庶民派の下侍ズの話。
雅客、樵人、歩荷は最上に呼び出されて最上の執務室に来ていた。
「先に言っておくが私は忙しい。」
「み…見ればわかります。」
最上の机の両脇には書類が積まれている。再興し始めの頃と違いちゃんとした紙を使えているので、だいぶ綺麗に整頓されているように見える。
「自分達が何故呼ばれたかわかるか?」
「いえ。わかりません。」
呼び出された理由に心当たりがないため正直にわからないと告げる。それを聞いた最上は深々とため息をついた。
「お前らなんで寄り集まって生活してるんだ。一人一人に屋敷が割り当てられていると思うんだが、私の記憶違いか?」
「ああ。それ…。」
「記憶違いではないですね。」
「お前ら実は兄弟だったりするか?それなら呼び出して悪いが。」
「兄弟じゃないです。」
「だよな。だったらなんで寄り集まって暮らしてるんだ。雅客の家で3人で生活する必要がどこにある?」
「広すぎるんですよ!一人であんな屋敷に手が周るわけないでしょ!忙しいから自分のこともままならないし。長屋にいた時より、自分の空間取れてるし、3人くらいで寄り集まってる方が色々便利なんです。」
「阿呆どもめ。屋敷など使用人に管理させろ。人を雇え。雇用を生み出せ。いい大人が3人寄り集まって暮らすんじゃない。人が住まない屋敷も傷むしな。無駄ばかりだ。」
「そ…そんな事言われても…武士としての仕事ならまだしも、私事で人を使うとか慣れないし。」
「慣れろ。そういう立ち場だ。他人がいるのが落ち着かないなら通いの契約にすれば良い。お前ら大体90人いるんだぞ。一人が一人雇うだけで90人の人間が職にありつける。何度も言うが、いつまでも下侍気分でいるのをやめろ。」
「うっ…。」
「倉之助達を見習え。」
「えっ⁉︎倉之助が人を雇ってるんですか⁉︎」
「当たり前だ。自分のことが自分で出来る時間に、帰宅させてやれると思うのか?」
「く…倉之助ぇ…。」
「来栖には3人雇わせた。」
「3人⁉︎」
「我々が雇用の場を作るのは義務だ。お前らの記憶にある上侍も人を雇ってただろう。別に贅沢のためだけに、雇ってたわけじゃない。雇用を生むのに協力しろ。と菖蒲様の前で説明して雇わせた。」
「なんで菖蒲様の前…。」
「なんだかんだ逃げそうだからだ。」
「よくおわかりで。」
「ということでお前達にも雇用を生んでもらう。お前らがそんなだから、他の武士達も似たような状況だ。どいつもこいつも寄り集まって暮すんじゃない。結婚したくないのか?」
「なんで結婚に話が行くんです⁉︎」
「野郎で寄り集まって生活してる奴に嫁ぎたい女が何処にいる。位は高いのに、誰も雇ってない奴のところに嫁ぎたい女が何処にいる。」
「ゔっ!」
「もう面倒だな。…話はわかったな?」
「とりあえず。」
「よし。服部!」
「はい。」
最上に呼ばれて服部がスッと襖を開ける。
「おかえりだ。そのまま阿幸地殿のところにでも放り込んでこい。使用人を斡旋しろと言えば人選は向こうでするだろう。」
「わかりました。」
「えっ!えっ!嘘でしょ。まだ心の準備が…」
「喧しい。もう一度言う。私は忙しい。何故こんな事を私が言ってやらねばならんのだ。いい年した大人が余計な手間をかけさせるな。下がれ。」
雅客達はすごすごと最上の執務室から出て行った。
「最上様めちゃくちゃ上侍だわ。」
「なんだそれ。」
雅客の言いように服部が笑う。
「あっ。服部も雇ってるのか?」
「当たり前だろ。倉之助と同じだよ。」
「服部ぃ…。」
「いやでも凄い楽。帰ったらご飯食べて寝るだけだし。」
「服部が染まってしまった。」
「なに言ってんの?雅客達も今から雇いに行くんだからな。これで雇わなかったら次は道元様が出てくるからな。」
「なんで⁉︎」
「雇用はいくらでも欲しいんだよ。最上様を無視できても、道元様は無視出来ないだろ。」
「いや最上様を無視する時点で既に怖いが。というかなんでクソ忙しい最上様が俺たちのこと知ってるんだ?」
「下緒と一之進達を最上様が引き取ってるんだけど知ってたか?」
「えっ⁉︎そうなの?」
「甲鉄城にいた人間は忙しくて面倒見れないから、早々に使用人を雇い入れた最上様の家で引き取ったんだよ。」
「へぇ。まあ最上様の家なら安心だわな。使用人もいるわけだし。」
「一之進達はいいけど、下緒は働かない訳にいかないだろ。だから使用人見習い兼間諜。」
「間諜⁉︎なにさせてんの⁉︎」
「間諜っていっても、噂話を街の女性達から集めてくる仕事だな。使用人見習いのついでに、噂話聞いてまとめて提出するんだ。最上様が気になるものがあれば、さらにそれについての噂を集めるんだ。」
「そこに俺たちが引っ掛かったってことか?」
「そういうことだな。噂が立ち始めたから、最上様が把握したんだろ。」
「噂されてんの⁉︎俺たちが⁉︎」
「というか下緒はなんで見習い?正式に雇っても問題ない年齢では?」
「もう少しそつなくこなす様になったら城に上がるんだよ。」
「…城で…間諜させるってこと?」
「それ以外に何かあるか?これからどんどん城にも流民上がりの使用人やら、他の駅から引き抜きしてくる文官やらが増えるわけだからな。」
「怖い怖い!最上様怖い!」
「信用できる間諜はいくらいてもいいらしい。」
「怖いよ!」
この後雅客達は、阿幸地にまだ雇ってなかった事を怒られた。阿幸地の斡旋で使用人を雇い入れることになった上、他の武士達の現状もバレたので更に阿幸地に怒られたのである。
小説を見る限りめっちゃ環境の悪い長屋に住んでたようなので、急に屋敷とか割り振られても困ると思うので書きましたw
奪還後の後書きに書いたやつですね。
ホモ君家は正式な使用人2人に見習いが下緒入れて4人居ます。使用人研修所状態w
全員に間諜の真似事させてます。
ホモ君は家に帰ってないので、見習いがそれぞれ簡単な報告書にして服部経由で何日かに一度報告してます。
正式に雇ってる使用人は、顕金駅出身の女性かな。
見習いはある程度そつなくできるようになったら、静にパスして本格的に教育します。