【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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暑い日々が続いておりますが、皆さまはお元気でしょうか。

毎日クソ暑いので熱中症ネタです。


【小話】中暑(熱中症)

その日の八つ時に下緒が廊下を歩いていると、少し先で壁に寄りかかって座り込んでいる最上を発見して駆け寄った。

 

「ちょ!どうしたんですか⁉︎」

 

「…下緒。…すまんが、厨から水と塩を少しもらって来てくれるか。」

 

「それは構いませんけど、誰か呼びますか?」

 

「…いや。大丈「あれ?下緒さん?どうか…って、最上様⁉︎」

 

「あっ!倉之助様!最上様を執務室までお願いできますか?」

 

「最上様。どうされました?」

 

「いや。…恥ずかしながら、中暑かな…。」

 

最上が少し眉の下がった情けない顔でへらりと笑う。対応し始めた倉之助を見て、下緒は小走りでその場を離れて行った。

 

「とりあえず、執務室まで行きましょう。廊下だと騒ぎになりますし。歩けますか?」

 

「…すまん。肩をかして貰えるか。」

 

「勿論ですよ。」

 

倉之助が肩を貸しながら、少し先の最上の執務室へと連れて行った。

 

「中暑ならとりあえず長着姿になった方がよろしいのでは?」

 

「ん。」

 

最上は怠いのか返事だけして袴に手を掛ける様子がない。もう問答無用で脱がしてしまおう。いっそ襦袢にしてしまった方が涼しいだろうと、倉之助は最上の袴に手をかけた。

袴を脱がせ、帯を外して長着を開いたところですぱーんと襖が開いた。

 

「最上さん!企画書持ってきました!お願いします!」

 

生駒である。丁度いいので楓を呼んでもらおうと、倉之助が声をかけようとしたが、

 

「おっ!お邪魔しました‼︎」

 

襖が勢いよく閉められた。

倉之助は、一瞬何を言われたのか理解出来なかった。だが側から見れば、なるほど勘違いされたのだと気がついた。

 

「いっ生駒!違うんだ!」

 

倉之助が声を上げたが時既に遅し、生駒は脱兎の如く逃げて行き、生駒は廊下で来栖に激突して怒られた。

説教をされているときに、生駒はハッとした。最上が執務室で昼間から事に及ぶことに同意するだろうかと。

2人はそもそも恋仲ではないし、異性が交際対象であるのだが、生駒の中ではそうなった。

 

「来栖!大変なんだ!倉之助が最上さんを襲ってた!服脱がせてた!」

 

「は?なんだって?倉之助が?」

 

説教の段階からちらほら視線を集めていたのに、廊下でそんなことを大声で言ったものだから、周囲の者も聞いてしまった。大事故である。

 

生駒は来栖をぐいぐい引っ張って、最上の執務室に戻って行った。

生駒が勢いよく襖を開けると、最上は襦袢姿で仰向けになり、倉之助に団扇でぱたぱたと扇がれていた。

生駒は想像していた光景と違ったことから呆気にとられていた。

 

「あれ?」

 

「よかった。生駒。悪いんだけど楓様探してきて貰えるか?」

 

「わっわかった!」

 

「生駒ぁ!廊下を走るなと何度言わせるんだ!」

 

倉之助に楓を呼ぶように言われ、それまでしていた勘違いも気まずかったので、生駒はまた全力で城の廊下を駆け出した。来栖の怒声が後ろから聞こえたので、更に速度を上げた。

 

「なんだ最上。お前が我々に気をつけろ気をつけろ、とうるさかったのにお前が中暑か?」

 

「…申し開きのしようもない。」

 

「最上様。お水と塩をお持ちしました。」

 

下緒が盆に湯呑みと陶器の瓶と塩の乗った小皿を乗せて執務室に入ってきた。

 

「すまんな。」

 

最上は起き上がって、下緒が卓に置いた小皿から塩をひとつまみ舐めて、湯呑みの水を呷った。

 

「忙しくてすっかり水分をとるのを忘れていた。鍛錬でもして汗でも流してれば忘れんのだが、座ってばかりだとなぁ。」

 

来栖達が呆れた顔で最上を見ていると、後ろから女性の声がかかり最上の肩がぎくりと跳ねた。

 

「あら。最上様。今年は例年より暑いから、風通しの良い場所でも水分の補給を怠らぬようにと、菖蒲様からお触れを出してもらうと決めた時に、同席されていたのはどなたでしたでしょうか。」

 

「わ…私です…。」

 

「最上様は医学にも明るいはずですが、私の認識違いでしたでしょうか。」

 

「…武士達よりは明るいかと。」

 

楓が笑顔のまま部屋に入って来るが、目は笑っていない。来栖は倉之助と下緒を目線で促して、執務室からするりと抜け出した。

廊下には仁助がおり、そのまま襖を閉めた。

 

「仁助。あとは頼んだ。我々は業務に戻る。」

 

「わかりました。皆さまもくれぐれもお気をつけて。」

 

仁助に笑顔で見送られ、それぞれの仕事に戻っていった。

 

最上は楓の問診で、寝不足も指摘された。日が暮れるまで楓と仁助に見張られ、日が暮れたら2人に家まで送られた。

楓は、穴子と鯉に今日だけはなんとしても仕事はさせないことや、子供達と同じ時間に就寝させることを言い含めて帰っていった。

 

「効率の良さを好み利益を常に気にしておられる最上様なら、どうするのが一番良いかお分かりになりますよね。」

 

笑顔を浮かべた楓の去り際の台詞である。最上は引き攣った笑顔で返事をしていた。

 

城では生駒の大声により広がった噂を訂正するため、倉之助が東奔西走する羽目になっていたが余談である。




皆さまも小まめな水分補給と充分な睡眠を心がけて下さい。

倉之助は暫く渾名が風雲児になった。
交際相手には誤解されてません。日頃の行い。
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