最上の屋敷の庭では、畑の隣で一之進が竹刀で素振りをしており、樵人が見守っている。
「一之進。真っ直ぐ振れてないぞ。集中集中。」
「はいっ!」
小太郎は、鰍のやっている寺子屋に通うため朝早くから出かけて行った。最上の家から操車場までは、それなりに距離があるので早めにでなければならないのだ。寺子屋は鰍塾と呼ばれており、鰍が担当の日ではなくともその名称で呼ばれているため、鰍は恥ずかしがっている。
小夜は縁側で、最上所有の書物を眺めながら時折ちらりと一之進を見ており、二之介は使用人見習いが代わる代わる面倒をみている。
(読んで…はないよな?眺めてるだけかな?)
樵人は小夜をチラッと確認して、持っている書物が解剖図なのを見てドン引きした。
(絵は多いだろうけど解剖図!最上様!ちゃんとしまっておいて下さい!)
一之進への剣術指南は、まだ基本の型を教えたり、打ち込みに付き合ったり、素振りを監督するくらいなので、武士達が持ち回りで請け負っている。
先日吉備土が担当の日に、打ち込み台を作成したので、打ち込みも楽になった。
一之進は午前中は剣術指南であるが、三日に一度午後から一刻ほど弓術指南も菖蒲に受けている。というのも弓が使えるのは菖蒲と道元、勘太郎、最上の4人くらいである。一応年嵩の武士達も心得はあるが、弓より蒸気筒の操法を覚える方が優先だったので、上手くはないのだ。最上も教える時間はとれないし、もう少し大きくなったら蒸気筒の操法でも教えれば良いと言っていたのだが、一之進の剣術指南の噂を聞きつけた菖蒲の希望で弓術指南が追加となった。
菖蒲に手間をかけさせるのはちょっとと断ろうとしていたらしいが、菖蒲のきらきらした眼差しに押し切られたらしい。どうやら菖蒲は、人に何かを教えるということをしてみたかったようである。
弓術指南のない日は、最上が用意している書物の書き取りをする。この書き取りは、最終的に綴じられて鰍塾の書棚に納められるのだ。勉強するのに書かせるのだから、写本にしてしまえということらしい。
授業で使うというより、自由に読んで良い書物の扱いである。
一之進は、甲鉄城に乗っていたときより背が伸びたので、最上の子供の頃の服を与えられており、物が良いため着ている本人より、剣術指南の武士達の方が汚さないように気をつけている。
一之進の着ていた物はそのまま小太郎が着ることになり、流石に女児用は最上の家にないので、小夜の着物は使用人だった多恵さんの着物を幾つか解いて、穴子が仕立て直しをしている。
上侍の家から使用人が着ていた着物の一部が集められ、着物がまともにない流民のために阿幸地経由で配られている。上侍の家に住んでいる武士達からすれば、自分達が使いたいところであるが、最上から使用人の物を使うのは禁止されている。
使って良いのは上侍の普段着だった物である。奪還当初集められた物のうち、普段着と判断された物は返却されたのだ。
最上は自分が寸足らずになったら、自分の父親の物をと考えているようだが、まだかかりそうである。
直さずに着られるかはまだ誰にも分からない。
一之進は二之介と兄弟であるが、二之介は幼過ぎて父親のことも母親のこともわからない。自分が立派な武士になって二之介を守らなければと思っている。
一之進の実家は最上が押さえており、使用人見習いに風通しをさせたり管理させている。最上は二之介が5歳くらいになったら、一之進と二之介を使用人をつけて実家に戻そうと考えていることを一之進は知らない。
甲鉄城では一之進6歳、小太郎5歳、小夜3歳とのことなので、二之介は1歳くらいの想定です。
名前の感じから勝手に兄弟にしました。すみません。
現在、原作から一年くらいの設定なので、一之進は7歳、二之介は2歳です。
一之進が10歳二之介が5歳のあたりで、最上の家から実家に移ります。
生活スタイルはそのままで、住む家が実家になるだけです。一之進がしっかり職に就くまではホモ君から金も出ます。
一之進は実家に戻れることを喜ぶ反面、第二の実家のホモ君家を離れ難く思いますし、二之介は完全にホモ君家が実家の感覚なので、泣いて嫌がります。捨てられたとかでグレたりするかな?
「そもそもお前ら誰一人うちの子ではないが?」byホモ君
小太郎はたぶん一之進についてきてくれます。
小夜は同年代の異性なので行かないし、完全にホモ君家の子状態。将来医学に興味を持ったら楓の所に通う未来もあるかもですね。小夜は頭良く育つので上手いこと言って居座ります。