「これより訓練を開始する!」
武士達の約三分の一が集まり、銃の操法や剣術の試合を行うのだ。兵部頭につけられている来栖が、指揮監督をし技術の向上等を行う。カバネリ2人も参加することはあるが、来栖とカバネリ2人の3人で手合わせするくらいである。というのも無名の銃の取り扱いは他の追随を許さぬものであるが、残念ながら説明が壊滅的に下手なので、講師としては役に立たないからだ。生駒は蒸気筒や剣術を覚えるくらいなら、ツラヌキ筒での立ち回りを、もっと覚えるべしとの最上からの指示である。
ちなみに無名と来栖からGOサインが出れば、他に手をつけても良いと言われているが、許可を出す2人が強すぎて先が見えない。
生駒の手が届く最上や瓜生は、生駒が参加するときは不参加なので、ひたすら頑張るしかない。
最上が参加するときは、狩方衆も参加である。最上がいれば瓜生は大体最上と皮肉の応酬をしており、他の武士とトラブルを起こすこともないので。
瓜生から積極的に喧嘩を売ることはないのだが、皮肉屋ではあるので武士達がカチンときやすいのである。狩方衆は美馬について行っていただけあり、蒸気筒の取り扱いが上手く、説明も理論的なため、瓜生以外の狩方衆は割と武士達に受けが良い。とはいえやったことがやったことであるので距離はそれなりである。
手合わせでは来栖と最上がそれぞれ武士達の指導をする。それ以外には来栖対最上・瓜生で手合わせをするが最上達の惨敗である。来栖は2人に人間じゃないと毎回罵られている。
偶に最上と瓜生がガチンコ対決をするが、大体最上の負けである。
最初は互角なのだが最上の体力が尽きる方が早いからだ。顕金駅を奪還してからは特に顕著に結果が出ている。復興当初ひたすら伝令で走らされ続けた瓜生と、城に缶詰になりひたすら事務作業に追われていた最上では歴然であったのは致し方ないことである。
本来なら、来栖も最上の体力不足には苦言を呈したいところではあるが、じゃあ体力作りするから代われよ。などと言われては堪らないので、瓜生に嘲笑われる最上を眺めるに留めている。
今回来栖以外の前衛面子は不参加の日であったが、まさかの菖蒲が参加である。鈴木達の改良により蒸気筒がひと回り小さく軽くなったため、菖蒲が自分にも使えるのではと試しに来たのだ。
菖蒲は剣術も一応ひと通り出来るため、万が一にも怪我をさせない来栖が手合わせをする。
「随分軽くなりましたね。」
「はい。大きさも少し小さくなりましたので取り回しも良くなりました。己は扱うことが殆どなくなりましたが、最上などは筒も刀も使いますので喜んでおりました。」
「そういえばよく筒を襷掛けにしていましたね。」
「ええ。よく邪魔ではないなと思っておりますが、己と違いあまり突出しませんので両方携帯しておく方が都合が良いそうです。」
「なるほど。それでは私も試させていただきますね。」
「どうぞ。」
菖蒲が蒸気筒を構える。
「菖蒲様。もう少し足を開いて、少し重心を前に。はい。そのくらいで。大きく反動が来ますのでお気をつけ下さい。」
「きゃっ!」
発砲音と共に小さく菖蒲の悲鳴があがる。弾は的の端を掠めた。
「思っていたより反動があって驚きました。」
「お怪我はございませんか?」
「ええ。少し驚いただけです。それにしても、無名さんや最上が軽々撃っていたのでもう少し反動が小さいものかと思っていました。」
「無名はカバネリですし、最上も臂力がない方ですが、前衛をできるほどには鍛えている武士ですから。」
「いざとなれば使うことにもなるのでしょうが、やはり私は蒸気弓の方が良さそうですね。」
「菖蒲様の弓の精度は素晴らしいですからね。」
「生駒にお願いして矢尻に金属被膜の加工をしていただいたものも試して良いですか?」
「どうぞ。」
菖蒲が蒸気筒を撃った位置より少し下がって蒸気弓を構える。周囲が静まり返る中矢が放たれた。
放たれた矢は的の真ん中に突き刺さり、矢尻が中程まで鉄板の裏に突き出している。
「お見事です。」
「ありがとうございます。刺さりはしましたね。少し裏も確認致しましょう。」
来栖と菖蒲は的の鉄板の裏を確認した。
「貫通致しましたね。」
「ですが不十分です。本来刀より弓の方が貫通力はあるはずなのですから。」
「ふむ。確かに。生駒か最上辺りに後で確認してみましょう。」
この後菖蒲は来栖を相手に手合わせをして訓練を終えた。
菖蒲と来栖は揃って最上の執務室に来ていた。
「なるほど。確かに貫通力は間違いなく弓の方が上です。結論から申しますと先程お伺いした貫通力ならばカバネを殺せます。」
「では何故貫通しなかったのでしょう。」
「前提が間違っております。あの鉄板とカバネの心臓の金属被膜の強度は同一ではありませんよ。来栖はどうか知りませんが、私は刀であの鉄板を突いて完全に貫通するのは無理です。」
「そうなのですか⁉︎」
「なんだと⁉︎」
「ですから矢尻の中程まで貫通されたのであればカバネは殺せます。」
「本当ですか⁉︎」
「ええ。今度駅外で試してみましょう。まあ菖蒲様が直接カバネを殺す機会などない方が良いのですがね。」
「それはそうなのですが、やはり手段があるのとないのでは違いますから。」
「理解しております。試射だけであれば私がして参りますがどうされますか?菖蒲様ほどの精度はありませんが一応弓も嗜み程度には使えます。」
「いえ。自分で試します。」
「そうですか。来栖。来週吉備土が宍道駅に行く予定だっただろう。菖蒲様と行って来ると良い。道中試射をすれば良い。」
「わかった。」
「よろしいのですか?」
「宍道駅であれば長旅にはなりませんから問題ありませんよ。ついでに気晴らしでもなさってこられればよろしいかと。来栖がついていれば危険もございませんし。」
「わかりました。提案に甘えることにします。」
後日菖蒲は最上の提案通りに、宍道駅への道中で試射をし、カバネを殺せることを確認した。とうとう菖蒲もカバネを殺せる術を手に入れたのだ。
そもそも刀で殺せる来栖がヤバいと思うんですよね。いうなれば斬鉄を繰り返してるわけですよね。まあホモ君にもさせちゃってますが…。
蒸気弓が和弓より威力があるとするならば、矢尻さえ金属被膜で覆ってしまえばカバネを殺せても不思議じゃないと思うんですよね。
銃と違って速射性やら、使い捨ての矢に金属被膜は無駄とかの問題はありますが、菖蒲様にもカバネを殺す術を習得させたかったんです。