【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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八代駅の縁者4

もう半月程で稲刈りとなる頃に、八代駅奪還作戦が行われることとなった。

とはいえ準備期間であった今までで、八代駅内のカバネを駅外に連れ出してかなり討伐しており、奪還作戦というよりは掃討の総仕上げといったところである。片側の跳ね橋は既に上げており、カバネの討伐も進んでいるので、完全封鎖後潜んでいるカバネを殲滅するのだ。

殲滅後、駅内に残る者もいるし今後勘太郎も生活することになるため、生活拠点の構築も必要である。

当時操車場には民人達が立て篭っていたことから、しっかりとした造りではあるので生活拠点は操車場の予定であるが、長期間滞在することを考えれば改装が必要である。領主の屋敷が無事なら勘太郎の居住場所はそこになる予定である。

 

奪還作戦には八代の武士達と蓬莱城の面子と来栖で行くことになっている。菫は留守番である。今回八代の武士達には菫の護衛も許されていない。護衛に割く戦力が無駄であるので仕方がない。最上には5日以内で殲滅を終えろと言われており、殲滅を終えたら一度来栖と武士の半分で顕金駅に戻り、最上と瓜生以下狩方衆、天祐和尚と蒸気鍛治10名と有志の民人が来栖達と入れ替えで八代駅に向かう。最上達は生活拠点の構築のための人員であり、天祐和尚は慰霊のためである。後発組にも菫は入れていない。役に立たないので城で待機である。

 

奪還組が送り出された後、甲鉄城には資材などが積み込まれていく。八代駅の図面を見ながら、蒸気鍛治や有志の民人らがどこから手をつけるかを検討している。八代駅の図面には討伐組が今まで記録した書き込みもあるため、多少の方針は決まっているが、作業にあたる人員が少ないため優先順位付けは必要である。

 

奪還組が出発して4日目の午前中に来栖達が顕金駅に戻ってきた。待機していた最上達は八代駅へと甲鉄城で向かう。

 

「いやぁ。早かったな。念のために見回りもしてこれか。実質2日半位しかかかってないな。」

 

「そりゃカバネリ2人と忠犬がいたらそうだろうよ。あの3人が2日も周りゃすぐだろ。」

 

「早く終わる分にはありがたいばかりだな。」

 

最上と瓜生が艦橋で軽口を叩く。

 

八代駅についてからは、蒸気鍛治や有志の民人で修復予定箇所の確認に向かい、他は八代駅内の清掃作業である。

2日程かけて修復箇所の確認を終え、床板の張り替えや、設備の修理が始まった。清掃作業は5日程を費やした。掃討の仕上げ前に出来るだけ駅の外で始末をつけたが、顕金駅の時と違い人員が少ないため中々の時間を要した。

 

「吉備土。私と天祐和尚と一緒に蓬莱城の面子は顕金駅に戻るぞ。」

 

「このまま作業を続けるんじゃないんですか?」

 

「追加で必要な物資や人員の表ができた。武士ばかりいてもここからは役に立たんからな。」

 

「わかりました。」

 

甲鉄城は八代駅から顕金駅へと戻り、追加物資や追加の人員の乗り入れなどが行われている。

 

「無名殿。」

 

顕金駅の操車場で追加物資の指示を終えた最上が無名を呼ぶ。

 

「何?なんか手伝う?」

 

「いや。無名殿と生駒はこれで終いだ。あと数日で稲刈りの予定だから顕金駅にいてくれ。」

 

「いいの?」

 

「問題ない。彼方は私と瓜生がいれば充分だしな。」

 

「わかった!ありがとう!」

 

無名は踵を返して生駒へと突撃していった。生駒は後ろから無名にどつかれ怒っていたが、稲刈りのことを聞いたのか最上を二度見した後、軽く会釈をして無名と一緒に操車場から出て行った。

 

「仁助と樵人は悪いが付き合ってもらうぞ。吉備土と歩荷はこちらに残れ。八代の駿城の連結と、物資の搬入、人員の乗車が終われば出発するぞ。」

 

八代の駿城は奪還作戦前に一通り修復されており、八代駅に駐車しておくことになっているため、甲鉄城に連結して持って行く。

 

「乗車完了!」

 

「連結完了しました!」

 

「物資搬入完了!」

 

「了解した。甲鉄城。発進せよ。」

 

甲鉄城は再び八代駅へと向かう。

甲鉄城に牽引される八代の駿城には、八代駅で採掘に携る者達が乗っている。操車場の居住場所の確保が出来次第、採掘を再開する為である。

 

甲鉄城が八代駅に着くと、すぐに物資が降ろされ作業が始まった。最上が領主の屋敷の様子を見に行くと、床板の張り替えを終え、障子の貼り替え作業をしていた。四方川の城ほど大きくはないが、それなりに大きいため中々時間がかかりそうである。夕刻に各所からの報告を受ける以外に、やることもないため障子の貼り替えを手伝うことにした。いつのまにか手伝い始めた最上を見て、作業していた民人はぎょっとしたが、なにやら楽しそうであるので放っておくことにした。

 

夕刻には操車場に全員が戻り、最上に報告を上げる。特段問題もなく、各所あと3日程度で作業を終えられるとのことであった。仁助や樵人は、狩方衆の一部と家探しが担当であった。顕金駅の時と同じように、金目のものを集める作業である。泥棒の気分になるので嫌なのだが、他の作業では役に立たないのでそんな抗議もできない。

顕金駅にいる八代駅出身者から依頼された物の回収も仕事のうちである。

八代駅の武士達の一部からは、最上がちらちら目線を向けられていたが、一蹴されていた。

 

「なんだ?言いたいことがあるなら今ここで言え。お前らの家には目印を立てさせただろう。家主不在の家から押収することになんの問題がある?」

 

(これやるから吉備土は連れてこなかったんだな。)

(私達は抗議しないからな。)

 

樵人と仁助は遠い目で最上と八代駅の武士達を眺めた。

外道の所業のようだが、後数年は再興はしない予定なので残しておくだけ価値が下がるので仕方がない。なにせ保存状態が良くないので。

持ち帰れば菖蒲の指示で大半は、八代駅の再興資金源として保管となるのだが、そういうことは教えないらしい。

 

3日が経ち、採掘面子や八代駅の武士の半数を残し、最上達は撤収した。

八代駅の駿城は、いざという時の為八代駅に残している。

 

最上達が顕金駅に戻ると、丁度稲刈りが始まっており、必要な人員以上の民人が集まりわいわいと稲刈りをしていた。最上は狩方衆と金目の物を城に運んでいき、他の者は解散となった。

どうせだからと仁助と樵人が稲刈りの様子を見に行くと、おろおろする来栖の前で菖蒲が稲刈りに参加していた。

 

 

最上が城に報告に上がると菖蒲の姿がなかった。

 

「菖蒲様が稲刈りですか?」

 

「やってみたかったのだとおっしゃってな。再興後初めての稲刈りだ。一度くらいは良いかと思ってな。」

 

「そうですか。」

 

「そちらはどうだった?」

 

「領主の屋敷と操車場は問題ありません。それなりの屋敷からは金目の物の押収も終えました。領主の屋敷は使用人が最低3人くらいは欲しいですね。武士もうちから3人は出しましょう。交代制とすればそこまで不満もでないでしょう。石炭の採掘関係の勘定もあるので勘定方から1人出します。八代の武士も含めて隔週で交代にしましょう。」

 

「ふむ。では正式な使用人は2人として、最上君のところの見習いも2人借りよう。武士は来栖君に当番を組ませればいいだろう。有事を考えて5人借りたいところだな。八代の者だけでは少々心許ない。うちは流民上がりの武士などが混成でも良いが、八代駅は元々の来栖君の配下で固めたい。勘定はその5人でやってもらおう。教えたのだろう?算盤。」

 

「承知しました。…まあ確かに教えましたが、大丈夫ですかね…。」

 

「なに。殆ど石炭の採掘関係の計算だけだ。難しくあるまい。それにむこうに行ったら勘太郎は暇だぞ?算盤のみならずそれ以外も教えさせれば良い。」

 

「確かに暇ができそうですね。いっそ菫殿はあちらで勘太郎殿にご教示いただく方が良いのでは?」

 

「男子ならそれでもよかったが、女子故勘太郎では手がまわらん。流石に静殿を彼方にやるわけにはいかんしな。」

 

「ああ…。そういった教養がありましたね。勿体ない…。ではその分うちの武士をしごいていただきましょう。」

 

「菫殿には屋敷を一つ貸し与えることになった。そこに武士も突っ込んでしまおう。その分ちょいと立派な屋敷になるが、城にいつまでも住まわせておくのも良くない。自分達のことは自分達でしてもらう。それとあの駄犬だがね。ずっと八代にいてもらうことにしよう。1人くらい仕事のよくわかる者が常駐する方がいいだろう。」

 

「なるほど。しかしあの駄犬。八代に置いてよろしいので?勘太郎殿のご迷惑では?手合わせが大好きな様子でしたから、こちらにいる時にひたすら前衛組と手合わせでもと思っていたのですが。」

 

「前衛組の時間の無駄だろう。しかし何故殺してしまわなかったのかね。」

 

「菖蒲様の御心に配意したのもありますが、生駒がそういうところが潔癖でして、面倒なのです。美馬が倭文駅で暗殺を仕掛けられた時に、失敗して命乞いをするその相手を殺したら食ってかかっておりましたので。生駒がカバネリでなくば一顧だにする必要もないのですが。持っていたのも木刀でしたし、殺せば五月蝿いのは目に見えていましたので。…人目につかぬところであれば事故にしたのですが。」

 

「そうか。君はまたあれらに影響されたな?戦力も技術力も評価するが、一蒸気鍛治にそこまで気を使うな。甲鉄城という閉鎖空間とはもう違うのだよ。…まあいい。主に侍りたい犬は、侍ることを許さずに八代で働いてもらうさ。島流しみたいなものだな。菫殿はしっかり頭を下げにきたし、責任追及をしたところで手間の割に得るものもない。」

 

「面目次第もございません。…流刑地みたいな言い方は勘太郎殿が可哀想では?」

 

「現状流刑地みたいなものだろう。勘太郎は貧乏くじだよ。それより食糧の搬送についてだが。」

 

道元と最上がこれからについて話し合っていると、廊下から2人分の足音が聞こえてくる。一つは随分軽いので菖蒲と来栖だろう。丁度話を通さねばならない2人が戻って来たようなので、話を進めてしまうことにしようと道元と最上は座り直した。




八代駅の武士達は、領主の意向とはいえ民人を見捨ててさっさと逃げ出した前歴があるので、家老3人衆は一切信用してません。駿城の親鍵も勘太郎が管理することになります。

道元様はおこです。
光の甲鉄城面子にちょいちょい影響されるホモ君にもちょっとおこ。
忙しかったので後回しにしてたけど、ちくりと言っておかなきゃ気が済まない程度にはおこ。
閉鎖空間で半年以上一緒にいるとどうしても影響されちゃうよね。別にホモ君は光属性にはならんのだけど、色々気は使ってたのでつい気をつけちゃう。みたいな。
主人公だからで片付くけど、生駒は甲鉄城で当然のように会議に参加したりと、かなり上に置かれてたなと。
生駒が菖蒲を押し倒して噛みつきそうになったり、自分で立てた作戦放棄してみたり、まだ表向き何も悪いことしてない英雄様の美馬に食ってかかったり、反乱扇動しといて失敗したり、軍議の場でキレたり、ヤベェこと沢山やってるので感覚狂ってます。

光の甲鉄城面子の許容範囲が広すぎる!最初の頃の来栖とかド外道野郎みたいに見えるけど、基本的に正しかったので光の甲鉄城で正しいことすると外道に見える不思議。

空木君は島流しの刑。島じゃないけど。再興するか、菫が会いに行けば顔を見ることはできます。芹矢君は弁えてるので護衛ポジゲットしてます。
ホモ君は(来栖、瓜生、ホモ君と)手合わせと言う名のリンチをするつもりでしたが島流しで決着。
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