「…ほう。これは。」
鈴木の設計図と仕様を見た最上は試作機を見に行くことにした。
まだまだ前程の活気には劣る整備場に最上は足を運び、鈴木や生駒から試作機の説明を聞きながら、試射を見せて貰った。少々改善の余地ありとして、何点か指摘して整備場を後にした。
「あれ。最上様こんなところでなにをしてるんです?」
最上が愛馬の疾風に乗ろうとしていると雅客に声をかけられた。
「ああ。鈴木殿の試作機を見に来た。設計図と仕様だけなら完璧だったが、やはり試作機があるなら現物を確認したいしな。何点か指摘した箇所を改善できそうなら予算を出して、建造中の駿城に採用する。」
「なんの試作機です?」
「分類的には蒸気筒だな。駿城用だが。どうせ来たのなら覗いていけばいい。」
雅客は言われた通りに整備場に顔を出して、鈴木達の簡単な説明を聞いて試射を見せてもらった。
またやべぇものを作り出したなと認識した。
建造中の駿城は、顕金駅にいたカバネの金属被膜を使用して、先頭車両と最後尾車両を覆い狂った強度となっている。今まで先頭車両を覆っていた装甲を薄く出来るため総重量も中々軽くなった。客車はどうしても装甲の薄くなる、扉と扉の接合部のみ金属被膜で覆っている。
厩舎としていた畜舎車両は無くし、客車も減らして5両編成の予定である。
編成も短くなり、総重量は更に軽くなった為、甲鉄城より速度が出る。
この駿城は物資のやり取りの為というより、カバネ討伐用の駿城の予定である。
装備として四八式鎮守砲の後継機が1門搭載までは決まっている。
さらに鈴木が現在開発中の兵器が載る予定である。
最近は自決袋を自決以外に使っている場合が多かったので、手投げできる擲弾も開発された。
蒸気筒も今までより一回り小さく軽くなり、取り回しも良くなった。こちらも鋭意増産中である。
あちこちで色々なものが作られている為、蒸気鍛治だけでは手が足りず単純作業に流民を使っている。
流民も単純作業の手際によっては、蒸気鍛治の見習いに昇格できるし、最終的には蒸気鍛治になることもできる。
数日後、最上に指摘された点の修正を終えたため、鈴木の開発した兵器は駿城に搭載することが決まり、増産の許可と予算がおりた。
その兵器は、磐戸駅で菖蒲と来栖が見た、莊衛のガトリングガンから着想を得た物で、現代でいうところの機関銃である。もちろん弾は噴流弾。殺意が高い。据え置き式で客車1両あたり2台が搭載される予定だ。据え置き式の為、車両から蒸気を供給できるように設計された。
据え置き式と言っても、据え置き用の台座を設けるだけで普段は車両の中に仕舞われ、有事の際は台座に固定して蒸気供給の管を接続して使う。
台座は首振り出来るよう、可動域が広くとられている。
現行の蒸気筒より一回り大きく重いくらいなので、吉備土くらいの体格と臂力があれば手持ちでも使用が可能だが、普通の人間にはその大きさと重さの筒を、手持ちで撃ち続けるなど無理であるので、台座というわけだ。
連射性が高いので費用も恐ろしくかかるが、数の力を覆すには数が必要である。というのもこの駿城が運用になった場合、甲鉄城や駅の防衛もある為、それほど多くの武士を乗せられないのだ。人数が用意出来ないなら、沢山撃てる筒があればいいじゃない。ということである。
建造中の駿城への搭載が優先となるが、駅や甲鉄城にもまわされる予定である。
操作性は中々に簡素で多少練習させれば民人にも使える。従来の蒸気筒と違い狙って撃つ物ではないからだ。
この機関銃の蒸気供給の管は擲弾発射器にも使える互換性を持たせている。
この駿城が運用される時は、カバネリ2人の乗車が確定している。運転士は侑那が担当予定の為、巣刈も乗車予定である。城主は吉備土を予定しているため、瓜生以下狩方衆を編成するのは諦めた。医者として仁助も乗車する予定であり、樵人、歩荷も吉備土の補佐として乗せる。武士30名程度と有志の民人、蒸気鍛治15名程度となる予定である。
廃駅の奪還協力等の激戦が予想される場合は、甲鉄城を一時運行停止として、瓜生や狩方衆、菖蒲の護衛から来栖なども派遣予定である。瓜生は運用が難しいが、来栖によく言って聞かせ、雅客でもつければなんとかなるだろう。雅客はそんな想定をされている事実を知らない。
勿論その場合最上と菖蒲は居残りである。
一方建造中の駿城が運用可能になったら、流民として顕金駅にきた運転士がいるので、甲鉄城はそちらの運転士が担当する。
駅1つあたり、駿城はあって2城といったところなので、運転士は中々空きがないのだ。運転士は常に見習いを育てているので、余所者の出番などない。
流民には武士だった者もいるし、甲鉄城は寄せ集め面子と、一部の武士と瓜生含む狩方衆が担当する予定だ。一応最上が城主予定なのだが、現時点では目処が立っていない。
甲鉄城は交易目的で運用予定なので、交易ができる者が城主にならざるを得ない。
まだ駿城が建造中であることから、甲鉄城は新しい駿城の乗車予定面子と、甲鉄城を引き継ぐ面子の混成で運行しており、機関士なども将来的には足りないため、現在研修中である。
現在は菖蒲が乗車しない場合、吉備土を城主として、菖蒲や道元の書いた書状を持って、物資の運搬を請け負っているが、運行回数はそこまで多くない。
なにぶん他駅と食糧以外で交易するより、顕金駅再興のための方が各方面で忙しいからだ。西門の復旧も急がれており、人手はいくらあっても足りないのだ。
西門の復旧については一悶着あった。抗議行動まではいかずとも、一定数西門の跳ね橋再建を嫌がる者達がいたのだ。
簡単に言えば、一度破られたのだからまた同じことになるのではないかということである。それは基本的に学のない民人達の間で広がりつつあった。噂の広がりを危惧した道元達は方向修正をすることにした。
奪還作戦当時の西門の跳ね橋の損傷具合から当時西門の跳ね橋は下りていたのだろう。本来跳ね橋前で停車して、警笛でやり取りした後下ろす筈の跳ね橋が下りていたことから、顕金駅がカバネにのまれたのは、規定の手順を守らず、大丈夫だろうと横着したことが原因だとし、危険軽視による人災と位置づけた。
跳ね橋が上がっていたところで、西門が突っ込んできた扶桑城を完璧に防げた思えないが、上層部はこうこうこういう状態でした。再発しないようこういう対策をします。と発表することにしたのだ。
跳ね橋が下りてなくても無理だった。などと言おうものなら、西門前のトンネルを塞いでしまえ。などと言うものも出かねないのでこの方向で話を広げて、門の管理の徹底の約束をした。
勿論阿幸地などの知識層にはわかっていることだろうが、同時に東門も同様であることはわかっているので文句を言うような者はいなかった。
あちらこちらで行われる復興計画に、上層部も武士達も民人達もきりきり舞いである。
そんな中で、新しい駿城の建造はかなり余計な作業のようにうつるが、駅の中にこもっても安全ではない、安全が欲しければ勝ち取るのだ、カバネを殺せ。のお題目であるので特に文句は出なかった。顕金駅の民人然り、八代駅の民人然り、金剛郭の民人然り、余所からの難民然りカバネへの殺意が高い。
ちょっとついていけてないのは、道元が集めた要職についている者くらいである。とはいえ自分達がカバネと戦えと言われているわけではないので、基本的に一歩引いたところから見ているくらいのものである。
そのため新しい駿城の建造が他の作業を多少圧迫してても、誰も文句を言わないどころか、まだかまだかと完成を楽しみにしている者が多い。
新しい駿城にはまだ名前がなく現在民人達に募集中であり、取りまとめは吉備土がやらされているが、城主予定なので仕方がないのである。
駿城の名前が一般公募になったのは、菖蒲がやたら可愛い名前を出したり、最上が安直に鏖殺城とか言い出したためではない。決して。
顕金駅にいた4000近いカバネは材料になりました。
将来的には全車両覆えるといいね。
駿城の仕様はもっと凶悪にしようと思ったけど、とりあえずはこの程度からスタートです。その内アップグレードしてくんでしょう。(お前が考えるんだよ)
西門の件は捏造で書いてますが、もしかしたら駿城がカバネを引っ付けたままとか普通にあり得る気がするので、一時停車させてから迎え入れるべきでは?と思って書きました。まああの速度では、先頭車両はどうにかなっても、後続車両が駅に突撃しても不思議じゃないかなとも思うので、跳ね橋が下りてなくても駄目な気はします。