていた。検閲所には駿城洗浄用の設備があるため、一部の武士と蒸気鍛治が洗浄を実施する運びとなった。その間に生駒、無名、来栖、狩方衆、武士達が甲鉄城と共に陸橋へと進出した。陸橋上には何体かカバネがおり、向かってくるものを掃討。陸橋をよじ登って来るものも同様に掃討した。

 

半刻ほど散発的にやって来るカバネを殺していたが、検閲所内の洗浄も一区切りついたため、検閲所を封鎖し全員が乗車した。武士達は車上を陣取り甲鉄城を守りながら操車場へと向かうことになった。

 

「検閲所及びその周辺でおよそ30。まあ悪くはない。」

 

最上がぽつりと呟いた。車上で眺めていたと思えば、数を数えていたようだ。

 

「お前呑気に数など数えていたのか。」

 

来栖が呆れた視線を最上に投げるが、どこ吹く風と聞き流していた。

甲鉄城で時折カバネを轢き潰し、武士達が迎撃しながら操車場の少し手前に到着した。操車場にはぽつりぽつりとカバネがいるのみで、そこまで数は見て取れない。

最上が無名に陶器の瓶を手渡した。

 

「なにこれ?」

 

「中に血が入っている。あの看板まで投げられるか?」

 

「余裕!むしろ扇型車庫も越えられるよ。」

 

「そこまでの遠投は望んでない。あの看板あたりで頼む。」

 

人ならば中々遠くにある看板だが無名には物足りないほどであった。というのも無名が人ですら遠投できるのを最上は知らなかった。なにせ遠投された時、気絶していたので。

 

「よいしょっと。」

 

軽い調子で投げられた陶器の瓶は、とんでもない速度で看板にぶち当たり、陶器の瓶は弾け飛び看板は曲がった。

 

「……想像と違ったが、まあいいか。」

 

甲鉄城の人の気配と、撒かれた血の匂いに釣られてカバネが集まってきた。

 

「警笛が撤収の合図だ。以上。戦闘開始!菖蒲様撤収指示は任せます。」

 

端的な指示にカバネリ2人と来栖が飛び出した。最上や瓜生も車上からは降りたが、援護の届く範囲内で対応していた。飛び出した3人が散開しつつも前方に展開したため、最上は右翼後方、瓜生が左翼後方を担当した。

撤収指示は菖蒲がするため、車上にて蒸気弓を使いながら周囲を観察している。

 

当初の予定では包囲される前に、跳ね橋前までカバネを釣り出すつもりでいたが、血を撒いた前方に散開した3人がばっさばっさとカバネを殺すものだから、甲鉄城より前方の3人にカバネが集中している。

 

(おかしいな。ちょっと想定と違うんだが…まあいいか。)

 

最上はちらりと前方を見て考えるのをやめた。前方を心配するより、自分の方が危ないからだ。

来栖ほどの腕は無く、カバネリのような耐久性もないので余所に気を配る余裕はない。武士達は甲鉄城の守りと最上の援護。狩方衆は瓜生の援護で忙しい。前方の3人が少しずつ後退してきたのを見て、菖蒲は伝令の服部に指示を出す。服部が侑那に指示を伝え警笛が鳴らされた。最上と瓜生が車上に上がると援護を担当していた武士が前方の撤退の援護に回った。

3人はまだまだ余裕そうな顔で撤収してきた。生駒だけ少々やられたようだが、無名と来栖はカバネと戦ってきたようには見えない綺麗さである。

最上と瓜生は来栖をじとりと見ていた。

 

「忠犬じゃなくて狂犬だったか?」

 

「磐戸駅から駿城なしで金剛郭まで追いついてくる奴だからな。」

 

「そうだったな。ところで子犬ちゃんは何体やった?」

 

「10かな。援護があるから、言い切るのは憚られるんだが。」

 

「へぇ。意外とやるよなお前。最初は糞弱いフリしてたのに。」

 

「特別強いわけではないのでね。美馬に警戒されないに越したことはなかったからな。」

 

甲鉄城がカバネを引き連れ後退していく中、瓜生と最上が軽口を叩く。

最上は蒸気筒に持ち替えて、線路脇の家から飛びかかるカバネを撃ち抜いた。

 

「邪魔だなぁ。家。焼いたら駄目かな。」

 

「お前意外と過激だな。駄目だろ。たぶん。」

 

最上の放火希望に武士達が突っ込む前に、瓜生が突っ込んでいた。

狩方衆にいたのでやり方を全否定はしないが、作戦会議で駅をなるべく壊したくないような発言をしておいて、ちょっと邪魔だし家を焼いたら駄目かな?みたいな発言には引いた。

 

陸橋を進み検閲所を背にカバネを迎撃していく。陸橋は幅が狭いので無名、生駒、来栖が交代で前衛を務めた。無名や来栖が担当すると一体も抜けてこないため、援護のためにいた武士達は陸橋をよじ登ってくるカバネの相手に注力した。

陸橋上を進んでくるカバネが散発的になると、最上と瓜生が前衛を務め、武士達が援護に回る。

その間に主力3人は長めの休憩である。

この時点で総計約200体のカバネを殺していた。まだ午前中である。

 

少し早めの昼休憩を交代でとった後、二度目のカバネ釣りに向かった。一度目と違い道中のカバネの襲撃は多いが、特に危機に陥るような事態にはならなかった。操車場にはそれなりのカバネが彷徨いており、甲鉄城を見ると走って向かってきた。

最上は来栖の腕を掴んで引き留めた。最上は30センチくらい引き摺られたが、引き留めに成功した。

 

「なんだ?」

 

「さっきより全方位に展開している。菖蒲様に万が一があっては困るからあまり突出するな。」

 

「わかった。」

 

来栖は了承するとひらりと飛び降りた。来栖が先頭車両前を陣取り、他は一度目と同じ布陣で展開した。

暫く戦っていると、最上が体躯の大きなカバネと激突した。

 

「ワザトリだ!」

 

援護をしていた仁助が声を上げる。

八代駅手前で襲ってきたワザトリのように、二刀を振り翳し襲いかかる。

臂力の差も大きい為、最上は凌ぐのが精一杯である。ワザトリの動きが速く、援護の武士達は車上にいるため、なかなか援護射撃を入れられない。

ワザトリ渾身の横なぎで、最上は車両前方へ弾き飛ばされたが、入れ替わりで来栖が交戦。5合目で討ち取った。

 

「5合かよ。」

 

最上が必死に凌いだワザトリは、来栖がサクッと殺してしまったため、最上は少し傷ついた。

援護の武士達も同情を隠せない。

来栖はすぐに踵を返して先頭車両まで戻って行った。

少しして警笛が響き渡り撤退が始まった。

 

「子犬ちゃん。ワザトリがきたって?」

 

「…ははっ…。」

 

怪我はなさそうだし、地面を転がってなかなかに汚れた最上をからかってやろうと、来栖がサクッとワザトリを殺したことを知らない瓜生が声をかけたが、最上は乾いた笑いだけを返した。

周囲の武士達のしょっぱい顔を見て、瓜生はそれ以上触れるのをやめた。

約半年同道してきたので、これはなにも言わなかったことにした方が良いなと判断した。

瓜生は甲鉄城に乗ってから空気を読むようにしている。根っからのお人好し共と、仲良しこよしするつもりはないが、菖蒲に関する来栖然り、金に関する最上然り、無名関する生駒然り、面倒は避けたいので。

 

二度目の跳ね橋前の戦闘も、一度目と同様に進んだ。跳ね橋前は前衛も、援護を担当する後衛も交代で休めるので、操車場前より効率は落ちるが気は楽だ。

 

本日最後の三度目のカバネ釣りも二度目とほぼ変わらない程度負担で終えることができた。尚三度目は無名と生駒のところに2体ワザトリが出たようだが、生駒が少し負傷した程度ですんだ。約半年で無名や来栖に扱かれてきた生駒は、なかなか戦い方が上手くなってきた。そもそもの才能が違うので、技術的には大幅に劣るためまだ負傷は付きものであるのはご愛嬌だ。

 

顕金駅初日は跳ね橋前と決まっていたので、甲鉄城を検閲所に入れ、前衛は来栖、最上、瓜生。後衛は武士達と狩方衆で3班を編成して夜警を回すことになった。夜警は検閲所の外で警戒する。カバネリ2人は明日も突出させる予定なので、緊急事態が発生しなければ一晩休みである。

前衛の中で一番戦力の低い最上の援護は、来栖の班から少し削って多めになっている。

別に来栖が自ら譲った訳ではなく、最上が削り取っていった。

最上は下らない矜持などないので、堂々と戦力の均等化を求めたのである。多少削っても均等にはならないが。

生駒は半年扱かれまくってきたが、最上は金策や武士達の教育に時間を割いていたので、経験値はそこそこに積んだが、劇的な実力の上昇はない。

そもそも最上は、技術的な面ではそれなりに出来上がっており、短期間での実力の向上は望めないので、来栖や無名も生駒を優先した。

 

誰も数えていないため、誰も知らないことだが、初日にして約1000体のカバネが討伐されていた。




一日目で1000殺してますが、流石に4日では終わりません。
カバネ討伐数ランキング(単独討伐数)
1無名、2来栖、3生駒、4瓜生、5甲鉄城(侑那)、6ホモ君
となっております。
線路上にいたら轢くしかないのでね。
ホモ君は援護のメンバーと戦ってる感じなので単独討伐数は少な目です。
狩方衆は援護もするけど、過保護じゃないので瓜生は単独討伐多めです。
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