扶桑城は蒸気鍛治達により分解撤去が行われた。バラバラに分解された後、使える部品と使えない鉄屑とに振り分けが行われ、使えない鉄屑は溶鉱炉で溶かされた。
新しく建造されている駿城は、扶桑城からそのまま生かされた部品や、溶かした鉄を再利用しており、その殆どが扶桑城で構成されている。
建造中の駿城は5両編成とかなり短い編成の為、使われなかった部品も存在しているが、流用している部品と同じ規格である為、予備部品として保管されることとなっている。
現在急ピッチで建造しており、思いの外流用できる部品が多かったことから、当初の想定より早い完成が見込まれている。
「完成が近づいてきたね。」
「試運転まであと一月ってとこですかね。」
侑那が建造中の駿城を見学に来ており、仕様の解説のため巣刈が対応していた。
「ていうかさ。まだ決まんないの?駿城の名前。」
「まだみたいですよ。侑那さんは何か候補出しましたか?」
「まさかこんなに決まらないとは思わなかったし出してないよ。最上さんとかなんかいい感じの名前つけそうなのにね。」
「最上さんは鏖殺城らしいですよ。たぶんちゃんと考えてないんだと思いますけど。」
「うわっ。それはないわ。それいつ聞いたのさ。城に泊まり込んでた時期じゃないだろうね。」
「さあ。いつ聞いたかまでは。まあ募集かけさせたのは最上さんみたいですから、本人は考える気ないんじゃないですかね。」
「ふーん。まだ締め切ってないならなんか応募してみようかな。」
「えっ⁉︎なんて名前にするんです?」
「まだ考えてもないから。あんたは応募したの?」
「いやぁ。してないですね。」
侑那と巣刈の会話を聞いていた者達も、自分はなんて書いて応募しただとか、誰々はなんて書いていたなどと言葉を交わす。名前の応募は、駿城の名前と命名理由を記載すれば誰でも応募が可能である。
侑那と巣刈が駿城の名前の会話をしてから、1週間後に締め切りとなり、吉備土が取りまとめた後、最上の下に届けられた。
取りまとめられた資料から、明らかに人の名前であるものや、既にある駿城の名前や同じ音の名前、長すぎる名前などが弾かれていった。
残ったものを菖蒲、道元、勘太郎、最上、来栖、吉備土らがいくつか候補を抽出し、さらに駅内投票となった。
掲示された名前の候補の隣には命名理由も記載され、文字は読めぬが投票したいという者の為、六頭領が案内としてつけられた。
そして投票で選ばれた名は蓬莱(ほうらい)城である。
命名理由は不老長生の仙境「蓬莱山」と、生命更新の仙木「扶桑樹」は並んで語られることが多く、扶桑城を再利用して建造されたことから、関係性のある名前にしたかった。とのことであった。
知識層からの受けがよく、学のないものからも、不老長寿という言葉が縁起が良いとか、扶桑城と関係のある名前は良いと支持を集めた。
駅を破壊したのは扶桑城ではあるし、扶桑城がカバネにのまれたことを知らない駅も多々あるため、扶桑城の名前をそのまま使うことはできなかったが、扶桑城を使って新たに駿城を建造するからには、なにか証のようなものは残してやれないかと蒸気鍛治達の間でも話題となっていたため、蒸気鍛治にも受けがよかった。
尚、鏖殺城は上層部の予選で落ちている。鏖の字の画数が多いから書類に書きたくないと最上が不採用にしていた。自分であげた案を自分で不採用にしたのだ。
最上からすれば、頭があまり働いてない時に聞かれて、いい加減に答えたのに、代筆で候補として入れられていたことに驚いていた。万が一にも採用されたら鏖の字を何回も書類に書く羽目になるため、積極的に不採用にした。
積極的に不採用にせずとも予選は通過しないのだが念のためである。
採用された名前の応募は無記名で入れられており、名前をつけた人物については不明である。
だが最上は知っている。何せ扶桑の意味や関係のある言葉を質問されたのは自分なのだから。無記名で入れたのだから知られたくないのだろう。
採用されたところで褒美などないのだが、まあ自分で運転する駿城に名前をつけられたのだから、それ自体が褒美みたいなものだろう。
侑那回でした。
一城分の材料が駅内にあるんだから有効活用しないとね。