【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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顕金駅奪還作戦 3

朝の作戦会議で本日は阻塞や掩体壕の位置の前進。周囲のカバネの掃討を優先する方針の打診が入る。

 

「前進は無しだ。割ける戦力が少ないのに守る範囲を広げる必要を感じない。遠くから引っ張り込まず、掃討するのは賛成だ。海門では戦闘員ばかりの駿城が2城いたから、陣地を広げても対応できていたが、うちは100ちょっとしか戦力はない。守れもしない陣地を広げて抜かれるくらいなら、広げず確実に守るべきだ。」

 

「うっ…。」

 

「ただでさえ明日は物資の搬入が来るから戦力を分ける必要がある。」

 

「では本日は拠点の防衛と、周囲の掃討と致しましょう。」

 

菖蒲が結論をだした。

 

「菖蒲様。今日はちょっと私が生駒を借りたいのですがよろしいですか?」

 

「なにをするのですか?」

 

「周囲の地形や施設を確認したいのですよ。」

 

「地図ですむのではないか?」

 

来栖が口を挟んできた。疑問としては当然である。何せ元々の地図に民人達まで巻き込んで、足りない部分を書き足したのだから。

 

「それはそうだが、顕金駅が堕ちる前の状況だろう。今の状況で確認しておきたいところがある。」

 

「わかりました。生駒はお願いできますか?」

 

「はい。大丈夫です。」

 

「来栖。武士を2、3人貸してくれ。」

 

「なら、雅客、歩荷、倉之助でどうだ?」

 

「本人達がいいならそれでいい。」

 

本日はトロリーで最上達が出かけることになった。

 

「それでどこに行くんですか?」

 

「主には丁度昨日焼け野原になった南西側だ。」

 

「す…すみません。」

 

「いや別に構わない。南西側の壁に接続された蒸気管を閉めて、蒸気管の中継地も閉めておきたいんだ。」

 

「…あんたなにする気です?」

 

雅客が怪訝な顔で最上を窺う。

 

「今日は蒸気管を閉めて穴を掘って簡単な阻塞を設置する。」

 

「穴?」

 

「今日はそれ以上何にもせんよ。生駒は掘削機も使えるだろう?」

 

「使えますけど、掘削機を使うほどの穴を掘るんですか?」

 

「うん。明日使いたいからな。それが終わればもちろん地形の確認もする。」

 

 

一方操車場では、服部が菖蒲に報告を上げていた。

 

「菖蒲様。…最上様達が昨日燃えた南西の流民街を掘削しています。」

 

「…。掘削?」

 

「なにをやってるんだあいつは。」

 

「戻ったら聞いてみるしかありませんね。」

 

「おい。忠犬。そろそろ交代じゃないのか?」

 

今は無名が警備兼周囲のカバネ掃討を担当しているが、交代時間が迫っていたため、瓜生が来栖を呼びにきた。

 

「丁度いい。最上が何故か昨日燃えた流民街を掘削しているのだが、お前はなにをしようとしてるかわかるか?」

 

「は?掘削?わかるわけないだろ。」

 

「そうか。お前もわからんか。」

 

瓜生は、来栖達より最上と話が合うことが多いため、もしかしたらと思ったが駄目らしい。

 

日が落ちる前に最上達がトロリーに乗って帰ってきた。

 

「おかえりなさい。最上。」

 

「ただいま戻りました。地図に変更がありましたので書き込んでよろしいですか?」

 

「ええ。お願いします。」

 

戻ってきた面子全員で、手分けをして地図に書き込みを始めた。

なかなか広い範囲を確認してきたようで、封鎖されている場所などがどんどん書き込まれていく。

 

「ところで最上。南西の流民街ではなにをしていたのですか?掘削していると聞きましたが。」

 

顔を上げた雅客達はしょっぱい顔をしているが、最上は笑顔で報告を始めた。報告を聞いた者は皆ドン引きした。

 

 

 

翌朝早く最上と無名と雅客は流民街に向かって出発していった。

昨日の掘削で流民街だった場所の中央を残して周りは深い堀が掘られていた。南東方の少し離れた線路にトロリーを残して、堀に渡したしっかりした板を1人ずつ渡る。荷物があるので板が軋み一番目方のある雅客は戦々恐々としながら板橋を渡った。荷物を運び終えて準備を終えた。

 

堀の北側には、何個か木箱が置かれ、堀には放射状に何本か廃材の板が渡されている。堀の東西には阻塞が置かれ、南北を分断している。

 

「無名殿。よろしく頼む。」

 

「はーい。」

 

無名は渡された石を振りかぶり近くの鈴鳴りの鐘にぶち当てる。

鐘の音が大きく響く。

次に血入りの陶器の瓶が渡され、北側の蒸気管に向けて投擲、陶器の瓶は勢いよく蒸気管にぶつかり高い音を立てて砕け散る。更に追加でもうひと瓶、別の蒸気管に投擲された。

 

「それで?本当に私はもう戻っちゃっていいの?」

 

「ああ。南側から戻ってくれ。」

 

「わかった。じゃあね。」

 

無名は南側から、少し先の屋根を伝い操車場へと走って行った。

 

「雅客。」

 

雅客は最上から篠竹でできた簡易的な笛を渡される。

最上は笛を思い切り吹いた。甲高い笛の音が周囲に響く。雅客もそれに倣い笛を吹く。

鐘の音、血の匂い、笛の音に釣られて北側からカバネが走ってくる。

南側は一昨日釣り出され、更に昨日も排除されたため殆どカバネがいない。

更に追加で最上が北側の堀の中に陶器の瓶を投げ落とした。

そこからは蒸気筒を使ってカバネを撃つ。

遠くで警笛が何度か鳴る。

東門で宍道駅の駿城と甲鉄城が警笛で合図しているのだろう。

2人で対応しているので殆どのカバネを撃ち漏らしているが、カバネは堀にかけられた廃材の橋を渡ろうとして堀に転落したり、堀を飛び越えようとして届かずに落ちていく。

最上が前方に自決袋を投げる。雅客が撃ち抜き爆発。更に怒ったカバネが堀へと落ちる。

暫く続けた後、堀の向こう側がカバネの重さに耐えられずに崩れ落ちた。

 

「雅客。先に行け。」

 

「はい。」

 

雅客は全速力で最初に渡った板橋を渡る。板橋を抜けると少し先の家の前の木箱が階段状に積まれているところを駆け上がる。

走りながら振り返ると最上が堀に小さめの火薬樽を何個か蹴り落としている。

蹴り落とし切って、最上もすぐに橋を渡り屋根を伝いトロリーへ向かう。トロリーまでは配線が引かれており、先に着いた雅客は最上が屋根から降りた瞬間スイッチを押した。

 

堀の中に仕掛けられた発破が爆発し、追加で放り込まれた火薬樽も誘爆。同時に北側側に置かれていた木箱に入っていた発破も爆発した。木箱には鉄屑が詰められ、中央に発破。上の方は砂が詰められており、発破の勢いで上の砂は舞い上がり、周りの鉄屑は周囲に飛び散り堀に落ちなかったカバネの四肢をちぎり取る。

周囲に衝撃波が走る。

堀内での爆発のため、爆発の衝撃は上へと向かう。カバネの残骸は空高く舞い上がり落ちていく。

最上達は家を何個か挟んだ位置にいたため、衝撃波を直接受けることはなかった。衝撃波で吹き飛んだ屋根材などがバラバラと落ちてくる。2人で板を掲げて屋根材が降ってくるのを防ぐ。

 

「たーまやーってか。さっ。とんずらするぞ。」

 

「いやですよ。こんな花火。」

 

最上に指示され、雅客は南周りで北西の操車場へと向かうためトロリーを操作した。

 

 

一方操車場では、物凄い地響きと爆発音が響いた。一昨日の比ではない。南西を見ると空高く爆煙が上がっていた。

 

「なんだあれ。」

 

「生駒昨日の説明聞いてなかったの?」

 

「聞いてたけど!穴掘ったの俺だし!だけどあんな規模とは聞いてない!」

 

無名と生駒が騒いでいると、甲鉄城が宍道駅の駿城を引き連れて操車場へと滑り込んできた。

 

「いっ生駒⁉︎あれは大丈夫なのですか⁉︎」

 

甲鉄城から菖蒲が慌てて降りてきた。菖蒲には、物理なる学問は分からない。走行してる甲鉄城まで届いた振動と爆発音が、とんでもない威力なのはわかる。

 

「あんなに規模がでかいとは聞いてませんでした!」

 

生駒は慌てて自分の想定外だと告げる。

来栖は最上から"でかい爆発するけど問題ないから"と聞いていたので、気にすることなく物資の搬入を急がせた。

 

物資の搬入が終わり、宍道駅の駿城に追従して甲鉄城が操車場を出たとき、操車場のすぐ南側から信号弾が上がった。

 

「南方信号弾確認!距離1町!」

 

物見台にいた倉之助から声が上がる。

 

「最上さん達かな?私行けるよ!」

 

無名が挙手して、操車場を任されていた吉備土に申告する。

 

「頼む!」

 

吉備土から返答を得た瞬間、無名は走り出し、操車場から見えなくなった。

 

「またワザトリとかふざけるなよ。」

 

女のワザトリは動きが早く半ばで折れた刀で最上に襲いかかる。女のカバネは今までのワザトリと違い、臂力自体はそこまでではないらしく、最上がワザトリの攻撃を危なげなく捌いている。高速で行われる戦闘に雅客は手が出せない。近くにいたカバネ2体は雅客が撃ち殺したが、ワザトリと最上が打ち合う度に場所が入れ替わったりするため、ただ見ていることしかできない。持久戦になれば不利なのは最上だ。信号弾は上げた。来栖か無名が来てくれればなんとかなるだろう。

周囲の警戒に努めていると、発砲音が響きワザトリが倒れた。

 

「無名殿か。助かった。」

 

「全然気にしなくていいよ。というか最上さんも結構やるね。」

 

「打ち合えても、殺すまでには至らないがな。」

 

「ワザトリじゃ仕方ないよ。さっ。行こ。」

 

無名が屋根からひらりと降り、トロリーまで寄ってきた。

雅客達はトロリーに乗り操車場へと向かう。

 

「そういえば、みんなあの爆発に驚いてたよ。」

 

「おや。そうだったか。大きい爆発になるとは伝えていたつもりだったがな。」

 

「あそこまででかいと思ってた人、誰もいないんじゃないですかね…。」

 

「そうか。それは説明不足だったな。次は気をつけよう。」

 

「またやるの?」

 

「いややらんよ。次に専門的な説明をする時は、理解してるか確認するってだけだ。」

 

「ふーん。」

 

流民街跡地に集まっていたカバネは吹き飛んだか、鉄屑で身体をズタズタにされたか、四肢を大きく負傷したため最上達は追跡されることなくすんでいた。最後にワザトリと遭遇戦とはなったが、無名のおかげで無傷で終えることができた。

 

「ただいま戻った。」

 

しれっとした顔で戻りを告げた最上に、吉備土は報告を求めたが、菖蒲達が戻り次第まとめて報告すると断られた。

 

宍道駅の駿城を送り届けた甲鉄城が戻ってきて、すぐに菖蒲が飛び出してきた。

 

「最上!雅客!無事だったのですね!」

 

「無事に戻りました。100は殺せたかと。追跡はありません。」

 

「もうちょっといませんでした?」

 

「堀にいたやつ以外は死んだかわからんからな。」

 

「最上達が無事ならそれで良いのです。思っていたより大きい爆発だったので心配いたしました。」

 

「説明不足で申し訳ありませんでした。」

 

「いえ。少し早いですが交代で昼休憩と致しましょう。」

 

交代で昼休憩となり、最上が昼食をとっていると瓜生が寄ってきた。

 

「事前準備までして100とは効率が悪くねぇか?」

 

「東門の合図で警笛を鳴らす以上、そっちに釣られかねない。宍道駅の駿城がいるからな。殺せるにこしたことはないが、殺すことより少しでもカバネを引きつけたかったんだ。まあ爆発の後にも集まっただろうから悪くない結果だ。」

 

「あれだけでかい音立ててりゃ誘き出されてそうではあるな。」

 

「昨日道中の障害物も排除したし、午後からは近くまで甲鉄城で行けるぞ。あの辺は焼け野原だから、擲弾発射器も使えるし掃討しやすいぞ。活用しないとな。焼け野原。」

 

「過激派め。」

 

最上と瓜生が軽口を叩いている傍ら、雅客には歩荷と倉之助が声をかけに行った。

 

「無事で何よりです。」

 

「いやほんとに。」

 

「俺もあんなに盛大に爆発するとは思ってなかった。」

 

「初めてワザトリと戦った時もでしたが、最上様って爆破お好きですよね。」

 

「効率が良いそうだ。まあ2人で100殺したと思えば確かに効率はいいが…。俺の寿命も縮んだ。」

 

午後からは、南西側へと甲鉄城で行く面子と、操車場を守る面子で分かれることになった。

操車場は最上、瓜生、無名が残り、武士の一部と狩方衆を残した。瓜生や狩方衆と残して問題にならなそうな面子で構成したのだ。

万が一に備えるとして、民人も全員甲鉄城に乗せ、甲鉄城は操車場を出発した。

 

「無名がいるとはいえ、こっちはこんな少なくて良かったのかよ。」

 

「なんの為に民人も全員乗せたと思ってる。いざとなれば一度此処を放棄する。逃げるなら少ない方が良いだろ。」

 

「えっ⁉︎そうなの⁉︎」

 

「そうだ。どうせ甲鉄城が戻ればまた制圧できるんだ。死に物狂いで守る必要はない。どうせカバネは物資に興味ないしな。機動力があり、無駄な正義感を振りかざさない奴しか残してない。」

 

最上の台詞を聞いて、雅客をはじめとした武士達は微妙な顔をした。狩方衆との相性で決めたのだと思ったら、そういう理由だったので当然である。

 

そんな理由ではあったが、人が少ないためか偶にちらほらカバネが現れるのみで、放棄するような事態にはならなかった。夕刻に甲鉄城が戻ってきた。

爆発のせいでだいぶカバネを刺激していたらしく戻ってきた武士達はげっそりとしており、生駒はぼろぼろ、元気なのは来栖だけだった。

相変わらず人間を辞めている男である。

 

居残りの面子はむしろ暇すぎたので、そのまま警備を継続することになった。継戦時間の問題があるので、無名だけは休ませたが、それ以外は皆そこからニ刻の警備を担当した。

 

 

 

4日目にして実は3000体を超えるカバネが掃討されているが、誰も知ることはない。




書いてから思ったのは、顕金駅の岩盤やっちまいそうだなってところですね。南西側崩壊しちゃいそうですがしないってことにしといて下さい。

居残り組は武士の中ではホモ君と相性のいい方の奴らが選ばれてます。
ホモ君と相性が良い=瓜生ともなんとかやれるの図式。
瓜生と仲良しとかではないですが、皮肉めいた言い回しとかされても、流せるタイプとかそんな感じです。
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